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ペスト



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ペストの評価: 4.00/5点 レビュー 411件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全411件 341~360 18/21ページ
No.71:
(3pt)

ネタバレギリギリかな

現在のこの監禁状態を小説にすることは、何であれ実際に存在するあるものを、存在しないあるものによって表現するのと同じくらいに、理にかなったことである。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.70:
(5pt)

知人から頼まれましたので?です

知人に頼まれたので、詳しいことはわかりませんが、とても良かった‼️とのことです
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.69:
(5pt)

不条理と闘う姿勢

新型コロナウイルスが蔓延している2020年3月末に、あらためて本書を読んでみた。
ペストについての科学的情報や、医療現場での具体的対処法を期待して読むと、期待外れに終わると思う。また、ウイルスのアウトブレイクに関するパニック小説とも一線を画する。
ここで書かれているのは、都市の閉鎖(ロックダウン)のような、周りから隔離された(著者は「追放」と言っている)状況で、人々はどう考えるか、どう行動するか、という問題への哲学的・文学的な考察である。
なので、主題は別にペストでもなくてもよかったのではないか。戦争でも、宇宙人襲来でもよかったのだと思う。
このような状況でも、自分のすべきことを誠実に続けていくことが、不条理と闘う姿勢なのだと感じさせる。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.68:
(5pt)

ペスト禍の都市を舞台に繰り広げられる人間模様

ペスト大流行にさらされる、1940年代のアルジェリアの要港オランを舞台としたアルベール・カミュの小説。毎日百人単位で人々が亡くなっていくのに、町が封鎖されて外部へ出て行くことすら許されないあまりにも不条理で極限的な状況の中で、人々がどう考え、どう行動したかが、リウー医師の目とその相棒の旅行者タルーの手帳を通じて語られる。最年少ノーベル文学賞受賞者らしい、その圧倒的な表現力と見事なまでの描写力には感嘆の念を禁じ得ない。
 本屋さんのレジのところに置いてあったので、思わず手に取って買ったが、おそらく今回の新型コロナウイルス騒動がなければ永遠に読むことはなかった本だろう。さすがに、今回のコロナは、ペストほどには恐ろしくないと信じたいが、過去のスペイン風邪の例もあるので油断はならない。
 物語の途中でパヌルー神父が、このペスト流行は神の怒りによるもので、ひたすら悔い改めをすることによって、神の怒りが鎮まるのを待つしかない旨述べるシーンなんかは、さすがに「鞭打ち巡礼」までは出てこないものの(似たような狂態は登場するが)、ヨーロッパの人口の四分の一が失われたという1348年のペスト大流行の時から人類はちっとも進歩していないように感じさせる。
 ただし、オトン判事の息子がペストとの壮絶な戦いの末に命を落とすのを目の当たりにして、この神父が、「皆さん。私どもは踏みとどまる者とならねばなりません」とより人間的?になっていることや、タルーの、「誰でもめいめい自分のうちにペストをもっている」「人は神によらずして聖者になりうるか」という言葉からは、この神父自身が”踏みとどまれなかった”ことも含めて、カミュ自身のある種の宗教観のようなものを読み取ることができるように思われる。
 それにしても、世の中何が起こるかわからない。恐ろしいものである。改めて過去の歴史の教訓をあだやおろそかにしてはいけないと痛感する。これからの日本が、いや世界が、リウー医師の言う、「際限なく続く敗北」の連鎖に陥らないことを願うばかりである。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.67:
(4pt)

必読のカミュの名作

現在、日本も直面している伝染病とそれに対する政策の問題を見事に描いたノーベル文学賞受賞のカミュの名作。
訳が少し古いのが玉にキズだが・・。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.66:
(5pt)

大人になってからきちんと読み直すべき

せんだって NHK "100分で名著" で取り上げられていたので,購入しようと思っていました.新型コロナウィルスの流行で,一体何の予言だったのかとびっくりしました.読んだつもりになっていたけれど,大人になってからきちんと読み直すべき名著というにはたくさんあるなと思います.
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.65:
(5pt)

すべてはすでに起きていた

オランの夏、すべてはすでに起きていた。感染の始まりと不気味な拡大。初期の無関心から過度の恐怖へ、そして無力感ゆえの沈黙へ。都市の封鎖。脱出の試み。生活必需品の欠乏。医師の疲弊と絶望。新型コロナウィルスを体験してみると、描かれた物語が非常にリアルなものだったことに驚かされる。群像のキャラ立ちが鮮やかで予想外に面白い。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.64:
(5pt)

印象に残りました

コロナの影響で売れていると聞いて購入しました。感染症と闘う医師と、それを助ける数人の友人との関係がよかったです。誠実であることが重要であるという考えに共感します。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.63:
(5pt)

COVID-19パンデミックの今こそ読むべき

不条理(理不尽)をどう乗り越えるか。医師リウーの奮闘や仲間との連帯、愛する人を思う心、犠牲者に寄り添うこと、自分にできることをするなど多くの教訓が読み取れる。
重いテーマではあるが、読後は晴れやかな気分になる。
COVID-19パンデミックの今こそ読むべきではないか。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.62:
(1pt)

つまらん

なにが描きたいのかさっぱりわからなかった。二度と買わない。もともと自分の意思で買ったわけではありません。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.61:
(4pt)

反抗

カミュの「ペスト」は「白鯨」に刺激を受けて書かれたものという解説を読んで、ペストは「悪」の象徴と分かりやすく、ペストに対する反抗は、全体主義やファシズムへの反抗と読み変えやすく、当時の戦後の風潮が、この作品のベストセラーに貢献しているのは、明らかです。
 「白鯨」は、まだ解釈の幅があり、批評家の解釈を多様に引き起こしますが、「ペスト」は、問題意識が明確な分、時代を経つにつれて、その意義が少しずつ薄れていくのが分かります。

 カミュの「反抗」により人間が繋がるという一時性は理解できます。この「反抗」は、作中ではペストという疫病に対してですが、例えば、反米や反韓とも置き換えれますし、フェミニストによる反男性への団結やマルクスの反資本主義、アジア圏の反西洋とかにもいえます。
 この「反抗」による団結は一時的なものに過ぎないので、結局は、その反抗の成功により、団結が失われるという危機が訪れてしまうという悲劇が立ち上がります。しかし、同時に、「反抗」すべき悪に対して、「反抗」しないことも許されず、結局、「反抗」の渦に呑まこまれる。「反抗」の勝利は、終結ではなく、あくまで始まりであって、そこから、新しく社会を建て直すことに、視点を動かしていかなければならない。

「戦う操縦士」のサン=テグジュペリの「人は何かに反対して死ぬのではなく、何かのために死ぬのです」というセリフがありますが、当然、カミュも「反抗」による繋がりの一時性を知りながら、思索を発展していくことになります。
 サン=テグジュペリは、犠牲の精神や人間主義にファシストや社会主義に対する返答を提出し、戦争へと向かい、カミュは、まだ「反抗」の先を見すえきれずに、それでも戦いへと実存的にのぞみ行きます。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.60:
(2pt)

期待外れ

長々とした著作だが、ペストそのものも人間も全く描かれていない。なぜ彼がもてはやされ、ノーベル賞まで受賞したのかが不思議。論争相手だったサルトルには、まったく及ばない。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.59:
(5pt)

物語の普遍性

悪性の伝性病「ペスト」にみまわれたある街。住民のパニック・デマ・エゴイズムを淡々とした筆致で描かれます。そして自らおかれた立場や職務に対する「誠実さ」だけを頼りにペストと戦う医師や協力者たち。今でも通じる人々の描写と物語の普遍性に驚きます。新型肺炎の感染拡大という深刻な状況が報じられている現在、この小説を想起された方もいらっしゃるのではないでしょうか?亡くなられた方々にお悔やみを申し上げるとともに感染の終息を願うばかりです。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.58:
(5pt)

極限状態で人は己が道をどう選ぶか

好みではないのですが、必要に迫られて泣きながら1週間で読みました。重苦しい気分で読み終わりましたが、読んだら読んだで充足感はありました。
 仏領アルジェリアの要港で1940年代に起こった架空のペスト禍について最後には書き手が明らかにされる淡々とした記録と、そこに別の市井の人物の非常に主観的な手記が挿入されて、描かれていきます。ペストの前兆であるネズミの大量死から始まり、病人の発生、行政の事なかれ主義、そして市の閉鎖をさっと描いた後で、主人公リウー石を中心に病禍と戦う人々、ペストが蔓延していてもわが身は安泰と安堵し、密輸に走り、病禍を楽しむ人物が描かれます。もっともその人物はペスト終焉後に報いを受けますが・・・。多くのお民衆の姿が挿入的に描かれます。その落差が変な感じですね。町を脱出する機会を目前にしながらそれをやめた人物の気持ちの変化を読み取れず、残念無念。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.57:
(4pt)

感染症の蔓延する都市の最前線で苦悩する人たちの小説

北アフリカの街オランでペストが発生し、町全体が外部との交通をシャットアウトされる。
別に突拍子もないSF的な展開があったりするわけではないので、詳細な内容については読んでいただければいいのが、この状況は今日、西アフリカで流行しているエボラ出血熱と似ているのではないだろうか。そういう意味ではペストに限らず重い感染症が都市部で流行したらどうなるか、街が封鎖されるとともに街の中にも隔離区画が作られたり医師たちが苦闘するあたりなど、感染爆発についての興味深いシミュレーションとして読むことが出来るだろう。昨今の西アフリカの状況を想起させるため、エボラ出血熱について描かれたノンフィクション『ホット・ゾーン』などと併せて興味深いかもしれない。
また、隔離という人権を考えるに当たって極めて重い措置について考えるにあたり、北条民雄『いのちの初夜』などと併せて読んでいただけるとよいだろう。特に『いのちの初夜』は、病気に対しての誤った知識と誤解に基づいた処置がどのような結果をもたらすか、という意味においても一読の価値があるように思われる。また、病気としては発病後数日で劇的に症状が進行して死に至るペストと数年間掛けて少しずつ体を蝕むハンセン病では絶望の中身が自ずと違ってくるのではないだろうか。などなど文学の観点で病気を見るとどうなるのか、という点は興味が尽きないだろう。

ただ、文豪カミュの本ということでさぞや難しいだろうとお思いかもしれない。戦後70周年という時節柄かナチスオタクが多いのか何なのか知らないが、amazonのレビューにも散見されるのだが、ナチスがどうとかというのはあまり気にしないほうがいいだろう。大体本文にはどこにもナチスなんて単語は出てこないし、この小説は街が病に覆われて苦闘する人たちの記録であり、素直に読めばそれにこそ目が行くだろう。そう考えるとナチスがどうとかという超解釈以前に今、エボラ出血熱などの最前線で人々がどのような苦闘をしているのか、それにこそ思いを馳せるべきだし、文面を素直に読めばそう読めるだろう。私たちは先進国で高度な医療に保護されて暮らしているが、その保護に預かれない人たちは多いのだ。今苦しんでいる人たちに思いを馳せたい。(2015年5月17日に私が別のサイトで投稿したレビューを再投稿しています)
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.56:
(5pt)

ノーベル文学賞作家

頭がピーマンでして、ヨワイ50手前でようやく読了。文学的に難解というよりは、行政への馴染みや知識といった社会的な経験値が理解に必須でした。ナチスのユダヤ人迫害、虐殺の瞬間をこれでもかとばかりに追体験させられました。終始一貫の暗い人社会の「物語」の合間に、自然の明るさを差し込ませる静謐な筆致は、まさに芸術。言い尽くせませんが、これがノーベル賞作家なんだな、と。が、一般的に、宗教の深淵を前にした日本人なんて、理解のそこが浅い気がしてならないのです。しかも、個人的に、私ってば、地理や世界史といった知識ベースに乏しいですしね・・・個人個人の「永久の別れの宣告の瞬間」を心で想像できたとしても、社会的動物である人間を取り巻く枠組みや環境、歴史といったところへの認識が乏しいので、いま一歩どうしても、理解がホンモノになりません。自分の「理解力」の限界と原因を見て、個人的な感想ですが、とても苦いです。学校で勉強しとけばよかったな~と心底後悔です。学生の皆さん!後悔なきよう、勉強しましょう!
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.55:
(4pt)

Camusの長編小説

ノーベル文学賞を受賞してわずか3年で、交通事故のために亡くなったCamusが残した長編小説である。

有名な冒頭部分の『……四月十六日の朝、医師ベルナール・リウーは、診療室から出かけようとして、階段口のまんなかで一匹の死んだ鼠につまずいた。……』から始まる夥しい数の鼠の死、そしてそれに続く人々の死が描かれている。

一方、主人公であり、この小説の書き手であると最後に紹介される医師リウーの妻は、転地療養が必要となっていた。やがて鼠と人々を襲った病気がペストであることが判明し、舞台であるオランは外界から閉鎖され、電報だけが外界との唯一の交信手段となる。現代だったら、やや滑稽かもしれないけれども、Camusはペストと違った異常な状況を考案するかもしれない。

さすが若い頃に舞台に熱中していたCamusだけに、最初の章は読ませるのだけれども、途中からやや冗長になってしまっている感がある。登場人物も、それぞれ立場が違って、よく考えられていて、構成もしっかりとしている。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.54:
(5pt)

洗練された群像劇作品を探す誰かへ

"僕は、災害を限定するように、あらゆる場合に犠牲者の側に立つことにきめたのだ。彼らの中にいれば、僕はともかく探し求めることはできるわけだーどうすれば第三の範疇に、つまり心の平和に到達できるかということをね"1947年発刊の本書は、不条理に直面し蝕まれていく人間性を群像劇的に描き共感を呼ぶ。

個人的には著者の本はレジスタンス活動の際に書き上げたとされる『異邦人』しか読んでおらず、この著者の世界的名声を決定づけた、同じく代表作である本書は未読であった事から今回手にとりました。

さて、本書はメルヴィルの『白鯨』に感動した著者が【過ぎ去ったばかり】のナチス闘争の体験を架空の大都市におけるペスト【悪】の発生、それに抗う市民たちの記録として淡々と洗練した筆致で寓意的に描きこんでいるわけですが。

近年、東日本大震災他数々の災害に見舞われている島国に住み、また何度かの被災地でのボランティア経験を持つ自分と私的に重ね合わせては【行政の対応の遅さ、孤立状態での対応】に架空とは思えない迫真さ、リアリティを感じ、それぞれ神、社会、人間の【正義】を振りかざし、立場的に【合意は出来ずも理解し合おうとする】登場人物達に実際の身近な人物を当てはめてイメージしながら(漫画『進撃の巨人』でも良いかも)最後まで圧倒的に没入して読み終えました。

また。最後に明かされる物語の語り手が、不条理な脅威に圧倒的に敗北し続けて、数多くの犠牲者が出たにも関わらず【黙して語らず】ではなく、あえて人間の中には【軽蔑すべきことより賛美すべきものが多い】と希望を込めた記録として残したとする本書の幕引きも読後感として清々しくて素晴らしい。安っぽいセンセーショナルさ。華々しくヒーローが活躍するような描き方をしていない事で【読み手それぞれが共感を持てる】普遍性も含めて時代を超える名著だと実感しました。

様々な立場で防災や減災に取り組む、または関心のある誰かへ。また洗練された群像劇作品を探す誰かにもオススメ。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.53:
(3pt)

ペストという天災

翻訳が古いせいか、文章が頭の中に入ってきづらく、言い回しが難しくて、読んでいてもどかしかった。しかし、おそらくカミュの文体がそういうインテリチックなのだろう。ぼくには合わなかった。
 解説にも、「想像や感情に訴える要素は極めて少なく、むしろ主として頭脳に訴える作品」とあるが、だとすればなぜカミュはこの題材――この題材を通じて語ろうとした自らの思想を、小説という形式で語ろうとしたのか。解説によれば、この作品は六年もかかったいわば労作であり、それはペストに関する知識や小説の複雑な構造に現れていると思うが、ぼくには「異邦人」のような強烈な独創性を感じることができなかった。
 確かに、ペスト=戦争=殺人、というとらえ方にカミュ独自の視点があることはそうなのだが、そもそも毎年のように天災に見舞われる日本に暮らすぼくにとっては、ペストもまた天災以上のなにものでもなく、それがどんなに人間の姿形を醜く変形させ、人間を徹底的に苦しめた末に死に至らしめるのだとしても、ぼくはそれを悪と見なすことができない。もちろん、天災は嫌だし、憎い。しかし、その憎悪は人間を襲った残酷な運命に対してであって、自然の猛威に対してではないのだ。
 というわけで★三つだが、それはカミュの文学への信頼と情熱がこの作品を読むことで十分伝わってきたからである。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.52:
(3pt)

通俗小説の域を超えない凡作

世評と真逆のことを言うのは勇気がいるが、つまらない小説だった。カミュを知らないわけではない。『異邦人』や『シジポスの神話』に描かれる実存主義と反抗を絶賛してきたのだ。だがこれは何だろう。前作の評判で気をよくした作家の「受け狙い」か。

ペストをナチスに「読み替える」という解釈があるそうだが間違いだ。ナチスの暴虐は西欧社会の明白な失敗の結果であって、ペスト細菌に転嫁できる話ではない。ナチスが突然「異界」から襲撃してきた、とする連想は無責任である。ペストはペスト、ナチスはナチスだ。Forget it!

『ペスト』というタイトルの作品はこれが最初ではない。1722年の昔、ダニエル・デフォーが1655年ロンドンのペスト大流行を材料にしたルポルタ-ジュ風小説がある。当時ペスト菌などは発見されておらず空気伝染と考えられていたので、46万ロンドンっ子は慌てふためいた。疫病の発生から終焉迄の詳細を追うにはデフォーの方が総括的で生々しい。カミュが描くオランの情景の大半は、デフォーのパクリかと疑えるほどだ。

カミュの『ペスト』はルポルタ-ジュではない。疫病と戦う人々の「連帯」を描いているのだ。しかし本書は彼がこれまで追求してきた「反抗」とは趣を異にする。もちろん彼お得意の「実存主義風」な味付けはたっぷりある。しかし『異邦人』に描かれた宗教や世間との息詰まる対決はここにはない。小説構成に不可欠な対決者(antagonists)が不在なのだ。登場者全員が、神父も含めて、リウー医師の働きに敬服し、彼を手助けしてしまうのだから、緊張感があるように見せつけて全く緊張感を欠く物語になってしまった。

パヌルー神父の二つの説教はこの小説の一つの山場である。最初の説教は、東日本大震災の際に「天罰だ」と述べた都知事の発言と変わらないが、二度目の演説は「神の為されることは不可解だ」、我々にはその神を「全否定するか全肯定するか」の選択肢しかないと、人間にとって神が負担になっていると読める信仰告白をするのだが、もともと神を信じてないリウー医師はそれによってたじろぐ様子はない。

10名ほどの登場人物の行動は詳細に描かれる。ペスト蔓延期間中にその何人かが死に、何人かが生き残るが、その選択は作者の恣意に任されている、と考えられる。死亡するのは門衛、「高等遊民」のジャン・タル-、リシャール、パヌルー神父、オトン判事、フィリップ(オトン判事の幼い息子)、リウーの妻、コタール(密輸業者で逮捕後罪が暴かれて処刑されるだろう)。生き残るのはリウー医師、リウーの母、カステル老医師、ランベール(新聞記者)、グラン(作家志望の下級役人)、マルシェ(市の鼠害対策課)等々である、登場人物をフラット・キャラクターとラウンド・キャラクターに分けるとすれば、死者の中で門衛とフィリップ、リウーの妻は、物語進行上欠かせない中立的人物だが、その他はラウンド・キャラクターに分類できるだろう。これらの人々はペスト災害の中で多かれ少なかれ自己変革を遂げた人物である。生き残りは最初から最後まで思想を替えなかったといって良い人々だ。つまりカミュは「連帯」を強調しながら、その「連帯」を否定していると考えられる。これをどう診れば良いか、カミュには「転向者は再び転向する」としたパルチザン時代の不信のトラウマが残っているということか。「排除」を許容する連帯は自己矛盾だ。

一方で、町の人々は全く背景化される。いや背景にもなっていない、描かれていないのだから。フランス植民都市オランは「20万の人口を持っていた。」とされる。その大半がアルジェリア人のはずだが、この町の「アラビア人」に関する記載は、冒頭でパリの記者のランベールが「アラビア人の生活状態について」聞きたいとリウー医師を訪問する一箇所のみ。「黒人」という記載も一つある。この訪問の後リウーとランベールが連れだって街に行く途中「二人は黒人街の路地をずっと下がって行った」という1行。黒人とアルジェリア人は別人か、説明は一切ない。『異邦人』では他者化されつつも「アラビア人」が確かに登場した。本作におけるカミュの被支配者への無関心はエドワード・サイードを(この部分は読んでいないが)激怒させるだろう。

以上を総括していえば、本作は「連帯」という言葉に安易に縋った、解りやすいが通俗的で奥行きに欠けた小説と断罪する以外にない。P,ソディという刊行当時の評論家はこの作品が絶大な人気を得たことについて述べた後、『ありふれた逆説であるが、彼は一般大衆の支持を得ると同時に知識人たちの支持を失ったのである』と述べている」そうである(平田和重氏)が、私も同感だ。『ペスト』は「実存思想」を刺身のツマにしたロマン小説に過ぎない。
ペスト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ペスト (新潮文庫)より
4102114033

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