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(短編集)

いまさら翼といわれても



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【この小説が収録されている参考書籍】
いまさら翼といわれても
いまさら翼といわれても (角川文庫)

いまさら翼といわれてもの評価: 4.39/5点 レビュー 150件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.39pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全150件 41~60 3/8ページ
No.110:
(3pt)

いまさら翼といわれても?

他の方も言っておられる通り、ミステリとして読むにはメインキャラクタ以外の心理描写等に欠けます。
自分はメインキャラクタの葛藤や心情の変化に焦点をあてて読んでいるので、内容自体には満足していますが、
表題作の「いまさら翼といわれても」に関してはその後どうなったのか気になってモヤモヤしています。
ネタバレを避けるため曖昧な表現になりますが、ミステリ的な謎は解明されるものの、肝心のキャラクタの心情やその後が描かれておらず、中途半端なところで終わっています。「いまさら翼といわれても」の意味は分かりますが(最初の2ページで何となく分かると思いますが)、そうなった背景やその後どうなったのかが全く描かれていません。
週間連載のマンガならそれでもいいですが、文庫で揃えているこちらとしては続きを読むのにあと何年もかかるのかと思うと正直生殺しの状態です。
本当に内容自体は素晴らしいのですが、「いまさら翼といわれても」は次巻にその後の物語と一緒に収録して欲しかったです。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.109:
(5pt)

変化?成長?

優れた人物にも凡庸な人物にも、本人なりの信念や美学があるのだろう。
人として未熟な高校生にも、もちろんあるだろう。
今作では、これまでと異なる行動をとるキャラクターが複数いる。
多感な少年少女たちが、何かをきっかけに考え方や行動を変えてしまうことは決しておかしなことではない。
キャラがブレたと感じる人もいるようだが、人間は絶えず変化するものでしょう。
「ドラえもん」や「水戸黄門」のような年をとらない作品は変化するといかんけど。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.108:
(5pt)

どんな結末でも後悔しない

古典部シリーズはどれもタイトル回収が鮮やかです。「いまさら翼といわれても」のタイトルから物語の展開を予想できたとしても、奉太郎の思考や会話から伝わる心情の描写はこの作者しか描けない内容でした。同じ短編の「遠回りする雛」は登場人物の関係性が進展していく場面が多かったですが、本作では登場人物たちの感情がさらけ出されるようで物語もピークに近づいたのかな、と少し寂しさを覚えました。それでもきっと今後の展開がどんなものであっても、このシリーズは僕にとって大切な物語になると言い切れる素晴らしい作品です。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.107:
(5pt)

今、自分の人生に誇りを持って生きていますか?

バードカバーが刊行されたとき、私はまだ失意の中にいました。文庫化されるまでの時間、私の人生には奇跡が起きていました。人並な世界に戻ってきた私には、本作に登場する愚かな人々の不条理と、そして変わらない友が待っていてくれました。
構想不足?消化不良?いえ。全編を通して著者が表現している内容が理解できるまでには、私の心は成長していたように思います。
シリーズものに舞台を借りた、これはそういう物語。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.106:
(5pt)

色々な部分を繋ぐ短編集。 なかなか興味深い内容でした。

二年半前に単行本を購入し、今また文庫版を購入し、文庫版の方を読了。
単行本は重くて携帯には向かなかった...
しかし、それぞれ切り替えると別の注文日が出てくるのか...

閑話休題。
奉太郎たちのあれこれを繋ぐ短編集。
生徒会選挙の話から始まり、タイトルのいまさら翼といわれてもで終わり。
あとがきから言わせれば、焼きそばから冷し中華で終わるとも言える?

今まで謎だった、摩耶花嬢が奉太郎を嫌っていた理由や、奉太郎の省エネ主義の理由。
摩耶花嬢と漫画研究会のその後などが綴られています。
なかなか興味深い内容でした。

そして、最後のタイトルは...
いまさら、ですか。 確かに。
しかし、それはそれで良いのかもしれません。 その後のことは気になりますが、それは次巻、綴られるのでしょうか?

もう二年半。 そろそろ続きを読みたいと思います。 実際、読み終わったのは今現在ですが。
今度はきちんと単行本を読もう。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.105:
(3pt)

煮え切らない青春群像

TVアニメで人気爆発したシリーズだけど、「原作選びの悪さ」に定評のある京都アニメーションらしい微妙な原作小説です。何が微妙かというと、登場人物の「微妙な異形さ」と各エピソードでの作品方向のブレ方にある。
文章力とか描写力、演出には充分に才能があるんだけど、根本的な「お話」がよくない。
ただのミステリー小説なら何の問題もないが、その底部に流れる「高校生の葛藤と人間関係」になると違和感が出てくる。
折木が先生の言いつけ通りに仕事をこなすのが悪いことと描かれているのは、一体何を主張したいのだろうか。言いつけを護るとそれを馬鹿にされる、だから折木は合理主義の省エネ人生を歩むことにした…この話は特殊か?
現代人は、面倒なことに関わらない生き方を優先させているだろう。それなのに、合理的な生き方を選んだ折木の原点を示して、改めて「正しいことを行うのは愚かだ」と示すのはどうなんだ?
 道にゴミが落ちていたら拾う。 これを否定する合理主義が正しいと作者はいいたいらしい。
しかし、それは間違いだ。道にゴミが落ちていることに気づいたら、正直にゴミを拾って正しく処理するのがまともな日本人の生き方です。そしてそのことは太陽であり神さまである「天」が見ている。その正しい行いは必ず幸運として帰ってくる。
こうして保守的な行動を否定しているくせに、最後の話では自由を与えられて押しつぶされてしまう「保守の生き方の代表である千反田える」を描く。
あと漫研のゴタゴタだって、あんな権謀術数を巡らせる高校生なんかいないw 衝突やケンカはあるだろうけど、その結果は素直に「そんな部活には行かない」で終わる。高校の部活は会社じゃないんだから、退部届を出さなくても行かなければ済むことだ。
そういうわけで、元々個人的に評価が低かったシリーズの最新刊も、がっかりする作品でしかなかった。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.104:
(2pt)

新人作家なら原稿突っ返されるレベル多数(この本がなぜ高評価?)

古典部ファンとしては読むべき一冊で「長い休日」「連峰は晴れているか」はお勧めです。
しかし本全体としては絶賛とは言い難く構想不足或いは未成熟な作品が多いと感じます。
特に「箱の中の欠落」に至っては未完成品、発表するレベルにない作品です。

また表題作の「いまさら翼といわれても」はえるの物語ですが、この中でえるは
他人に迷惑を掛けてしまいます。過去の作品ではえるは旧家の跡取りとしての
矜持(責任感)を持っていて自分がどんなに追い詰められようと困ろうと
他人に迷惑を掛ける行為だけは避けようとする芯の通った性格だったはずです。
ですのでこの作品中でのえるの行動には違和感を感じるし理解もできません。
こうなった原因は長期間放置した挙句に短期間でまとめて書かれた作品が
多かったためと思います。あまりに長期に渡る執筆期間のせいでキャラクターに
ぶれが出てきているのに加え、最近の作品は時間を掛けていないのでしょう。

良いところについてはここで書かなくてもたくさんコメントが上がっているので
悪い方について「箱の中の欠落」を例になぜそう思うのか説明しておきます。

「箱の中の欠落」・・・「解明の欠落」とでも改題して反省すべき作品

推理小説の基本要素は、犯人、動機(背景・心理)、トリックの3つの解明です。
作品によってはトリックがメインで他の2要素はおまけ程度でも成り立つ場合も
ありますが、この作品にはそれは当てはまりません。
事件のあらましは生徒会選挙に関して不正(投票総数の水増し)があったというもの。
この事件のトリックは単純ですが実行するにはそれなりの手間暇を掛けなければ
ならないものなので、ちょっとした悪戯心でやったものではないと分かります。
となれば事件の解明ということならどうやったのか?ではなく、なぜ?(背景)の
部分に焦点が当たらなければなりません。選挙妨害はハイリスクですが一方それに
よって得られるリターンは不明です(票の水増しでは特定候補の有利不利には
関係してこない)。それなのになぜどうしてそんなことをしなければならなかったのか?
ということろに光を当てる(その辺にこそそれぞれの生徒の事情・心情、青春の
ほろ苦さがある)べきなのにそこが事後の雑談程度の推測会話で軽く済ませて良しと
されています。これでは本当の意味では何も解決していません。
またラーメン屋での会話は日頃の奉太郎と里志の関係を掘り下げるものということに
なっているようですが、肝心の事件の解決がおざなりなため冗長(不要)な会話と
しか思えない。こういう会話は事件をしっかり解決してこそ生きてくるものです。
作者はこういった会話を入れたかったようですがこれでは作家の単なる自己満足です。
正直、これで完成?、と感じる作品で大幅加筆して再収録されることを願います。

・・・というのは実はこの作品の初発表時(電子版の雑誌)に思ったことで
ここからは後日談。
文庫を買ってみると雑誌とは微妙に結末が変更されているのですが、はっきり言って
恥の上塗り、読者を馬鹿にした言い訳じみた修正です。大まかにいうと
 初出: 犯人は分かっていない。犯人を捕まえるのは選管の仕事で里志の仕事ではない。
 文庫: 犯人は捕まったが里志は名前も動機も聞いていない。ここから先は選管の仕事。
つまり作者的には犯人が捕まりさえすれば動機の解明までは不要というスタンスです。
しかも犯人はトリックのネタを回収に来たところを捕まったとなっているのですが、
危険を冒してわざわざネタの回収にくる必然性はない(放置しても犯人特定に繋がるような
性質のものではない)のでかなりの無理筋、安易に体裁だけ整えた感がありありです。
初出時には執筆時間が足りずに泣く泣く動機解明を端折ったのかと思っていたが買い被りでした。
(作者の言い分はこの作品は奉太郎と里志の関係を書くもので、事件そのものはそのための
道具にすぎないからその解決は本筋ではなく色々書く必要もないということらしい)
日常青春ミステリである以上トリック(事件)そのものは凄くなくて当たり前、でもそこに
青春期の高校生ならではの葛藤(動機)が絡み、その心理描写があるからこそ古典部シリーズが
物語として成り立っている。そういったところを書かずに古典部シリーズを名乗るのはおかしいし
それなのにこれを傑作と絶賛して喧伝する出版社も品位を疑います。
(この本の収録作品のうち新しめの作品は概してこんな感じで色々足りない点があります)
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.103:
(5pt)

『翼をさずける』現時点におけるシリーズ最大の転換点が描かれる

本棚に並べたときの美しさかつ収納スペースの問題から小説は文庫本になってから読むことに
しているため、前作『ふたりの距離の概算』文庫版から七年、『小説野性時代』ほかへの掲載
そして単行本刊行から待ちに待ち続け、約二年半を経てようやく刊行された本作を手に入れる。

『箱の中の欠落』
六月。生徒会長選挙で投票総数が有権者数を上回る水増しが発覚する。総務委員会副委員長と
して投票に立ち会っていた里志は夜中に奉太郎を呼び出し事情を話すも、「やらなくてもいい
ことならやらない」という奉太郎のポリシーにより一度は断られるが、一年の選挙管理委員に
責任をなすりつけた選挙管理委員会委員長の言動が気に入らないという点で意見が一致し、
道すがらのラーメン屋で一転して推察を繰り広げることに――という話。序盤に何気なく提示
された情報がきっかけとなって解答を導き出すことになるのだが、罪をなすりつけられた
一年の選挙管理委員や真犯人の具体的な情報が言及されていないのは、この話で最も重要なのは
フーダニットではなくハウダニットであるということを呈示している。
また、話の本筋とは少し外れるが、ふたりの会話の内容から、奉太郎がえるに対して
社会的階級の違いをまざまざと感じされられていることに言及しており、おそらくこれが何か
の伏線になっていることを予感させる。

『鏡には映らない』
日曜日。Gペンを買いに街に出た摩耶花は鏑矢中学時代の同級生と偶然再会する。
ふとしたきっかけで折木奉太郎の名前が出たとき、嫌悪感を隠そうとしなかった彼女の表情に
摩耶花は中学三年の頃の話を思い出す。
卒業制作で大きな鏡のフレームを作ることになった三年生。フレームを細かく分割し、
各グループでひとつのパーツを彫刻刀で彫り、再びそれを組み合わせることになっていたが、
締め切りギリギリに奉太郎が提出したのは明らかに手抜きをしたであろう代物だった。
いざフレームを組み上げると、場所ごとに出来の善し悪しがばらけていたことに一度は
安心した摩耶花だったが、デザインを担当した鷹栖亜美の態度が急変したことから奉太郎は
その責任を一身に背負うスケープゴートにされてしまう。だが、えるの叔父のメッセージを
汲み取り、未完の映画を完成させ、なんだかんだ言って真面目に文集を仕上げた奉太郎と
フレームに手を抜いた当時の奉太郎が一致せず、何か別の理由があるのではないかと考え
奉太郎に色々尋ねるが適当にはぐらかされてしまう。そこで摩耶花は自分で調査を
始めるのだが――という話。
確か小説野性時代掲載時は、摩耶花が奉太郎と里志の目の前で真相を突き付けるのではなく、
摩耶花が奉太郎に謝ることで真相にたどり着いたことを悟った奉太郎が摩耶花に軽く手を
挙げるという終わり方だったと記憶している。
『クドリャフカの順番』以来である摩耶花視点で描かれており、本シリーズでは初めて
奉太郎以外が探偵役を務めている。また、なぜこのシリーズの当初で摩耶花が奉太郎に
対しあまり良くない感情を抱いていたのかという理由が分かる。

『連峰は晴れているか』
部室の窓の外に飛ぶ一機のヘリコプターを見た奉太郎が、中学時代の教師・小木が授業中、
同じく部室の窓の外に飛ぶ一機のヘリコプターを見て「ヘリが好きなんだ」と言っていた
ことを思い出すが、里志の「編隊を組む自衛隊のヘリには興味を持たなかった」という言葉に、
小木は本当にヘリコプターが好きだったのだろうか、そして雷が多い地域ではないにも
かかわらず「雷に三度打たれた」という小木のエピソードに疑問を抱いた奉太郎はその
真相を調べることに……が簡単なあらすじ。
小説野性時代に掲載されたあと単行本化されることなくアニメーション化され、
さらにコミカライズ化されたのちようやく単行本化されるという、順番が前後してしまった
珍しい経緯があるエピソードであり、本巻唯一のアニメーション化されているエピソードでもある。
この出来事から数年の時を経て、仲間が遭難する中、気丈にも授業を執り行い、あまつさえ
自身の動揺を悟られまいとヘリコプターに興味があるふりまでした小木の思いを知るとともに、
物事の表面だけを見てすべてを断じるべきではない(これを奉太郎は『無神経』と表現した)と
いうことを読者に突き付けている。

『わたしたちの伝説の一冊』
文化祭の一件(参照:クドリャフカの順番)から漫画研究会は、『読む派』と『描く派』に分裂し、
もはや関係の修復は不可能な状態になっていた。そんな折、摩耶花は『描く派』の浅沼から
部費を流用して同人誌を作り、漫画研究会は漫画を描くところだということを明らかにしようと
持ちかけられる。この企てには田井、西山、針ヶ谷も参加することになっていたが部長の湯原が
引退し、パワーバランスが崩壊するとともに『読む派』の羽仁が新部長に就任、追い詰められた
田井がすべてを吐いてしまったため、摩耶花と浅沼は吊し上げられ、同人誌を完成させたら
『読む派』は退部して新しい部活を立ち上げる、逆なら『描く派』が退部させられるという
条件を呑まされてしまう。そんな中、摩耶花がしたためていたネームを描いたノートが
盗まれてしまい――というストーリー。
純粋に漫画を描きたかっただけだったのが、いつの間にか『読む派』を追い出すことが
目的となってしまったことを通じ、実は本作には「現状維持バイアスにかまけてレベルの低い
ところに居続けると時間や才能を奪われる」という教訓が含まれていることが分かる。
また、実は摩耶花が隠れて努力をして、その結果が少しずつ出つつあるとともに、かつて対立
していた河内亜也子(作中作『ボディトーク』の作者)と「互恵関係」になったのはある意味
救いなのかも知れない。

『長い休日』
日曜日。珍しく体調が良い奉太郎は午後から散歩がてら自宅から適度な距離に位置する
荒楠神社に向かうと、境内で偶然十文字かほと出会い、「えるもいる」と言われるがままに
詰所内にあるかほの部屋に連れて行かれ、えると会う。かほが買い物に行っている間、
えると一緒に神社の清掃をすることになった奉太郎はえるから「やらなくていいことなら、
やらない。やらなければいけないことなら手短に」という考えに至ったのかという質問を
受ける。そこで奉太郎は小学生の時のある出来事を話し始める――というのが序盤の
ストーリー。
小学生の頃の話であるため、周囲から都合の良い存在として使われる程度で済んでは
いるが、実は『氷菓』において周囲によって名目上のリーダーに仕立て上げられ、
スケープゴートにされた関谷純の姿がオーバーラップする。つまり奉太郎は
『省エネ主義』というよりも、他者に自分のリソースを使われることに対し癪に
触ったということになる。

『いまさら翼といわれても』
二年の夏休み初日。摩耶花から奉太郎のもとにえるの居場所を尋ねる電話がかかってくる。
今日市民文化会館で開催される市の合唱祭に参加予定、しかもソロパートがあるえるが
バスで文化会館に到着してからの行方が分からなくなってしまったという。
奉太郎は文化会館に向かうとともに、えるがどこに行ってしまったのか、そしてその理由を
探るべく、考えを巡らせる――というおはなし。
本作を読み終えることで『いまさら翼といわれても』が何を意味しているのかが分かるだけ
でなく、彼女の中で信じ、受け入れていたものが崩壊してしまったというシリーズの重大な
転換点であろう展開から、個人的にはおそらく次に描かれるであろう長編は千反田家の謎と、
えるに『翼』が与えられた理由について迫る話になると勝手に睨んでいる。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.102:
(4pt)

古典部メンバーたちがそれぞれ転機をむかえるシリーズ第6作

本書は〈古典部〉シリーズ第6作で、6つの短編で構成されています。各作品内の時期は、折木 奉太郎、千反田 える、福部 里志、伊原 摩耶花、と古典部メンバーの4人が2年に進級して以降、おそらくは1学期内にあたります(「連峰は晴れているか」以外)。

・「箱の中の欠落」(6月)
・「鏡には映らない」(おそらく第5作『二人の距離の概算』(5月末)以降)
・「連峰は晴れているか」(時期不明)
・「わたしたちの伝説の一冊」(5月中旬)
・「長い休日」(2年進級以降という以外不明)
・「いまさら翼と言われても」(夏休みの数日前から夏休み初日)

「箱の中の欠落」は本書のなかで一番「ミステリ」しています。一見するとドライな奉太郎と里志の関係はたがいに尊重しあっているからこそ、というのがうかがえる1篇でした。

「鏡には映らない」「わたしたちの伝説の一冊」の2篇の語り手は、いつもの奉太郎ではなく、摩耶花。安楽椅子探偵型の奉太郎よりも一般人の感性をもち、好奇心と行動力と執念をそなえた彼女は、ハードボイル型探偵のように当たって砕けろの精神で謎を追います。「鏡には映らない」では奉太郎に対する誤解をとき、「わたしたちの伝説の一冊」では第3作『クドリャフカの順番』における漫画研究会の内部抗争に決着をつけることになります。

「連峰は晴れているか」「長い休日」の2篇は、えるが奉太郎について理解を深めていく物語。とくに「長い休日」では、「やらなくてもいいことなら、やらない」という奉太郎のモットーの由来が明かされます。そして彼のそんな「長い休み」を終わらせたのは…。奉太郎とえるがお互いを意識し合う様子がうかがえて、ほほえましい1篇でした。

「いまさら翼と言われても」では、優等生えるの謎の失踪が描かれます。奉太郎をかりたてるのは、やはり彼女の存在。事件をとおして奉太郎は、えるが抱える責任と覚悟の重さ、それゆえの苦しみの大きさを知っていきます。本書のなかではもっとも苦みがある1篇でした。

全篇をとおして、シリーズいつものことながら、嫉妬、焦燥、葛藤、逡巡、不安など青春時代ならではの自意識のゆらぎがうまくとらえられています。2年に進級したことで、進路にまつわる話もからんできました。終わり方がけっこう引きずるものだったので、読了したそばから早く続きが読みたくなります。
そろそろシリーズも半ばあたりまで過ぎたでしょうか。この先どんどんと、卒業を見すえる古典部メンバーたちの内面が掘り下げられる比重が増していくと思われますが、できるだけ彼らには苦みのある結末が訪れないようにと願うばかりです。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.101:
(3pt)

瑞々しい青春の自意識

このシリーズはミステリーというより青春小説です
高校生の成長や変化をゆったりとしたペースで追っていくので、この短編集だけでは魅力を味わうことはできません。
日常におけるささやかな疑問とその推理という要素にはたいした娯楽性はないのですが、そのささやかな回り道の過程や終着にパッと現れる高校生の心の機微は素晴らしいなと思います

表題作「いまさら翼といわれても」は期待外れでした。過去作「遠まわりする雛」で出た結論が今度は前提がひっくりかえってしまって振り出しに戻されたみたいな形で終わります
「遠まわりする雛」では主人公の心境の変化が述べられることで最大のカタルシスがありました。それと比べるとだいぶ見劣りしてしまいます
短編集の最後の収録作品にメインストーリーを扱った小品をいれるという手法は「遠まわりする雛」「いまさら翼といわれても」に共通しています。でも前者はカタルシスがあり後者には投げ出された感覚があります。刊行ペースのゆったりとしているシリーズならば、状況の変化のその先までしっかり読ませてほしかったですね
ネタバレになるので詳しくは説明しませんが、読んだ方はこの繰り返し感をわかってもらえると思います(良し悪しは個々の感想として)

収録作のひとつ「わたしたちの伝説の一冊」について
私も部活で似たような経験があります
「自分には才能があり志があるから、他の者に足を引っ張られている場合ではない」
この登場人物と似たようなことをいう人には実際に何人か出会いました
そう言って漫研を去っていった彼らは皆その後大成していません
プロになるような才能の持ち主はそれくらいのことものともせずに黙々と描いていました
その尊大さこそ青春の瑞々しい自意識であり、このシリーズのテーマからすると正しいのかもしれません
伊原のキャラクター的にはあの誘いには乗らずに部に留まって別の道をいってほしかったな。これも成長と変化ということでしょうか
P223で「浅沼さんと漫画の話をしたことはことはない」とありますが、P165では伊原が彼女に漫画のアドバイスを送っています。この矛盾は致命的なミスです。ストーリーのための憎まれ役にされた浅沼さんが哀れでなりません。彼女に人間的欠点があったにせよです
古典部シリーズはいじめとか人間の負の部分がよく出てきますけど、その語り口は、そういう至らない部分も含めて人間さというような寛容ではなく、辛辣というか見下したような視点を感じます
個人的にはどこか引っかかりを覚える要素なんですが、これも語りの主体が高校生自身と考えれば青春小説らしいのかもしれません
良くも悪くも青春くさい小説です
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.100:
(5pt)

ラスト2編が白眉で古典部シリーズファンなら必読

これは明らかに古典部シリーズを読んで来た読者のみが対象で、この作品だけで読んでも面白さは感じられないに違いない。が、古典部シリーズを読んで来た読者にとっては、主要メンバー4人の少々不思議な関係の謎の一端が明かされる、読み甲斐のある作品群だ。とりわけラストの表題作とその前に置かれた「長い休日」が白眉。奉太郎が姉に言われた「きっと誰かが、あんたの休日を終わらせるはずだから」。それに続いて千反田えるの苦しみを推理してえるに迫る奉太郎。奉太郎が、女の影響で成長する様が見事に表されており、ストンと腑に落ちた。
 ラスト2編を読むだけでも十分満足のいく作品群だったと思う。古典部シリーズファンなら必読だ。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.99:
(5pt)

ミステリー小説であると同時に、苦々しさのある青春小説

2年生になった古典部員それぞれの変化、成長が見て取れる短編集。
いつもどおりミステリーとしても面白いが、それ以上に丁寧に描かれている登場人物の心情や葛藤が素晴らしい。
単純な正義感や知的好奇心で謎を解くミステリーとは違い、謎を解く理由や動機に人間味と面白味がある。
古典部シリーズファンなら絶対に読んだ方がいい一冊。
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4041047617
No.98:
(5pt)

4章目「わたしたちの伝説の一冊」感想

ネタバレあります

謎になっていた伊原摩耶花が漫研を退部する部分が描かれたストーリー。
ギクシャクが更に酷くなって辞めたんだろう程度に思っていた自分が浅はかだった。いつもの推理要素は非常に少ない話だが、そんな事どーでも良くなるくらい深く染み込む内容だった。最後は柄にもなく泣いた。
アニメ版で河内先輩の事を人間性的に嫌いなタイプだと思っていたが、今回の話を読んで見方が180度変わった。と言うか、今でも学園祭時点の河内先輩と出会えば、この人嫌いなタイプだと感じるだろう。ただ、学園祭当時から見え隠れしていた彼女の努力と悲痛。そう言った経験の中から、最終的に導き出される河内先輩の生き方の答えが、今回変化したことにより、嫌いな人からイキナリ大好きな人になった。
そして、そういう意味で言えば伊原に対しても、私は同じ感情を抱いていた事に気づかされた。伊原は主人公サイドなのでマイナスに描かれる事が少なく、また人間性として尊敬できる存在なので、私自身自覚できていなかった。しかし、伊原に対しても、漫画を描きたいだけだと超然的な事を思いながら、漫研を辞めるでもなく漫研を変えるでもない姿勢に擬かしさや苛立ちに近いものを感じていた。それが、今回一足先に変わった河内先輩によって、伊原も変わり、私の中でグッと好きになった。更に言えば、河内先輩を一足先に変えたのが、無自覚ながら伊原だという点にも感動した。

この「わたしたちの伝説の一冊」を読んで、今の段階で「この人嫌いなタイプだな」と思った相手が、明日もそうとは限らないんだと気付かされた。そして、伊原が河内先輩を変え、河内先輩が伊原を変えたように、自分が嫌いだった誰かを大好きな人に変えることもあるのだ。勿論、河内先輩や伊原が漫研の人達を見捨てたように、全ての人に対してそんな努力をする必要もないし、自分が好む人間が全てにおいて正しいなんて思うほど傲慢じゃない。ただ、学園祭の頃の河内先輩や伊原のように、「今の君は好きじゃない。それでも、君には何か感じる物がある。」そんな相手とは、例え苦手だと感じていても、関係を持っていくようにしたいと思う。

そして、本当に大事な事を見据え、つまらない人間関係に囚われて人生を無駄にするのは止めようと思う。
今回も素敵な話をありがとう。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.97:
(5pt)

奉太郎を掘り下げた一冊

最後まで読んでの感想ですが、この一冊は奉太郎という人物を掘り下げた一冊だと思います。
省エネ主義の奉太郎が省エネ主義をやめるためのプロローグであり、遠回りする雛からじわりじわりと進展しているえるとの関係の折り返し点だと思います。そう思うと今後の進展が気になる一冊です。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.96:
(5pt)

登場人物への理解が深まる短編集

奉太郎が省エネ主義を始めた理由についての話や、これまで単行本ではなかった摩耶花目線の話など、登場人物への理解が深まる古典部のファンは必読の短編集。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.95:
(5pt)

良い

短編集であるが、一つ一つの話がかなり良い
その後は想像にお任せします的な感じだが余韻が残る
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.94:
(5pt)

あっさりしてて良い。

短編なのであっさりしてる。けれど、読者に色々考えさせてくれる良い本だと思いました。
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4041047617
No.93:
(4pt)

読んで損はなかった。

本書は古典部シリーズの中で一番充実した内容だったと思う。六作のうち二作は伊原視点の話だったがもう伊原を本シリーズの主人公にしても良いんじゃないかというくらいよくできていた。過去の作品も読み返したくなるのと同時に古典部の面々の個性を存分に楽しめるものとなっていた。

ただ、男子高校生の発する台詞にしてはどこかサラリーマンに近い印象を抱いた。個性は別にして物凄く意識して書かれているんだろうけど行き過ぎな気もしてくる。一話目の話もサラッと終わったのには驚いた。

だが全体的な面白さが揺らぐほどではなかった。相変わらずこんな華奢で読者の思い通りになる高校生活が送れたらどんなにいいか、と思える一冊であった。続編も期待。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.92:
(5pt)

古典部メンバーたちがそれぞれ転機をむかえるシリーズ第6作

本書は〈古典部〉シリーズ第6作で、6つの短編で構成されています。各作品内の時期は、折木 奉太郎、千反田 える、福部 里志、伊原 摩耶花、と古典部メンバーの4人が2年に進級して以降、おそらくは1学期内にあたります(「連峰は晴れているか」以外)。

・「箱の中の欠落」(6月)
・「鏡には映らない」(おそらく第5作『二人の距離の概算』(5月末)以降)
・「連峰は晴れているか」(時期不明)
・「わたしたちの伝説の一冊」(5月中旬)
・「長い休日」(2年進級以降という以外不明)
・「いまさら翼と言われても」(夏休みの数日前から夏休み初日)

「箱の中の欠落」は本書のなかで一番「ミステリ」しています。一見するとドライな奉太郎と里志の関係はたがいに尊重しあっているからこそ、というのがうかがえる1篇でした。

「鏡には映らない」「わたしたちの伝説の一冊」の2篇の語り手は、いつもの奉太郎ではなく、摩耶花。安楽椅子探偵型の奉太郎よりも一般人の感性をもち、好奇心と行動力と執念をそなえた彼女は、ハードボイル型探偵のように当たって砕けろの精神で謎を追います。「鏡には映らない」では奉太郎に対する誤解をとき、「わたしたちの伝説の一冊」では第3作『クドリャフカの順番』における漫画研究会の内部抗争に決着をつけることになります。

「連峰は晴れているか」「長い休日」の2篇は、えるが奉太郎について理解を深めていく物語。とくに「長い休日」では、「やらなくてもいいことなら、やらない」という奉太郎のモットーの由来が明かされます。そして彼のそんな「長い休み」を終わらせたのは…。奉太郎とえるがお互いを意識し合う様子がうかがえて、ほほえましい1篇でした。

「いまさら翼と言われても」では、優等生えるの謎の失踪が描かれます。奉太郎をかりたてるのは、やはり彼女の存在。事件をとおして奉太郎は、えるが抱える責任と覚悟の重さ、それゆえの苦しみの大きさを知っていきます。本書のなかではもっとも苦みがある1篇でした。

全篇をとおして、シリーズいつものことながら、嫉妬、焦燥、葛藤、逡巡、不安など青春時代ならではの自意識のゆらぎがうまくとらえられています。2年に進級したことで、進路にまつわる話もからんできました。終わり方がけっこう引きずるものだったので、読了したそばから早く続きが読みたくなります。
そろそろシリーズも半ばあたりまで過ぎたでしょうか。この先どんどんと、卒業を見すえる古典部メンバーたちの内面が掘り下げられる比重が増していくと思われますが、できるだけ彼らには苦みのある結末が訪れないようにと願うばかりです。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.91:
(5pt)

シリーズ最高傑作

個人的にシリーズで最も読み応えのあった一冊。
主人公である奉太郎という人柄の昔と変わらない根っこの部分や、成長した部分が改めてよく分かり一層好きになれました。
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