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ペスト
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【この小説が収録されている参考書籍】
ペストの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全411件 401~411 21/21ページ
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偉大なるカミュの、代表作との呼び声もある『ペスト』。そもそも、何でこういう小説を書こうという気になるのか、凡人にはさっぱり分かりません。 しかも、ええっとアルジェリアではペストが流行したことがあったかな、とついうっかり調べてしまった。これフィクションですって? 登場人物は決して多くないけれど、極めて非日常的な「ペストの蔓延」という設定で、人間はどのようにふるまうのか、言わば想像で書いていることに なりますが、これは実にありそうだなと思わせられます。 特に、街の偉いさん方がペストと認定するかどうかのあたりは、実にリアル。絶対こうなるよな。 訳者あとがきはものすごく難しいことが書かれていて、こんなふうに読まなきゃいけないのぉ?、とも思ったけれど、まあ私の感想としては「読み通す のが決して苦じゃない小説」でした。 | ||||
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生と死、善と悪、そして神の救済の意味を問うた長編。 かつて熱烈なキリスト教信者であったカミュは、 創作を通じて神の存在を問い続けた。 「ペスト」はカミュの作品中、もっとも大きな構想、長いストーリー、たくさんの登場人物を擁した傑作だ。 タルーを始めとする登場人物は、必死に思考し、行動する。 ペストが蔓延した街は封鎖され、ストーリーは一気に加速する。 最後はどうなるのか、惹き込まれる。 テーマはずしりと重いのだが、 「ペスト」は娯楽小説としてのクオリティーが素晴らしく高い。 アルジェリアの港町の描写がすばらしくエキゾチック。 このノーベル賞作家の作品中、もっとも大衆的でもあると思う。 そこが特筆すべき点なのだ。 ぜひご一読を。 | ||||
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ペストということばはこの作品においては三つほどの意味で使われている。 1)病名であり、小説は表層的には、ペストという病原菌・極限状態に立ち向かうひとつの都市の人々が織り成す人間模様というストーリー構成をとる。 2)世間一般の暗黙の常識。タルーが闘ってきた「死刑」というペストはこの意味である。死刑という制度を暗黙の領域として片付ける我々の思考がペストに冒されている。あるいはコタールにとってのペスト−−「孤独な、しかも孤独であることを欲しない一人の男をペストは一個の共謀者に仕立てた。なぜなら、明瞭にこれは一個の共謀者であるであり、しかも悦に入っている共謀者である」ということばも同じ意味になる。 3)完全な悪、完全な死、無差別な悪、意志のない悪、不条理な人生を終わらせる悪=死。さまざまなことばで述べたが、P330「一見無用な悪」ということばが大仰でなく適切かもしれない。叫びながら死なざるを得なかった罪無き少年に象徴されるような死、それに何らかの意味を付与したいのなら、ペストを許容する神という存在をどうあっても受け入れ諦念するか(どんな悪も神の摂理であるというライプニッツの予定調和説)、神への信仰を捨てるか(遠藤周作が「沈黙」で取った結論だ)、という二者択一を迫るようなペストである。 カミュにとって3)の問いが切実であったのは言うまでもない。岩を頂上まで運びながら、再び、岩が落ち頂上に運ばねばならない、そんな不条理な人生がどういう仕方で終わろうが、そこに神は関与しない、単に終わるだけだというメッセージがあくまで冷徹にペストによる死人を描写する文体から読み取れないだろうか? | ||||
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この物語には、実に多くの人間が、そして多くの人間の心が登場する。 「壁の内の人間」と「壁の外の人間」。 「嘆く人間」と「動く人間」。 「生きる人間」と「死ぬ人間」。 「信じる人間」と「信じない人間」。 「帰る場所のある人間」と「帰る場所を失った人間」。 ペストは、人々を容赦なく分断するが、同時に人々を強制的に平等にする。 死の恐怖は、誰にでも等しく訪れる。 その中でどう生きるか、どう選択するかで、その人の「生きること」の価値が問われる気がする。 ここには、同じ舞台で、さまざまな「選択肢」、そして人々の「選択」が提示されている。 自分だったらどうするだろうと、意識をペストの壁の中に放り込んで、自分なりの答えを見つけてみたい。 | ||||
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カミュの、ペスト蔓延下の人間描写や考察は客観的で冷めており、皮肉めいているとさえいえます。 私はナチスや戦争を連想せずに、むしろそのことに興味を覚えました。 タルーの慈善事業にさえ、安直な判定を下さず、的確で説得性のある(という印象を私は受けました)指摘で見事(?)にあしらっています。 私にはどうも、カミュは「常識的」とされている人間心理に疑問を投げかけているように思えるのです。 文句なしに世界の名著の1つといえます。 人生に一度は読むべきではないかと。 | ||||
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中世さながらに突然「ペスト」が蔓延した町。その発端から、蔓延の過程、その過程の中で暴かれる人間のエゴ、パニック心理、そして解決への努力等、様々な人間模様を描き切った秀作。作者に取っては、本書執筆前の対ナチス闘争を反映した政治に対する問いかけも含まれている。 この人間模様を冷静かつ臨場感溢れる筆致で描くため、敢えて三人称で書かずに、作品の冒頭から結末まで通して主要な役割を演ずる医者の目を通して描くという手法を取っている。しかも、この一人称が誰の手によるものかは最後まで伏せられているのだ。誰が見ても、一人称の書き手はこの医者しかいないと思えるのに、それを伏せておいた作者の考えは今でも理解できない。何か特別の理由があるのだろうか ? 「ペスト」の蔓延時には町は他の地域とは遮断されてしまう。この隔絶性が上記の人間模様をより鮮明に浮き彫りにしており、これが作者が「ペスト」を題材に選んだ理由であろう。隔絶した社会の中で恐慌が起きた状況を利用して、種々の人間模様を描き切った秀作。 | ||||
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疫病の流行で封鎖された都市で、それぞれに生きていく人々を描いている。医者として最前線で戦うリウー、彼を助ける多くの人。それとは対照的に、外へ出ることを関心事にする人やペストを神の裁きと説く神父。それに保身のために封鎖状態が続くことを願う男や、無気力に侵され何もしないでただ過ごすだけの人々。それらの人の中を、ペストは無差別に襲い犠牲者を出していった。 伝染病で封鎖されたときの集団心理を見事に描き出しているが、戦争とからめてペストを解釈するのが一般的だろう。ナチスだという解釈もあるが、これはもっと大きな悪そのものである。第一次世界大戦で父を亡くし、第二次世界大戦のナチスの弾圧を見つめていたカミュにとって、ペストは戦争を引き起こすことや、それに対抗することでやはり人を死に追いやることを現していたのだろう。戦争を引き起こした人間を裁くこともまた、人に死を与えることを正当化するペストである。そしてそれは誰の心の中にもある。だからこそそれを認識し、表に出ないようにしなければならないとリウーは語る。ペストは沈静化しただけで根絶したのではないからだ。 | ||||
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主人公の医師と友人のタルーが、テラスで話をする場面がある。 タルーが「人を殺す一切の根拠を否定する」みたいなことを言うところがあって、その通りだなと僕は思ってしまう。 第二次世界大戦で虫けらのように人が殺されて、僕たちは平和な時代を生きていて対照的ではあるけれども、現在でも日本では自殺者が年間三万人近くも出ていて生命の在り方は、まだまだ新しい問題だと思うからだ。 いくら国家が、法律が「人の命を奪う権利」みたいなものを規定していて、あたかも確立されているように感じられようとも、そのような根拠があるのだったら、ぜひとも教えてほしい。それはもっと別の人間の根源的な問題だと思う。正当だと見なす人は犯罪防止の抑止効果で批判するのかもしれないけれども。 人類生誕以来殺害に正当な根拠などありえない。 人間の尊厳などどうでもいい問題だという考え方がまかり通って、何も考えなくなったとき、最も怖い事態になるのだと考える。 | ||||
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中期カミュの代表作、というか長編小説はこれしかありません。 初期カミュが個人に埋没しているという弱点(でもあり強み)から抜け出そうと、カミュが個人から集団への意識に向かっていったことが現れている。 本作は驚くほど巧みに構築されている。ペストがある町を襲ったら、本当にこうなるに違いない、と思わされてしまうくらいに細部にわたって矛盾が生じていない。 「異邦人」より「ペスト」の方が感動的であることは間違いない。主人公リウーの心情は、不条理という儚さを帯びてとても美しい。 | ||||
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アルジェリアの港町オランにペストという、死病が発生する。その拡大を懸念し、市は町をを閉鎖する。逃げることの出来ない状況下で圧倒的な死を目にしての人々の行動を描く。冒頭のねずみの死の描写から、筆者は読者をぐいぐいと物語に引き込む。主人公の医者リウーの心の中の苦悩、人々が抱える別離の悲しみ、様々な人間の感情とともに、物語られる一つの町の話。 僕はまだ完全に理解はしていませんが、よい小説だと思います。 | ||||
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この傑作芸術の存在が、人類の英知の素晴らしさを証明していると強く感じました。筋立てや人物描写等、完璧な作品です。「異邦人」のみを読んで、カミュが風変わりな作家だという印象を持っている方がいたら、是非一読を進めます。 | ||||
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