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雪の階
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雪の階の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.24pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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主人公の伯爵令嬢が男性を誘う手紙の「難波江の葦のかりねにつかまって・・」を読むまでは楽しめた ”つかまって”ってなに? 手紙を読んだ木島が、惟佐子がわざと拙い表現をしていると思った、つまりブリッ子していると感じた、というのだが・・・ 同じ華族階級で10歳も年上の男に対して可愛くみせる必要など無いと思われるし、描写されている主人公の性格を考えると”つかまって”という奇妙な表現など絶対しないと思う 変だなと思ったことがもう一つある 惟佐子の兄を紅玉院の清漣尼と引き合わせたのは誰か? 重要なことだと思うが、これがどこにも書かれていない 一度読み終えてなぜかモヤモヤが残り、後半だけを二度読んでこのことに気がつき 確かめるために三度読んだ 惟秀が伯父の白雉とヨーロッパで会った際に惟秀の双子の妹である清漣尼のことを聞いたのか? そうだとすると、父親の笹宮伯爵も双子で生まれた娘(惟佐子の姉)の存在を知らなかったのに、なぜ伯父は知っていたのか? 清漣尼をこっそり隠した笹宮伯爵の母親藤乃は、白雉の妹(惟秀、惟佐子の母)の姑であり、白雉は藤野が完璧に隠した惟秀の(双子の)妹の存在を知る立場にないと思われるのに、どのようにして伯父は清漣尼の存在と居場所を知ったのか? 清漣尼は伯父の白雉を知っているのだから、伯父が清漣尼の存在を探り出したのだろうが これに関する記述が全く無い それとも友人で部下の槇岡によって清漣尼と引き合わされたのか? 惟佐子が受け取った槇岡の手紙には、子供の頃から紅玉院へ出かけていた、と書かれていたから、それが真実だと 仮定すると(槇岡の手紙には後に明らかになる虚偽が書かれていた)槇岡の仲介だったことになるが・・・ 伯父の白雉と槇岡とルートは二つあったことも考えられるが、全く記述がないのはどうしてか? 惟佐子が2.26事件に巻き込まれ自身も家族も破滅するのを回避した方法は、これしかない!というもので 秀逸だが、重要な記述がスッポリ抜けてしまって何とも気抜けした ☆2つにしようかとも思ったが睡眠薬で惟秀を眠らせたアイディアに敬意を表して☆3つにした | ||||
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私は作者のファンなのだが、世評とは真逆に、本作には失望させられた。本作は冒頭から直ぐに分かる通り、満州事変、5・15事件を経て、太平洋戦争へと到る時代の不穏な雰囲気を、笹宮という伯爵を中心とした上流階級及び下士官候補生といったエリート側の視座で描いたものだが、様々なガジェットを散りばめるのは良いが、それらを上手く収斂出来ず、結果として散漫で焦点がボケてしまうという作者の悪癖が出てしまっている。笹宮家の数学・囲碁好きの上に霊能力を持つ美貌の令嬢が一応ヒロインなのだが、このヒロインを含め、作品全体が中途半端と矛盾と軽薄に満ちている。 そのヒロインの親友の「心中事件」が本作の軸の1つなのだが、鉄道を使ったアリバイ・トリックのパロディの様な趣き(作者も得手とするパロディを意識していると思う)で、ミステリ的にはお粗末という他はない。誰が見ても、偽装「心中」なのに、これを軸の1つとするとは何とも中途半端である。第一、霊能力を持つ上に、本事件と密接に関わっているヒロインには真相が「見える」筈なのに、一向にそうした気配がないのは何故なのか ? また、時局の描写にしても、本気で取り組むとすれば、それだけで最低でも本作と同程度の頁数を要する筈なのに、単に軽く流すだけで、緊迫感を著しく欠いている。作者としては、これをヒロインの出自・霊能力で補う積りだったのかも知れないが。そして、ヒロインとその(死産した筈の)姉の尼僧の思想・霊能力である。二人の思想は伯父から薫陶を受けている訳だが、作中でこの伯父が発狂した事が明記されているので、この伯父の言葉(妄想)を信奉する尼僧の姿勢はオカシイが、伯父の言葉だからまあ許せるとして、伯父の純化思想と尼僧の淫乱性癖とは完全に矛盾している。一方、伯父の言葉を信用していないヒロインも淫乱性癖とあっては、ヒロインに神秘性・純白性を与えようとした(と思う)作者の思惑とこれまた矛盾している。また、二人と同じく伯父から薫陶を受けたヒロインの兄の思想が2・26事件の引き金になったというのは、2・26事件を余りにも矮小化しているだろう。 最後に本作の意匠である。ヒロインの幻視に依れば、日本は米国との戦争に負け、国土・人心は荒廃するが、日本人は立ち直って新しい日本を築くとある。「えっ、こんな事を書きたいために、こんな大部を書いたの?」と思わずツッコミたくなる程の噴飯物である。一見、伽藍は豪華だが、中身は空っぽな凡作だと思った。 | ||||
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