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方舟さくら丸



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【この小説が収録されている参考書籍】
方舟さくら丸
方舟さくら丸 (新潮文庫)

方舟さくら丸の評価: 4.20/5点 レビュー 25件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.20pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

どういう類の面白さなのか

後半はいろんな出来事が立て続けに起きるから割と飽きずに読める。が、四人のメンバーがそろってからしばらく、特筆すべきこともなくだらだらとやり取りが続くところは飽きる。
安部作品はどうも、長編が苦手だ。特有の違和感がある。それは例えばモグラの足が便器にはまるところだったり、「女子中学生狩り」という話が突拍子もなく出てきたり、女の割合都合のいい描かれ方(尻を叩かれるところとか)だったり。その場の思いつきで書いているという感じが、特に隠ぺいされることもなく、ぬけぬけと描かれている。というところがどうにも気になってしまう。
この作品の執筆前後のエッセイ「死に急ぐ鯨たち」で、安部は「分析はやめて、イメージのなかを泳ぐように執筆している」と述べている。そう思ってみればなるほど、自由連想的な描かれ方をしているのも納得できる。が、どうも自由連想的なその場の着想が、話の進行に関わる「都合のいい偶然」というか、「見え透いた偶然」のように思えなくもない。例えば主人公が便器にはまったシーンは、その後昆虫屋に主導権を握らせるための伏線になっているし、ダイナマイトを爆発させざるをえないという理由づけにもなっている。「女子中学生狩り」なんかは、シェルターに取り残された「ほうき隊」の老人連中と明確に対比されるところが作為的だし、「生殖・切り離された世界で独自の生活を築いてゆく」という未来を読み手に想像させるために無理矢理ぶち込んだ要素、という感じがしなくもない。
儀式的なものを嫌悪している安部からしてみれば、物語然とした物語を好まないだろうし、自身が描く小説が型にはまることも望まないだろう。そういう意味では、自分でも何が起こるかわからない、というその偶然的な描き方にこそ(安部にしてみれば)意味があるとも言える。が、私には安部による長編小説の自由連想的な描かれ方が、「どうしてもそうなってしまう」という必然性を欠いているように感じられる(短編は別)。安部自身が無くし去ろうとした「分析的な意識」を、随所に感じざるをえない。
方舟さくら丸 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.2:
(3pt)

心理戦に負ける主人公に我が身を照らす。

核戦争から身を守るための方舟を用意して来た主人公が、
ともに乗船する事になった、さくら、女、昆虫屋といっしょに
どたばたする。そもそも自分が船長であったのに、最後の
土壇場で船を逃げ出さないといけない気になる。予期せぬ
乗船客が想定外の場所からつぎつぎ現れてパニックになるのだ。
 本来乗船客を募って、出航するつもりだったのに、なぜか
連中をすべて敵と思い込む。

 で、逃げ出したとたん、話は終焉するわけだ。外では核戦争が
起こっているのだから。
よく考えれば方舟から逃げ出さないといけない理由などないのだ
けれど。
方舟さくら丸 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.1:
(3pt)

安部は短編がいい

安部は短編がいい。ブラックなレトリックが秀逸な安部の作品は長編だと食傷気味になる。ただ、さすがに短編ほどブラックではなく現実感が垣間見える。他の人も書いていたが、終わり方が安部らしくなく「新境地」と言えるかもしれない。安部の晩年の作品なので彼も丸くなったということだろうか。安部は物語を「登場人物に語らせる」ことで有名。(自分の作品が教科書に採用されて)「教科書でこのとき主人公はなにを思ったかという設問があるが、そんなの私にだって分からない」と安部がインタビューで答えている。とはいえ、ストーリー展開に安部の経験が反映されているのは間違いないだろう。
方舟さくら丸Amazon書評・レビュー:方舟さくら丸より
4106006413

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