虫樹音楽集
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何とも、この作家らしい不思議な読後感の小説である。 通奏低音はカフカの『変身』。 虫と音楽と宇宙がこの小説の中では渾然一体となってくる。 考えてみると、この人の場合は他の小説でも「宇宙オルガン」とか出てきて、音楽と宇宙は渾然としているのだが、今回はそれに虫が加わったわけだ。 しかも小説の中の「現実」と、小説の中の「小説」がさらに入り乱れ、どれが現実でどれが小説か分からなくなる。 まあ、これも考えてみると、時間が円環していることも含めて、奥泉光の味なんだろうなぁ。 余り普遍的には薦められないけれど、好きな人にはたまらない一冊w | ||||
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一回読んだのみでは取りつきにくく、二度読んだら面白みがわかった。作者の分身のような「私」は、高校の吹奏楽部の先輩の応援で川口のライブに行き、「イモナベ」のサックスの演奏に出会いどこか惹かれる。全編が、カフカの「変身」(「変身」ではなく、(昆虫の)「変態」が正しいとされる)を下敷きにした連作短編からなっており、一篇目の「川辺のザムザ」の変奏曲のように、今は忘れられた「イモナベ」の活動の軌跡を追う話が、小説や回想の形をとって重層的に繰り返される中で本当の事実がわからなくなる。その間に、間奏曲のように、化石となったザムザテラニウスや、スカイツリーを上る巨大な虫の話、タイヤを食べる人々とむかでの話、宇宙樹(虫樹)の話などの奇怪な挿話が混じるが、あり得ない話をリアルに語るのは作者の得意分野である。連作全体では、「イモナベ」の軌跡を探り、一体何が起きていたのかを追う中で、それとダブルで、カフカの「変身」とは何だったのかが追求されている。物語の背景には、70年代の変革のムーブメントの中にあったジャズシーンへの作者のオマージュや「逸脱」への賛歌が描かれている。読後感は、甲虫となったザムザの最後の視界と同じで、一面灰色の荒野のように茫洋としているが、面白い小説である。4つ星をつけたが、私は、「鳥類学者のファンタジア」の方が好きなので、ファンタジアを5とするなら、本作は4としたところ。 | ||||
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結構バラバラに発表されたオムニバス短編集。妙にリアルな書き方から実話と勘違いしそうだが、フィクションらしい。音楽関係、特にジャズなんて全くの門外漢なので、モデルの人物がいたのか全くわからないが、十分読ませるのはさすがの筆力である。カフカの名作「変身」がモチーフだが、「変身」は本当は「変態」なのだと言うジャズミュージシャンの寄行を後から回想して、本当の出来事であったのか調べるミステリタッチの内容に引き込まれた。が、サイドストーリーのように挟まれた「虫樹」に関するエピソードが圧倒的な迫力で、本書のキモ。「虫」の描写は生理的な嫌悪を覚えるが故に、強烈な印象だった。あえて具体的には触れないが…… カフカの名作をモチーフに幻想的なイメージを綴ったジャズ小説、と評しておく。これじゃどんな内容だかわからないが。(笑) | ||||
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この小説を語る人は、奥泉光さん自身を連想させる作家さんでありますが、この人がカフカの変身という小説を学生時代に読んでるところとか、ジャズが好きらしいところなんかも、私と趣味が似ているような気がするのであります。当小説に出てくる、サキソフォン奏者の渡辺柾一っていう人の奏でる音は、私が生で聴いたことがある日本のサックスプレーヤー竹内直さんの循環奏法で途切れなく沸きあがるバスクラリネットの音色を連想させる。読み手の私も、循環奏法のように現実と虚構のループする不思議な世界に引き込まれてしまいました。 | ||||
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「過去に出会ったある特異な人物の思い出をあやふやに語る」という、私が奥泉作品の中で一番好きなパターンがきました。初期の「暴力の舟」(『蛇を殺す夜』所収)と「その言葉を」(『滝』所収)を足したような内容ですが、「語り」の幅が広がり、仕掛けも凝っています。最初の「川辺のザムザ」を読んで、前記の「暴力の舟」や「その言葉を」を読んだ時の感動を思い出しました。主人公のサックス奏者渡辺猪一郎にメルヴィルの「バートルビー」の姿が重なります。ユーモラスで哀切、素晴らしい連作短編集です。 | ||||
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