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追憶のかけら
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追憶のかけらの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.89pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全70件 21~40 2/4ページ
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小説の中に戦時中の作家の手記がそのまま引用されており、入れ子構造になっている。また、それが重要なトリックになっている。 復讐のためならそこまで手の込んだ方法をとらなくても、同じように相手に打撃を与えられる方法はあるだろう,という点で、必然性に疑問が残るが、こういう形式に挑戦した作者のチャレンジ精神はすごいと思う。 | ||||
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良かった。自信をもってオススメできる作品です。ページ数も多く、手記も読みにくいけれど、じっくり読み解いて下さい。じっくり読めば読むほど、物語の衝撃も深みも増します。トリッキーなミステリー、家族愛のドラマ、両者のどちらとして捉えても秀作であるには変わりありません。良いです、非常に良い! | ||||
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良かった。自信をもってオススメできる作品です。ページ数も多く、手記も読みにくいけれど、じっくり読み解いて下さい。じっくり読めば読むほど、物語の衝撃も深みも増します。トリッキーなミステリー、家族愛のドラマ、両者のどちらとして捉えても秀作であるには変わりありません。良いです、非常に良い! | ||||
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貫井徳郎さんの作品です。いやー、複雑な内容であり、これはまさにプロの仕業と言えるかもしれません。大学講師を務める松嶋は一度だけの風俗遊びが妻にばれ、妻は3歳の娘を連れて実家に帰ってしまう。謝罪し、連れ戻そうとする前に妻は交通事故で命を失ってしまう。娘は同じ大学に勤める麻生教授とその妻が引き取り、ぎくしゃくした関係に陥ってしまう。自分の手で育てたい、それには世間で認められる実績が必要だった。そんなある日、松嶋のもとに戦後すぐの著名な作家の未発表手記が届けられる。この作家は自分が自殺する前に、その経過を手記にまとめていたのだ。60年前を遡る調査を依頼された松嶋は巧妙に仕掛けられた罠にはまっていく。過去と現在を結び付けて行く過程の中に主人公の松嶋が自殺した作家の佐脇とかぶっていくところがすばらしいセンスを感じさせられました。興味のある方は是非ご一読ください。お勧めの一作です。 | ||||
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貫井徳郎さんの作品です。 いやー、複雑な内容であり、これはまさにプロの仕業と言えるかもしれません。 大学講師を務める松嶋は一度だけの風俗遊びが妻にばれ、妻は3歳の娘を連れて実家に帰ってしまう。謝罪し、連れ戻そうとする前に妻は交通事故で命を失ってしまう。 娘は同じ大学に勤める麻生教授とその妻が引き取り、ぎくしゃくした関係に陥ってしまう。 自分の手で育てたい、それには世間で認められる実績が必要だった。そんなある日、松嶋のもとに戦後すぐの著名な作家の未発表手記が届けられる。この作家は自分が自殺する前に、その経過を手記にまとめていたのだ。60年前を遡る調査を依頼された松嶋は巧妙に仕掛けられた罠にはまっていく。 過去と現在を結び付けて行く過程の中に主人公の松嶋が自殺した作家の佐脇とかぶっていくところがすばらしいセンスを感じさせられました。 興味のある方は是非ご一読ください。 お勧めの一作です。 | ||||
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物語が二転、三転、四転する渾身の一作でした。 ものすごい物語を読ませられたあとで、それがまったくちがうと知らされる事実。 そして、さらにどんどんと謎は深まっていきます。 作家の手記から広がる謎。 膨大な仕掛けがほどこされていますが、あまりに仕掛けが大きすぎて、ご都合主義であった感はいなめません。 もちこまれた手記をまるで疑いもせず本物だと信用してしまったり。 主人公をバカにすることによって話を進めていき衝撃を出すというのは、少し安直だと思いました。 ふみさんを強姦した相手が最後まで罪を告白しない点も謎でした。 ここまで言ったのならこの先もいうだろう、という気がしましたし、まずそれより、復讐するためにお手伝いの女性を強姦するというのはかなり解せないですし、後味がものすごく悪いです。 佐脇を自殺においこむにはそのくらいのことをしなければいけなかったんだろうけど、それもご都合主義だと思いました。 ただし、何度もどんでん返しを受けたのは事実。 | ||||
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物語が二転、三転、四転する渾身の一作でした。 ものすごい物語を読ませられたあとで、それがまったくちがうと知らされる事実。 そして、さらにどんどんと謎は深まっていきます。 作家の手記から広がる謎。 膨大な仕掛けがほどこされていますが、あまりに仕掛けが大きすぎて、ご都合主義であった感はいなめません。 もちこまれた手記をまるで疑いもせず本物だと信用してしまったり。 主人公をバカにすることによって話を進めていき衝撃を出すというのは、少し安直だと思いました。 ふみさんを強姦した相手が最後まで罪を告白しない点も謎でした。 ここまで言ったのならこの先もいうだろう、という気がしましたし、まずそれより、復讐するためにお手伝いの女性を強姦するというのはかなり解せないですし、後味がものすごく悪いです。 佐脇を自殺においこむにはそのくらいのことをしなければいけなかったんだろうけど、それもご都合主義だと思いました。 ただし、何度もどんでん返しを受けたのは事実。 | ||||
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不思議な作品である。 貫井作品らしく、一つずつの場面には圧倒的な読み応えがあるが、全体を考えてみると、疑問点が次々と沸いてきて、個々の場面で湧き上がった感情の行き場がなくなる。 最たるものは、56年前に自殺した作家・佐脇依彦の手記だろう。旧字、旧かなづかいで書かれた圧倒的な迫力の手記で、これだけで独立した作品と言っていいほどの密度があるが、それには結局、主人公(国文学者)の研究者生命を奪おうとした「犯人」の悪意の手が加わっている。その悪意を前にして、手記そのものへの「感動」はどこへ行けばいいのか。 「犯人」の意図も疑問が多い。その悪意の強さからすれば、主人公の妻の事故死も、本当に事故なのか?、という疑問が当然に出てくるが、作中では誰も疑わないのが不思議。 もう一つの大きな問題は、主人公の魅力のなさである。少なくとも、国文学者として有能でなければ、話にならないと思うのだが、佐脇依彦の手記の疑問点にも気付かないのだから、読者として感情移入するのは難しい。 | ||||
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不思議な作品である。 貫井作品らしく、一つずつの場面には圧倒的な読み応えがあるが、全体を考えてみると、疑問点が次々と沸いてきて、個々の場面で湧き上がった感情の行き場がなくなる。 最たるものは、56年前に自殺した作家・佐脇依彦の手記だろう。旧字、旧かなづかいで書かれた圧倒的な迫力の手記で、これだけで独立した作品と言っていいほどの密度があるが、それには結局、主人公(国文学者)の研究者生命を奪おうとした「犯人」の悪意の手が加わっている。その悪意を前にして、手記そのものへの「感動」はどこへ行けばいいのか。 「犯人」の意図も疑問が多い。その悪意の強さからすれば、主人公の妻の事故死も、本当に事故なのか?、という疑問が当然に出てくるが、作中では誰も疑わないのが不思議。 もう一つの大きな問題は、主人公の魅力のなさである。少なくとも、国文学者として有能でなければ、話にならないと思うのだが、佐脇依彦の手記の疑問点にも気付かないのだから、読者として感情移入するのは難しい。 | ||||
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途中までは、「これはすごい小説だ!」と思っていたのに、尻すぼみでがっかりするミステリは沢山読みましたが、私にとって、この作品それらのがっかりミステリの筆頭格です。 竜頭蛇尾とは、こういう作品のことを言うのではないでしょうか。黒幕の正体と、その人間像が、あまりに陳腐なのに呆れてしまいました。 主人公を絶望の淵に追い詰めた恐るべき「悪意」の正体が、実に気楽な人物だった、というところにある種の凄みを出そうとしたのかもしれませんが、その試みは成功していないと思います。 終戦直後に綴られたはずの手記の文体がひどく現代風で、「作者も、昔の文体までは模倣できなかったのだろう」と思っていたら、ちゃんと種明かしがありました。でも、現実に作者は昔風の文体が書けなかったのではないかな。 女性が驚いた様子を表現するのに「固まった」などという表現を用いている時点で、ダメだなあ・・と。 ラストの大団円にも無理があると思います。女性として、主人公の妻があのような(夫にとって都合の良い)書き置きを残すということに共感できず、「ご都合主義」と強く感じました。あの書き置きは蛇足では? この作者の描く女性は、いつも魅力に欠けるというか、作者の都合のためのみに存在するようで、そこが非常に残念です。 ・・こういった次第で、結末に大いにがっかりさせられた作品ですが、途中まではかなり楽しませてもらったので、星は三つにしました。 | ||||
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途中までは、「これはすごい小説だ!」と思っていたのに、尻すぼみでがっかりするミステリは沢山読みましたが、私にとって、この作品それらのがっかりミステリの筆頭格です。 竜頭蛇尾とは、こういう作品のことを言うのではないでしょうか。黒幕の正体と、その人間像が、あまりに陳腐なのに呆れてしまいました。 主人公を絶望の淵に追い詰めた恐るべき「悪意」の正体が、実に気楽な人物だった、というところにある種の凄みを出そうとしたのかもしれませんが、その試みは成功していないと思います。 終戦直後に綴られたはずの手記の文体がひどく現代風で、「作者も、昔の文体までは模倣できなかったのだろう」と思っていたら、ちゃんと種明かしがありました。でも、現実に作者は昔風の文体が書けなかったのではないかな。 女性が驚いた様子を表現するのに「固まった」などという表現を用いている時点で、ダメだなあ・・と。 ラストの大団円にも無理があると思います。女性として、主人公の妻があのような(夫にとって都合の良い)書き置きを残すということに共感できず、「ご都合主義」と強く感じました。あの書き置きは蛇足では? この作者の描く女性は、いつも魅力に欠けるというか、作者の都合のためのみに存在するようで、そこが非常に残念です。 ・・こういった次第で、結末に大いにがっかりさせられた作品ですが、途中まではかなり楽しませてもらったので、星は三つにしました。 | ||||
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主人公はうだつの上がらない大学講師、松嶋。3か月前に別居中の妻を亡くしている。 愛娘は妻の実家に取られ、義父は松嶋の上司である教授麻生であり、娘を引き取るには業績を上げなければと思っている。 その松嶋のもとへ自殺した故作家の未発表手記が舞い込んでくる。これを元に文献を書き、世に認められれば愛娘を引き取ることができる! ただ、文献を発表するためには故作家の自殺の真相を解明するという条件がつけられる。 調査を開始した松嶋は徐々に真相に迫っていくが、共に自分を破滅させる悪意に引きずり込まれていく。 悪意を持った張本人はだれかを探していく経過がだらだら。最後にその人物が判明するが、なんでやねん!!っていうお粗末・・いや、結末。 動機がかなり苦しいです。その頃にはボリュームのある文庫が重く重く感じて、早く終わってくれないかなーという状態でした。 ひとつ、愛するべき登場人物がいなかったのも残念。 | ||||
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主人公はうだつの上がらない大学講師、松嶋。3か月前に別居中の妻を亡くしている。 愛娘は妻の実家に取られ、義父は松嶋の上司である教授麻生であり、娘を引き取るには業績を上げなければと思っている。 その松嶋のもとへ自殺した故作家の未発表手記が舞い込んでくる。これを元に文献を書き、世に認められれば愛娘を引き取ることができる! ただ、文献を発表するためには故作家の自殺の真相を解明するという条件がつけられる。 調査を開始した松嶋は徐々に真相に迫っていくが、共に自分を破滅させる悪意に引きずり込まれていく。 悪意を持った張本人はだれかを探していく経過がだらだら。最後にその人物が判明するが、なんでやねん!!っていうお粗末・・いや、結末。 動機がかなり苦しいです。その頃にはボリュームのある文庫が重く重く感じて、早く終わってくれないかなーという状態でした。 ひとつ、愛するべき登場人物がいなかったのも残念。 | ||||
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うおぉ。 個人的には貫井徳郎の傑作ぞろいの秀作の中でも最高傑作! 妻を事故でなくしたうだつのあがらない教授。 妻の両親に自分を認めてもらおうと、もちこまれた昔の作家の未発表の手記を入手し、 そこに隠された謎を解き明かそうとするが、実はそれは、仕組まれた罠だった・・ まずその作家の手記がすごい。 悪意に満ちあふれた罠にとらわれ、追い詰められる作家とその周りの人々。 作家が犯した罪とはなんだったのか?犯人は誰?いや、そもそも被害者は誰だったのか? 二重、三重にはりめぐらされた罠に翻弄される主人公に、いつしか引き込まれる。 そうして、現実にも、まるで手記の悪意がにじみでてきたかのように、 教授とその周りにちらほらと悪意の影が・・ どこまでが本当で、なにが嘘なのか? はらはらしながら一気にページをめくってしまった。 慟哭やプリズムのようなダイナミックな驚天動地のエンディングではないけれど、 しかしながら最後に、切ない温かさが胸を打つ。 残酷な、でも、最後に救いのある小説。 この小説は、映画化される(された?)愚行録以上に、優れていると思うのだが。 | ||||
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うおぉ。 個人的には貫井徳郎の傑作ぞろいの秀作の中でも最高傑作! 妻を事故でなくしたうだつのあがらない教授。 妻の両親に自分を認めてもらおうと、もちこまれた昔の作家の未発表の手記を入手し、 そこに隠された謎を解き明かそうとするが、実はそれは、仕組まれた罠だった・・ まずその作家の手記がすごい。 悪意に満ちあふれた罠にとらわれ、追い詰められる作家とその周りの人々。 作家が犯した罪とはなんだったのか?犯人は誰?いや、そもそも被害者は誰だったのか? 二重、三重にはりめぐらされた罠に翻弄される主人公に、いつしか引き込まれる。 そうして、現実にも、まるで手記の悪意がにじみでてきたかのように、 教授とその周りにちらほらと悪意の影が・・ どこまでが本当で、なにが嘘なのか? はらはらしながら一気にページをめくってしまった。 慟哭やプリズムのようなダイナミックな驚天動地のエンディングではないけれど、 しかしながら最後に、切ない温かさが胸を打つ。 残酷な、でも、最後に救いのある小説。 この小説は、映画化される(された?)愚行録以上に、優れていると思うのだが。 | ||||
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とても分厚く、持ち応えのある文庫本ですが、読み終えたときの充足感・満足感はあまり得られませんでした。 昔自殺した作家の、未発表の手記がみつかり、その謎を解きつつ学会に論文を発表したが、はたしてその手記の真贋は・・・?妻を亡くした若い大学講師の主人公が、少ない手がかりを頼りに謎を解明していく・・・という設定はおもしろく期待が大きかったのですが、登場人物が多い分、それぞれの印象が薄く、犯人にも、さほど意外性は感じられず残念でした。 もっとこの、お人好しにもみえる主人公を憎み陥れたい犯人の人物設定は、妬みなどの強い動機を持って「なるほど」と思わせるものにしてほしかったです。 | ||||
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とても分厚く、持ち応えのある文庫本ですが、読み終えたときの充足感・満足感はあまり得られませんでした。 昔自殺した作家の、未発表の手記がみつかり、その謎を解きつつ学会に論文を発表したが、はたしてその手記の真贋は・・・?妻を亡くした若い大学講師の主人公が、少ない手がかりを頼りに謎を解明していく・・・という設定はおもしろく期待が大きかったのですが、登場人物が多い分、それぞれの印象が薄く、犯人にも、さほど意外性は感じられず残念でした。 もっとこの、お人好しにもみえる主人公を憎み陥れたい犯人の人物設定は、妬みなどの強い動機を持って「なるほど」と思わせるものにしてほしかったです。 | ||||
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「かつての恋人を探し出して、謝罪の気持ちを伝えてほしい」。亡き友人に願いを託された新人作家の若者が、戦後間もない東京で雲をつかむような人探しを始めた。美談にこそなれ悲劇になど結び付きそうにもない善意の行いは、なぜか得体の知れない敵を呼び寄せ、ささやかな幸せに包まれていた若者の生活は徐々に破綻した。わけのわからないまま追い詰められた若者は、すべてを手記につづって遺書とした。50年後、ひょんなことでその手記を入手した大学講師は、事件の真相を探り始めたのだが、それをきっかけに彼もまた何者かの悪意に絡め取られていく。 時代も背景も違う二人の人間が、同じように顔の見えない敵に追い詰められていくというストーリーがとても謎めいています。いったいだれが、何のために? 冴えない大学講師が必死に謎を追ううちに、全く関連がなかったはずの二つの時代、二人の人生が交差していく構成が見事でした。 殺人事件も警察捜査もない本作は、読み始めはどちらかというと地味な印象でしたが、ミステリーとしては決して地味ではなく、特に終盤、主人公を取り巻く世界がオセロのように一転また一転する様は圧巻でした。自分を取り巻いていた世界がひっくり返って思わぬ悪意を晒すが、しかし悪意もまたひっくり返って・・・救いのあるラストがよかったです。 「手記」が旧字体・旧かな使いで、これもまた雰囲気があって面白かったです。 | ||||
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「かつての恋人を探し出して、謝罪の気持ちを伝えてほしい」。亡き友人に願いを託された新人作家の若者が、戦後間もない東京で雲をつかむような人探しを始めた。美談にこそなれ悲劇になど結び付きそうにもない善意の行いは、なぜか得体の知れない敵を呼び寄せ、ささやかな幸せに包まれていた若者の生活は徐々に破綻した。わけのわからないまま追い詰められた若者は、すべてを手記につづって遺書とした。50年後、ひょんなことでその手記を入手した大学講師は、事件の真相を探り始めたのだが、それをきっかけに彼もまた何者かの悪意に絡め取られていく。 時代も背景も違う二人の人間が、同じように顔の見えない敵に追い詰められていくというストーリーがとても謎めいています。いったいだれが、何のために? 冴えない大学講師が必死に謎を追ううちに、全く関連がなかったはずの二つの時代、二人の人生が交差していく構成が見事でした。 殺人事件も警察捜査もない本作は、読み始めはどちらかというと地味な印象でしたが、ミステリーとしては決して地味ではなく、特に終盤、主人公を取り巻く世界がオセロのように一転また一転する様は圧巻でした。自分を取り巻いていた世界がひっくり返って思わぬ悪意を晒すが、しかし悪意もまたひっくり返って・・・救いのあるラストがよかったです。 「手記」が旧字体・旧かな使いで、これもまた雰囲気があって面白かったです。 | ||||
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貫井徳郎氏の作品には、時として頼りないヒーローが登場する。が、そのヒーローの存在意味は、その情けない男そのものではなく、対する「伴侶」を美しく描くための「黒子」としてなのだ!ということが、最後にわかる。 過去の話と現代の話とが錯綜しているが、ミステリーとしては「過去」の話の方が、尻切れトンボな分、完成度は高いと思う。「現代」のは、登場人物が多すぎて、実はそれらが何処かで繋がっていたりする不自然さと、実は繋がっていなかったのだなどという複雑さが、読者を混乱させてしまう。 ミステリーとしては今一歩共感出来ない部分もあるが、夫婦の悲しいLoveLoveドラマだと考えれば、男として焼きもち焼きたくなるくらい羨ましい話だと思う。 | ||||
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