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六の宮の姫君



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【この小説が収録されている参考書籍】
六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君の評価: 3.94/5点 レビュー 33件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.94pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全25件 1~20 1/2ページ
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No.25:
(5pt)

教科書ここにあり

元々この『私』シリーズは短編連作で始まりました。
この『六の宮の姫君』は長編で、かつ「私」が大学卒業のための論文を書く話です。
しかも論文の内容は「芥川龍之介と菊池寛」。
はるか明治から続く日本の近代文学史で活躍していた二人の若い頃から晩年までを、丁寧に描いていきます。
そして、驚くべきことですが、この作品、小説を書くための教科書といってもよいぐらいなのです。
前期北村薫作品の最高峰、それがこの『六の宮の姫君』です。
六の宮の姫君 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:六の宮の姫君 (創元推理文庫)より
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No.24:
(4pt)

大好きな本、孫に読ませたくて

家にあるけれど古い本なので、孫用に買いました。綺麗な本なので、読んでもらえそうです。
六の宮の姫君 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:六の宮の姫君 (創元推理文庫)より
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No.23:
(5pt)

芥川龍之介が、『六の宮の姫君』はキャッチボールだと言った謎に挑む

『米澤屋書店』(米澤穂信著、文藝春秋)の中で、米澤穂信の作家人生を決定づけた本として紹介されている『六の宮の姫君』(北村薫著、創元推理文庫)を手にした。結論を先に言ってしまうと、これは文学史の謎に挑んだ大傑作である。

文学部4年の女子学生の「私」は、卒論で芥川龍之介に挑戦しようと考えている。文壇の長老・田崎信から、芥川の自宅を訪問した際の、「・・・西洋の騎士物語から、話が流れて、誰かが芥川さんの『六の宮の姫君』のことに触れたんだ。芥川さんは銘仙の一枚小袖。煙草をくわえて、せわしなくマッチ箱を揺らしていた。それから、マッチを取り出すと火を点けて一服した。そして、いったな。『あれは玉突きだね。・・・いや、というよりはキャッチボールだ』」という体験談を聞かされる。「私は目を見開いてしまった。『六の宮の姫君』は題の示す通り、王朝物である。そんな言葉のおよそ不似合いな作品ではないか。『何ですか、それは』。先生は夢から覚めたようにふっと私の顔を見た。『分からんなあ。ぽつりと言葉を投げ出しただけだ。勿論、そこにいた連中もわけを聞いたけれど、笑って取り合わなかったな。髪の毛をかき上げると、すぐに話を替えてしまった。押してそれ以上聞くわけにも行かなかったよ』」。因みに、『六の宮の姫君』(芥川龍之介著、新潮文庫『地獄変・偸盗』所収)は、私・榎戸の好きな作品である。

芥川が言った「キャッチボール」とは、どういう意味か、なぜ、こういう言葉を口にしたのか。その裏に隠された謎を解こうと、私は『六の宮の姫君』を調べ始めた。そして、芥川の種本である『今昔物語』へと進んでいった。

【注意!】この先はネタバレになるので、結末を知りたくない人は読んではいけない。

キャッチボールというからには、当然、相手がいたはずだと思いつく。キャッチボールの相手になりそうな人物を探していき、紆余曲折を経て、芥川が「兄貴」のようだと言っていた菊池寛に辿り着く。そして、菊池の短篇『頸縊り上人』を探し当てる。この短篇の種本は『沙石集』である。

遂に、私は「キャッチボール」の謎を解くことができた。鎌倉時代の僧・無住の『沙石集』に反発した菊池が『頸縊り上人』を書く。『頸縊り上人』に反発した芥川が『六の宮の姫君』を書いたのである。親しい友人ではあったが、文学観の異なる菊池と芥川の間でキャッチボールが行われていたのだ。

米澤のみならず、私・榎戸にとっても、本書は大切な一冊となった。
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No.22:
(4pt)

関心する程の情報量!

とある作家のインタビューから本書を知った。

参考までに読んでみたら、驚くほどの情報量に圧倒された。
本当の読書家は確かにいろいろ読んでいて、且つ、よく覚えているものだ。

芥川氏の本は、それほど読んでいないので
内容的なものについては、引用に頼るしかないのだが、
好きな分野にのめり込んで謎を解決していくのは、それだけで楽しい事だと
読んでいるこちらも躍動感を感じる。
更にそれが本になるのは作家冥利というものか。

シリーズ一式を揃えたので最初のシリーズから読んでいく予定。
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No.21:
(5pt)

推理小説の範疇だけではないですね。

芥川が書いた経緯が興味深く読め推理による展開が面白かった。こういう書き方があるのかと新発見でもありました。
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No.20:
(5pt)

文豪ミステリー、引き込まれました。

はじめて北村薫氏の本を読みましたが、とても良かったです。文豪をめぐるミステリーということで、どんどん引き込まれていきました。実は、芥川龍之介も、菊池寛も、とっつきにくく暗い印象で読んだことありませんでした。この謎解きを読んで、断然読んでみたくなりました。こんなに深く、ひとつの本、または作家を探求していくいわば研究を、読者の興味をひくように、身近なストーリーで書いてくれて居て、読みやすかったです。すでにシリーズ4作目とのことで、人気があるのですね。他の作品も読んでみます。とても勉強になりました。
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No.19:
(4pt)

がっつりと濃い、ガチの芥川龍之介文学論

「日常の謎」ムーブメントを巻き起こした「円紫師匠と〈私〉」シリーズ中の一作。
これまた「日常の謎」モノの連作短編だと思い込んで読んでみたところ……ぜんぜん違うやん!
卒業論文を書くため、芥川龍之介作『六の宮の姫君』の成立の経緯について調べることになる〈私〉。ホントにただひたすら調べるだけ!
それも奇矯なアイデアはいっさいなし。がっつりと濃い、ガチの文学論。
いったい本書を小説で書くような必要があったのか? という気がしないでもないのですが、おそらく、小説の形で書かないことには読者に読んでもらえないという判断なのでしょうね。おなじみの円紫師匠や正ちゃんも登場しますが、ファンサービスの顔出し程度の出番。「日常の謎」だと思って手に取ると痛い目を見る、読者を選ぶ一冊であります。
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No.18:
(5pt)

面白くてびっくり!

凄く面白かったです。内容が内容なので、芥川を中心としたあの時代を彩った才能豊かな人々のやり取り含め文学というものの奥深さを感じ取れました。作者さんは本当に博識です。ラストには、ううっと唸らされました。芥川の時代、文学の時代は素敵ですね。二回、三回と繰り返し読みたいお話。自信を持って人に勧めたいです。
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No.17:
(5pt)

芥川龍之介はなぜ。

主人公である大学生の「私」が、
探偵役である噺家・春桜亭円紫と
日常の謎を解き明かす人気シリーズ。
人が死なない推理小説として有名でもあります。
今回の謎は、芥川龍之介はなぜ、
短編 『六の宮の姫君』を書かずにいられなかったのか?
「あれは玉突きだね。...いや、というよりはキャッチボールだ」という
芥川のセリフを発端に始まる主人公の文学的探索は、まさに思索と発見の繰り返し。
盟友・菊池寛との関係や『今昔物語』、『沙石集』との結びつきなど、
ひとつの短編の背景には思いもよらなかった世界が広がっていました。
本編中、「何ごとかを追求するのは、人である証に違いない」とありますが、正に。
面白いのはもとより、本を読むことが何より好きな僕にとって
「本という海」の深さに目が眩む思いがした1冊です。
この秋、何を読もうかな...と思っている人、
そしてちょっと文学好きな人はぜひぜひおすすめです。
読後、目の前の世界が少しだけ美しく見えますから。
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No.16:
(4pt)

よくぞ出版できました(良い意味で)

読み始めるまでここまで込み入った話とは思いませんでした。
「六の宮の姫君」をめぐる探求は、勉強が楽しい時のような、読んでいる側も知的エネルギーを消費する、不思議な本でした。
普段の読書とは違う体験ができましたが、苦手な人もいるかもしれませんね。
本書は卒論と絡んでいますが、卒論としては情熱的で格段によく調べてあるけれども、学術的な価値はそれほど無いのかもしれないと思います。
でも、そんなこと気にしないで、主人公と一緒に本の虫になりましょう♪
作者の異色のたくらみに、感心しきりです。
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No.15:
(4pt)

知的好奇心を満たす文学ミステリー

『空飛ぶ馬』『夜の蝉』『秋の花』に続く「円紫師匠と私」シリーズの4作目。
北村薫のミステリーは、殺人事件など起こらないのに本格的な推理仕立てになっているからこそ人気があると思っています。
国文学専攻という「私」の探究心には感心します。大学の先輩、円紫師匠の博識ぶりにも驚かされますが、芥川を真正面から取り上げてミステリーにした北村薫の勇気を買いたいと思います。
本書は3回目の通読になります。初出直後は文学評論や文学史の解説という風変わりな展開にいささかついていけなかったわけですが、その後時をおいて再読するとこれほど凝った展開を構築した作者の手腕と知識を評価しないわけにいかないでしょう。
芥川を取り巻く大正時代の文学界の交友関係から浮かび上がる「あれは玉突き・・・いや、キャッチボール」という言葉の意味の面白さ。
往生絵巻から題材を得た「六の宮の姫君」執筆の経緯は、大正時代の文学界の潮流も浮かび上がらせました。北村薫の早稲田大学第一文学部での卒論のテーマが芥川と菊池ですので、本書のベースは作者の卒論の執筆過程からすでにあったということになります。
芥川を取り巻く人々の作品も含めて、丁寧に原作を探し、交友関係の確認のため、往復書簡を全集で確認する作業など論文作成の鏡ともいえます。
この文学の謎を掘り下げていく過程が知的好奇心を満たすわけですが、一方で文学史の論文のように感じられると離れていく読者もあるでしょう。読み手を選ぶ作品でした。
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No.14:
(5pt)

円紫さんシリーズでは最高傑作

 芥川の「六の宮の姫君」についての解釈の仕方が斬新だった。こんな読み方もあるのか、という本当に新鮮な驚き。読書好きの「私」を主人公にした設定が最高に生かされていて、読んだ後はしばらく呆然とした。で、芥川はほとんど読んでいるが、なぜか菊池寛は読んでいないという、目をそらし続けいてた厄介な事実を、改めて突きつけられたんだよね。実は、いまだに目をそらし続けている。何だか踏み込んではいけない領域のような気がするんだなー、何でだろう。
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No.13:
(4pt)

菊池寛が読みたくなる。

円紫師匠と私が出てくるシリーズの4作目。今回の謎解きは芥川龍之介作「六の宮の姫君」をめぐる「玉突き」「キャッチボール」という発言から始まった。
 少ないヒントから芥川の友人菊池の作品や手紙、はたまた同時期の作家たちの言葉を次々読んでは核心に迫っていく。途中、自分は一体何を読んでいるのか判らなくなるほど、文学の話が続く。これはもう、芥川、菊池のファン、文学ファンには面白くてたまらない一冊。
 ただ作家の作品を読むだけでなく、その時代の作家同士の繋がりや全集の編集者による違いなどなど。文学の別の楽しみも教えてくれる一冊だと思う。
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No.12:
(5pt)

すばらしい、書誌学ミステリ

 芥川龍之介が自作『六の宮の姫君』をさして「あれは玉突きだね・・・いや、というよりはキャッチボールだ」と表現した言葉の謎を巡るミステリーです。 どういう経緯で生まれた作品なのか、誰とのキャッチボールだったのか、「私」がその謎を追って、奔走します。
 恥ずかしながら、芥川の作品というのをきちんと読んだことがありませんでした。だから、彼の生い立ちやらバックグラウンド、自殺に至る経緯なども全く知りませんでした。それでも、全く退屈せずに作品全体を楽しめました。これはひとえに、作者に筆力によるものでしょう。知らない人間でもこれだけ楽しめるのですから、芥川に慣れ親しんでいる方なら、なおさらおもしろいでしょうね。
 人が死ぬわけでもなく、犯罪者が出てくるわけでもない、だけど立派なミステリー。基本的には、古本屋や図書館で古い本やら雑誌やらを調べる、これだけの行為の中からこんなにすばらしい「推理」を組み立て、一つの作品に仕上げてしまう、北村薫という人はすごい人だと改めて思いました。こんな”知的な”ミステリー、なかなか今の日本になかなかないでしょう。
 これを読んだおかげで、芥川のみならず、菊池寛など、同時代の作家の作品も手当り次第に読んでみたくなりました。
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No.11:
(4pt)

文学の向こう側を覗く

芥川龍之介の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞の謎に迫るミステリー。
というと、「ダヴィンチコード」のような謎解きを想像しますが、本書は、そうした派手な展開とは無縁です。しかし、面白くない訳ではありません。むしろ、非常に面白い!知的好奇心をくすぐられます。
謎解きに使われるのは、図書館に行けば見つけられそうな本ばかり。そこにちりばめられたヒントから、近代文学の巨匠たちの心理に迫っていくのは、純粋な学問的な興味をそそります。
本来学術的な論文になるような内容を、独特の透き通るような文体でエンターテイメントに仕上げてしまう、北村さんの筆力に脱帽です。
血なまぐさい殺人事件や、鮮やかなトリックもいいですが、本書を読めば日常の中にミステリーの種はいっぱいあることが分かります。
ミステリーの枠を拡げる作品。近代文学に興味がある方はもちろん、基礎知識が中学校の教科書程度でも十分楽しめます。おすすめ。
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No.10:
(5pt)

思わず読みたくなる読書案内

 「誰もが毎日、何かを失い、何かを得ては生きて行く」第一作目では大学一年だった「私」も卒業を控えこの作品では、卒論にてこずり始める。彼女が卒論で取り上げるのは「芥川龍之介」そんな彼女はバイト先で芥川龍之介が「六の宮の姫君」という作品について述べた不思議な言葉の謎に心を奪われる。「知りたい」という気持ちが研究の、そして学問の第一歩なのだと改めて思う。本来、卒業研究とはこういうものなのだろう。芥川、という偉大な作家に対して、そして彼が残した作品に対して作者の愛情が存分に伝わってくる。勿論、作者の愛情は主人公「私」にも向けられる。一歩ずつゆっくりと大人になる彼女は、様々なことを受け止め自分の中で確実に消化し、経験として蓄積していく。自分のペースで確実に歩む彼女は周囲の人々だけではなく、様々な本から多くのことを吸収していく。彼女が読書している様子を読んでいるとその作品にまで手を伸ばしたくなる。この作品は良質の読書案内でもあるのだ。
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No.9:
(4pt)

芥川を知ると更におもしろさが増します

「六の宮の姫君」は終始「芥川龍之介」がメインなので1度読んだときは、ハッキリ言って難しくて面白いとは思えませんでした。最近「朝霧」が出て面白かったので再度「六の宮の姫君」に挑戦。偶然ですが、最近「芥川」の本を何冊か読み、後書き等で芥川の人生なんかも読んでいたので、「六の宮の姫君」を面白く読むことが出来ました。「芥川龍之介」に興味を持って読むと楽しめると思います。この本が幻で終わった北村薫氏の卒論というのがビックリでした。
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No.8:
(5pt)

文学部必読書!

北村薫作品の中で一番好きな作品です!ミステリーとしての出来はもちろんのこと、芥川龍之介に焦点を当てながら進む物語は昭和文学史の理解も助け、楽しみながら勉強できます。文学部の人には必読です!円紫師匠の出番があんまりないのはちょっとさみしいですけどね。
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No.7:
(5pt)

真面目で想像力豊かな学生としての「私」

 「謎解き」が、ある説明されていない問題に対して、一定の手続きに乗っ取り、文脈を調べ、仮説を立てて証拠を集め、証拠と文脈を繋ぐ環を想像力を駆使して事実の一角に迫る事とすれば、この点でアカデミズムとミステリは非常に酷似している。 「六の宮の姫君」を通じて行われたという「キャッチ・ボール」という老大家からのヒント。「私」はこれを追う中で、文学史上対照的な軌跡を描いた芥川と菊池の互いにない、ベクトルの異なった鋭敏なものを深く尊敬し合う関係、そしてそれ故に離れていく互いの運命を浮き彫りにする。そして彼らの生きた大正・昭和初期という時代、文学がメディアの最先端として躍動力を持った時代を、稠密な文体の中に哀惜を孕んだ対象への愛情を載せつつ見事に描き出した。 文学部の真面目な学生の卒業論文が持てる稠密さと、「私」という若き女性主人公の役割が持てる瑞々しく繊細な感性に載せた筆致が見事に融合している。エンターテイメントとしても、「六の宮の姫君」解釈の一例としても、大正・昭和文学史に対する一見解としても、他ジャンルである文学部の専門的な研究スタイルの一手法を追体験できるという意味でも、多層的に豊かに楽しめる逸作だと思う。
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No.6:
(4pt)

こんなミステリーもありなのだ。

卒論を『芥川』に決めている私は、バイト先で老作家・田崎先生から芥川が『六の宮の姫君』について「あれは玉突きだね。……いや、と言うよりはキャッチボールだ」と語った言葉を聞きその謎を追う。それは興味深い芥川論になっていく。私は、円紫さんの助言によりキャッチボールの相手を志賀直哉・谷崎潤一郎・佐藤春夫・菊池寛としぼりこみ推論を重ねていく。その過程が面白く読み応えがある。そしてそれは、最後に芥川の死につながる。そこで、おっ、やっぱミステリー!と思わされる。また、作者が調べ読み込んだ資料を如何に用い、『六の宮の姫君』を構成したかを推理して読めば二重の面白さが味わえる。
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