方舟を燃やす
- オカルト (136)
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地方出身のバブル世代の公務員、境界知能の団塊世代の専業主婦──もし彼らが現代に生まれていたならば、おそらく社会的弱者として扱われていただろう。だが、当時の構造に守られたことで、自らを「一人前の人間」と信じて疑わずに済んだ。そしてその甘えた自己認識に安住するために、自分が全体の中の一部に過ぎないという現実を拒絶し、他者との関係性の中に居場所を築く努力を放棄し、やがて偏った思想に傾倒していく。 その精神構造こそが「方舟」であり、本作はそれを燃やすこと──すなわち、日本人に蔓延する“甘え”の構造そのものを断罪する試みである。 では、希望はどこにあるのか。 それは、誰かが与えてくれるものではない。自らの内から、意思の力で捻り出すしかない。 希望とは、完璧に構築された制度や信頼できる共同体が与えてくれるものではなく、不完全であっても人間が本来持つ善意を信じ、勇気をもって他者との関係性に飛び込み、自らの居場所を築いていくことによってしか成しえない──本作はその事実を、静かに、しかし確かな力で語りかけてくる。 現代の日本に生きる私たちにこそ突きつけられた、重くも鋭い必読の佳作である。 | ||||
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著者による『八日目の蝉』『紙の月』が代表作。原作を読まず、この二つの作品はドラマとして見た。この本を読みながら、ぼんやりと自分が生きてきた時代が浮き上がってくる。そういえば、あの時は、と思い出させる。雑誌の文通、口さけ女、ノストラダムスの大予言、連続幼女誘拐殺人事件、宗教団体のサリン事件、阪神淡路大地震、福島の東日本大震災、コロナ禍と続いていく。 本書の主人公は、柳原飛馬、1967年生まれ。山陰地方に生まれる。生まれたところは、銅山があり、赤い川が流れていた。その後、引っ越し、鳥取の砂丘の近くの小学校に通う。兄、忠士は優秀で、無線機(ハム)を自分の部屋に設置して、交信していた。父親は、おじいさんを尊敬していた。おじいさんは、地震を予言して、逃げることを勧め、本当に地震が来たのだった。人を助けて死んだ英雄だった。 「1999年に恐怖の大王が降ってきて、世界は滅亡する」という噂に、飛馬は興味を持っていた。 卒業旅行で、歩いているうちに吐いた女子生徒、美保が気にかかる飛馬。美保は、小学校では、ケロヨン、中学ではコックリさんとあだ名がつけられている。美保は、サリン事件が起きる前に、水道水を飲むなというメッセージをくれた。 飛馬の母親は病気で倒れ、入院し、手術を受ける。飛馬は、病院で噂を聞き、それが母親のことではないかと思い、母親の前で、泣いてしまうのだった。そして、母親は病気を悲しんで飛び降り自殺をする。飛馬は母親を亡くしたことの喪失感、心の空洞。さらに、自分の行動での罪悪感を抱えることになる。 1967年 高校を卒業し、製菓会社に勤め、結婚した望月不三子。子供はコト(湖都)ちゃん。ワクチンを受けたらいいのかどうかを悩む。不三子の進んでいく心の軌跡がわかりやすく丹念に書かれている。不三子は戦後生まれ、子供を授かったことで、マクロビオックの食事を教える講師、勝沼沙苗の食養論を信頼する。不三子は「幸福のおおもとには食がある」と納得したのだ。玄米食を実践し、白い食べ物を減らし、野菜を食べ、肉や魚を減らし、保存料や着色料にも注意する。夫にも健康であってほしいと玄米食を勧めるが、ほとんど箸をつけない。義母から、息子には「白米を食べさせて」と懇願される。免疫は食事から作られると思い、ことちゃんのワクチン接種をやめる。また、ことちゃんには、小学校の給食をやめ、弁当を持たせた。湖都の修学旅行がシンガポールで、麻疹にかかった。湖都はワクチンを打ってなかった。 飛馬と不三子の心の軌跡が丹念に描かれる。 不三子は、湖都から反発を受けることで、ショックを受ける。おとなしくいい子に育ったはずなのに、ファーストフードの店の前で、ポテトを食べたいと大泣きしたり、小学校の友達の家に行ってはお菓子を食べ尽くしたりしていた。不三子は、湖都の体のためを思って、食生活をマクロビオテックを実践していたはずなのに。そして、湖都は自立し、音信不通となる。 不三子は、ワクチンに対して疑問を持っていた。色々な噂が飛び交っていた。湖都はワクチンを打ったせいで、妊娠できない体になったと訴える。 息子の亮も成長し、そして結婚するが、ほとんど不三子のところには来なかった。不三子は孤独を感じていた。そこに、子ども食堂の催しに参加することで、やっと自分の居場所を見つける。 情報が溢れ、噂や正しくない情報が乱れ飛ぶ。そして、コロナ禍となり、ワクチンの問題がクローズアップされる。不三子は「夫の給料でのうのうと暮らしてきた、世間知らずのバカだと思っているんでしょう。こういう人がころりと騙されるんだろうな。」という。この言葉が、一つの重要なキイワードとなる。自分のやっていることが、正しいのか?それとも騙されているのか?その迷いの中に、人々は生活している。非科学的なことにさえも、惹きつけられてしまう状況。なんとも、不確かな時代に生きている。自分たちの既存の生活である『方舟』を燃やすしかないのかもしれない。 読みながら、家族って何なのか?そして、どう生きていくのかを考えさせられた本だった。 | ||||
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ここに書かれている1960年代から現代までの流行とかウワサ、社会現象、出来事は50歳代くらいのが経験してきたもので、取るに足らない出来事だけど、「あー、あの頃こんなことがあったなあ」と懐かしく感じるかもしれません。 すごいことが起きるようなストーリではありませんが、あの頃なんであんなものに夢中になったんだろう、でも楽しかったよなあ、と人生を思い返したい人には良い本だと思います | ||||
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偽情報を見破る難しさと、偽情報のために夫婦や親子の関係が悪くなってしまった家族が描かれていて、おもしろかったです。 偽情報か否かを知るためには、情報源が信頼できるか確認するとか、同じ話を複数の情報源で確かめるとかといった方法があります。 また、この小説では夫婦や親子の関係が疎遠になる原因の一つが偽情報ということですので、できるだけ正確な情報を知ることを心がけるとともに、夫婦や親子間で何でも話しやすいようにしておく必要があると思います。何でも話しやすくするためには、この小説でも描かれているように、相手の言うことをよく聞くことに努め、自分の考えを相手に押し付けないように注意したいと思います。ただ、どうしても譲れない場合には冷静に、また丁寧に話すしかないですね。 | ||||
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"信仰"と言えば、考えや行動を全てそこから導き出すようなイメージですが、"何を信じる"のかと少しトーンを抑えると、誰もが経験したことのあることだと思います。 2人の主人公は生まれも育ちも全く違うし、言ってしまえばただ交わっただけの全く異なる2つの人生なのですが、共通して軸としてあるのが「信じる」というテーマです。 何を信じてもいいのに、何を信じるかで周りの態度は変わり、歩みゆく人生も変わっていくのがじわじわと感じられる2つの人生を一気に生きた気持ちになる小説でした。 | ||||
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