(短編集)
遠い唇
- 和菓子 (12)
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久しぶりの北村作品、『円紫さんと私』シリーズ以来の長年のフアンで著者の作品は欠かせず読んできたはずなんですが、この本は読んでいませんでした。ブログアップは『中野のお父さん』以来でしょうか。 7編の短編集ですが、本格的ミステリーは、「続・二銭銅貨」と「ビスケット」の二編、あとの5編は軽いタッチの短編ないしは掌編というところでしょうか。 形式は様々でも上品で優しくしみじみとした情感に溢れていて、懐かしい北村ワールドが味わえました。 巻頭の「遠い唇」や「しりとり」は俳句の話も出て来て、俳句愛好者の私には嬉しかったですな。 簡単に各短編につきコメントしておきますと 「遠い唇」 本の題名にもなっていてちょっと思わせぶりな「遠い唇」。 今は大学教授の主人公が同僚との俳句の話から、学生時代、ミステリークラブの1年先輩であり姉と慕った女性から届いたアルファベットで綴られた暗号もどきの文面の葉書を再読し、驚きの発見をする。この暗号もどきの文章については、主人公が先輩に聞いたとき<何でもないわ。―――-いたずら書き>と、先輩は唇を硬くして語っただけだったが。 私が思うに、主人公はミステリークラブの一員であったのだから、このコーヒー銘柄尽くしの比較的簡単な謎を解くことができたはずだと思うのですが、まことに残念で切ない気持ちです。 「しりとり」 作家の私が編集者の女性から「しりとりや駅に かな」という俳句の謎解きを頼まれる。俳句は高校の国語教師であった亡夫が、俳人の妻に残したもので和菓子の黄身しぐれの包み紙に書き残したものだった。この謎めいた俳句には、二人が初めて知り合った、高校生時代のあるしぐれの一日の青春の出来事が読み込まれていた。 単なる謎解きに終わらない文学的情感に溢れた、これぞ北村ワールドという味わいの素敵でお洒落な短編。 「パトラッシュ」 パトラッシュとは、なんのことかと思ったら、児童文学の名作『フランダースの犬』の老犬の名。美術館の広報という多忙な職務を担当している女性が、同棲中の男を「パトラッシュ」と名付け、ストレスを感じた時に叫ぶんですな。 そして、ある日。パートナーの男性に「私のことをクレオパトラと呼んでいいよ!」と甘えていう。もう勝手にしろと読者の私は言いたくなる。 どうでもいいようなありふれた若い男女の日常生活の一齣を切り取った掌編ですが、フェミニンな北村氏はほのぼのとした感じの短編に仕立てています。 「解釈」 家族団らんの外食後、小さな書店に立ち寄った、父、母、高校1年生の娘。話題にし手に取ったのは、『吾輩は猫である』、『走れメロス』、『蛇を踏む』(川上弘美)の本。 地球探索に来ていた宇宙人の情報機関がその三冊の本を物体コピー機を介して円盤内に持ち込む。夏目漱石と猫を同一にしたり、突飛にしてハチャメチャ、奇抜な解釈をし始める。 落語好きの北村氏の一面が出たSFちっくなユーモアたっぷりの異色の短編。 「続・二銭銅貨」 大正時代の江戸川乱歩の出世作で日本での最初の本格探偵小説と言われる『二銭銅貨』に対するオマージュと言うべき作品。 『二銭銅貨』では、トリックに使われた贋の二銭銅貨の所持者は秘密扱いになっているんですが、著者の北村氏は、この二銭銅貨の所持者で、小説のネタを持ち込んだ人物を、江戸川乱歩が訪問するという設定で、この「続・二銭銅貨」の物語を作った。 謎解きの本格ミステリー派の重鎮らしい著者のチャレンジ精神の現れた作品で、とくに二銭銅貨に仕組まれていた暗号トリックが、「南無阿弥陀仏と点字の組み合わせ」でなく、本当は「八卦・四象とモールス信号」だとの話は興味深いものがありました。 「ゴースト」 巻末の解説者の天野慶(歌人)によれば、この短編は『八月の六日間』の主人公の心を描く習作だということですが、やり手の女性編集者で、一時同棲していた男性からは「菜の花のように元気」だと言われたこともあるが、実はストレスに悩ませられ、神経過敏になり昔のテレビのゴースト現象のような錯覚にしばしば襲われる女性を描いた短編。 この作品も、著者が仕事柄よく接する女性編集者に向けての応援歌だと思いました。 「ビスケット」 この短編に出てくる探偵の巫弓彦と筆記者の姫宮あゆみは、『冬のオペラ』の主人公たちとのことですが、『冬のオペラ』は未読でした。 この二人、特に姫宮あゆみにはどこかであったような気もするんですが。 ともかくこの巫弓彦は「人知を超えた難事件を即解決」という看板を事務所に掲げるほどの名探偵。今回も死者の指のダイイングメッセージを香道の「源氏物語」のマークを基に犯人を割り出してしまう。 著者の謎解きのトリックには、俳句や占いの八卦、香道が出て来たり多彩で優雅で楽しいですね。 | ||||
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名手・北村薫の短編集である。 ちょっと毛色が異なる7編が収録されている。それぞれ味わいが違う。なかなか面白い構成だと思う。 個人的には冒頭を飾る「遠い唇」にすっかりやられた感じ。提示される謎自体はまあ良いのです。学生が誰かをだまそうとかそういう意図じゃなくちょろっと仕掛けたものなので、これで良いのです。でも、ふとしたことで長年の謎が解けて、それで?いやしかし?という余韻。というより残留思念にちかい何か。う~ん。北村だけに軽い筆致だが、案外に重い。個人的にもこういうのはずしんと来る。考えさせられました。 もちろんほかの6編も楽しめます。巻末の解説その他が充実しているのも、この種のものにしては丁寧ですね。 すっきりした読後感でした。 | ||||
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もはや、匠の域に達した、著者の至芸が楽しめる短編集。 「その時」に分からなかった「謎」が、長い歳月が流れたあと、 ふっと、その「謎」が氷解された瞬間の、なんとも云えない深い味わい。 一篇一篇、とても優しく、こころ温かい読後感に浸ることができた。 ネタバレは避けるが、なかには謎が解けた瞬間、涙腺が緩んだ短編もあり、 短いながらも、確かな満足感のある一冊だった。 なのに、どうして☆みっつなのか?というと、北村薫さんなら、もっと凄い傑作が書けるのを知っているから。 『盤上の敵』や、円紫さんシリーズの『秋の花』などの、ガツン!とくる傑作を、また読ませて頂きたいので、 この作品に☆みっつ以上はあげられないわけです。 | ||||
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ミステリー短篇集、初恋のように淡い雰囲気の作品もある。『ゴースト』は菜の花に重ねて、元気そうな女性のいっぱいいっぱいの姿と、隠された心の痛みが描かれる。 文体は短く切るような形で、『パトラッシュ』はどこかにいそうな女性の孤独を満たすオトコとは、大きな頼れる犬のような存在なのかもしれないと思わせた。 | ||||
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時を経てまた会えた、という喜びを感じました。 円紫さんと「私」にもまた会えたらなあ。 | ||||
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