■スポンサードリンク


動く標的



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

動く標的の評価: 3.69/5点 レビュー 13件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.69pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全13件 1~13 1/1ページ
No.13:
(4pt)

1970年代を思いだした。

この時代は 人間関係もまだ単純で アウトローも 素直でわかりやすかった。
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.12:
(3pt)

私立探偵リュウ・アーチャー初登場

私立探偵リュウ・アーチャー初登場作品。

失踪した石油王の捜査を夫人から依頼されたアーチャー。やがて石油王から、誘拐され身代金が必要な旨の手紙が届く…。

主人公のストイックさとアクションはハードボイルドだが、探偵としてのうっかり、ぽっかりさには違和感大。シリーズを読み続けると、アーチャーのファンになるのだろうか(「さむけ」は傑作!)。半世紀以上の作品で、家族の崩壊というテーマは現代でもアリ。登場人物たちか何がしか病んでいるのも今風だろう。ただし、事件の結末はあっさり目で、記憶にとどめ難くはある。

なお、本作品は、ポール・ニューマン主演で映画化されている。
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.11:
(4pt)

文学とハードボイルドの融合

最近になって、ハードボイルドの名作と呼ばれる作品を読み始めました。
まず、チャンドラーのロンググッドバイとハメットのマルタの鷹を読み、その後継者とされる著者の代表作ということで、本書を手に取りました。
先の二人と比較すると、文学的な表現が多い気がしました。少し、情景描写がくどいかなと感じました。ハードボイルドには余計かなと。
また、主人公の私立探偵、リュウ・アーチャーは、スペイドほど暴力的ではなく、マーロウほどの皮肉屋でもなく、こちらは私にはちょうど良い気がします。
一つ気になったのは、アーチャーが人を殺したところですね。日本のものも含めて、他のハードボイルドで主役の探偵が人を殺した作品は記憶にありません。
ストーリーとしては、探偵に人探しの依頼があり、その人物の捜索の過程で探偵がいろんなトラブルに見舞われる、というベタな展開です。
最後には、意外な結末が待っていて、面白く読めました。
著者は後期になると作風が変わるらしいので、他の作品も読んでみようと思います。
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.10:
(3pt)

クールかつリアリイティに溢れる

リュー・アーチャー物の第1作目である。
本格的なハードボイルド推理小説である。
主人公リュー・アーチャーの一人称で語られていく物語は、全編にクールかつリアリイティに溢れており、ハードボイルドのお手本のような小説である。
本作の話の展開としては、金持ちの男が誘拐されるところから始まり、物語の前半は少しゆっくり気味であるが、一人目の殺人事件が発生する後半からスピーディーな展開を見せ、一気に最後まで読み進めさせられてしまった。
クライマックスのくだりは、少し平凡であったが、まずまずのエンディングであった。
総括としては、ハードボイルド推理小説の良作といえる出来であると思う。
動く標的 (創元推理文庫 132-4)Amazon書評・レビュー:動く標的 (創元推理文庫 132-4)より
4488132049
No.9:
(3pt)

反戦小説

シリーズ第1作だからか後の作品と比べると数段劣る。アーチャーがまだ若く血気盛んでやられてばかりで弱いんです。後の必殺質問人ぶりはまだありません。作中「・・・戦争の中で育ち、戦争で大人になった男の・・・」とありますが戦勝国でもいろいろあるんだなぁと妙な感心をしました。戦争は勝って大変、負けて大変、絶対にしてはいけません。
動く標的 (創元推理文庫 132-4)Amazon書評・レビュー:動く標的 (創元推理文庫 132-4)より
4488132049
No.8:
(4pt)

色々な意味で記念碑的なリュー・アーチャー初登場作

富豪から失踪人の捜査を依頼された主人公がやがて・・・というお話。

解説で書かれている通り、後年のロス・マクのスタイルがすでに完成している様な私立探偵小説。失踪人の捜査、複雑な家族・人間関係、諦念に満ちた語り等、ロス・マク節ともいうべき要素が全てこの時点で出ているのが印象に残ります。推理小説としての完成度は後年の方がいいですが、この時点でここまで書ければ及第点だと思います。

お話もさる事ながら、後年顕著になる諦念や原罪論をリュー・アーチャーに開陳させている所にインパクトがありました。「昔は世の中の人間というのはふたつに分けられると思っていた。善人と悪人にね。邪悪ことをした責任というものはちゃんと特定できて、その責任を負うべき人間に課して、罪を罰することができるものと思っていた」とか「私は汚れた人間だ。」とか。憶測ですが、この作品の前に書いていたスパイ小説が人間のダークサイドを描いた物が多いという事でその影響からこうなったのかも。

一番最初にタクシーで登場する所は、欧米の研究者によると後のシーンで飛行機に乗り、そこからの眺めを描写したかったからという意見があるそうで、評論家の小鷹氏は自分の運転する車で登場してもらいたかったと、どこかで書いてらっしゃった記憶がありますが、アメリカのハードボイルド系の私立探偵は拳銃と車が必須アイテムという事でしょうか。チェット・ウィリアムソンという人に「ジレンマ」というハードボイルド/私立探偵小説がありますが、主人公が車を持っていないので電車で移動したりと、ハードボイルドを批判した私立探偵小説らしいので興味のある方は読んでみては。

タイトルですが、勝手にケネディ暗殺を意識してこうしたのかと思ったら、時期が合わないので勘違いですかね。柿沼さんの解説もこの作家の事が詳しく書いてあるので必読です。

ともあれ、色々な意味で記念碑的な作品。機会あったら是非。
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.7:
(3pt)

犯罪は往々にして拡散する

ロスマクのリュー・アーチャーシリーズは『象牙色の嘲笑』と『さむけ』の2冊だけ既読ですがを本書はさすがにアーチャー初登場作品だけあってかなり生真面目で硬質な印象が強く残りました。とにかく文章が若々しかったですね。といってもストーリーはシンプルどころかちょっと複雑で終盤にかなり意外な展開が待ち受けています。ちょっと凝りすぎの様相も(^▽^)/ それからナイスだったのはアーチャーのユーモアセンスあふれるセリフで(田口先生の翻訳の功績も大でしょう)切れ切れにさえわたっていて痛快でした。結局トータルで評価するとまずまずというところでしょうか。今後のアーチャーシリーズの新訳がどんどん出てくることを期待します。
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.6:
(4pt)

(2018年―第57冊)丘の上に立つ町に背を向けた孤高の探偵の物語として味わった

私立探偵リュー・アーチャーは、カリフォルニア州サンタテレサの富豪夫人エレイン・サンプソンから夫を探してほしいと依頼を受ける。夫ラルフ・サンプソンはロスアンジェルス空港で自家用機を降りた後、連絡がないというのだ。これは単なる逐電なのか、それとも誘拐事件なのか…。
------------------------
 1949年発表のハード・ボイルド小説の新訳です。リュー・アーチャーの名は小学生のときに児童向けの名探偵解説本めいたもので耳にしてはいました。ですが当時の私は、この主人公が暮らす世界は子供が覗き見ることが許されないような男女関係や暴力に彩られた大人の場所であることを過敏にかぎとってしまったのです。以来40年を経過した今日まで手にすることがありませんでした。今回、田口俊樹氏の新訳が登場したと知り、良き機会と思って読んでみた次第です。

 雨模様とは無縁で陽光降り注ぐ西海岸のイメージはここにはありません。陽気でにぎやかなカリフォルニアは姿を消し、人生にどこか倦んだ登場人物たちが粘度高く絡み合う陰鬱な事件がそこにはありました。下半身不随のサンプソン夫人、「邪な目的ぐらいもう充分持てる年」だとうそぶく二十歳の娘ミランダ、そのミランダに近づくお抱えパイロットのタガート、今はおちぶれた往年の映画女優フェイ、そして主人公のアーチャーもまた、別れた妻との間に良き想い出はなく、戦時中は情報部勤務だったという過去を持ちます。
 この小説を紡ぐ文章もこのうえなく乾いていて、純文学作家になることを渇望していた時期もあったロス・マクドナルドだからなのか、凝った、そしてざらついた言葉の連なりが、妖しく響きます。
「時計は時間をゆっくりと噛み砕いていた。一分に六十回も咀嚼していた」(320頁)
「丸くて茶色い乳首がシルクのパジャマ越しに鈍い眼のように私を見つめていた」(335頁)

 いかんせん、物語の展開があまりに短兵急なところがあります。アーチャーは一体いつ眠るのかと訝しく思うほど物語は昼夜を分かたず転がり続けますし、その一方で睡眠代わりというわけでもないでしょうが、彼は幾度も殴られ、わずか二日で3度も気絶するという始末です。意識を回復した後も医師の診断を受けることなく疾駆し続ける彼の姿にこちらとしては後遺症の心配をしてしまいます。そのあたりは少々ご都合主義ではないかと思うのです。

 ただ、物語全体を通してひとつとても印象に残ったことがあります。この物語に出てくる建物のどれもが高台に立っていることです。サンプソン邸も新興宗教家クロードの寺院も、最後に登場するハンフリーズ地方検事のアカスギ造りの平屋も、街を見下ろす位置に建てられています。こうした描写を私はアメリカのキリスト教で謳われるcity upon a hill(丘の上の町)と結びつけずにはいられません。
 Wikipediaを引き写すと、「ピューリタンの指導者ジョン・ウィンスロップは【…】、新約聖書から引用した「丘の上の町」(City upon a Hill)という譬えで表現した。丘の上にある町は下から仰ぎ見る視線が絶えず注がれるように、ニューイングランドのピューリタン社会への視線も絶えず他の世界から注がれ、この社会が全世界の社会のモデルになるべきであるという考えである」。
 サンプソンの屋敷は経済的成功を、クロードは強い信仰心を、そしてハンフリーズは法と秩序の尊重を象徴しています。そのどれもが第二次世界大戦で勝利をおさめたあの時代に繁栄を謳歌していたアメリカが抱える<正の価値観>を表しているはずのものです。
 しかし、リュー・アーチャーはそのどれに対しても、シニカルに背を向けているかのようです。彼は経済的繁栄とも無縁であるし、とりたてて信仰心があるわけでもありません。そして既成の法と秩序の枠を超えたところで生きるバイロン的ヒーローの姿がそこにはあります。
 ラストでアーチャーは車で山を下っていき、途中で保安官の車両とすれ違います。孤高の探偵が丘の上の町に背を向ける一方で、今日もまた既存の社会が丘の頂を目指して登っていく。この鮮やかな対比の中に私は、40年前に覗き見ることさえ躊躇(ためら)われた大人の世界を垣間見た思いがしたのです。

------------------------
*160頁:「退屈なときにやるのよ。何かに出会えるかもしれないって自分に言い聞かせて。何かまったく新しいことにね。道路上にあって、剥き出しで、きらきらしていている、いわば動く標的に」とありますが、「きらきらしていている」という表現がこなれていない感じがします。「きらきらしている」で十分ではないでしょうか。
 事実、この言葉を受けて168頁でアーチャーが言うセリフは「だから私には剥き出しで、きらきらしているようなものが必要なのさ。路上の動く標的みたいなものが」となっています。ここでは「きらきらしている」と訳されていて、やはりこれで十分だと思います。

*222頁:ある男とアーチャーとがこんな会話を交わします。
男「われわれはきみに命を授けたということだ」
アーチャー「だったら煙突に登ってそこから馬に乗って飛んでいったらどうだ?」
 このアーチャーのセリフにある「煙突に登って馬に乗って飛んでいく」の意味が測りかねました。
 原文は以下の通りです。
男「Your life is still in our gift.」
アーチャー「Why don’t you climb up the chimney and ride away?」
 これは次のような意味になると思います。
男「きみがまだ生きているのは我々からの贈り物みたいなものだ」
アーチャー「だったら煙突をさかのぼってさっさとソリで帰ったらどうだ?」
 つまり男が言った「gift(この場合はin our giftで「われわれの裁量のうち」)」という言葉を捕まえて、アーチャーは「お前はサンタクロースか?」とツッコミを入れているのでしょう。
 ride awayは必ずしも馬に乗ることだけを指すわけではなく、バイクや自転車などの乗り物に乗って辞去することを意味します。ですから「Santa Claus rode away on his sleigh.」(サンタはソリで走り去った)と表現することも可能です。

*272頁:「木の裂け目に手を突っ込んでいる余裕はないんでね」【…】「どうせ私は(中略)木の裂け目みたいに危険な女よ」というやりとりがあります。
 これはひょっとして古代ギリシアのクロトン出身でレスリング選手だったミロンの最期を暗示したやりとりなのでしょうか。
 Wikipediaの「クロトンのミロン」から引き写すと、「ある日、ミロンは己の腕力で木を切り倒そうとし、平手で木を引き裂いた。木は引き裂けたものの、彼の手は木の裂け目に挟まって取れなくなってしまった。その時、木が裂けた爆音に驚いた狼の群れがミロンに襲い掛かり、片腕しか使えなかったミロンは狼たちに食い殺されてしまった。」

*292頁:「そもそもわたしたちを呼んだりはしなかっでしょう」とありますが、正しくは「そもそもわたしたちを呼んだりはしなかったでしょう」。「た」の字が欠けています。

*342頁:「金が人にどんな影響を与えようと、金自体に罪はないよ。邪悪さというものが人の心にあるとすれば、金というのはそれを引っかける掛け釘みたいなものだ」とありますが、「掛け釘」のくだりが意味不明だと思います。
 第2文の英語原文は「The evil is within the people, and the money is the peg they hang it on.」です。確かにpegには「掛け釘」という意味もありますが、英和辞典には「理由,言い訳,口実,(議論の)切っかけ,根拠」という意味も載っています。そして「a peg to hang something on」で「~をする口実/きっかけ/理由/根拠」という意味になります。私は30年ほど前にアメリカ人やイギリス人たちと1年間仕事をしていたことがあり、彼らに何か提案をするたびに「What’s the peg?」(それを提案する根拠は?)と言われたものです。
 ですから先の訳文は「人の胸の奥には邪な心が巣くっていて、金がからむとそれが表に出てきてしまうのだ」くらいが適当だと思います。

.
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.5:
(4pt)

どんどん新訳を出して下さるのを期待しています!

ご存じリュウー・アーチャーの登場作“The Moving Target”を現在活躍中の翻訳家である田口俊樹氏が新たに訳し直して世に問うたものです。どなかかが、ブログの中で「翻訳というのは一種の文化遺産のようなものだ」と書いていらしたのを覚えていますが、たしかにある作品を媒介にして、その作品が翻訳された当時の我が国の文化や一般的な文体などが固定されて残るという意味ではなるほど言い得て妙で、面白い意見だと思って読んだのを記憶しています。そうした目でみると、どうして現代の気鋭の翻訳家が改めて本作品を翻訳したのかも分かりますし、実際現代のごく自然な文章に翻訳されています。田口さん、良い仕事をなさいましたね。

 この作品を読むのはもう40年ぶり以上になるのでしょうか。さすがに後期の円熟期の作品に比べるとまだ生硬な感じがぬぐえませんよね。しかし、今回読み返してみて感じたのは戦勝国であったとはいえ、あの戦争がアメリカやアメリカ人に残した傷跡は決して浅いものではなかったのだなということで、歳をとると小説の読み方も変るものだな、と何だか感慨深いものがありました。実際、戦後のなんとなくすさんだ世相がよく描けていると思いましたし、登場人物各人が各人なりに戦争体験を背負っており、それが行動にも現れているのがこれまたごく自然に書かれているのは、時代というものなんでしょうね。タガードが「自分は銃より機関銃の方が得意だ」といったりしますが、これはハードボイルド独特の捻りではなく本当のことなんですよね。彼はほんの何年か前までは戦闘機乗りだったんですから。それに、そもそも考えてみるとこの物語の遠因はサンプソンの息子が戦死したことに端を発しているという見方もできる訳です。この作品がアメリカの戦後と切り離しては考えられない作品であることが分かります。

 田口さんは現在乗りに乗って仕事をしている方で、ぜひマクドナルドの後期の作品の新訳を手がけていただきたいと念願します。というか田口さんとしては、いきなり後期の作品を何作か選んで翻訳することもできた訳で、今回あえて『動く標的』を取り上げたということは、やる気満々なのではないかと期待しているのですが...

(付記)表紙の裏書きにcopyright1949とあるのと同時に、copyright renewed 1977 by Ross Macdonaldとあります。著者は1984年に亡くなっており、晩年は奥さんの病気や自分自身の病気などで大変だったと聞き及びますが、これは亡くなる7年前に手を入れてたということなんでしょうか。であるとすれると、作者にはこの作品に単に出世作として以上の思い入れがあったのではなかと考えるのですが、どなたか詳しい方、教えて下さると有り難いです。
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.4:
(4pt)

リュー・アーチャー初登場作品を田口俊樹の翻訳で

ジャック・スマイト監督による映画版は主演のポール・ニューマンのクールな演技が忘れ難い傑作だが、井上一夫による旧訳(ポール・ニューマンのスチル写真を使用した表紙だった)を随分昔に読んだ際は正直あまり印象に残らなかった。改めて読み返してみると、1940〜50年代に濫造されたチャンドラー・スタイルのハードボイルド物(本書は1949年刊行)の中ではさすがに群を抜いた出来栄えで、後の名作『さむけ』(1964年)や『ウィチャリー家の女』(1961年)の深いテーマ性や重厚なドラマ、錯綜したプロットと見事な謎解きの興趣を同水準に期待しなければ充分愉しめる。リュー・アーチャーのキャラクターも後年の傍観者の如き静謐さとはほど遠く、ワイズクラックを叩き、窮地に陥る無鉄砲な行動の中に若々しい魅力がある。またマクドナルド作品の大きな魅力である風景描写の美しさが既に確立されている。
そして何より、このジャンルの翻訳者としては現代最高と思える田口俊樹による訳文が非常にスムーズ。
動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488132081
No.3:
(4pt)

行動するアーチャー

ロスマクの作品は、「さむけ」「縞模様の霊柩車」「象牙色の嘲笑」「ウィチャリー家の女」と読んで五作目にアーチャー初登場の本作を手に取った。
前四作はいずれも観察者としてのアーチャーの視点が際立っている。本作のアーチャーは三十代半ばという年齢に相応しく、行動するアーチャーといえるだろう。前四作になかったような、殴り合いやカーチェイス、銃撃戦があって、初期の作品にありがちな荒削りな面が見られる。後の作品に際立った、絡み合った複雑な人間関係と、それを解きほぐすような展開は本作でも健在であるが、「さむけ」を読んだ後では少々物足りなさを感じた。やはり、シリーズ物は時系列順で読んだ方がいいのかもしれない。
動く標的 (創元推理文庫 132-4)Amazon書評・レビュー:動く標的 (創元推理文庫 132-4)より
4488132049
No.2:
(4pt)

リュー・アーチャー初登場

本作はロス・マクドナルドが初めてリュー・アーチャーを主人公に据えて書いた作品です。ただし、当時の彼の筆名はジョン・マクドナルドというものでした。初期の彼の作風はレイモンド・チャンドラーの亜流と言われることが多いようですが、確かに暴力シーンが多いことや、裏社会の住人が登場するところなどはチャンドラーっぽいと思わせます。その一方で、家庭の悲劇を題材にしていること、その中でも父親探し的なテーマに光が当てられていることなど、既にロス・マクドナルド作品の特徴を立派に備えている点も見受けられます。尚、今作でのリュー・アーチャーは後期の作品とは違って妙に饒舌なのがちょっと意外。その為か後期作品群よりも読みやすい気がしました。
動く標的 (創元推理文庫 132-4)Amazon書評・レビュー:動く標的 (創元推理文庫 132-4)より
4488132049
No.1:
(4pt)

リュー・アーチャー初登場

本作はロス・マクドナルドが初めてリュー・アーチャーを主人公に据えて書いた作品です。ただし、当時の彼の筆名はジョン・マクドナルドというものでした。初期の彼の作風はレイモンド・チャンドラーの亜流と言われることが多いようですが、確かに暴力シーンが多いことや、裏社会の住人が登場するところなどはチャンドラーっぽいと思わせます。
その一方で、家庭の悲劇を題材にしていること、その中でも父親探し的なテーマに光が当てられていることなど、既にロス・マクドナルド作品の特徴を立派に備えている点も見受けられます。尚、今作でのリュー・アーチャーは後期の作品とは違って妙に饒舌なのがちょっと意外。その為か後期作品群よりも読みやすい気がしました。
動く標的 (創元推理文庫 132-4)Amazon書評・レビュー:動く標的 (創元推理文庫 132-4)より
4488132049

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!