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王とサーカス



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【この小説が収録されている参考書籍】
王とサーカス
王とサーカス (創元推理文庫)

王とサーカスの評価: 3.83/5点 レビュー 102件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.83pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全102件 81~100 5/6ページ
No.22:
(5pt)

米澤作品の中で一番すき

読んでいる自分まで海外旅行をしているような気分にさせてくれる導入から、どんどん不穏な展開を見せていく中盤、深い余韻が残るラストまで、文句のつけようがない傑作。 2001年にネパールで実際に起きた王族殺害事件を題材にしていて、あの『さよなら妖精』の太刀洗万智がジャーナリストとして事件を追っていく、というもの。 特に軍人との会話のシーンが素晴らしくて、『王とサーカス』というタイトルにも込められているメッセージ性が深く心に刻まれる。 ミステリーとしての面白さももちろんだけれど、小説として、いいものを読んだ、という感じ。 ミステリーランキングを総ナメしたというのにも納得しました。
王とサーカスAmazon書評・レビュー:王とサーカスより
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No.21:
(3pt)

王様が殺害されるというショッキングな事件から始まり、最後はこの人が犯人!というどんでん返し。

このお話の始まりは、ネパールの王宮で起こった王様が殺害されるというショッキングな出来事からスタートします。
そこのたまたま居合わせた、フリーの日本人ジャーナリスト太刀洗万智。もともと、ネパールの旅行記を書こうとネパールを取材中だったものが、この事件が発生し、事件の記事を書くことに。

旅行記を書くために、滞在中に事件に巻き込まれるっていうのは、内田康夫の「浅見光彦」のようでもありますが、王宮での事件を取材する中で、取材対象となって、太刀洗がインタビューをした軍人がそのインタビュー直後に殺害されてしまいます。その殺害現場で遺体を見ると、遺体の背中には「INFORMER」(密告者)と意味深な文字が切り込まれています。
当然、この殺害事件は王宮での殺害事件と非常に密接に結びついていて、その口封じにこの軍人は殺害されたものだと、主人公太刀洗は取材をすすめます。では、真相はどうなるのでしょうか。

事件は、王宮での殺人事件、軍人の殺害とその遺体に切り込まれた文字。おどろおどろしい感じがしますが、文章全体は、重たくなく、娯楽性やエンターテイメントを忘れない、軽い筆致でどんどん読み進めていくことができます。これぞ、今大活躍中の作者だと感心仕切りの文章です。
で、最後には、この軍人殺害をめぐってどんでん返しの展開が待っています。

この本では、ところどころ、取材の協力者となるネパール人が登場します。彼らの口からはネパールの現状などが語られ、現在のネパールが抱える課題も掘り下げています。そのところも興味をそそられるところです。その問題には、ネパールの貧困問題が取り上げられていますが、その貧困がこの事件を引き起こしている原因ともなっている。。。かもしれません。まあ、読んでみてください。
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No.20:
(5pt)

ミステリーと思うと駄目かな

実際にネパールで起きた事件をもとにその時間軸にそって物語は進んで行く。 フリーライターの太刀洗がその場で出くわし、それを記事にすることと、それを利用しようとする者の駆け引きが事件を起こさせる展開が見事。 様々な所にその鍵が織り込まれており後から「あー」と思わす作品です。
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No.19:
(3pt)

ミステリーとしてはちょっと。

ネパールの王室内で起きた事件に興味がわいて読み進めていったのでちょっと肩透かしにあった感じ。 伝える側、書き手の本音、ある意味狡さをが分かったのが収穫。 ミステリーとしては上手いなあとは思いますが、今一というか今三ぐらい。
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No.18:
(3pt)

読み応えあり

2016年(2015年発行)のこのミス国内編1位の作品です。年内に読み終わろうと頑張って、やっと今日読み終わりました。この人昨年も「満願」で1位でしたね。私が読んだのは、本作と「満願」と「折れた竜骨」の3作品ですが、私としては「折れた竜骨」が一番面白かったですけどね。本作は、2001年6月に実際に起こったネパール王族殺害事件(ネパールの国王夫婦他王族9人が皇太子によって殺害され、皇太子も自殺したと伝えられる事件ですがこんな事件があったなんとちっとも知らなかった)を背景として日本人の女性ジャーナリストが殺人事件に巻き込まれるというストリートなっています。背景は大きいですが、ミステリーとしての謎解き部分は古典的な仕掛けです。ネパールの社会情勢を背景にニュースを伝える者のまた受け取る者のあり方を問いかけてくる佳作で読み応えのある一品ですが、「このミス」の1位といわれると、???です。
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No.17:
(5pt)

哲学できるエンターテイメント

タイトルの謎めいた響きと表紙写真の世界観に惹かれて、どこの何の話か分からずに読み始めてしまいました。 これが堅苦しい文章だったら、すぐに閉じてしまうところでしたが、のど越しの良い文章と、想像を掻き立てる表現の連続で、本当にスパイスの香りがしてくるような気がしました。 途中では無性にチャイが飲みたくなったりして、読んでいるだけなのに何かを体験しているような気にさせてくれる文章でした。 アジア旅行好きなら楽しめるところが多いし、国際情勢や地球規模での善悪を哲学するのにもおすすめです。
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No.16:
(4pt)

このミス1位という期待感でいうと

ネパール王族殺害事件が題材の割には、緊張感が伝わってきません。 読んでいて中だるみします。 ミステリーとしては古典的で、ドキドキすることはありません。 だから最後が気に入るか、そうでないかで評価が分かれると思います。 僕はよかったと思います。
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No.15:
(4pt)

急ぐことと待つこと

期待以上の出来でした。特に、テーマの生かされた、ラストで示される犯人像がすばらしく、笠井潔の名作『バイバイ、エンジェル』に通じるものがありました。

本作のテーマを「他者の現実的悲劇を報ずることの、ジャーナリズムにおける正当性」の問題だと限定的に理解する読者は少なくないでしょうが、本書のテーマの射程はもっと遠く広く「善かれと思ってなされるすべての行いが、必ず一部の誰かにとっては迷惑であり悪でしかないという現実。にもかかわらず、私たちはより善きことをなさねばならないという決断において、ある意味、冷たい(避けられない犠牲を容認する)心を持たないではいられない」という、苦い人間認識が示されていると見るべきでしょう。

また、これは「面白い娯楽作品を提供すること、享受することの、負の現実的側面」の認識という作者自身のジレンマにも直結する、誠実な問題提起だと言えるでしょう。

作者のこの生真面目な誠実さに最大の敬意を表しつつ、ここでは世界の現実と向き合って闘った神学者カール・バルトの『急ぐことと待つこと』という言葉を贈りたい。
私たちは、このいかんともし難い現実に対して、つねに今ここで対処しなければならない。しかし、それが人間のすることであれば、当然その不完全性によって悲劇を招くこともある。だがしかし、そこで絶望するのではなく、私たちはそれが真に結実する時を「待つ」心(希望)を持つべきなのです。作中でも描かれているとおり、それが開き直りや傲慢に陥らないよう、最大限に「気をつけ」ながら。
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No.14:
(4pt)

情報の取捨選択を行って記事を作成することは、自身の見識が露わになるとか納得できるな

「さよなら妖精」の語手は男子だったような記憶が有るが・・・ あちらはユーゴスラビア崩壊で、こちらはネパール王族殺害事件。 ネパール王族殺害事件の正式見解は疑問だが憶測することは可能なのでミステリーはこちらではない。 王に対する敬愛とマオイストとの内戦の危機がユーゴスラビア崩壊と似ている所で「さよなら妖精」と読後感が似ているのかな。 遠い外国での報道が自国の悲劇を消費しているだけとか、情報の取捨選択を行って記事を作成することは、自身の見識が露わになるとか納得できるな。 短編集も購入してみよう。
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No.13:
(4pt)

「王」と「サーカス」と、「外側の人間」

同じ世界線である作品「さよなら妖精」において、キーパーソンとなった少女「マーヤ」は、現在の大刀洗の人物形成に影響を及ぼした過去のアイコンとして描かれる程度であり、2つの物語の間には連続性と言えるものがないので、単なる「女性ジャーナリストを主人公としたミステリー」と考えれば未読者にもとっつきやすいのではないだろうか。
本編に触れると、舞台はカトマンズにあるホテル「トーキョーロッジ」。日本でも知られるネパール王室事件の裏側で行なわれていたある殺人事件を巡り、日本人ジャーナリスト大刀洗万智、そしてホテルの従業員や同宿人、ネパール政府高官、土産売の少年らが絡み合い、一度収束したはずの事件は思わぬ真実へ辿り着く。終盤で、ある人物の胸中から絞り出される言葉が、大刀洗と私の胸に重く伸し掛かり、「王とサーカス」というタイトルの本当の意味を知る。大胆な推測と、冷静な分析・綜合から真実を導き出す米澤先生らしい手法は健在で、派手さはないが良質のミステリーであり、先生の作品の常である、苦い薬を飲み下したような読後感を与えてくれる。個人的には今年の佳作に認定したい。

追記
匂い立つような街の風景や、独特の習俗の中で生きる人々がリアルに描かれていたので、てっきり取材に行かれたのかと思っていたが、とある文芸雑誌で先生が一度も訪問したことがないと発言されていてびっくり。見もせずにこれだけ現実感を持った描写ができるのはさすがだと思いました。
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No.12:
(4pt)

本格ミステリとしては、優秀作品です(*^。^*)

ネパールを舞台に、ジャーナリストの推理劇が、展開されます。 緻密な伏線の張り方には、本当に感心されられました。 おそらく今年のミステリーランキングの10位以内には、入るだろう作品ですが、満願のように上位にランクインするかと言われれば、難しいかもしれません。 ストーリーの展開が、少し単調なので、読んでいてハラハラドキドキするようなストーリーでは、なかったです。 謎も、男の死体は、なぜ上半身裸だったのか?ということのみなので、あまり夢中にはなれませんでした。 しかし、終盤で明かされる伏線の張り方が見事なので、本格推理としては、優秀作品だと思います。
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No.11:
(3pt)

よく聴く話が集まったような

完全にフィクションじみた空気の中にふと生々しい人間らしさが浮き出て ドキリとさせられるというのがこの作家の売りなのだと(勝手に)解釈しているのですが、 この本は大きく広げた風呂敷の上で想像の範囲内に収まる悪意や道徳がフワフワと漂うだけで 『折れた竜骨』ほどの切迫感や感情に訴えられる事はありませんでした。 小手先の技量で小綺麗にまとめたという印象で、筆者の力量からすれば特筆する作品では無いと思います。 装丁はお洒落ですが…。
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No.10:
(2pt)

期待が大きすぎたかな

前半、事件が起きるまでのペースがゆっくりとしすぎていて読んでいて退屈でした。 事件が起きてからも探偵役の大刀洗がマイペースというか、のんびりしているというか、王族暗殺なんていう大事件の現場に居合わせたジャーナリストって、もっとがむしゃらに取材するのでは? 後半の殺人事件が前半とマッチしていなくてちぐはぐ。 幕切れも苦いと言うより、リアルじゃなくって響いてこない。 期待しすぎたかな。
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No.9:
(5pt)

異国の哀しいサーカス芝居

本書は、ミステリー作家の作品であり、後半になってミステリーとしての顛末も含んでいるが、そこに主題はないだろう(だから、著者やミステリー作品としての評価をレビューの軸にすることも私はしない)

小説で過去の日本ではないどこかの事件を題材にすることは珍しいことではない。しかし、2001年にネパールで起きた王族間の殺人は、多くの日本人には知られることもない事件であり、本書が、その事件当時のネパールを舞台として、それも前半は延々と主人公の日本人記者が初めてのカトマンズの街を彷徨うくだりは、作品がどこに向かっているのか読者には不安になるほどに見えない、この感覚は、主人公自身の感覚とも重なるものだろう。

そして、唐突に彼女が遭った一つの死体は、王室での凄惨な殺人事件との関連をうかがわせるもので、それは死体にナイフで刻まれた"informer"密告者という文字が、後半を読み進める読者の脳裏・心を支配し続ける。この点も主人公の感覚と重なっている。
私個人は、ネパールを訪問したことはないが、同様の途上国で旅して働きもした経験から、主人公の感覚は肌で伝わるところがあり、エトランゼの感傷や興奮ということを意識するのだが、主人公には(おそらくは前作での経験があって)そうした気持ちの高ぶりがなく真実に近づいていく。彼女は、彼女も推理できなかった、異国のサーカス芝居を見届ける。実に哀しいサーカスだ、エトランゼたちの感傷や興奮、そして、そのエトランゼを喜怒哀楽をもって見据えるネパール人・・・その後に起きたネパールの政変も含め、それでも主人公は哀しいサーカスを見た思いすら冷静に彼女の中に仕舞っていく。恐ろしいまでの、冷たい感情・・・映像のように詳細に描かれるカトマンズの人々と風景、一方で詳しく描かれながら想像しづらい主人公の心象風景、このコントラストこそが本作の味わい深さだろう。

informerという言葉については、日本人あるいはノンネイティブであれば、情報という単語を先ず意識するだろう。サーカスは、演じる者達の哀しさと、観る者達の浅薄な快楽から成り立っているが、もう1人の存在が不可欠だ。哀しさを快楽にすり替えた商売で銭儲けをするサーカス小屋の小屋主だ。そして、本作でも、あるいは今でも、私達は情報という名のサーカスを楽しみ続けていて、それは、2001年にはその片鱗しかなかったインターネットによって、飛躍的に巨大化している。
「知る」という知的な言葉で糊塗されたサーカスは、世界中の戦争や災害やテロやデモをも飲み込んで肥大化し続けている、そして、世界中の人間が、王の気分を抱きながら、サーカスの観衆であり、あるいはサーカスの演者にも成り得る時代が続いていくのだろう。だからこそ、2001年のカトマンズの片隅で起きたサーカスは、おそらくは世界じゅう~日本の私達のすぐそばでも起き続けている。

最後にもう一つ、サーカスには道化の存在も欠かせない。本作の道化は誰だったのか?このミステリーの答えは、読者一人一人の中で考えられていく難問なのだろう。
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No.8:
(4pt)

単なる異国の地での本格ミステリーだけではない

日本とは比較的馴染みの薄い南アジアのネパールが舞台。特に前半はネパールの街並みや生活習慣などが語られ、旅情感たっぷりで旅行記を読んでいる気分にさせられます。但し、主人公の同宿の宿泊客に、日本人僧や陽気なアメリカ男子学生、インドで商売をするビジネスマンがいて登場人物からは本格ミステリーの雰囲気は充分です。

実際の王族殺害事件をきっかけに事態は展開し、軍人の殺人事件が発生。ジャーナリストが自らの使命に戸惑いながらも、真実を追い求めていきます。いつもながら、伏線も充分散りばめられ著者のファンの方は楽しめることと思います。

真相自体はオーソドックスではありますが、もう一捻り後の背景にある繊細で微妙な問題が奥深く、それぞれの立場で深く考えさせられる作品でもあります。
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No.7:
(5pt)

このビターな読後感こそ米澤穂信の真骨頂

正直に言って、ミステリー部分で傑作を期待された方は少々肩すかしをくった気分になるかもしれません。
犯人は意外でもないし、キーワードははっきり読者の記憶に残る形で示されていますし。
ただ真犯人解明の後の、ビターな読後感こそ米澤穂信の真骨頂。
私が米澤作品で読みたかったものが、ここにはあり、個人的には大満足です。
「冬期限定」待ってますよー米澤先生!
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No.6:
(4pt)

著者の作品にしては少々長めだが、良著。

ミステリとしては著者の他の作品に近く大仰なトリックなどはない。
けれど文章に丁寧に撒かれた伏線を回収していく流れは相変わらず見事。
『さよなら妖精』の太刀洗万智が主人公だがこちらはライトな感じはなく、
ページ数もそこそこあり、多少冗長なところもある。

しかし万智の記者としてのスタンスに共感ができ、
とても魅力的な主人公になっている。
終わり方的に彼女が主人公の物語は以降なさそうではあったが、
もっと読んでみたいと思った。

しかし『王とサーカス』というタイトルにはなるほど考えさせられた。
ストーリー、舞台、結末、登場人物、どれも良かったが、
展開が地味めで冗長なところがあったため、星はマイナス1で。
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No.5:
(2pt)

期待して読みましたが

米澤穂信の著作はすべて読んでいるので期待して読みました。
感想を率直に言えば「米澤穂信ってこんなに下手だったっけ?」。
登場人物の心理も言動も取ってつけたようでわざとらしい印象を受けました。
この作品が小説の”ガワ”の部分を重視する純粋なエンターテイメントであればそれでも構わないのですが、本作はジャーナリズムをめぐる主人公の成長が主題に置かれているために、人物描写を軽視して読むわけにはいきません。
作者は自分が設定した「ジャーナリズム」というテーマに引っ張られすぎてしまったのではないでしょうか。
満願もそうでしたが、今までの米澤穂信作品にあった胸を締め付けられるような切実さが失われつつあるように思います。
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No.4:
(3pt)

ミステリとジャーナリズム

私は米澤先生の著作は全て読んできたので、本書も速攻で予約。特に「さよなら妖精」は米澤作品にのめり込むきっかけとなったので、期待大でした。

物語の舞台はネパール。 王族の大量殺害と言う異常事態の中、太刀洗は警備の国軍軍人の死に遭遇します。限られた時間の中(原稿の締め切りが有るので)、制約された行動の中で(外出禁止令が出るので)、見るべきものを見て、伝えるべき事を絞り込んでいきます。

探偵としての太刀洗は、軍人の死の謎を追いかけます。王族の大量殺害と言う異常事態を、殺害の動機、時間・行動の制約として生かすだけでなく、ジャーナリズムの観点から事件をどう捉えるべきかの判断を迫らせる構成は、非常に丁寧にまとめられており、流石だと感じました。様々な背景を持つ登場人物たちも、それぞれの立場の言動を通して、多面的な見方を与えます。特に「本当の敵」の救いの無さは、平和な日本のニュースで取り上げられるサーカスそのものであり、やるせなさを感じさせます。

高いレベルでまとめられたミステリで、一気に読む事が出来ました。
ただ、それでも、高い点数は付けられない・・・。乙女だったのがセンドーの大きな魅力だったのに、この作品では殆ど表れません。29歳で乙女というのも、微妙ではありますが。僕は「さよなら妖精」の続編が読みたかったのですよ。次は仕事に誇りをもって、しかし恥ずかしがってそれを表に出せないセンドーさんを読みたいです。
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No.3:
(4pt)

サーカスを求めるのは誰?

序盤こそは異国でのロードノベルというのか,『軸』の部分が見えづらくもあるのですが,
何気ない一言での始まりと,その地や人々を見るかのような雰囲気に一気に引き込まれます.

また,記者としての仕事や信念を激しく揺さぶられ,自問自答を繰り返す主人公の姿は,
早々に知らされるタイトルの意味と,そこでのやり取りも重なり,内側を鷲づかみにされ,
混乱や恐怖に戸惑いながら,記事と自身の『完成』を求めてあがく姿は強く印象に残ります.

中盤過ぎからのミステリ展開も,メインではないためかいささか易しめではあるものの,
伏線や立てては覆される推理,犯人との対峙まで,どれも充分楽しめるものとなっており,
その犯人が残した一言,『本当の敵』の正体や真意と,苦々しさが上塗りされていく終盤は,
主人公だけではなく,サーカスをはやし立てる『観客』の我々にも大きな問いを投げ掛けます.

なお,内容紹介や巻頭で綴られた『言葉』,そして何度か挟まれるあの少女のことなど,
『さよなら妖精』を意識させる要素は見られますが,本作との直接の繋がりはありません.
それでも,知ること,伝えることなど,あの時から始まった主人公の根底にあるのは確かで,
十年前の出来事,作品自体はさらに昔のものですが,やはり繋がっているように感じられます.
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4488027512

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