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殺人症候群
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殺人症候群の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.78pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全81件 1~20 1/5ページ
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巻を重ねるごとに高まる期待感を裏切らない作品だった 女性への残虐描写にはひときわ力が入っているのが目立った。 いつもは姓名を明記するのに、 姓だけの人物と名前だけの人物がいた その姓名が明かされた時の衝撃! 素晴らしい技巧でした 想像にお任せします風のラストは好きじゃない ここまでついてきた読者に失礼じゃないかな | ||||
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全ての犯罪は、身勝手な動機から始まる。それが復讐だとしても。これでもか、という位に身勝手な殺人者たちを作り出しているが、現実より酷すぎるという訳でもないだろう。登場する殺人者は、どんな美辞麗句を並べてもやはり身勝手な殺人者に過ぎない。渉は、それを理解しているようでやはり身勝手の度合いは小さくない。むしろ、大きいのかも。彼の動機は復讐ですら無いから。 復讐心は理解出来るが、復讐心自体が、個人のカタルシスを求めるものだ。 そして、殺人は許されざる罪であると、作者は言っている様なのだが、そもそも誰に許されるとか許されないとか言っているんだろうか。法のもとでは許されない。宗教上も許されない。しかしー、その二つ共が、人間社会が必要的に創り出したシステムでしかない。動物の社会に犯罪は無い。人間が社会性を捨て獣に戻るのなら、それを止められるのは、己のみ。報いを受けたように見える和子や響子、彼らには、弱肉強食の順番が来ただけではないか。そして、強者に見えた捕食者も、すぐに更なる強者?に殺される。これは人間社会のジャングルの野生動物化した人間=獣たち=犯罪者達の話なのか。 | ||||
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一瞬で読み終えました。 この症候群シリーズは巻を増すごとに面白く感じました。 環さんのアナザーストーリーとかあったら買っちゃうかもしれないくらい環さんは一貫して謎です。最初から最後まで環さんの存在が謎でした笑 | ||||
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TVドラマで犯罪症候群を見たのがきっかけで、この症候群シリーズを読み始めました。この作品は、その第3作目の完結版です。 TVドラマの内容も全ては覚えていないのですが、取り扱っている事件の概要は小説でもだいたい同じであるように感じました。 ただ環敬吾以外の、環に従って裏の捜査を行う人達は、ドラマとかなり異なります。玉山鉄二が演じた武藤隆は小説でも出てきますが、設定やキャラクラーはだいぶ違います。 この作品は重たいテーマを扱っており、私は非常に面白く読みましたが、読む人によっては受け止め方が異なる作品なのかもしれません。 少年犯罪や精神障害者による殺人の被害者家族が、犯人に報復したい気持ちは、私にも十分に理解できます。日本でも江戸時代などには、武士には仇討が合法的に認められていた時期もありますよね。もちろん現代の民主国家で、それが許されるはずもないのですが。 一方重度の心臓病の息子を持つ看護婦の母親が、ドナー目当てでまったく罪のない若者を次々と交通事故に見せかけて突き飛ばす内容は、さすがに現実味がないと感じてしまいました。 心臓のドナー提供を待っている患者は非常に多いはずで、ドナーが出たからって自分の息子に順番が回ってくる確率は非常に低いし、それ以前に心臓をもらうためには殺してしまってはだめで、脳死状態にならなければならないわけで、そんなにうまくいくとは思えません。 人に見られるリスクを考えれば、そこまではしないだろうと感じてしまいました。 | ||||
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冒頭から引き込まれてしまう展開で、失踪・誘拐症候群と比較すると、先の内容が気にかかり時間を忘れて読みふけってしまう。 「殺しかた」の表現にウンザリさせられる場面も多々あるが、ひょっとしたら作者の思考の奥のさらに奥を垣間見たような気にさせられる。 ラストの数行はどう解釈すべきか? それは読者次第と言うべきか微妙である。 | ||||
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症候群シリーズの最終巻で、約700頁の大作である。驚くべきどんでん返しがあり、臓器移植のドナーと復讐殺人、両方共に命をテーマにしているのだが、どこで接点が交差するのかさっぱりわからないまま、話は疾走します。そしてシリーズを読んでいくうちに、主人公達に対して、思い入れが入り複雑な心境になっていきます。ネタバレしてはいけないのだけれど、読後感が哀しすぎる。佗しすぎる。淋しすぎる。でもこういう作品は作者以外の作家は描けないだろうと思う。ただ、肝心要の環の素性が全くわからない。環がどういう境遇なのか、どんな人格でどんな過去があるのか、描いて欲しかった!何とかここはひとつ、環のストーリーを作品にしてもらいたいと切に願うばかり。 | ||||
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理不尽でも歪んでも人生の歯車は回り続ける。 勧善懲悪や小綺麗な結末に飽きてる自分としては大変楽しめました。 犯罪、暴力、リンクした人間関係など雰囲気はまるで伊坂幸太郎の作品と通じるものがあり伊坂ワールドが好きな方は満足すると思います。 | ||||
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15年位前、午前中から日が暮れるまで思わず読んでしまった本です。 初めに読んだときはあまりに強烈でひどすぎる暴力描写とふわっとした結末に読後感が最悪、二度と読みたくないと思いました。 しかしその高いエンターテイメント性故、あれから二年に一回は読み返す本になっています。 今となるとあの結末以外にないと思えるのが不思議です。環は謎のままなのが良い。 未成年者の犯罪や39条の問題、犯罪者に対する復讐、殺人をした者は必ず報いを受けるのか、等まじめに考えるべき点はありますが それを考えると矛盾がちらほら見えてきてつまらなくなるので、あえて私は何も考えず、ただただ展開のおもしろさを評価します。 女性に対する過剰な暴力描写は非常に嫌ですし一部非現実的な点がありますが、それ以上に圧倒的リーダビリティに抗えません。 今頃レビューを書きたいと思ったきっかけになったドラマも見ましたが、環(渡部篤郎)と鏑木(谷原章介)は入れ替えてほしかった。 30代頃の渡部さん(永遠の仔やケイゾクを演じていた時のナイーブな感じ)は鏑木のイメージ、そして何より「紳士服モデルのような」、何を考えているかわからない微笑を浮かべている環のイメージは谷原さんでした。これが言いたかった。 谷原さん表紙版の「殺人症候群」が発売されたときはイメージ通りと思ったのですが。 話も全然違って原田や倉持は出てこないし武藤はやたらかっこいいし、トラウマになりそうな某登場人物の強烈な死に様は あっさりしていましたし、別物でした。特に本作で倉持が出てこない点でもう全然違います。 やはり原作は素晴らしいです。また二年後あたりに読むでしょう。 | ||||
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昔書かれた本ならともかく、いまだに「看護婦」とか(2002年から「看護師」に資格名が統一されている)、飲み終わった缶の中にプルタブを落とす(1990年頃には国内ではほぼ全てステイオンタブに取って代わっている)、とか、そう言った雑さが気になって、まともに読み進むことができなかった。ストーリーを読ませるというよりは、残虐描写を書きたい人がそういうのを読みたい人の需要に応えて書いてる感じ。多分もう2度とこの人の本は読まない。 | ||||
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少年法に守られた未成年者が犯す凶悪犯罪とその犯罪被害者について書かれたもの。 自分がこんな犯罪に巻き込まれたら・・という身近に起こりえる恐怖を強く感じた。 暴力的な場面の描写が強烈で、読んでいると気分が悪くなることもあったが、 ストーリーが面白く、読むことをやめられなかった。 読後感の重さは、作品の中でも群を抜いていた。 | ||||
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題材としては面白い。貫井徳郎はハマる人にはハマるんでしょう。でも私にはストーリー展開が遅くてハマらなかった。 いろんな角度から見せてる割にはどんでん返しもないし。 それにラストは、スッキリ、できれば幸せが残る終わり方が好きな私にはモヤモヤしか残りませんでした。 | ||||
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どうもこんにちは。 現代を舞台にした「復讐」ものは宮部みゆきの「クロスファイア」などのように 結局「どんな理由があっても人殺しはいけない」「殺せば鬼畜の殺人者と同じ」 というお決まりの典型例に堕してしまうものですが、この作品もまるで同じ事でした。 そう書くことが無難、或いは自分が善人だと主張したいのかもしれませんが それによって生じる作品としての「矛盾」をまるで考慮していないという点に正直辟易させられました。 (そんなに「良い人」だって想われたいんですかね、その発想自体が既に「偽善」だと想うのですが) まずこの作品を通して作者が言いたい事は 「人を殺した者、そう願った者は悲惨な最後を迎える」 「運命はその罪を見逃さずきっちり負債を取りたてる」 という事らしいですが、では何故、『犯罪被害者だけが』 その負債を「ピンポイントで」取り立てられるかという事です。 読んだ人はお解りの通り、原作で犯罪被害者であり職業殺人者でもあった響子は 悲惨な最後を迎えます。そうなった理由は上記の作者の信念、倫理観といった所ですが そもそもここに大きな「矛盾」があり、何故彼女が復讐の鬼と化したのかは、 「人を殺した者(それも罪も無い者を)」が「悲惨な最後を迎えていない」からです。 法律によって守られ犯した罪に見合った「報い」を受けていない。 最低最悪の犯罪を行った者が反省もせず同じ悪事を繰り返し ヘラヘラ笑いながらのうのうと生きている。 だから彼女は職業殺人者になったのであり、 そもそも罪を犯した者が然るべき報いを受けていれば そうなる必要すらないのです。 なのに何故、「彼女だけが」あのように悲惨なラストを迎えねばならないのか? 彼女の婚約者を殺し眼の前で輪姦した犯罪者達が全員、 この後「同様の最後」を迎えるとはとてもじゃないが想えません。 それは「悪い事をしたら神様の罰が下る」という程度の幼稚な発想で お伽噺なら兎も角小説で取り上げるテーマではありません。 しかしこの作者はその古びた偏屈な「信念」とやらをどうしてもゴリ押ししたいようで、 そのせいで不自然な市原の大逆転、免許も持ってないのにプロの刑事の追跡を巻く、 人の弱みを握って甚振るような屑のクセに(警察に行かず脅迫する時点で犯罪者) 作者の主張を代弁するかのような大演説というご都合主義丸出しの 読者にとっては「何やってんだ、こいつら……」という破綻した展開を これでもかと見せられる醜態に至るのです。 別に彼女(響子)を擁護しているわけではありません。 しかし彼女は自分では手を下しておらず、殺したのは全て鬼畜の犯罪者です。 ここで上記の作者の信念()、「どんな理由でも殺せば人殺し」が出てくるわけですが、 この主張は「罪の無い人間」と「鬼畜の犯罪者」を『同列』に考えているという 「矛盾」にまるで気がついていません。 最近とある国でテロ事件が起きましたが、その被害者と実行犯の命を 「同価値」に扱われたら、遺族はたまったものではないでしょう。 そもそも響子の婚約者のように「何も悪い事はしていない」のに 死ぬより辛い生き地獄を経て殺されてしまう者もいるのに、 何故「どんな理由であれ人を殺した者だけは」悲惨な最後を迎えると 「断言」出来てしまうのか、その思考回路が理解出来ません。 『どんな理由であれ』いけないのなら、戦争で人を殺してきた者は? 警察官が子供を守るため犯人を射殺するのは? 家族を襲う暴漢に立ち向かう事もいけないという事になってしまいます。 (私の祖父は二度も徴兵されましたが、90過ぎまで生き安らかな晩年を迎えました) 誰しも人を殺める事を厭うのは当たり前ですが、しかしそれを個人的な理由、 作者のセンチメンタルやナイーブさのアピール、 偽善心を充たすためだけの自己愛撫のために利用し 「拡大解釈」するのはいい加減にしろと言いたい処です。 まぁこうやって問題点をあげていったらキリがないのですが、 『理不尽と戦う意志』の無い者が、「復讐モノ」を描くなというコトですね。 少年法や刑法39条のように、「どんな理由であれ人殺しはいけない」は、 最早混沌とした今の「時代」にあってない、形骸化した概念だという事です。 少しも汚れたくない、罪を犯したくない、それじゃあもう死ぬしかない。 死んで『楽園』にでも住むしかないですね。 まぁそこも「退屈」で地獄だとは想いますが。 それでは。ノシ | ||||
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3部作の中でNo.1だと思う作品です。かなり考えさせられた内容です | ||||
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やっぱり貫井さんの本は読みごたえがあります。 読後感は重いけれど、やはり構想とかうまいなぁと唸ります。 最近トリックだけのミステリーで空振り続きだったので久々に満足できました。 | ||||
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「失踪症候群」「誘拐症候群」に続く三部作完結編。これは、警察に設けられたスパイ大作戦的チームを主人公メンバーにしたような連作なのだけど、前2作は、駄作ではないし面白いのだけど、特筆すべき感銘も驚きも正直に言って私にはなかった。 けれど、この完結編は、前評判の「スパイ大作戦対必殺仕事人」「ハングマン対必殺」とかいう、あまりにもネタ的なものとは裏腹に、非常に面白かった。いや、紛れもなくスパイ大作戦対必殺仕事人だったのだけど(笑)、この作者の貫井徳郎がちゃんと本当に必殺者だった点が、この作品を必殺まがい物ではなく、しっかり「作品」として成立させていたんだろうと思う。 一般ミステリファン(こんな言い方があるかどうかは知らぬ)にも、この作品は貫井徳郎作品としては割とメジャーで(TT)、『金で恨みを晴らす、まるで必殺仕事人みたいだけど、実はすごく重いテーマのミステリ』というふうに、必殺が実はすごく重いテーマとして観られるテレビ番組だ(だった)と思ってもらえてないと解る好評ぶりで(T.T)(T.T)。 まあ、その辺の、前期必殺者としての愚痴はさておき、ミステリとして見たときも、さすがは貫井徳郎という仕掛けが施されていて、充分に堪能いたしました。 時々、後期必殺で散見された「名セリフ」がわざとらしく模写されているのはご愛敬。特に前2作を読んでいなくても、これだけで楽しめるとは思う。 恨み、復讐、人が人を殺す、そういったことへの徹底した物語としては、この「殺人症候群」以上のものを今のところ知らない。刊行後、年に一度「殺人症候群」は読み返しているが、読み返せば読み返すほど、この小説の凄み、重み、悲しみをより一層感じさせられる。 もう勘弁してくれ、というところもあるくらいだ。 ミステリとしての部分について追加するなら、もっとも「騙し」のテクニックが発揮された或る人物の「正体」については、物凄く今さらながら、実は意外でもなんでもないはずだったのだと気付いた。なぜって、中村○水は仕○人に決まっていたのだから。。。 3年目になってやっと「あー」と思ったんだから、バカみたいだね(笑)。 「必殺」と絡めても書いておこう。 「必殺仕事人」もIIIの中盤辺りからは一気に「あっけらかん」化に加速がかかり、もうナンも考えずにバラエティを見るように観ていられた。 「必殺仕置人」が「悪の上前をはねる極悪」と山崎努らが自分たちを規定して始まりながら、「なんだかまともな人間になった気がする」などと気持ち良く思ってしまった直後崩壊し、続く「暗闇仕留人」では石坂浩二が難病の妻のために中村主水のスカウトにのって仕置人になりながら、途中それがために逆に妻を失い、最後には「俺たちのやってきたことで少しでも世の中良くなったか?」などと考え始めてしまい、「俺たちにやられた奴にだって家族や好きなやつがいたかもしれないんだ」と思いながら逆に殺されていく……そんなことを繰り返しながら、シリーズが重なるごとにテーマが重層的に増えていった……たぶんそれがいきなり限界になって、「新必殺仕事人」あたりからポキッと折れてバラエティ化してしまったのだと思うのですが。 このようなテーマの流れを、「殺人症候群」のストーリー、プロットと比べ合わせると、「あー」と感じられるものがあるかと(笑) ちなみに、倉持が接触してきたとき、仕置屋の女性が「お金を貰わなければただの人殺しよ」と言って「なんだそりゃ、金を貰えばただの人殺しじゃなくなるのか、どういう理屈だ」と倉持に笑われていますが、この「金を貰わなければただの人殺しだ」というのが、やはり新必殺仕事人から出てきた三味線屋勇次の得意なセリフなわけです(笑)。 倉持のキャラクターは、例えば山崎努の演じた初代仕置人の「念仏の鉄」などに微かに近い部分があるので、このシーンは、後期仕事人の変に正義の味方ぶった言動に対する、初期仕置人からの揶揄のような感じはします。 | ||||
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この人の作品に共通する事だが、トリックに走り過ぎて、キャラが立ってないし無理矢理感が半端なくて感情移入出来ない。 あと東京23区外の人と早慶大以下の人を馬鹿にしてる感が否めなくてムカついた | ||||
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シリーズ第三作 現代社会のタブーに触れるようなテーマや行動が多く、思想的な部分で 興味深くはあるものの、とにかく倉持と環の行動や存在があまりに酷い 思わせぶりな行動を繰り返し、何の意外性もない終着点にたどり着く倉持 これだけ多くの登場人物に光を当てておきながら、冷静ぐらいなキャラ付けしか されておらず、バックボーンすら語られずに終わる環 シリーズ最終作っぽいのに終わり方が投げやりなのも、かなりマイナス 読めない作品では決してないが、全てに満足がいく作品ではないことを 読む人は覚悟したほうがいいだろう | ||||
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貫井氏が大ファンだという岡嶋二人の後期の裏ベストとも評される「眠れぬ夜の殺人」、「眠れぬ夜の報復」と発表された警視庁0課2部作の斬新な設定を貫井氏流に味付けした作品である。 この症候群シリーズの一つの事件をもう一つの裏の警察組織が検証し、非合法な決着を付けるというアイデア自体は岡嶋二人からの流用ではあるが、そこは貫井氏のことなので、非常に重いテーマを扱ったダークな作風になっている。 最終作の本作では未成年や精神障害者の殺人をテーマに被害者の依頼でそれらを抹殺する謎の男の正体と背景を警察の裏組織のメンバーが追うというもので、一応謎の男は誰?という要素はあるもののいわゆる本格ミステリー要素は殆どない作品。 陰惨かつ重いテーマを扱っているのは最近の重厚文学路線の作品と同趣向だが、裏組織からの客観的視点があるため、ギリギリのところでエンターティメント小説の体裁は保っている。 大作だが、次々と殺人事件が発生し、展開がスピーディーなため一気に読ませる。 貫井氏の非本格ミステリーの初期の代表作と言えるだろう。 | ||||
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本作は、三部作の最終作であり、エンターテイメントとして、またミステリーとしてもそれなりに読み応えがある。 しかし、本作はいわゆる復讐をテーマとした小説であり、自分は完全に社会派小説として読んでしまった。 同じ題材のものとしては東野圭吾の「さまよう刃」等があげられる。 本作は法律に対する完全なる挑戦といえるだろう。 作中には「職業殺人者」が登場する。 当然に否定されるべき存在だが、完全に否定しきれるだけの人生経験が自分にはなく、読了後は自分が いかに幸せな環境にいたのか思い知らされた。 しかし、そんな自分のような人間でも考え続けねばならない問題である。 現実に凄惨な殺人事件は後を絶たず、確実に本作で描かれたような被害者遺族は存在するからである。 この本の中では、前作まで仲間であった倉持がチームを離脱することで、この「復讐」という行為に 説得力をもたせるうまさがある。 そして、読んでいくごとに「正義」と「悪」の境目は少しずつ曖昧になってくる。 勧善懲悪など存在しない。 判断するのはあくまで読者である私たちである。 個人的には、この手の小説の中では間違いなくトップクラスだと思う。 現在の刑法・少年法のあり方について考えたい人にとっては読んで損はないと思う小説である。 | ||||
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さまざまな倫理観が林立し、それぞれが脂っこく自己主張するので、読んでいてかなり不安定な気分になる。作者の禅問答かと思う倫理観の格闘の末、「これが正しい」という結論は放擲されたまま物語は終わる。強いて言えば「人を殺せば、業を背負う」という、根本的な原理だけが残る。 主軸となる環チームは、これまで法を犯してでも犯人を吊し上げてきたから、法の裁きでは救われない被害者に代わって加害者に「私刑」を下す仕事人とは似た立ち位置である。にもかかわらず環チームは仕事人を犯罪者として追う。原田がこの矛盾を述懐しているが、環自身の倫理観は最後まで述べられておらず、印象としてはエピローグ同様ごまかされた感じで、このシリーズでこのテーマを採り上げたのは無理があったのではないかとも感じてしまう。 しかし矛盾を抱えたまま動く話は嫌いではない。「ノンマルトの使者」のウルトラセブンように、自分の立脚点がわからない矛盾に突き落とされながら行動することも、それはそれで物語のエッセンスとなるからだ。 それに倉持の悲惨な過去を描き、環チームから離脱させ、途中まで単独行動か敵対かわからない存在にしたことで、構図は非常に面白くなった。 ただ仕事人の正体については奇を衒いすぎかとも思う。能力や知識については整合性があるかもしれないが、表(仕事)と裏(殺人)を破綻なく並行させる精神構造は有り得ない気がする。分の悪い推論から余分な仕事を抱え込むことは、裏の仕事や響子を守ることに対して負担にしかならないはずである。 あと、この人の暴力シーンはいつも読むのが嫌になるのだが、その理由は弱者を一方的に嬲るケースばかりだからかもしれない。暴力を受ける側は、いつも絶望的な状況である。 最後に、この作品はシリーズ3部作の第3弾、つまり最終エピソードであるが、環、原田、武藤、倉持、4人のチームのエピソードがもっと積み重ねられていたなら、さらに味わい深くなっていたのにと思う。第1弾「失踪」は原田、第2弾「誘拐」は武藤を中心に描かれたが、倉持がメインになるこの作品でいきなり離脱、そしてチーム崩壊というのはちと急すぎる。「崩壊」は積み重ねたものが多いほど感慨深く感じるものである。その意味でこの作品・この結末は早すぎた最終回で、少しもったいない気がした。 | ||||
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