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遮光
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遮光の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.80pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全32件 1~20 1/2ページ
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テーマ的にはデビュー作の「銃」と似ている。事故死した恋人の身体の一部を瓶詰めにして持ち歩く虚言癖の学生の話だが、彼もいつしかそれに取り込まれてしまい、正常な判断が出来なくなってしまう。我々が日々信じたり拠り所としているものは、結局他人からすると、まったく意味のないもの、もしくはただ気持ちの悪いだけのものかもしれない。そういう断片化や分断•分裂を乗り越え得るものが、果たして現代の日本には確として存在するのであろうか。 | ||||
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作者は知らなかったけれど、表紙とタイトルの陰鬱さが個人的に好みだったので購入しました。 ページ数が少なく、薄かったのもありますが一気に読んで、さらにまたなんども読み返してしまいました。 ✳︎ネタバレ注意です 虚言癖のある青年。嘘をつくときはペラペラと話すのに、1人の時は虚ろ。 でも孤独ゆえに幸せを望みもがき続けているように感じました。 ようやくできた大切な人。けれどその人も… 持っていた指に対しても、嘘をついていたように感じました。本当は、狂うことで彼女の指と、彼女と一緒になりたかったんですね。 ラストシーンの指をくわえることで嘘をつくことをやめられたんだなぁ、と考えると切なさが残りました。 彼が虚言癖で、亡くなった人の指を常に持ち歩いていて、というのはきっと彼の特徴を示すためのものでしかなく、ここに書かれていたのは孤独を背負いながらもやっと人を愛すことができたのに、狂人になることでしか幸福を得られなかった等身大の男性の物語だと感じました。 こんなに陰鬱なテーマなのに読後感は感動して涙しました。 主人公の感情がこんなにも繊細に描かれ、感じさせることのできる文章に心打たれました。 人を選ぶ内容かもしれませんが、私は大好きな作品です。 | ||||
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本作品は一言で表すと「暗い」作品である。 愛する女性を失った虚言癖のある青年が彼女の指を愛しながら生きていく。 映像化したら、とても正視できない内容であろうと思うが、愛する者を失った悲しい心理描写が非常に巧いと思う。 中村文則さんの作品は、万人に支持されるものとは思わないが、私自身は時々読みたくなる魅力を有している。 | ||||
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亡き恋人の小指を持ち歩く虚言癖の男が主人公。恋人との出会いから、彼女の死、そして小指を所有するに至った経緯がつづられる。 周囲の人には、恋人が生存しているかの如く振る舞う主人公だが、その明確な理由は判然とせず、狂気の一歩手前で踏みとどまっているような様子。その一触即発までのふらふら状態が、憂鬱感たっぷりに描かれる。 暴力衝動とそれを冷静に見つめる内なる自分ということになるだろうか。ありがちだが、出口なしのどよ~んと鬱屈した雰囲気は、中村文則作品ならでは。ラブストーリーとも受けとれるかな。 | ||||
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親の愛に飢え、孤独な少年時代を過ごしてきたが、美紀という恋人に出会い、 幸せな家庭を夢見る。美紀の突然の事故死を受け入れることができず、 遺体の指をホルマリン漬けにして、常に鬱屈した気持ちを抱きながら、持ち歩き、 最後はふとしたことで人を殺してしまう。 未来への明るさはもちろん、主人公の救いも、読書から得る教訓もなにもない。 単なる自己中心的な殺人者の話とも捉えられる。 作者の作品には幼少時代に辛い思いをした人物に焦点が当てらることが多い。 ここまで暗く書き切るのは、意図的というよりも、作者の心の叫びであるのだろうか。 ドフトエフスキーや安部公房の影響を感じるが、あまりに簡単に読み易すぎる。 作者が100年後にも読み継がれる小説を目指しているのであれば、更なる人生の深さを感じさせてほしい。 | ||||
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94ページで、地面に座り込んでいた二人の女性と飲みに行くことにして、 そのまま歩き出したところ、いつの間にかどこかの店に入って座ったようだがその描写がなかったので 一体どこの場所で物語が進んでいるのか、迷って、何回も読み直してしまった。 | ||||
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先に「銃」読んでたから、こちらも、読み進めるのが面白い反面、不安でした。心地よい不安というやつですが。 でも、悲しい涙も出たよ。 | ||||
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「銃」を読んだときは、何だか気持ち悪いのと結末がショックで、中村さんはあまり好きになれないと思った。 しばらく読むのはよそうと思ってたのに、沢山のレビューと、あの強烈な世界観が気になって気になって、今度は「遮光」を読んだ。 読んでよかった。上手く言葉にできないけれど、心を動かされた。自分がもし、主人公と同じように大切な人を失ったら、同じことをしない、とは言い切れないかもしれない。特に電車の中で瓶を落としてしまい、周りの乗客の視線を浴びながら慌てて転がる瓶を拾うシーンは、とてもリアルに感じた。社会から疎外されている感覚や、誰かと繋がりたいけど上手くいかない感じ、今までこういう小説読んだことなかったから、こういうことが小説で読めるということに感動した。 でもやはり暗いので、中村さんの小説は1年とか間隔を空けながら読もうと思う。 | ||||
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今じわじわと中学生~高校生の間で人気だそうです。 話を合わせたくて数冊購入。 確かに。 ラノベよりもこういう本を読んで貰いたいと思います。 | ||||
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とても共感しました。 なぜわかるんだろうと思いました。 よく言葉にできるなぁと驚きました。 きっと中村さん自身の話だからこれだけ書けるんだろうと思いました。 読んでいると、自分自身について理解して行っているような気がして、昇華している気分になります。 暗い気持ちが消えて明るくなるわけではありませんが、理解した気になって少し安心した気持ちになりました。 あらゆる欲を感じない、人の内側に純粋に迫った小説だと思います。 同じ感覚を持つ人がこの小説に出会えたら救われるだろうと思います。 中村さんありがとう! | ||||
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ピースの又吉さんがオススメしていたので読んでみました。衝撃でした。若い頃の漠然とした不安感、自分がそちら側に行ってしまいそうな恐怖を思い出してしまいました…。再読するのに勇気がいるほどです。でも作品としてとても面白いです。他の作品も時間をかけて読んでみたいです。 | ||||
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第1作の主人公がそのまま登場したかのような第2作。 不幸な生い立ちのせいか、典型(普通)に憧れ、破滅願望を抱え、遺体の一部を所持するという幼少期からの性癖やら、かなり屈折した主人公です。 主人公がなぜ亡くなった彼女を強く求めたのかは、理解できません。 しかし、第2作目に完成を求める必要はないわけで。 文学史の中にはもっと優れた小説もあるでしょうが、同時代の作家をリアルタイムで追いかけていく楽しみを感じたいと思います。 (といってもこの小説が書かれて11年後に私は読んでますが) | ||||
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作者のデビュー作「銃」に続く第二作「遮光」は、非常に似通った兄弟のような小説だ。 『銃』では、死体から銃を持ち帰り、日々銃を持ち歩き、その銃に支配され、常軌を逸してゆく。 『遮光』では、死体から指を切り離して持ち帰り、日々指を持ち歩き、その指に支配され、常軌を逸してゆく。 こう書くと、非常に似通っていることがわかるだろう。 しかし、『銃』は徹底的に孤独であり、なぜ主人公が銃に魅せられてしまうのかが不明瞭だったが、 『遮光』は死んだ恋人の小指であり、それを持ち歩くには恋人を失ったことを認めたくないという明確な理由がある。 そういう意味では、ひとつ、人との繋がりというものをテーマとして導入し、進化したとも言える。 だが、迎える結末は同じ殺人である。 なぜ、同じ着地点へと辿り着いてしまうのか? 『銃』ならわかる。銃自体が人を殺す道具であり、既にそれに魅せられた時点で人を殺してしまいたくなるのが人間というものだ。 しかし『遮光』は恋人の死体から持ち去ってきた小指だ。それが人を殺す理由になり得るだろうか? 主人公の私は、ずっと演じ続けていた。そして典型的な幸福に憧れていた。それを恋人と迎えたかった。 それが、あまりにも唐突な「恋人の死」によって、不条理にも奪われてしまう。 その怒りの感情にずっと「私」は気づかない振りをしていたのだが、あるきっかけによってついに爆発ささせてしまう。 それが殺人へと繋がってしまった。 つまり『遮光』は、不条理と決別し、自分の本物の感情を手に入れたかったのだろう。 指を口にくわえて終わるラストが、恋人との一体感を強く求める「私」の着地点だった。 殺人まで行き着かなければ目覚めなかった生の感情。 果たして「私」は初めから狂っていたのだろうか。それとも恋人の死が彼を狂わせたのだろうか。 私はどちらでもないと思う。主人公は決して狂ってはいなかった。ただただ孤独だったのだ。 『銃』を読んだとき、この作者のテーマは「悪」だと思っていたが、私は間違っていたのかもしれない。 作者が描き出すのは、本物の「孤独」なのだ。 | ||||
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ラジオのトーク番組で著者の話しを聞いたのがきっかけ。では一度読んでみようと思い手にしたのがこの「遮光」。 愛知県出身で同郷ということもあり、学生時代の頃は相当逼迫した生活を送って、精神的にもドストエフスキーの作品に 救われたという経験を持つ著者に興味を惹かれたのが始まり。感想としては印象に残った三か所を書き出してみる。 1、「人間は死に続けるのだ、あの時思った。人間は精神のようなものが死んだ後も、その肉体は死に続け、骨が土に 帰ってなくなるまで死は継続するのだと思った」 この表現、死んだら土に還るのだが、それまで死に続けるという考え方はしたことがなかった。 2、「お前はそれからそいつを蹴ってたんだけど、その時も確かにお前は少しも怒ってなかったよ。まるで怒ってる振りしてるっていうか、 芝居してるっていうか、そんな風にしか見えなかったよ」 と著者が大事な場面と強調する10章、太陽の場面で男が言う、「悲しむお前に、人はやさしくするが、次第にうっとうしいものに なってくる、その時お前は悲しみを乗り越えた振りをしてでも明るく振舞いなさい。そうすれば人は受け入れてくれる」 その時、主人公は作り上げた虚像によって周囲が丸く収まる術を身につけた。その振りをする事で。 3、「その小さな箱には、救急箱、という文字が手書きで書かれ、その横に渦を巻いた奇妙な太陽と、中央に赤い十字のマークまで 描かれていた。これは美紀が描いたに違いなかった。それから数か月先に死ぬことになる美紀が、そうとは知らずに これを描いていたのだった」 死んだ人の遺品などを見て生きていた頃の回想をするのは私にも何度か経験がある。特に自分を小さな頃から大切にしてくれた人、 本当に愛した人のことを何かの拍子で思い出すと熱いものが込み上げてくるのも事実だ。このように過去を引きずって生きるか、 総て清算して思い出を断ち切るかは、その人間のこれからの人生に大きな影響を与えることだろう。 以上、私が思いつくままに書いたものですが、こういう生き方を私は否定も肯定もしない。人は小さな子供の頃から育った環境で、 その後大人になってもその影響力は永遠に消えることはないと思うから。 | ||||
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「人間はこの世界に嫌というほどいるのだから、私一人が狂ったとしても、別に大した問題でもないように見えた。」 幼いころの不遇な出来事を乗り越えようと、感情を誤魔化しながら処世をしてきた主人公。 唯一自分の心が開き、素直な感情のまま触れ合える女性に出会ったが、女性はまもなく交通事故で亡くなってしまう。 不遇に不遇を重ねる主人公は、遂に周囲が理解できないような奇行に走る。 何かに自分の存在意義を見出しつつも、結果として不信の目で物事を見てしまう自分自身に自己嫌悪を抱く。 そして物事が失った瞬間、素直な自分の感情に気づき、後悔先に立たずの状況に陥ってしまう主人公のふが いなさに深く同情した。 | ||||
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谷崎、三島などの世界観を現代に持ってきたような感じ。現実と向かい合えずに何かに救いを求めたり、急に狂ったようなことを言って自分自身に酔いしれたり、自暴自棄な行動を取ったり、深いところでは共感できてしまうのが怖い。僕は同じようにやりたくはないし、絶対にしないと思うけど、自分の中に渦巻く陰鬱な部分が垣間見えた。 | ||||
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『遮光』は中村文則氏の小説、第二作品目です。 内容は他の方が書かれていますので、そちらに譲るとして、未読の方が本作に対して『芥川賞落選作』という先入観を持っているのではもったいない、と思いレビューを書きました。 本作は芥川賞候補作としてノミネートされました。しかし各選考委員が総じて、前作『銃』と小説の構造、テーマが類似している、とし、氏の小説家としての志や既視感、内容に関して〜がうまく機能していない、などの評価により敢え無く落選することとなりました。 私は確かに選考委員の方たちの言う通り、テーマや構造が類似していると思いました。 加えて、美紀の死の機能(機能、などいってしまうと美紀に申し訳ないのですが)や、遮光というタイトルがはたしてこの小説にとって一番幸福なタイトルであったのかという疑問もあるでしょう。 (一般的に言って、小説中で最も重要な象徴は他にあったような気がします。私個人はこのタイトルを最悪と思うのではなくむしろ遮光というタイトルを好ましいものと思いますが、あくまで一般的な見解として) しかし、です。類似の構造やテーマを氏が選び取っていることにこそ注目すべきだと思います。 芥川賞の性質(作品中心主義)からして致し方のないことと思いますが、氏にとって生死の問題は非常に大きく、またかねてから抱いてきた心の深淵に沈んだ暗い感情、に並々ならぬこだわりを持っており、それを体現するうえでこの構造、登場人物、が絶対不可欠だったという解釈も可能なのではないでしょうか。 新人賞として作者の引き出しを見てみたいという気分は分かるのですが、うまい小説が色々な形で書ける、という極端なことをいうと、読者に迎合した効率的な作品よりも、何かにこだわって決定的なことを書ききる、ということのほうが、芥川賞にとっては幸福なのではないか、と思いました。 氏はその後も精力的に作品を発表し続けておりますし、確かな引き出しを持っていると確信しています。 主に芥川賞批判のようになってしまいましたが…要するに、この作品は落選こそしたものの素晴らしい作品であることには変わりないので、未読の方はそれに対する先入観をぬぐってぜひ読んでみてくださいということでした。(ちなみに私は選考委員の方たちの作品好きですし、人間も尊敬している部分が大きいです。ただ、中村氏の作品ももっと多くの方に読んでほしいので敢えてこのようなレビューになりました) | ||||
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法に触れる行為は別として、主人公の心理情景を お気軽なテレビドラマを楽しむように、「いるよな、 こんな奴、確かに」と言いたくなる私は、実は この本の部屋の湿度を2倍にするような、まとわりつく 何かから距離を置きたいのである。 それは「リアル感」の比喩といっても差しつかえない。 | ||||
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最近なぜか、暗い日本文学が敬遠される傾向にある。 明治の文学は暗くても良いが、平成の文学は明るくないとダメらしい。 (私はどうしても納得がいかないのですが) そんな逆風の中で、作者は真正面から暗い小説を書く。 昔の文学の暗さや生真面目さが好きな私にとっては、 ひさしぶりに居心地のいい世界に出会えたという感じです。 たまたまこの作品のモチーフに「遮光」が使われていますが、 これはどの作品にも共通するイメージかもしれない。 明るい場所ではなく、暗い場所を選んで歩く。そんな感じ。 確かに「負の精神」なんですが、そこに怒りは感じないというか、 腐ってはいないというか、この作品の主人公にしても、 端から見れば異常な言動を繰り返していても、 ひたすら自分を受け入れようとしているように思えます。 私も、主人公同様に、外の世界に触れる前の、 ありきたりないろいろなものに染まる前の「自分」を思い出せないし、 もはやそんな「自分」がいたかどうかすらわからない。 でもいたとしたら、この世界では間違いなく「異常」だと思う。 作者にはこれからも暗い小説を書き続けてほしい。 | ||||
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すさまじい小説だった。『遮光』を中心に、初期の中村氏には本当に、逃げや甘えがない。何が何でも、選んだ主題を書ききろうという作者の捨て身の覚悟が、過剰で、ある意味突き抜けた感もある作品のムードと直列して読み手に伝わってくる。主人公は一般的な目で見て決して明るい人間ではなく、嘘ばかり吐いているが、その嘘には、自分なりの理論で、現実を押さえ込み、屈服させようとする、力強い心向きがある。他人と馴れ合って、するするとうまく世の中を渡っていく人間の話など、読んでいてもまったくつまらない。彼の奇行や嘘は「逃げ」ではなく、生きるための「戦略」だと思った。たまらなく哀切なストーリーだが、読者におもねった処理が一片もないこの作品に、私は強く打たれた。今、毎日が辛い人に薦めたい。主人公の、世界への異常な戦闘的態度に、活力がもらえるようなところもあると思う。 | ||||
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