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世界99
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世界99の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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この作者の作品を読むのは「コンビニ人間」以来です。第一章のラスト、第二章のラストで息が止まりました。第一章を読みながら、コニーウィリスの某作品を、全体を読みながら「家畜人ヤプー」を想起しましたが、表層をなぞった感想です。作品内の世界はフィクションですが、決して未知の世界ではない。私達はこの感覚を知っています。単なる意見、感想、感覚が違うというだけなのに、それは対立を生み、簡単に攻撃や誹謗中傷へとなってしまう事を知りすぎてしまった私達は相手を傷付けるより、自分が傷付く事を恐れて口を噤み、次第に違和感を感じる事すら忘れてしまう。相手と同じ表情を作っていれば間違いは起こらない。 無垢な少女であっても搾取する側であり、加害者で在る事から免れる事が出来ない、というのが一際恐ろしく感じます。 「習字セラピー」に乾いた笑いが零れました。 | ||||
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当然ながら上巻から続いた話なのに、かなり違うことを考えながら最後まで読みました。 文字通り分断された、互いの存在を認識しつつも交わらない幾つもの「世界」が共存する世界と、その複数の「世界」ごとにキャラクターを棲み分けている主人公。ただしフィジカルな自分の肉体は「便利に使われる人間家電」との認識で、常に死ぬほど疲労している。その「使用者」たる夫すら決して満ち足りてはいない…上巻の後半で描かれた地獄は、ある意味「フォーカスできる」地獄でした。 しかし最終的には読者としての自分はもっともっと捉え所のない場所に漂うことになりました。 「ひととひととが共有できるものは何か?そんなものはひとつもないのではないか?」「シタガイコク、ウエガイコク。可哀想な人、クリーンな人、恵まれた人。終わりのないヒエラルキーの更新と変わらぬ搾取の果てに、『幸福』はどこかに出現し得るのか」「記憶とは?個々の記憶がその基盤となるはずの、『世界』とは?」「自己が底のない暗闇の虚無であるとして、『私』をみる人がみている『もの』は何か?……」 読んでいくにつれ、作中の人々が歳をとり、新しい世代が育つ。時には進んで、時には無意識のうちに変化していく。見守る読者に、つづけざまに湧いてくる問い。手がかりのない真っ白な空間へ、問いの力で徐々に押し出されて、いつか放り出されていた気がしました。 そして気がつけば現実の卑近な世界もまた違って見えてきました。私が自分の内外でよく知っている、たくさんの「母ルン」、「アミちゃん」、「明人」、「白藤さん」たち。 村田さんが、感情の無い主人公を通して描いた「リセット後の世界」の概念は非情でドライです。クライマックスに向かう幾つかのシーンが、舞台設定として「センチメンタルでやさしい」要素を含んでいるように一見みえましたが、そんなはずはなく…涙など場違い甚だしいシビアさが際立つ演出でした。 それでも何故か、傷ついた後には心が救われている。これ以上なく正面からビターな表現体を直視しているはずなのに。最終的には、このお話をこの文章で噛み締めさせてもらえてよかったな、としか思えませんでした。 村田さんのディストピアは、私にとっては「極端な残酷さを描いた、後味の悪い悪趣味」ではなくて、もっと明るく白っぽく「ずっと前からそこにあったもの」のように思える身近な地獄です。この不思議な感覚は、日常に根ざしているが「知っていると知る」すべがなかった実体のない現実を、物語の力で可視化してくださったから感じられるのだと思います。どんな地獄であっても、私たちは自分の暮らす世界について、誠実なことばで何通りにでも語られてほしい、そうやって世界を知りたい、という尽きせぬ願望があって、それこそが同時代の文学への渇望なんだな、と改めて思いました。 村田さんに大拍手、お辞儀、そして無意味な合掌を。 個人的にかつてない読書体験でした。 感謝とともに読み終えてふと思ったのは「これ…慧眼のウエガイコクの人々から早々に賞を授与されてしまうのでは…?」ということでした。そしたら村田さんどんなことをおっしゃるのかな、と楽しみです。 | ||||
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圧倒的に面白かった。吐きそうになるほど臨場感のある、現代社会を射抜いたディストピアに流れる物語に、紛れもなく人間の深層を優しくそっと溶かす、そんな真実があった。 新刊でこれほどの読書体験をさせられたのは、村上春樹の「1Q84」と「騎士団長殺し」以来。 時代の空気を吸って、平積みされてるうちに読めたことに幸福を感じます。 | ||||
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月20冊読む本の虫ですが、この本に、初めてレビュー書かせられました。 読み始め、自我に関するよくある小説かと思いきや、展開するにつれ、現代社会を見事すぎる手さばきで射抜いた世界が拡がっていく。 うっすらと心のどこかで感じていた違和感や既視感が、言葉と文脈を与えられ、自分の中で居場所を見つけていく。 歴史に残る古典小説以外で、ここまで心を振り回されぶん殴られ、癒されいたわられた読書体験は人生でも数える程だったと思います。 挫折せず上下巻、読み通して下さい。 | ||||
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日本文学はいつから面白くなったのか、とよく考える。 『蹴りたい背中』『蛇にピアス』(2003)から 『コンビニ人間』(2016)『推し、燃ゆ』(2020) そして『ハンチバック』(2023)『DTOPIA』(2024) もう、最強である。 そして今年に、あらゆる意味で決定的な「純文学」が出てきた。 日本文学が「その後のポストモダン小説」を牽引していることは疑いない。 そう確信した本作であった。 | ||||
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読むポイント多過ぎて溺れそうになった 個人的に明確に腑に落ちたのが 母がどうしても自分にやらせたかったのは 誰かの道具になって使い潰される事だったんだなー 母にしてみりゃ自分は酷い「ズル」をしていたんだろう 単純にウマが合わないとか姉妹の順番とか好き嫌いの順位点とか 何となく漠然と↑だと認識してたが、ああそっちじゃなくて こっちだったか 人並みの事普通にやっとけって話でもなかったねー そりゃ、ズルしてる娘が何をやってやっても 面白くなかった筈だわー 自分が何かをして貰いたかった訳でもなくて 強いて言うなら道具になって使役されて、愚痴を溢されながら 彼女の中では決して言語化されない 「ざまあみろ。今度はお前の順番だ」 ↑を味わいたかったんだな 本人が少々幸薄い少女時代の体験者だから 自分に比べて恵まれた環境で育った娘が好き勝手にやってる事への 嫉妬は感じていたしそこが理由かと思ってたけど 「仕返し」受けてないのが面白くない なるほどね~ はいはいそら和解の道はなくて当然 見切って正解。てか正解だと思ってたから見切った訳だが 補完項目が増えると満足感が向上するなー ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ これだけのボリュームでこの内容 ちんたら読んでたら、途中で潰れる ちょっと休憩はさんだがほぼ一気読み どっかで脳ミソのタガが壊れてしまったらしい 読後の感想が 「人間の性欲と発情期が限定されれば良いのに」 「春限定とか。生殖可能期間を過ぎたらなくなるとか」 …なにそれ?どっから湧いて出た? だって イカれた男が世間にゃ溢れてる現実は知ってるし 警戒対象はあまりに広く、 のべつ幕無しじゃディフェンスしきれんやん! そもそも長すぎるんだよ発情期間が! 相手かまわずちょっと好みの子見かけただけで発情してる男は 性欲に問題あるとして紳士科で性欲抑制剤投薬受ける時代になろうよ 期限切れを使えるようにすED薬なんか作ってる場合かっての 少女が無傷のまま自己防衛できる大人になれたら奇跡だろうと ま、ね。少女に限らずだが 要らん性欲排除できりゃ どれだけ世の中すっきりする事か 脳ミソ散らかり放題ちらかりましたとさ | ||||
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ぶふわぁ~っ! 今1章終ったトコ 面白いんだけどこりゃ消耗するわ… 上下巻でこの厚さだから覚悟はしてたが 一旦息つかないともたない 何だろう 「自分はそこまで酷くはないけど」両側から これまでの来し方を喚起される感覚で 読むと同時進行で反芻し過ぎてどっと疲れた 息入れないとキツいけど、 これは日数かけて少しずつ読み進めてく類でもないな 面白いけど、不慣れな人がうっかり手を出しちゃったら怪我しそうだ 不慣れな人はここまでのボリュームあるの手を出さんから要らん心配か | ||||
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「コンビニ人間」の頃は、村田さんの鋭い刃は卓抜なユーモアに何重にも包まれていて、その切先が誰かを傷つけることはあまりなかったのではないか…という印象を持っている。しかし今作となっては、ハッキリとこちらに向いた切先が、私の鈍さを突き破って、グサグサと、何度も何度も刺さってくる、読んでいてそんな気がした。とても痛い。激痛。だけどページを進めてしまう。 ディストピアもディストピア、極端すぎる地獄の小説。いやいやまさかこんな…と思う。それなのに、認めたくないけど、すべての地獄要素は、どこかで嗅いだような、すれ違ったような、既視感の延長にある。そのこと自体が何よりの地獄、という絶望の入れ子構造がまずすごい。 たしかにネットなどを見ていて「こんなヤバい人、まさか現実に居るわけない」→「うわ居た!マジで居た!」という経験は、40代女性ともなれば数え切れないほどにあり、ブラックな意味では笑えるけど、本当の意味では笑えないのだった。 村田さんによる広義のディストピア、または少なくとも架空の世界を描いた小説を、私は幾つか読んできた。迸る想像力、突き抜けるユーモアはいつも共通する魅力であった。現実にはない条件付きの世界だからこそ、比較的普遍的な「●●ってなんだろう?」のような疑問をクッキリ浮かび上がらせて頭にも心にも残る。どれも最高だった。そして今回、徹底的に、私も含めた多くの人が直視できない・語れない、深い闇に照準を合わせているように感じた。闇、なんてぬるい表現が適切とも思えないけどとりあえず他に言いようがない。 上巻最後の数十ページで、ストーリーにはブワッと違う風が吹き始めて、緩急!!と嘆息しながら本を閉じた。下巻、読むのがもったいない。 | ||||
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