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空中庭園
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空中庭園の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.05pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全91件 21~40 2/5ページ
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このところいろいろな小説やエッセイを読んでいます。家族の中でも母と娘。ここでも母と娘が登場します。明るくて、あけっぴろげで隠し事のない家族という設定だったはずなのに、読んでいけば秘密がいっぱい。言えないこと、分かり合えないこと、言いたくないこと、言ってはならないこと、家族ってこんなものを互いにたくさん抱えているのでしょう。なんとなく心が痛みます。この物語には家族それぞれが持つ痛みが、描かれています。とても柔らかな表現なのですがやはり悲しい。辛いものです。各章ごとに主人公が変わるので、最初理解に苦しみました。でもそれがかえって効果的である気がします。夫婦、親子、姉と弟、愛人、祖母、友達、それだけの人で描かれているのですが、内容は多種多様、心に痛みを抱えていて家族の中で分かり合えない悲しみを感じるのです。これはごく普通のどこにでもある家庭、家族なのでしょうね。 | ||||
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角田氏の著書の中では少し重いめで、毒が含まれた小説です。表面上は「隠し事なんかなにもない」いい家族ということになっている京橋家。会社員の父親、パート勤務の母親、高校生の娘と中学生の息子。登場人物は他に、近隣に住んでいる祖母、そして父親の愛人2人・・・。けれど、「隠し事なんかない」と信じているのは母親だけで、あとの3人はそんな自分たちの家庭をどこか皮肉な目で見ています。彼氏とラブホに行ったり、援助交際みたいなこともしている娘、学校ではみんなに無視されている孤独な息子、妻にできちゃった婚に持ち込まれて流されるように今まできてしまったことに、ずっと釈然としない思いを持ち続けてきた父親は、学生時代からの彼女と、最近知り合った若い彼女と、二人の愛人の間を綱渡りしています。 いい家庭、暖かい家族を一生懸命作ろうとしている母親も、実は実母との葛藤を抱えています。思ったことを何も考えずそのまま口に出してしまう考えの足りない実母の態度に苦しみ、憎み、早く実家を脱出しないと母親を殺してしまうとまで思いつめた、それでも心のどこかで母親に認めてほしい気持ちが捨てきれない、最近注目されるようになってきた母娘のむずかしい関係もよく描かれていると思います。 舞台は、関東のどこからしい典型的な地方都市。この町の無機質な描写がまたリアリティがあっていいです。駅、田んぼ、その中に建つ建物群は、かつては明るい将来と希望ある生活の象徴だった、そんな生活ができるはずだった団地、近隣の住民がそこで何もかも用を足せる巨大ショッピングセンター、コンビニ、大きな病院と、そこあるのに見て見ない振りをされているラブホテル街。全国どこへ行っても、同じような町並みがあるので、なんだか既視感がすごいです。 この小説を読んだ人の感想は、大雑把にふたつに分かれるのではないでしょうか。 「これってよくある話だよな。実際の家族はこんなものかもしれない。」と、醒めた目で淡々と受け入れ、肯定も否定もしない。 または、「こんな家族だったら怖い、いやだ、そうでないことを祈る。もしそうだとしてもまだ希望はあると思う。」と、否定の気持ちと共に、結末に明るい希望をなんとか見出そうとする人。これは、いわば小説中の母親に近いと思います。個人的には、自分は前者のタイプです。 日本は平和で、たとえば援助交際している娘はいたって普通の子だったりするし、いじめにあっている息子がみっともなくバカということもない、浮気しているお父さんも別に悪人ではない、独断的な母親も、人の気持ちがわからない祖母も、根はいい人だったりする、みんな犯罪者でもなんでもない、だから余計に始末が悪いということもあります。それぞれが自分の気持ちや事情を持ち、どうしても折り合えない部分もある、それでも一緒に暮らさねばならないなら、見て見ないふりをすることも、精神衛生上必要になってきたりします。100%清く正しく美しい家族なんてありえない、そういう現実が淡々と描かれているのではないでしょうか。 角田さんの小説は結論めいたものは出されないことが多いのですが、それは結局、人生や生活というものは、映画のように起承転結ハイお終いにはならず、ただただずっと続いていくものだよということを現しているのかもしれません。 石田衣良氏のあとがきが本当にうまい。名文です。 | ||||
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私は家庭を恐れている。 おそらくこの先家庭は持たないだろう。 そう、ミーナのように。 何事もつつみかくさずをモットーにされた京橋家。 一章は長女マナ。 普通の女子高生で多少の勘の鈍さがこれからも彼女を生きやすくするだろう。 多分多少の違和感を感じつつも京橋家の秘密にたどり着く事は無い。 二章は父親貴史。 妻から種馬扱いで愛人からもチョロすけ扱い。 いい歳なのにふわふわしている。 三章は母親絵里子。 京橋家の全ての嘘は彼女から発端している。 母親との共依存状態を本人は自覚していない。 四章は祖母(絵里子の母親) 口の悪い老人だが本人の性格はそんなに悪くは無さそう。 子供に対しては言った事やった事覚えて無い。 五章は父親の愛人で長男コウの家庭教師ミーナ。 家族が秘密を抱えたまま死ねる事を経験し家庭を恐れる風来坊。 勘がよさそうにしているがコウに色々気付かれている事を知らない。 六章は長男コウ。 勘の鋭さから家庭の違和感を感じ学校にも馴染めない中学生。非童貞。 彼の目線が最後に来る事で京橋家の異常さが浮き立つ。 一番戦慄するのは母親と祖母の共依存状態。 絵里子自身は母親を「あわよくば死んでくれないか」と思うほど憎んでいるが、 と同時に絵里子の兄から言わせれば仲良くしている。 お互いがお互いの事を頭から離れない。 愛憎のミルフィーユ状態、あまりに熟成させて発酵してその腐敗が京橋家を支配していく。 きっと、京橋家のダンチの匂いは絵里子が買ってきた花の香りではなく腐敗臭であろう。 この家族がどうなるのか、きちんと明示する終わり方では無い。 元々角田さんの小説は初期になる程途中で尻切れトンボで終わっている。 だが、ここでは「家族はそれでも家族」という事でこの終わり方でいいだろう。 私の家庭は親がアルコール依存で分かりやすく機能不全家庭だった。 だが、そうではない分かりづらい機能不全家庭もあるのだと知らされる一冊だ。 家庭家族に悩んでいる人がいたら、どれか各章の主人公に思い当たる事があるかもしれない。 | ||||
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首都圏の(おそらく京王線沿線の)郊外の団地に住む京橋家のルールは「何事もつつみかくさず」。しかし、それは巨大なる秘密を隠すための仕組みであり、家族はそれぞれが「幸せな郊外家庭」を演じる役者のように振る舞う。その絶望的な空虚さと欺瞞。それは、顔面で幸せを表現していても、歩いている足下は細い綱の上で、しかもその綱は真っ暗で見えていないように不安定である。いつ、転げ落ちるのか。転げ落ちずに最後まで行くわけがないと思われるのに、それへの不安を無視して明日も同じ日常を続ける京橋家・・・ この小説は、家族と父親の愛人を加えた6人の視点から語られる。それぞれが、見る京橋家は、それぞれが微妙にずれている。そのずれが面白い。そして、最後まで真実が見えない。というのは、家族それぞれが、自分達の秘密を持っているため、家族の誰一人として全体像が見えていないからだ。しかし、6人の独白を聞くことができる読者のみが全体像、少なくとも6人が捉えている像を総合化することができる。そして、その全体像を知るとき、その闇の深さに、その荒涼とした風景にゾッとさせられるであろう。21世紀の日本版の『普通の人々』といっても過言ではない名作。私は大好きです。怖い話ですが。 | ||||
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家族とは、おままごとみたいなことを楽しめたらいい存在だと思っている。 だから、学芸会みたいな環境も、儀式的なふるまいも、 作者ほど嫌悪してない。 | ||||
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対岸の〜とか森に〜とかそれなりによかったけどこれはなんかつっこみたくなったので。 まずこの家族まあお父さんはその辺しらんけどおばあちゃんもふくめて家族全員友達いないってなんかおかしくないですか?異質な性格ってわけでもないし暗くもないし協調性とかそれなりにあると思うんだけど。。特にこの子供たち家庭教師の愛人とはすぐに仲良くなってるのに。。この中でしいていえば友達いなそうなのってこの愛人な気がするんだけど(魔性の女って感じで女に嫌われそうなタイプだし)そこは触れてないんだね。他もよんだけどこの人のって何故かやたら友達いない人多いですね。 しかも秘密が大したことないし。。お母さんとおばあちゃんとの確執ってあるけどその割には仲いいし、確執の理由ってのもなんだかね。このお母さん融通聞かないタイプなんだね。角田さんて文章はうまいと思うけど直木賞取れるほど実力ないと思うよ。 | ||||
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角田光代の作品には、平凡な日常に焦点をあてたものが多いと思う。この本も、決して特別な場面設定ではないが、どんどん引き込まれていく。 | ||||
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6人の視点から描かれた連作家族小説、それぞれ秘密を抱え危うい家族、学芸会のように 普通の家族を演じてる、それぞれの語り手によって明らかになっていく秘密の暗さ、重さ すぐれた文章は出来事や情景が目に浮かぶ描写がされてるというが、本書はまさにそのと おりで筆者の心の闇をあぶりだす手法は見事である。 | ||||
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プレゼント品でしたが喜んでもらい、また安価に購入できたのがうれしいです | ||||
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結論からいえば あまり好きな部類の小説ではない。 しかし 細やかな文章表現や構成の仕方は卓越していて 全く飽きさせない。 特に絵里子やミーナの親との確執や 絵里子が 自分の家族が何かしらの秘密を抱えてるのでは、と感じながらも必死に理想の家庭を作ろうとし また そう信じようとしている姿が 同じ主婦として 非常に共感できるものがあった。 構成として唯一残念に感じたのは 6人がそれぞれの視点で語ってる小説なので 前章での出来事が あとになって ああこういう事だったのか、とわかるシーンがあるのだが それがあまりにもストレートで もう少し含みを持たせてほしかったなと思った。 ただ この家族には最後まで着地点が見いだせていない。それはそれで良いのだが小説としてもどこに着地点があるのかよくわからない。 空中に浮かんだままのラストはなんとも後味が悪い。あくまでも個人的な好みなのだが。 | ||||
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あのね、お伽噺スタートでリアリティーがないわけだよ。学校生活で、ヤンキーでもない女子が女友達を全くもたずに森崎くんのような男子とだけつるむことは現実的でないわけだよ。まず、女友達を作って地盤を固めてから男子だろ普通は。いつも男子とのみいたら、反発力のあるヤンキーでもない限りいじめられちゃうよ?本人もそうゆうことを知ってるから、普通は大半と同じにしようとするもの。小説にはこういうことが多々ある。まぁ、そこは目つむって読むけど。 | ||||
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友達から勧められ、皆様のカスタマーレビューを見せていただいて から、気合を入れて読みました。「暗くて、立ち直れない作品」な のかなーと思って。「さあこい!読むぞ」みたいな。 あとがきの石田衣良さんも、「乾いた絶望」の作品だと述べておら れましたが・・・。 そんなに絶望なのかなあ? 確かに秘密が多く、互いに不満の多い家族ですが、それでも集まっ てなんやかやと、わざとらしい誕生日パーティをしたり、一生懸命 一緒に食事を作って食べて、集まっている。その体温・ぬくもり。 ウザイけれど一緒感。それこそが家族なのだなあと、苦笑半分の ほほえましさ半分で読めました。ちょっとホッとしました。 この作品で、一番救いのない絶望キャラとして描かれているのは、 メインの6名ではなく、マナをナンパしてきた「見るからに彼女 いない歴30何年の、まともにコミュニケーション取れない男」、 と、マナの父の独身の愛人、ミーナの父の独身の愛人。後者2人の 女性は、十年二十年も愛人を続けてきても、男は最後には家族の 方を選択した・・・という、報われない寂しさを抱えて、まさに 絶望を体現する登場の仕方でした。 それに比べれば、ともかく一緒に暮らしてくれる人がいて、外泊 や朝帰りもあっても、最後はなるべくそこに帰ろうとする、そう いう場がある人って、十分マシじゃないか。と思います。 逆に言えば、理想の家族なんて幻想の中にしかない、どこもこんな モンだったりするよ!ということでもあり、問題だらけの家族関係 を生きている私には、絶望よりも希望が持てる作品でした。 | ||||
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角田さんは旅やエッセイ等、子供の手の届くところに何気に置いておいても安心な本。と思っていたので今回の本がそれらと異質なものでびっくりしてしまった。 文芸賞を取った作品ということもあって一度読んでみたかったのですが、ちょっと違ったかなー・・というのが本音です。 まず、父親の奔放さ。2人の姉弟の父でありながら、17年連れ添う愛人がいて、また今は20才そこそこの女と付き合っている。そしてそれはのちに息子の彼女?のような存在にもなる。 それ以外にも一時期の女のようなのもいて、自身も早くに結婚し、早々に子供が出来ている。 おそらくもう30台後半なのに、おそろしく甘え症。彼女に甘える時の言葉が幼児言葉。 でも約束の場所を決める時に「ま、いーや、わかった。ディスカバのスタバ、あ、なんかこれヒップホップ調?ディスカバのスタバ、いければやれば、くればーおさらばー」には呆れながらも爆笑してしまいしたが・・・。 こういうのに限って外ではいっぱしの顔してるんだろーな。 でも普通のサラリーマンで長らくの愛人と彼女+α?と繋がっていけるというのは、家のローンを考えても、外には子供はいない、ことを考えてもやっていけるの?って単純に思ってしまいます。 動物園での一コマでも、小さな淡いピンクのマナ、同じく水色のコウ、と2人ぴょんぴょんしている 回想で「すごく可愛かった」と振り返りそのまま口にするあたり、しかもミーナはこんなことは気に しない。と思っているあたり阿呆な男だと思う。 このまま書いていくと長くなりそうなので他の家族については割愛しますが、全体に暗くなることも 重くなることもないので読みやすいのは読みやすいです。 | ||||
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マンション住まいの4人家族とプラス2名、合計6名による、それぞれの視点で描かれた、「家族」の物語である。一見、どこにでもある家族構成、一家団欒といった赴きながら、家族の中ではウソは付かないというルールに逆行して、それぞれが、どんよりとした黒い秘密を持っているという話。それぞれの闇の暗さにギョッとしながら、読み薦めていくと、なるほど、こういうカラクリなのねと、登場人物と、読者のトラウマの共感の中で、なんだか、ユーモラス、滑稽にも感じられる。状況は何一つ改善しないんだけれど、読者のトラウマを見事に汲み取り、登場人物と「恥」を共感したような第三者の視点で見せることで、なんだか、ちっぽけな問題なんだ、ということを思わされて、救いのようにも感じられた。 作者の角田さんをナショナルグラフィックのサイトで、少し知った。前から少し気になってはいたけれど、ナカナカの変わり者である。女一人で、発展途上の国をあてもなくブラブラするかと思いきや、旅が怖いとおっしゃる。度胸があるやらないやら、なんだか興味が出てきての一冊だ。次は「対岸の彼女」あたりを読んでみたいところ。 本作ではいがいとエロというか、性の描写があって、作者の雰囲気とのギャップにもびっくりした。創造された小説だからこそ、作家との落差も読みどころに入るのかもしれない。作者の本性と作品と落差。 本作のターゲットがどのあたりにあるのか、女性層でもこういった内容で受けるのか、マーケティング的なことも気になる。 | ||||
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「秘密を持たないようにしよう」という家族が、実は全員秘密を持っていて、それをそれぞれの視点から書いていくという話。 一見、怖そうとかグロテスクとか、感じるかもしれないが、そんなことはない。 家族が家族としての役割を演じ、団欒を演じるということはどんな家族にもあることで、自明の理。 それを書いて何かを「あばいた」ように見せかけては・・、新人賞作品ならまだしも直木賞作家のやることではない。 家族がそれぞれに秘密を抱えている、過去がある、背徳がある、これは現代においてはごく当然の「前提」であり、この作品は長々とその「前提」を書いているにすぎない。社会的動物である人間は誰しも、本心から行動する場合もあれば、そうしたくなくてもそう行動することもある。家族に見せる顔とキャラクター、会社の人に見せる顔とキャラクター、一人になったときの顔とキャラクター、皆それぞれ異なっているのが普通で、それらすべてをひっくるめてその人間である。 (以下ネタばれ含む) 作中に、長男の家庭教師で、父親の愛人である女性(ミーナ)が、当該家族の誕生会に参加して、普段の別の顔を知る父親や息子の振る舞いに違和感を覚える場面があるが、果たしてこんなことを、それもこの章のクライマックスのように書く必要があるだろうか。とりたてて不思議なことか。 不倫している父親が楽しそうに家族サービスしていることは確かに違和感の対象かもしれないが、小説の根幹に来るような事象でもない(もしそれが主要テーマならその小説はかなり陳腐なものじゃないだろうか)。 娘から始まり、第二章の父親の章に入ったところで、小説の先は読めたと思った。最終章は息子の視点だろうと思っていたらやはり息子だった。 6人の視点で書くというのは凝っているようだが、安直にも思える。文体を書き分けられて作者は楽しかったかもしれないが、視点が6つあっても何ら小説のテーマは深まっていかない。「みんなそれぞれ色々あって色々抱えてるんだね」と感じるだけ。いたずらにページ数だけが過ぎる。 第6章でようやく、テーマの深化がわずかにあったようには思うが。 平凡な家庭や日常の風景を、何かつまらないものとか批判する対象のようにとらえる書き方を含めて、好きになれない作品だった。 | ||||
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隣の芝生は青い、と言われるけれど、 実は隣の芝生は人工芝だった・・・。 いや、面白い! この物語を面白がって読む私は、他人の不幸は蜜の味、と思っているのだろうか? と、少々、自己嫌悪に陥るほど楽しんで読ませていただきました。 いや、これは不幸、と呼ぶべきものではないのかも・・・? お父さん、お母さん、娘、息子。 お父さんの愛人とカノジョ。 お母さん方のおばあちゃん。 大型のショッピングセンター、 田畑の中を線路が走る風景。 インター近くの地方都市の南向きの団地。 壊れてしまいそうな、もろいものの上に、 それらの関係は成り立っています。 「何事も包み隠さず」という家族のルールの下、 ラブホテルでの営みで妊娠して、あなたが生まれた、ということまで語る家族にあって、 それでも、皆、そう、皆、 家族といえども他者に、自分に起きている全てを語るわけではなく、 開け放たれた玄関の中にある、 それぞれの部屋に、内鍵のかかる部屋を持っている。 この物語の中で語られるそれらは、 少し、デフォルメされて描かれて入るけれど、 どの家族も似たりよったりであろう。 しかし、家族が揃うリビングの中ではそれらを見せることなく、 家族の一員を演じている。 書いてしまうと、なんだか切なくて救いの無い話みたいだが、 そうではない。 リビングでの、演技のような振る舞いの裏には、 家族ならではの愛があるのだ。 それぞれが、懸命に生き、賢明に振舞っているのだ。 奥さんに浮気がバレないようにするのは、愛の一種だし、 親に、実は私は彼氏とホテルに行ったなんていわないのも、愛ゆえだ、ともいえる。 この家族が、このあと、どうなっていくのか、 この子どもたちもまた、自分の家族を持ち、 また新しい家族の物語が紡がれていく。 家族という愛や、家族ゆえの面倒すら愛おしくなる。 シニカルに見えるし、 コミカルでもある。 でも、ここにあるのは愛の物語なのだ。 | ||||
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クニ河内さんの『切狂言(芝居小屋の名役者)』という楽曲があります。 (ヴォーカルはジョー山中さん、ギターは石間秀機さん)。 本作はこの『切狂言』の世界観ととても近いのではないかと感じました。 http://www.youtube.com/watch?v=BGhSJhAvUsE 角田さんの文章、とにかく面白いので最期まで一気に読んでしまいました。 キーワードは<学芸会><逆オートロック>あたりなのでしょう。 でも、人間ってそんなに複雑なのでしょうか。 そんなに深い闇を持っているものでしょうか? (描かれている闇は実はそんなに深くない気もする。。。。) 『対岸の彼女』ほど何か心に響くものはなかった。 読み終えた正直な感想です。 | ||||
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現代の家族を、その内面をよく描けている作品 だと思います。 隠し事をしない、をルールにしている 家族それぞれの視点から自分の秘密が暴かれる。 構成もよくできているし、読んでる者を飽きさせない。 しかし、どうしてもあることに引っかり、入りこめなかった のも事実だ。 それは、各人の視点から書かれる文章が、結局は小説家の 文章になっているところだ。 高校生が、中学生が、主婦が、サラリーマンが、やや馬鹿 そうな27歳の女が、さほど学があるわけではない老女が、 あんなうまい文章を書ける訳がないだろ、という突っ込みが 頭から離れないのである。 彼らが、小説家なみの知性や感性を持っているのであれば、 そもそも、このような裏表のある家族には出来上がっていない はずだ。 1人称で書かれる小説を読む場合でも、同じような疑問を 持つことはあるが、今作は、多角的な視点から書かれている だけに、より一層をこの疑問が際立つ。 いや、こんなことは読者は、気にしていないだろうし、 気にするのが間違っているのかもしれない。 この作品で、直木賞を逃した角田氏は、「対岸の彼女」 で受賞した。確かに、「対岸の彼女」の方がいい。 とはいえ、「空中庭園」も、佳作であるのは確かであり、 角田光代は、ディティールの人だなぁとつくづく感じる。 かなり知識を持った人であり、イタコ的に老若男女の心理に なりきれる才能もあるように思う。 同時代にこのような作家がいることは幸せだ。 | ||||
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『マザコン』を読んだ時にも思いましたが、家族ってなんだろう、母親ってなんだろう…。 他の方の感想を読むと、「家族ってこういうもの」的な意見も多く、我が家も端から見たらこんな感じなんだろうかと思うと、ゾッとします。 今まで、自分の家庭に対して疑問を抱いたことがなかっただけ、余計に。 それとも結婚して自ら家族を作る段階になると、考え方も変わるんでしょうかね? 基本的に不倫ものが苦手なので、「鍵つきドア」の章を読んでいるのは辛かったです。 私だったら、堪え性がないので、父親の秘密をあらゆる所で暴露してしまう気もする。 しかし、もし自分の父親がタカシのような男だったらと考えたら、軽く絶望したくなります。 いくらなんでも馬鹿すぎる…。 見ていてイライラするタイプの馬鹿です。 現実世界では、できればお目にかかりたくはない…。 | ||||
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多分世の中の家族ってみんなこんな感じなんだろうなぁと他人事のように思ってしまった。 それぞれの独白にオチはなく、それ故に、この先も延々こんな感じで この人達は暮らしていくのだろうなというのが感じられる。 ある時秘密がひとつ露見して、そこから崩壊が始まる・・・なんてのは実は幸せな事なのかもしれない。 崩壊すれば建て直しの策を練ることも見切りをつけることもできるけど、何もなければこのままなんでしょ? 気味悪いわぁ。 | ||||
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