方舟さくら丸

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評判

方舟さくら丸の評価:

4.20/5点 レビュー 25件。 B ランク

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平均点4.20pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全41件 1〜20 1/3ページ
No.41
(5pt)

一冊で3度はおいしい小説

〇 ひとことで言えば多彩かつ多面的な作品だ、ということになる。まずなんと言っても面白い。細部まで周到でマニアックで緻密な状況設定、世間のはみだし者ばかりを集めた登場人物たち、小気味よい物語の進行。冒険小説のスリルと推理小説の意外性を兼ね備えたエンターテインメントだ。

〇 次いでその文章術。さすがに安部公房だと唸らないわけには行かない。小説のはじめの方には秀逸な比喩と華やかな表現をちりばめ、後半になるとまっすぐな事実描写でわき目もふらずに畳みかける。体言止めの多用が生む不思議な余韻。全篇を対象と距離をおいた表現が生むユーモアが支配している。便器から脚が抜けなくなった主人公「もぐら」と、穴の底に囚われた『砂の女』の主人公と境遇はよく似ているのだが、もぐらは『砂の女』の主人公みたいにジタバタせずに、どこか余裕をもって事態を見守る。そこにユーモアがうまれている。

〇 さらに風刺も忘れていない。やり玉にあげられるのは、国家権力の粗雑、組織人間の危うさ、老人の醜悪、簡単にひっくり返る力関係のもろさなど。ただ、チクリチクリとやるだけで深入りはしていない。

〇 最後に、全編を通じて克明に追っている主人公の心理の不思議が味わい深い。彼は世間から逃れるためにシェルターを作り、最後は真っ先にシェルターから逃れて世間に戻った。ここに何か寓意があるのだろう。

〇 この作品でいったい作者は何を言いたかったのだろうか、と一応は考えてみたのだが、すぐにやめた。その気になれば何かもっともらしいことは言えそうな気はするけれど、上に列挙したことで十分ではないか。念の入った架空の小世界を作り上げて、2日にわたって何時間もの楽しい時間を読者に提供し、社会と人間の愚かを垣間見せ、ちょっとした価値の転換に似た感覚を味合わせ得たとすれば、小説家としてそれ以上なにを望むことがあるだろう。

〇 ああ、面白かった、で良いのだと思う。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.40
(5pt)

一冊で3度はおいしい小説

〇 ひとことで言えば多彩かつ多面的な作品だ、ということになる。まずなんと言っても面白い。細部まで周到でマニアックで緻密な状況設定、世間のはみだし者ばかりを集めた登場人物たち、小気味よい物語の進行。冒険小説のスリルと推理小説の意外性を兼ね備えたエンターテインメントだ。

〇 次いでその文章術。さすがに安部公房だと唸らないわけには行かない。小説のはじめの方には秀逸な比喩と華やかな表現をちりばめ、後半になるとまっすぐな事実描写でわき目もふらずに畳みかける。体言止めの多用が生む不思議な余韻。全篇を対象と距離をおいた表現が生むユーモアが支配している。便器から脚が抜けなくなった主人公「もぐら」と、穴の底に囚われた『砂の女』の主人公と境遇はよく似ているのだが、もぐらは『砂の女』の主人公みたいにジタバタせずに、どこか余裕をもって事態を見守る。そこにユーモアがうまれている。

〇 さらに風刺も忘れていない。やり玉にあげられるのは、国家権力の粗雑、組織人間の危うさ、老人の醜悪、簡単にひっくり返る力関係のもろさなど。ただ、チクリチクリとやるだけで深入りはしていない。

〇 最後に、全編を通じて克明に追っている主人公の心理の不思議が味わい深い。彼は世間から逃れるためにシェルターを作り、最後は真っ先にシェルターから逃れて世間に戻った。ここに何か寓意があるのだろう。

〇 この作品でいったい作者は何を言いたかったのだろうか、と一応は考えてみたのだが、すぐにやめた。その気になれば何かもっともらしいことは言えそうな気はするけれど、上に列挙したことで十分ではないか。念の入った架空の小世界を作り上げて、2日にわたって何時間もの楽しい時間を読者に提供し、社会と人間の愚かを垣間見せ、ちょっとした価値の転換に似た感覚を味合わせ得たとすれば、小説家としてそれ以上なにを望むことがあるだろう。

〇 ああ、面白かった、で良いのだと思う。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.39
(5pt)

見つけた!

大変安く購入出来ました
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.38
(5pt)

見つけた!

大変安く購入出来ました
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.37
(5pt)

簡単には忘れられそうにない

ものすごく感動的な話ではないし、痛快な話でもない。しかし読み終わった後に、心の中に何か引っかかる塊のようなものができ、簡単には忘れられそうにない。
物語の全てが何かの隠喩であるような感じだが、何の隠喩なのかははっきりわからない。そのモヤモヤも、心の中に引っかかる。
はじめは主人公の考え方についていけないが、だんだん、主人公が自分とあまり変わらない人間のような気がしてくる。
物語の最初と最後に出てくる市庁舎の黒いガラス張りの建物に関して、主人公の受け取り方が大きく変化しているのは、主人公の成長のせいなのか、喪失感のせいなのか。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.36
(5pt)

簡単には忘れられそうにない

ものすごく感動的な話ではないし、痛快な話でもない。しかし読み終わった後に、心の中に何か引っかかる塊のようなものができ、簡単には忘れられそうにない。
物語の全てが何かの隠喩であるような感じだが、何の隠喩なのかははっきりわからない。そのモヤモヤも、心の中に引っかかる。
はじめは主人公の考え方についていけないが、だんだん、主人公が自分とあまり変わらない人間のような気がしてくる。
物語の最初と最後に出てくる市庁舎の黒いガラス張りの建物に関して、主人公の受け取り方が大きく変化しているのは、主人公の成長のせいなのか、喪失感のせいなのか。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.35
(5pt)

主人公の痛さが愛おしい

「ぼく」は地下採石場跡に、シェルターを作った。核戦争が起こっても生き延びられるエリートだ。
「乗船切符」はあと三枚、人選が難しい。
ある日デパートの屋上で出会った昆虫屋に声をかけたら、サクラとパートナーの女がついてきた。
共同生活が始まった。

「ぼく」は間違っても他人には愛されない、痛くて変な奴である。
肥満体で奇怪な家庭環境というところが、痛さに拍車をかける。エキセントリックな父親の造形が秀逸だ。
昆虫屋とサクラも印象に残るキャラだが、特記すべきはサクラの連れの女だ。最後まで女としか書かれない。
具体的な容姿の描写はないし、性的なシーンもないのに、不思議な色香を感じる。
作者の描く女性はなぜこんなにエロいんだろう。

例によって本筋は明確ではないが、細部が面白い。
侵入者撃退の罠とか、なんでも流せる巨大なトイレとか、ディテールが妙に楽しい。
主人公の情けなさに共感したので、最高点にします。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.34
(5pt)

主人公の痛さが愛おしい

「ぼく」は地下採石場跡に、シェルターを作った。核戦争が起こっても生き延びられるエリートだ。
「乗船切符」はあと三枚、人選が難しい。
ある日デパートの屋上で出会った昆虫屋に声をかけたら、サクラとパートナーの女がついてきた。
共同生活が始まった。

「ぼく」は間違っても他人には愛されない、痛くて変な奴である。
肥満体で奇怪な家庭環境というところが、痛さに拍車をかける。エキセントリックな父親の造形が秀逸だ。
昆虫屋とサクラも印象に残るキャラだが、特記すべきはサクラの連れの女だ。最後まで女としか書かれない。
具体的な容姿の描写はないし、性的なシーンもないのに、不思議な色香を感じる。
作者の描く女性はなぜこんなにエロいんだろう。

例によって本筋は明確ではないが、細部が面白い。
侵入者撃退の罠とか、なんでも流せる巨大なトイレとか、ディテールが妙に楽しい。
主人公の情けなさに共感したので、最高点にします。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.33
(2pt)

不条理小説が読みたい人に

ストーリーの展開は面白いけど、私にはしっくりこない本でした。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.32
(2pt)

不条理小説が読みたい人に

ストーリーの展開は面白いけど、私にはしっくりこない本でした。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.31
(5pt)

安部公房の80年代

地下採石場跡の巨大な洞窟に核シェルターの設備を造り上げた、豚もしくはモグラという渾名の青年〈ぼく〉。核戦争から生き延びるための切符を手に入れた三人の男女(怪しげな昆虫販売業者、的屋であるサクラの男と女)と〈ぼく〉との奇妙な共同生活が始まる。〈ぼく〉の生物学上の父親である暴君、猪突(いのとつ)、女子中学生狩りに熱中する「ほうき隊」の老人たち。グロテスクかつブラックユーモアに満ちたエピソードが展開され、やがてシェルター内に侵入者が現れたとき、〈ぼく〉の計画は破綻し始める。その上、〈ぼく〉は大型の便器に片足をくわえられ、身動きがとれなくなってしまうー。核時代の方舟に乗ることが出来るのは、誰なのか? 生き延びる資格があるのは誰なのか? 「箱男」「密会」と、謎とスリルに満ちた傑作を発表したあとに辿り着いた、人間の原罪を問う、安部公房の1980年代。本書は読むたびに新たな発見を得ることが出来る、公房の代表作の一つです!
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.30
(5pt)

安部公房の80年代

地下採石場跡の巨大な洞窟に核シェルターの設備を造り上げた、豚もしくはモグラという渾名の青年〈ぼく〉。核戦争から生き延びるための切符を手に入れた三人の男女(怪しげな昆虫販売業者、的屋であるサクラの男と女)と〈ぼく〉との奇妙な共同生活が始まる。〈ぼく〉の生物学上の父親である暴君、猪突(いのとつ)、女子中学生狩りに熱中する「ほうき隊」の老人たち。グロテスクかつブラックユーモアに満ちたエピソードが展開され、やがてシェルター内に侵入者が現れたとき、〈ぼく〉の計画は破綻し始める。その上、〈ぼく〉は大型の便器に片足をくわえられ、身動きがとれなくなってしまうー。核時代の方舟に乗ることが出来るのは、誰なのか? 生き延びる資格があるのは誰なのか? 「箱男」「密会」と、謎とスリルに満ちた傑作を発表したあとに辿り着いた、人間の原罪を問う、安部公房の1980年代。本書は読むたびに新たな発見を得ることが出来る、公房の代表作の一つです!
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.29
(4pt)

現代で方舟が存在したらどうなるか?という問い。

当時の世相を反映した上で作られたものなのかな、と。
(「核戦争の危機」はこの時代ではまことしやかにささやかれていた)
その方舟に乗り合わせる事になった人間達。
彼らは危機からの脱出を試みる前に内部から崩壊していく。
一人で生きる事の出来ない人間。
しかし集団でも生きる事の出来ない人間。
このジレンマを如実に描き出している。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.28
(4pt)

現代で方舟が存在したらどうなるか?という問い。

当時の世相を反映した上で作られたものなのかな、と。
(「核戦争の危機」はこの時代ではまことしやかにささやかれていた)
その方舟に乗り合わせる事になった人間達。
彼らは危機からの脱出を試みる前に内部から崩壊していく。
一人で生きる事の出来ない人間。
しかし集団でも生きる事の出来ない人間。
このジレンマを如実に描き出している。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.27
(2pt)

とりとめのない夢

安部公房は非常に好きなのだが、正直にいうと『方舟さくら丸』は好きではない。
最後までその世界に没入することができなかった。
パーツ(シーン)は面白い。しかし余分なパーツ(シーン)も随所に混入していたために、興ざめすることが多かった。
現実味のない状況設定と、登場人物たちのありそうもない心理状態にシラけたことも多々あった。

何カ所か、前後の文脈から浮いたような文章があった。
表現がくどく、不要に思える箇所もかなりあった。
ストーリー展開が遅すぎて(余分なパーツのせい)、読むのが苦痛に感じることもしばしばあった。
後期の作品ということもあり、安部公房はすでにこのとき「燃えつきて」いたのかもしれない。

安部公房は、夢を見ると、枕元においたノートにすぐにメモするということを、どこかで読んだことがあるが、それらの夢を紡いで作ったようなお話しに思えた。
お付き合いできる夢ならいいが、『方舟さくら丸』は、ボクにとってはどうやらそうではなかったように思える。
ボクとは相性が悪いのだろう。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.26
(2pt)

とりとめのない夢

安部公房は非常に好きなのだが、正直にいうと『方舟さくら丸』は好きではない。
最後までその世界に没入することができなかった。
パーツ(シーン)は面白い。しかし余分なパーツ(シーン)も随所に混入していたために、興ざめすることが多かった。
現実味のない状況設定と、登場人物たちのありそうもない心理状態にシラけたことも多々あった。

何カ所か、前後の文脈から浮いたような文章があった。
表現がくどく、不要に思える箇所もかなりあった。
ストーリー展開が遅すぎて(余分なパーツのせい)、読むのが苦痛に感じることもしばしばあった。
後期の作品ということもあり、安部公房はすでにこのとき「燃えつきて」いたのかもしれない。

安部公房は、夢を見ると、枕元においたノートにすぐにメモするということを、どこかで読んだことがあるが、それらの夢を紡いで作ったようなお話しに思えた。
お付き合いできる夢ならいいが、『方舟さくら丸』は、ボクにとってはどうやらそうではなかったように思える。
ボクとは相性が悪いのだろう。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.25
(4pt)

こんなものでしょう。

独特のタッチですが、感触はそこそこです。ただ最近読書から少し遠ざかっていたせいもあって、感情移入がなかなかできませんでしたねえ。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.24
(4pt)

こんなものでしょう。

独特のタッチですが、感触はそこそこです。ただ最近読書から少し遠ざかっていたせいもあって、感情移入がなかなかできませんでしたねえ。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.23
(3pt)

どういう類の面白さなのか

後半はいろんな出来事が立て続けに起きるから割と飽きずに読める。が、四人のメンバーがそろってからしばらく、特筆すべきこともなくだらだらとやり取りが続くところは飽きる。
安部作品はどうも、長編が苦手だ。特有の違和感がある。それは例えばモグラの足が便器にはまるところだったり、「女子中学生狩り」という話が突拍子もなく出てきたり、女の割合都合のいい描かれ方(尻を叩かれるところとか)だったり。その場の思いつきで書いているという感じが、特に隠ぺいされることもなく、ぬけぬけと描かれている。というところがどうにも気になってしまう。
この作品の執筆前後のエッセイ「死に急ぐ鯨たち」で、安部は「分析はやめて、イメージのなかを泳ぐように執筆している」と述べている。そう思ってみればなるほど、自由連想的な描かれ方をしているのも納得できる。が、どうも自由連想的なその場の着想が、話の進行に関わる「都合のいい偶然」というか、「見え透いた偶然」のように思えなくもない。例えば主人公が便器にはまったシーンは、その後昆虫屋に主導権を握らせるための伏線になっているし、ダイナマイトを爆発させざるをえないという理由づけにもなっている。「女子中学生狩り」なんかは、シェルターに取り残された「ほうき隊」の老人連中と明確に対比されるところが作為的だし、「生殖・切り離された世界で独自の生活を築いてゆく」という未来を読み手に想像させるために無理矢理ぶち込んだ要素、という感じがしなくもない。
儀式的なものを嫌悪している安部からしてみれば、物語然とした物語を好まないだろうし、自身が描く小説が型にはまることも望まないだろう。そういう意味では、自分でも何が起こるかわからない、というその偶然的な描き方にこそ(安部にしてみれば)意味があるとも言える。が、私には安部による長編小説の自由連想的な描かれ方が、「どうしてもそうなってしまう」という必然性を欠いているように感じられる(短編は別)。安部自身が無くし去ろうとした「分析的な意識」を、随所に感じざるをえない。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.22
(3pt)

どういう類の面白さなのか

後半はいろんな出来事が立て続けに起きるから割と飽きずに読める。が、四人のメンバーがそろってからしばらく、特筆すべきこともなくだらだらとやり取りが続くところは飽きる。
安部作品はどうも、長編が苦手だ。特有の違和感がある。それは例えばモグラの足が便器にはまるところだったり、「女子中学生狩り」という話が突拍子もなく出てきたり、女の割合都合のいい描かれ方(尻を叩かれるところとか)だったり。その場の思いつきで書いているという感じが、特に隠ぺいされることもなく、ぬけぬけと描かれている。というところがどうにも気になってしまう。
この作品の執筆前後のエッセイ「死に急ぐ鯨たち」で、安部は「分析はやめて、イメージのなかを泳ぐように執筆している」と述べている。そう思ってみればなるほど、自由連想的な描かれ方をしているのも納得できる。が、どうも自由連想的なその場の着想が、話の進行に関わる「都合のいい偶然」というか、「見え透いた偶然」のように思えなくもない。例えば主人公が便器にはまったシーンは、その後昆虫屋に主導権を握らせるための伏線になっているし、ダイナマイトを爆発させざるをえないという理由づけにもなっている。「女子中学生狩り」なんかは、シェルターに取り残された「ほうき隊」の老人連中と明確に対比されるところが作為的だし、「生殖・切り離された世界で独自の生活を築いてゆく」という未来を読み手に想像させるために無理矢理ぶち込んだ要素、という感じがしなくもない。
儀式的なものを嫌悪している安部からしてみれば、物語然とした物語を好まないだろうし、自身が描く小説が型にはまることも望まないだろう。そういう意味では、自分でも何が起こるかわからない、というその偶然的な描き方にこそ(安部にしてみれば)意味があるとも言える。が、私には安部による長編小説の自由連想的な描かれ方が、「どうしてもそうなってしまう」という必然性を欠いているように感じられる(短編は別)。安部自身が無くし去ろうとした「分析的な意識」を、随所に感じざるをえない。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222