叫びと祈り



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叫びと祈り (創元推理文庫)

2013年11月28日 叫びと祈り (創元推理文庫)

砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇…ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。大型新人の鮮烈なデビュー作。 --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。 (「BOOK」データベースより)




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叫びと祈りの総合評価:6.77/10点レビュー 77件。Bランク


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(9pt)

そして物語の謎は未知なる海原へ

2010年のミステリシーンに突如現れた新星梓崎優氏。その年末の各種ランキングで上位を獲得した珠玉の短編集が本書。
本書が特徴的なのは全ての短編が海外を舞台にしており、その国の、その土地の風習や文化で醸成された日本人の価値観から離れた尺度での考え方に立脚した論理で構成されている点にある。

彼のデビューのきっかけとなったミステリーズ!新人賞受賞である冒頭の短編「砂漠を走る船の道」だ。
砂漠の民にとって何が大事か。それが本書の謎を解くキーとなる。
人殺しを最凶最悪の犯罪とみなす先進国の考え方は警察も介入することのない砂漠では一切通用しない。迷うと即死に繋がる過酷な状況下では生きることすら困難である。

続く「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」の舞台はスペイン。
冒頭の1作目に比べると謎解きの妙味、論理の斬新さというのは独自性を感じない。
むしろ本作では斉木の学友サクラが失恋を乗り越えていく過程とハッピーエンドに転じる物語に焦点がある。苦い青春の1ページは1年後の幸せのための一種の試練だったのだ。

斉木が取材で向かった先はロシア。「凍えるルーシー」は南ロシアにある修道院に祀られている250年前より変わらぬ姿で眠っているリザヴェータという不朽体を列聖、つまり聖人認定の調査のため、司祭に同行していた。
これも修道院という特殊な環境と風習ゆえに起こる錯誤がうまく物語に溶け込んでいる。
そして一種独特の環境で成り立つ狂気の論理はチェスタトンのそれを彷彿とさせる。重苦しく、ストイックな雰囲気も抜群である。

再び斉木は熱いところへ取材に赴く。「叫び」は先住民族の取材のため、アマゾン川に今なお生息する部族のうち、ボランティアの医師アシュリー・カーソンに同行してデムニという名の人口50人程度の小さな部族を訪れる。
先史時代的な生活を送る部族がアマゾンの地にはまだ複数存在するらしい。本作はそんな部族の1つをテーマにした物語。
これぞまさに梓崎節とも云える日本人の尺度では測れない彼らの価値観によって殺人の動機が看破される。
エボラ出血熱に侵された部族。もう僅かばかりの生存者も感染の疑いがあり、ほぼ全滅することが決定的だ。そんな死を間近に控えた部族の中で生存者が次々と殺される。なぜ待てば死にゆく者たちを敢えて殺すのか?
この発想の違いはかなり斬新だった。これこそが私が本書で求めていた論理なのだ。

そして物語は最後の短編「祈り」で閉じられる。
最後は斉木本人の物語。世界を巡る物語に相応しい1篇だ。


2016年の現在(当時)、たまたま海外に住んでいる私にとってここに書かれている独特の論理や倫理観は全く特別なことではない。日本人の考え方は世界のグローバルスタンダードではなく、先進国となり、儒教の教えが今なお残っている日本の長い歴史で培われた独特の考え方であることを再認識させられる。

本書もまたそうで、国、地域そして宗教の数だけ独特の考え、倫理観がある。

砂漠という過酷な環境で生活せざるを得ない人々にとって何が一番大事なのか?

聖女の存在を信じた修道女にとって聖人とは決して腐敗しない存在でなければならなかった。

強烈な伝染病に侵された部族が滅ぶしかない状況の中で敢えて連続殺人が起こる理由とは?

これらの問いの答えが明らかになる時、我々に刷り込まれた人の命を尊ぶ道徳観が脆くも崩れ去る。先進国に住む平和な我々には想像できないほど明日への保証のない後進国では自身が生きるために他者を殺すことなど平気でするのだから。人の死もまた自分の生活のために利用するのが彼らの論理だ。

また梓崎氏がミステリシーンにもたらしたのはこのような海外の国々で醸成された倫理観や価値観を導入しただけではない。
携帯電話の普及や最先端の科学を応用した警察捜査が横行する現代にあってまだそれらが介在できない状況があることを示したのもまた本書の大きな成果の一つだ。

目の前に広がるのは砂の海ばかりという砂漠の只中や携帯は圏外となるアマゾンの奥地では人が死んでも容易には警察は来られない。この事実には目を開かされる思いがした。
21世紀の今でも警察が介入できない状況があることを梓崎氏は斬新な手法で我々に示してくれたのだ。それはやはり日本だけで物語を繰り広げていては嵐の中の山荘程度の発想しか出来なかっただろう。世界へと外側へミステリを開いていったことがこの成果に繋がったのだ。

そして平和な日本では測れない尺度で物事が進行し、容易に人の命でさえ奪われる環境に身を置いた斉木もまたこれらの物語に取り込まれていく。彼が記憶を無くす物語「祈り」で彼が抱えた心の傷の深さがしみじみと伝わってくる。

そしてこういう作品を最後に持ってきた作者の手腕に感嘆する。
創元推理文庫で上梓される新人の短編集は最後の1編で今までの短編に隠されたミッシングリンクが明かされるのが常だが、それが時にキワモノめいてやりすぎの感が否めないものもあった。
しかし本書では主人公斉木が回復するファクターとして用いられる。

最後まで読むとなぜ本書のタイトルが『叫びと祈り』なのかが解る。
世界を巡る斉木は人間にとって生きることが困難な世界の残酷さとそこで生きざるを得ないために残酷な道を選ぶ人々に対して叫んだのだ。しかしそれでも世界は美しいと信じたいがために祈りを捧げる。明日を信じてまた斉木はまだ見ぬ世界へと旅立つのだろう。

日本の本格ミステリよ、新たな論理を求めて海の外へ繰り出そうではないか。まだまだ未知なる謎と論理の沃野は果てしなく広がっているのだから。
本書を読むとそんな風に思わせてくれる。


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Tetchy
WHOKS60S
No.8:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

叫びと祈りの感想

主人公を同じに5つの異なる国を舞台にした5編の短編集。
一応謎解きの体をとっていますが、文学的というか詩的というかそういう文体でどこか淡々としていますね。
上手く表現できないのですが、
1つ1つ単独で見るとどこか物足りない感じがするのですが、短編「集」になった時、凄くまとまっているように感じるんですよね。
我々日本人との、文化の違い、価値観の違いを上手く扱ったホワイダニットで、文体もさることながら全体的に「質の高い作品」に思えました。
面白いか面白くないかは別にして、ですが。

梁山泊
MTNH2G0O
No.7:
(7pt)

着眼点がよいです

それぞれの話を楽しめました。

わたろう
0BCEGGR4
No.6:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

叫びと祈りの感想

著者初読み。別々の国で起きた事件5編が収められた短編集。1話目で驚き、2話目で呆れて2か月放置。気を取り直して再開したが、3話目で目が点になり、4話目はゾッとした。ただ、5話目の必要性があまり理解出来なかった。ミステリーとしては動機を推理するタイプの作品で、全て意外な理由で良かったと思う。クローズドサークル的設定なので容疑者が少なく、犯人当てに良いかな。文章も凝っていて面白いんだけど、美文と言うよりは読み辛い文だと感じた。力作でしたが、自分の好みとは方向性が違ったんでしょう。向きが合う方は痺れると思うよ。

なおひろ
R1UV05YV
No.5:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

叫びと祈りの感想

「旅人」斉木とともに世界中を旅している気分にさせられる連作推理短編集!ミステリ的には「砂漠を走る船の道」、「白い巨人」のトリックの巧みさに驚かされたし、全体的にはその国それぞれの価値観によって打ちのめされる斉木やその仲間たち(=日本人)の姿が鮮烈に印象に残った!

ジャム
RXFFIEA1
No.4:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

叫びと祈りの感想

五つの話が収められていて、ジャーナリストの斎木という人物を主人公にしたミステリー集となっている。始めに収められている「砂漠を走る船の道」が高い評価を得て第五回ミステリーズ!新人賞を受賞して作家デビューを果たす結果となった。
アフリカ大陸のサハラ砂漠やスペイン、南ロシア、アマゾンなどを舞台にしたジャーナリスト斎木が遭遇する出来事が新人離れした文章で綴られている。思い込みや価値観の違い、それらを上手く扱ったミステリーに仕上げている印象を受ける。つまり、料理は同じでもレシピが違うと云ったところか。
個人的には二話目の「白い巨人」が一番好きかな。これも読み手の思い込みを逆手にとって爽やかにうっちゃるオチをみせる物語で友人達の行動も清々しい。こう云うハッピー・エンドの物語は読んでいて気持がよい。とにかく視点と文章に惹かれる。今後も注目していたい作家だ。

ニコラス刑事
25MT9OHA
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

叫びと祈りの感想

嫌いじゃないです。

この作品は、フーダニットと言うよりホワイダニットです。

重かったり、軽かったり、苦しかったり、救いだったり……

どれもなかなかいいテーマだったと思う。

アンコウ
BKBVHN0W
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

叫びと祈りの感想

砂漠を走る船の道が一番良い。短編集の先頭にこれを持ってきたのは正解だろう。
世界を上手く構築している。

Ariroba78
5M53WTS6
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

詩的な文芸作品

異文化による価値観の違いが
ミステリと上手く絡んでいると感じました。
世界の景色がうまく描かれていおり、
まるで詩を読んだかのように思い浮かぶ情景がとても綺麗です。

巻頭の「砂漠を走る船の道」より、
砂漠の民が数日間 命がけで砂漠に向かい採取する岩塩。
危険な旅だが、なんと5ドルももらえるからだ。と話すシーンは
本書が扱う異国をより印象付けたと感じました。

また、「叫び」については価値観の違いを巧く扱い、
ダークな雰囲気が引き立つインパクトある作品で
短編ながらもとても重厚でした。

ただ、ラストの「祈り」については、
雰囲気を崩してしまった印象を受けたのが正直な所ですが、
全体的に良い作品でした。

egut
T4OQ1KM0
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