神器-軍艦「橿原」殺人事件
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神器-軍艦「橿原」殺人事件の総合評価:
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上巻の最初半分は読み続けるのに忍耐が必要で、それが後半には一転しておもしろくなり下巻の真ん中あたりまでは一気に読み続けてしまいました(上巻のレビューは星4つでした)。 ここまですごい話になって、いったいこれをどう回収するんだろうとわくわくしながら読み進みましたが・・下巻後半から話がぶっ飛びすぎてメタメタに。 絨毯のように足元を埋め尽くすネズミの大群とか、瓶にネズミの死体を詰めて飲料水を作ろうとしてる水兵とか、腐っていく死体とその臭いとか、軍艦のあちこちで繰り広げられる男色の性行為とか、軍特有の残酷で理不尽な拷問とか、つるし上げといじめに熱中して権力欲を満たす上官とか、腸が飛び出てくる切腹の様子とか、異様で気持ちの悪い話ばかりが続き、この描写は本筋に必要あるのか?ひとつひとつ意味があって書いてるんだろうか?とわからなくなってきました。 左寄りの考え方で戦争絶対反対の人だと、敗戦に向かう軍艦の中での地獄のような軍隊生活に「そうだそうだ、戦争は絶対いけない、軍隊は悪である、戦時中の軍国主義はひどかった、天皇崇拝もひどかった、二度と戦争をしてはいけないのだ!」というメッセージだと取るでしょう。 「雪の階」では”帝位に座るべきでない純血ではない今の皇室”という話が出てきますが、ここでも同様に”今の天皇は偽物である”という思想が出てきます。 今まで、「吾輩は猫」「雪の階」「グランドミステリー」と読んできたのですが、この3作品から作者はマジックリアリズム的な楽しめる純文学を書く作家だと思ってきました。が、この作品を読んでわからなくなりました。 ひょっとしてこの方は戦争反対、天皇反対主義者なのか?作品の中でそのテーマが繰り返し出てくるのは、作品には政治的なメッセージがこめられていて結局訴えたいことはそれなのか?何を思って小説を書いていらっしゃるのか・・。 そしていずれにせよ、ここまで支離滅裂にする必要はなかったのでは・・。「雪の階」や「グランドミステリー」もメタでしたが、それなりに格調高く美しいといっていい小説だったのに。 あとがきは渡辺直己という文芸評論家の方が書かれていますがこれもまた微妙でした。 ここに書かれているのはちゃんと作者から取材した話なのか?それともただの推測で書いているのかどちらなんでしょう。もしただの推測なら、独りよがりな分析で突っ走っているだけの感ありです。つまりは熱狂的に作品をほめたたえているのですが、やたらと難解な文章で自分の知識と分析力を誇示したいだけのようにも見えます。 途中まではよかったのに、最後に向かって思いっきり失速しました。残念です。 | ||||
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とりあえず上巻だけの評価です。 先に読んだ「グランドミステリー」のレビューで”「神器」の方がスケールが大きくてよかった”ということを書いていた方がいたので、期待して読み始めました。 「グランドミステリー」も同様でしたが、最初のあたりは結構忍耐がいります。 最初の260ページくらいまでは特に大きなことが起きるわけでもなく、太平洋戦争で明らかに敗戦に向かっている日本で、沖縄で撃沈されるとわかっているのに精神論だけで出航してゆく軍艦”無左志”、それに連携した作戦に参加するらしい軍艦”橿原”に乗った面々の様子が描かれます。 艦長から水兵まで海軍のむさい男どもがそれぞれの事情を抱え、不満たらたらの理不尽な軍艦生活を送る様子が延々と描かれるので、女性の自分には感情移入できる人物が誰もいなくて正直かなり退屈でした。 それでもこれまで自分の中で最高評価だった「雪の階」と「グランドミステリー」同様に期待して読み進めていくと、後半から急に話がアップテンポになり進み始めます。 上巻では、いつもの”過去と現在、未来を行き来する”とか、”死んだはずの者が現れる”とか、龍?の作用でネズミになってしまった人間たちとか、起きたのは本当に殺人事件だったかどうかも曖昧で、話がとっ散らかったままです。それでもおもしろいので止まらなくなってそのまま下巻に突入し、200ページほど読み進みましたが、いまだにこの話をどんなふうに終わらせるのかまったく先が見えません。さてどうなるのでしょうか。 「猫」「雪の階」「グランドミステリー」と読んできましたが、いまだに著者が何を意図して小説を書かれているのかわかりません。思いっきりおもしろい破天荒な娯楽小説を目指しているのか?それとも深淵な純文学を創作したいのか? 戦争や軍、皇室がらみのテーマが多いようですが、こういう雰囲気からすると「これがけしからん、こうあるべきである」という戦争批判や政治的なイデオロギーを訴える作品ではないと感じるのですが・・著者のエッセイがあるようですので、またそちらも読んでみたいと思います。 | ||||
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不思議な読後感のある作品である。 舞台は敗戦を控えた軍艦の中。 ある命令を受けて出撃するのだが、その命令とはなにかが一向に明らかにならない。 そして、その命令の正体が明らかになるにつれ、その命令がとんでもなさにある意味で引き込まれていく。 しかも、昭和20年の過去と現代が物語の中で錯綜し、作中の小説と作中の現実もまた錯綜していく。 奥泉の作品は「プラトン学園」など何作か読んでいるが、「石の来歴」もそのような錯綜が、テーマを浮き彫りにさせるための一つの表現手法となっていた。 彼のスタイルなのだろう。 殺人事件と副題にあるが、これはミステリーではない。 版元の分類によれば純文学であり、日本人論を描いた力作という。 そうだなあ、最末期の日本の軍人の精神などは、この誇張的に描かれた狂気に近いものであったに違いないと思わせ、それが誇張的にカリカチュアライズされている分だけ、純文学なのかもしれない、などと感じてしまった。 昭和20年の海軍兵士の「おれ」を主語にした語りなのだが、その口調が今風で、これも独特の読後感に寄与しているようだ。 | ||||
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不思議な読後感のある作品である。 舞台は敗戦を控えた軍艦の中。 ある命令を受けて出撃するのだが、その命令とはなにかが一向に明らかにならない。 そして、その命令の正体が明らかになるにつれ、その命令がとんでもなさにある意味で引き込まれていく。 しかも、昭和20年の過去と現代が物語の中で錯綜し、作中の小説と作中の現実もまた錯綜していく。 奥泉の作品は「プラトン学園」など何作か読んでいるが、「石の来歴」もそのような錯綜が、テーマを浮き彫りにさせるための一つの表現手法となっていた。 彼のスタイルなのだろう。 殺人事件と副題にあるが、これはミステリーではない。 版元の分類によれば純文学であり、日本人論を描いた力作という。 そうだなあ、最末期の日本の軍人の精神などは、この誇張的に描かれた狂気に近いものであったに違いないと思わせ、それが誇張的にカリカチュアライズされている分だけ、純文学なのかもしれない、などと感じてしまった。 昭和20年の海軍兵士の「おれ」を主語にした語りなのだが、その口調が今風で、これも独特の読後感に寄与しているようだ。 | ||||
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読み応え抜群で、重厚なテーマを扱いながらスラスラと読ませる漱石ばりの文章力に感謝。又、渡部直巳氏の解説は素人では気付き憎い、過去の文学作品との関係について述べられ、とても参考になった。この大作を読み終えた素人の感想としては、まずひたすら面白くエンタメ度は最高だと思う。ミステリとかSFとか戦争文学とか、ジャンルにこだわらず読むと良いのではないか。 そして、あえてタブーに挑んだ問題作であるのも見逃せない。日本人にとって最大のタブーと思われる天皇制を始め、軍部における男色、暴力、思想警察など、読むに耐えないような描写もあり、万人向けとはとても思えない。が、それ故に魅力的なのは確かで、現時点での作者の最高傑作に推したい。 | ||||
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