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凍った夏



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【この小説が収録されている参考書籍】
凍った夏 (創元推理文庫)

凍った夏の評価: 3.25/5点 レビュー 4件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.25pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(5pt)

人生を狂わされた

ジム・ケリー著、玉木亨訳『凍った夏』(創元推理文庫、2017年)は現代英国を舞台とした推理小説である。タイトルの『凍った夏』は不思議な表現である。物語の季節は真冬である。凍死者が出る。寒さの厳しさの描写が生々しい。『凍った冬』がしっくりくるほどである。

勿論、『凍った夏』のタイトルは誤植ではなく、意味がある。人生を狂わされた人にとって、まさに凍った夏であった。狂わせた側の身勝手さに怒りを覚える。主犯だけが因果応報の結末に対して、他にも悪人はいると不満があるものの、その思いを抑え込むほどの異常性が主犯にはある。

本書は推理小説である。帯には「純度100%の謎解き」とあるが、オーソドックスな推理小説とは趣が異なる。探偵役は当事者であった。探偵役の推理はポンコツである。真相は別人から語られる。しかし、そこに至るまでには探偵役の丹念な調査があった。この点で真相への到達は探偵役の成果である。

また、本書には一つの事件だけでなく、様々な事件が出てくる。それらには本筋と関係するものもあるし、関係しないものもある。目の前の事件の解決に専念できる一般と探偵は逆に恵まれていると感じた。

本書は冬の自然の厳しさだけでなく、社会問題の描写も生々しい。薬物問題などを描いている。配管工を装い訪問販売する詐欺業者は日本の悪質リフォーム業者と重なる。人手不足を口実に警官が事件を真面目に捜査しない点も日本と重なる。刑事にも因果応報の明暗があるところは考え込まれている。

主人公は新聞記者であるが、本書はマスメディア関係者を嫌う側の論理も描いている。プライバシーを詮索する取材に対して、ある登場人物は「そういうあんたの人生については、なにを聞かせてもらえるのかな、ドライデンさん?奥さんは?彼女のことを愛している?子供は?」と返す(334頁)。マスメディア関係者から詮索を受けた際に使ってみたい返しである。
凍った夏 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:凍った夏 (創元推理文庫)より
4488278086

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