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Yの悲劇
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Yの悲劇の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.08pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全93件 41~60 3/5ページ
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Xの悲劇、Yの悲劇、Zの悲劇、そしてレーン最後の4部作で最も評価が高い作品といわれている。このシリーズはやはりXから読み始めて行くのが常道である。天の邪鬼な人も是非そうして欲しい。作者の仕掛けた大きなトリックが先に判ってはこの小説を読む意味がないことを知るべきである。 | ||||
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エラリー・クィンは読みやすいですよね。このXYZのシリーズは何も考えず、面白いんじゃないかな~ | ||||
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古典本格推理に関して困ることの一つはネタバレだろう。評論や映像化作品などで、未読の作品のトリックや犯人を知ってしまうこと。別の推理小説のなかで古典作品のネタバラシがやられていることもあり、高木彬光先生などは神津恭介の生みの親として尊敬しつつも、この手の無慈悲な所業を初期作品でよくされており、いくつかの被害をこうむってお恨み申し上げた事もあったものだ。そして名作として名高いこの『Yの悲劇』も、解説文か何かで未読のままに犯人を知ってしまった作品であった。 しかし、それでも筆者には充分満足のいく名作として、脳裏にとどまる作品となった。構成・造形がしっかりした、ある程度以上の評価を受けた作品は、こういう感想がもてる場合が多い。フィルポッツの『赤毛のレドメイン』然り、ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』然り…。ただし読み手が、奇抜ななぞなぞの答と同様の驚きを求める《なぞなぞ読み》や、推理の矛盾や不合理を指摘して悦に入る《あら探し読み》といった、偏狭な読み方をしない限りである。 答を知っていても「いかにして謎が解かれたか」という物語は、裏から読めば「いかにして謎が作られたか」というストーリーとして読め、それを頭の中でひっくり返せば、また表から読んだ風景が再構築できる。この『Yの悲劇』も、それが出来るしっかりとした造形を持った作品であった。また「気違いハッター家」と呼ばれる不吉な屋敷の歪んだ環境で歪んだ人格が形成され、それが異常な殺人モンスターへと化身する物語は、ゴシックホラー的な舞台でサイコスリラーのドラマを見るような凄みがあり、謎解きよりもそこからくる悪夢のような恐怖感こそが、この作品の最大の魅力と思えた。 クイーンの作品は、緻密な論理性がその特色といわれるが、それほど目を皿のようにして読まなくても、意外に瑕疵が目につくことも少なくない。しかし筆者は、そういうことも比較的気にならないたちである。矛盾や不合理を内在させた名探偵の推理もまた、ミステリという悪夢の一部と受けとめられるからだ。とりわけ本作ではそれを強く思った。殺人鬼の正体にも脅威を感じたが、それへ向けられた名探偵の裁断にも恐怖をおぼえたためである。 | ||||
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GOODGOODGOODGOODGOODGOODGOODGOOD | ||||
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エラリー・クイーンの『Yの悲劇』は、私の少年時代には本格推理小説の最高峰として知られていたのに、中学生時代には、なぜか『Xの悲劇』と『Zの悲劇』しか読んでおらず、気になっていました。そこで、中年になってから一念発起し、英語の勉強も兼ねてこの名作を読んでみた次第です。 作品の感想ですが、翻訳版でレビューする人がたくさんいるので、一言だけ。名探偵ドルリー・レーンが人格的に問題がある人だということが、大人になってから再確認できた!です。 問題はエラリー・クイーンの英語です。結論的に言えば、 O.ヘンリーのように難しすぎると言うわけではない。非常に難解な単語や表現がたくさん出てくるというわけではない。しかし、やはり英語学習者にとっては容易ではない。ちなみに私は、英検1級で英単語の語彙が1万2千語ぐらいです。おそらくこのレベルでは、普通の原書ならば挫折したかもしれない。だからルビ訳は有り難い。 では、ルビ訳なのですらすら読めるたのかと問われれば、Yes, butである。ハリーポッターであれば1時間に35〜40ページ(大きいハードカバー版)のスピードで読めたが、The Tragedy of Yとなると一時間に20〜25ページしか読めなかったのである。どんなに頑張っても1冊読み終えるのに18時間以上はかかった計算になる。充実感と達成感はたしかにあるが、ちょっと疲れてしまった。 | ||||
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If a hundred persons, well versed in mystery novels, were asked to make a list of what in their opinion were the ten best mystery novels of all time, at least one or two hundred mystery novels would be mentioned, but I think that almost all the people would surely choose this book. The construction is incredibly good for a mystery novel. The incidents follow one after another naturally, and one’s sense of probability is nowhere outraged. And so the story goes on like a solid literary work until at last the perpetrator is found out. I don’t think that anyone can read this passage of disclosing the perpetrator without feeling cold shivers down his back. It’s really shocking, and the shock is all the more enormous because the construction is good and natural. It’s a little too long a story, but the shock well makes up for it. I’ll bet that feeling this shock must be a unique experience for anyone. By the way, Seicho’s “Ten To Sen(点と線)” and Crofts’ “THE CASK” are both famous mystery novels which everyone agrees are masterpieces, but I hear that each has a grave mistake in its story. I found out the mistake in “Ten To Sen”, but I have not found out the mistake in “THE CASK”. I would very much appreciate if someone would be so kind as to tell me through the review on this book. | ||||
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名作と名高い作品ですが、初めて読んで脱帽しました。 確かに解決に結びつく手がかりの見せ方と論理性も、その巧妙さが抜きん出て優れたいると思います。 しかし、それより驚いたのが犯人像の描き方。 犯人の残虐性、救いの無さを際立たせるデータを提示する作りのうまさに舌を巻きました。またそこから、ドルリー・レーンのある行動を示唆する劇的な幕切れといった演出効果も優れています。 さすが名作と長く言われることだけのことはあると思いました。 | ||||
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やっぱり、鮎川信夫の訳がいい。 いろいろと間違っている所があるらしいが、そんなことは関係ない。 刷り込みの影響は大きい。 私的には、最初に読んだ創元推理文庫版の文章が、本書の内容に最もしっくりくる。 なんせ、連続殺人である。 館ものである。 だから、ある意味たどたどしい所や意味不明な所があるほうが、適度に不気味な雰囲気を醸し出す。 あまりスラスラ読めるよりも、よっぽど良い。 そう、小栗「黒死館〜」のように。 内容は、いまさらどうこう言う必要はない。 古典だし、典型的な本格ミステリである。 ミステリとは何か?を問われたとき、最初に差し出すのには最も適当な作品である。 もちろん、現代感覚からしたら、“古くさい”という言葉が飛んでくるだろう。 しかし、どんなものでも、古いものの上に新しいものがあるのであり、土台を知っているのとそうでないのとでは、新しいものへの理解度がまったく違う。 ビッグ・ヴァンではないが、ある意味ではそれに近いものがある。 そして、このロジックはどうだ! 強引なところもあるのだが、このロジックこそがミステリの醍醐味であり、都筑道夫もそこに最大の魅力を感じていたのだ。 現在だと有栖川あたりだ。 理屈っぽいと言われようが、ほとんど余剰を残さないこのロジックこそが、本格ミステリなのである。 奇妙な謎の提示−精緻な捜査−ロジックによる解決、という、乱歩が夢見たミステリの理想形のひとつが、ここに現実にある。 横溝も、高木も、そして実は松本清張も、みんな本作の子ども達なのだ。 再読に値するミステリは数少ないが、本書はそんな作品のひとつである。 ちなみに私は三度読んだ。 | ||||
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やっぱり、鮎川信夫の訳がいい。いろいろと間違っている所があるらしいが、そんなことは関係ない。刷り込みの影響は大きい。私的には、最初に読んだ創元推理文庫版の文章が、本書の内容に最もしっくりくる。 なんせ、連続殺人である。館ものである。だから、ある意味たどたどしい所や意味不明な所があるほうが、適度に不気味な雰囲気を醸し出す。あまりスラスラ読めるよりも、よっぽど良い。そう、小栗「黒死館〜」のように。 内容は、いまさらどうこう言う必要はない。古典だし、典型的な本格ミステリである。ミステリとは何か?を問われたとき、最初に差し出すのには最も適当な作品である。 もちろん、現代感覚からしたら、“古くさい”という言葉が飛んでくるだろう。しかし、どんなものでも、古いものの上に新しいものがあるのであり、土台を知っているのとそうでないのとでは、新しいものへの理解度がまったく違う。ビッグ・ヴァンではないが、ある意味ではそれに近いものがある。 そして、このロジックはどうだ!強引なところもあるのだが、このロジックこそがミステリの醍醐味であり、都筑道夫もそこに最大の魅力を感じていたのだ。現在だと有栖川あたりだ。理屈っぽいと言われようが、ほとんど余剰を残さないこのロジックこそが、本格ミステリなのである。奇妙な謎の提示−精緻な捜査−ロジックによる解決、という、乱歩が夢見たミステリの理想形のひとつが、ここに現実にある。 横溝も、高木も、そして実は松本清張も、みんな本作の子ども達なのだ。 再読に値するミステリは数少ないが、本書はそんな作品のひとつである。ちなみに私は三度読んだ。 | ||||
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定評のある作品で、個人的には「Xの悲劇」より評価は高いです。「Xの悲劇」は、ニューヨークの雰囲気というか、息吹というかそうしものが感じれておもしろい。が、犯人が小細工をしすぎていてリアルティに欠ける印象があるので、「Yの悲劇」の方をおしたい。もっとも「Xの悲劇」も抜群に面白い。パズラーとして純粋にみたら「Xの悲劇」のほうが上かもしれませんね。この辺は好みでしょう。 昨今、「Yの悲劇」の犯人が意外じゃないという意見が見られますが、どうなんでしょうね。こういっしゃなんですが、読み方を間違っています。 「Yの悲劇」は、リアル、リアルといった作品ではありませんが、ディクスン・カーの諸作のような全くの作り事という作風とも違います。ハッター家は、人間の悪意、憎悪といった負の部分のメタファーといったもので、この作品自体ある種の寓話なのです。発見されたエミリー・ハッターの遺体の恐怖に引きつった表情・・・・彼女は死の直前、何にそれほど驚き、恐怖したのか?真相がわかったときに読者も思わずゾーっとする。このイメージを鑑賞すべきなのです。このゾーっとする感覚はこの犯人でなくてはならないのです。 犯人は分かったよと自慢したってしょうがない。そんなことより、この寓話で語られる救いのない悲劇に正面から向き合うべきなのです。動機が弱いという意見も読み方が浅いと思います。むしろ、はっきりとした動機がないということが恐ろしい。むしろ、ハッキリとした動機がないということに意味をみるべきなのです。 不条理、不合理が支配するハッター家という小宇宙で起こった事件をレーンは見事なロジックで明らかにしていく。不条理、不合理と論理、合理性のせめぎ合い。これぞミステリの醍醐味ではありません? しかし、いかに理性を正しく働かせ真相を見抜いても、ハッター家の悪夢自体が完全に消え去ることはない。だから、レーンは苦悩するのです。まさしく、「一人の悪魔はいなくなったが、世界には、多くの邪悪が残っている」のです。 寓話だと私はいいました。この作品の悲劇性は、理性によっても決して人間社会の問題は解決しないことを示しているのです。そう、私たちの現実がそうであるように。正しいことをすれば世界は正しくなるのか?悲劇はなくなるのか?人間は本当に自由なのか?そうした意味性を読み取るべきでしょう。 犯人が分かったと自慢する人、実際こうした事件が起きてニュースで「犯人はこいつでした」といわれたらやっぱり驚くのではありません?こうした感覚でこの作品は鑑賞すべきなのです。何度もいいますが、これは寓話なのです。 もっとも、オールタイムベストの名作、名作と持ち上げるのは、どうかと思わないでもない。変に持ち上げるから、「犯人わかった。たいしたことないじゃん」という意見が続出する。さりげなく、「面白いよ」と進めるべきでしょう。 | ||||
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定評のある作品で、個人的には「Xの悲劇」より評価は高いです。「Xの悲劇」は、ニューヨークの雰囲気というか、息吹というかそうしものが感じれておもしろい。が、犯人が小細工をしすぎていてリアルティに欠ける印象があるので、「Yの悲劇」の方をおしたい。もっとも「Xの悲劇」も抜群に面白い。パズラーとして純粋にみたら「Xの悲劇」のほうが上かもしれませんね。この辺は好みでしょう。 昨今、「Yの悲劇」の犯人が意外じゃないという意見が見られますが、どうなんでしょうね。こういっしゃなんですが、読み方を間違っています。 「Yの悲劇」は、リアル、リアルといった作品ではありませんが、ディクスン・カーの諸作のような全くの作り事という作風とも違います。ハッター家は、人間の悪意、憎悪といった負の部分のメタファーといったもので、この作品自体ある種の寓話なのです。発見されたエミリー・ハッターの遺体の恐怖に引きつった表情・・・・彼女は死の直前、何にそれほど驚き、恐怖したのか?真相がわかったときに読者も思わずゾーっとする。このイメージを鑑賞すべきなのです。このゾーっとする感覚はこの犯人でなくてはならないのです。 犯人は分かったよと自慢したってしょうがない。そんなことより、この寓話で語られる救いのない悲劇に正面から向き合うべきなのです。動機が弱いという意見も読み方が浅いと思います。むしろ、はっきりとした動機がないということが恐ろしい。むしろ、ハッキリとした動機がないということに意味をみるべきなのです。 不条理、不合理が支配するハッター家という小宇宙で起こった事件をレーンは見事なロジックで明らかにしていく。不条理、不合理と論理、合理性のせめぎ合い。これぞミステリの醍醐味ではありません? しかし、いかに理性を正しく働かせ真相を見抜いても、ハッター家の悪夢自体が完全に消え去ることはない。だから、レーンは苦悩するのです。まさしく、「一人の悪魔はいなくなったが、世界には、多くの邪悪が残っている」のです。 寓話だと私はいいました。この作品の悲劇性は、理性によっても決して人間社会の問題は解決しないことを示しているのです。そう、私たちの現実がそうであるように。正しいことをすれば世界は正しくなるのか?悲劇はなくなるのか?人間は本当に自由なのか?そうした意味性を読み取るべきでしょう。 犯人が分かったと自慢する人、実際こうした事件が起きてニュースで「犯人はこいつでした」といわれたらやっぱり驚くのではありません?こうした感覚でこの作品は鑑賞すべきなのです。何度もいいますが、これは寓話なのです。 もっとも、オールタイムベストの名作、名作と持ち上げるのは、どうかと思わないでもない。変に持ち上げるから、「犯人わかった。たいしたことないじゃん」という意見が続出する。さりげなく、「面白いよ」と進めるべきでしょう。 | ||||
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Xの…とは違い さすがのレーン氏もてこずってしまいます。 その姿を見てとても切なくなってしまいました。 設定は誰もを疑いたくなる ような設定なので、誰が犯人でもおかしくは ありませんが、怪しい人は法則通り 疑ってはいけません。 しかしそこから先のこれはないだろう、 という虚をついてくる犯人の設定です。 なので判明したときの驚きは ひとしおなはず。 ただし、真相が真相上 読後感はあまりよくはありません。 | ||||
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Xの…とは違い さすがのレーン氏もてこずってしまいます。 その姿を見てとても切なくなってしまいました。 設定は誰もを疑いたくなる ような設定なので、誰が犯人でもおかしくは ありませんが、怪しい人は法則通り 疑ってはいけません。 しかしそこから先のこれはないだろう、 という虚をついてくる犯人の設定です。 なので判明したときの驚きは ひとしおなはず。 ただし、真相が真相上 読後感はあまりよくはありません。 | ||||
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少年探偵団や子ども向け「ルパン」シリーズを卒業して、最初に読んだミステリが本作です。今から35年ほど前のことです。とてもラッキーだったと思います。 今から考えると、“犯人の意外性”という魅力は減じていますが、あの独特の雰囲気が好きです。日本では極端に高い評価を得ていますが、こういった雰囲気も人気の一つでしょう。 この作品からミステリの世界に入る人は幸せだと思います。 | ||||
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本格推理の名作「レーン四部作」その中でも最高傑作としてあげられるのが本作「Yの悲劇」です。前作「Xの悲劇 (創元推理文庫)」はあくまで主人公ドルリー・レーンの紹介のためのエピソードで、本作から「レーン四部作」の隠れた真のテーマが始まるのだと私は考えています。 陰鬱な空気が支配するハッター家を包む死の翼。当主の自殺に始まり、盲目で聾唖の娘の毒殺未遂。そして事実上の家の支配者であった婦人は、マンドリンを凶器にに撲殺される。残されたのはヴァニラの香り――― 異様な殺人、不可解な証言、奇妙な手掛かり。事件全体を支配する意思―――「探偵小説」 この邪悪な空気に満ちた事件に、レーンの推理がいかに挑むか。そして迎える真相に彼がとった態度とは――― 「これは罪と罰の問題だけで済むことではない。この中には、病理学や異常心理学、社会学や倫理学の問題が渦を巻いて介入しているのです……」 最初から最後の一ページに至るまで、この作品はある意思の支配下にあり、対する探偵レーンの行動と沈黙もまたそれと同様の意思に支配されていると私は考えます。穿った見方かもしれませんが、その意思こそが「レーン四部作」の真のテーマなのです。 読んで確かめてください。支配する意思、その名は――― | ||||
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本格推理の名作「レーン四部作」その中でも最高傑作としてあげられるのが本作「Yの悲劇」です。前作「Xの悲劇 (創元推理文庫)」はあくまで主人公ドルリー・レーンの紹介のためのエピソードで、本作から「レーン四部作」の隠れた真のテーマが始まるのだと私は考えています。 陰鬱な空気が支配するハッター家を包む死の翼。当主の自殺に始まり、盲目で聾唖の娘の毒殺未遂。そして事実上の家の支配者であった婦人は、マンドリンを凶器にに撲殺される。残されたのはヴァニラの香り――― 異様な殺人、不可解な証言、奇妙な手掛かり。事件全体を支配する意思―――「探偵小説」 この邪悪な空気に満ちた事件に、レーンの推理がいかに挑むか。そして迎える真相に彼がとった態度とは――― 「これは罪と罰の問題だけで済むことではない。この中には、病理学や異常心理学、社会学や倫理学の問題が渦を巻いて介入しているのです……」 最初から最後の一ページに至るまで、この作品はある意思の支配下にあり、対する探偵レーンの行動と沈黙もまたそれと同様の意思に支配されていると私は考えます。穿った見方かもしれませんが、その意思こそが「レーン四部作」の真のテーマなのです。 読んで確かめてください。支配する意思、その名は――― | ||||
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かつて、人気投票でNo.1に輝いた実績があると聞く。正直、そこまでの大傑作とは、思わない。一番の難点は、〇〇は常識があり、××は物事を知らないという先入観が、物語全体を支配している為、釈然としない。すなわち、推理の根拠が曖昧なために、首を傾げてしまうのだ。登場人物がマトモでない奴ばかりだから尚更そうだろう?探偵も、どうでもいいような人物までに、暖かい眼差しを送っているが、とてもついていけない。犯人の行動パターンや結末のオチまでが、グリーン家と僧正に酷似して、独創性に乏しいし、読んでいても、退屈で仕方なかった。但し、80年前の作品という点を考慮して、☆は4コ進呈。尚、石坂浩二主演でドラマ化されている。リアルタイムで見た記憶では、凶器に関する記述面で修正されていた。このあたりにも、小説版の限界を感じた所以だ。 | ||||
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エラリー・クイーンのバーナビー・ロス名義による四部作中の第二作で、評価の点からいえば第一作の『Xの悲劇』と拮抗しているものの、少なくとも知名度においては他作を圧倒している名作。クイーンはマンフレッド・リーとフレデリック・ダネイのコンビによる作家であるが、ロス名義の作品が実はクイーン作であることを当時隠しており、二人のうちの一人が覆面をかぶってクイーンvsロスの対談(論争)も行なったことがあるというのだから、何とも手が込んでいる。 狂った血の流れたハッター一族の家長であるヨーク・ハッターの死体が海から揚がる場面によって悲劇は幕を開ける。「私は完全に正常な精神状態で自殺する」という完璧な遺書は、しかし事件の終わりではなく始まりだった。同家に住む全盲のルイザ・キャンピオンに毒が盛られ、その直後に母親のエミリー・ハッターがマンドリンで撲殺される。元俳優で耳が聞こえない探偵ドルリー・レーンが捜査に乗り出すが……。 本作の最大の魅力はやはり犯人の意外性であろうが、クイーン作の中で『Yの悲劇』の人気がこんなに高いのは日本だけというのも興味深い。昔は海外ミステリベストテンの常連だった本作も、最近では圏外に去ることが多いのは時代の流れだろうか。 かつて学友と議論したことがある。なぜ犯人は最後の最後であんなヘマを犯したのか? 答えは言わずもがなだと思うが(犯人のヘマではない)、その点にこの作品を(モラルもしくはリアリティの観点から)支持できない読者もいるのかも知れない。とはいえ読んで損することはないミステリーの古典である。 | ||||
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エラリー・クイーンのバーナビー・ロス名義による四部作中の第二作で、評価の点からいえば第一作の『Xの悲劇』と拮抗しているものの、少なくとも知名度においては他作を圧倒している名作。クイーンはマンフレッド・リーとフレデリック・ダネイのコンビによる作家であるが、ロス名義の作品が実はクイーン作であることを当時隠しており、二人のうちの一人が覆面をかぶってクイーンvsロスの対談(論争)も行なったことがあるというのだから、何とも手が込んでいる。 狂った血の流れたハッター一族の家長であるヨーク・ハッターの死体が海から揚がる場面によって悲劇は幕を開ける。「私は完全に正常な精神状態で自殺する」という完璧な遺書は、しかし事件の終わりではなく始まりだった。同家に住む全盲のルイザ・キャンピオンに毒が盛られ、その直後に母親のエミリー・ハッターがマンドリンで撲殺される。元俳優で耳が聞こえない探偵ドルリー・レーンが捜査に乗り出すが……。 本作の最大の魅力はやはり犯人の意外性であろうが、クイーン作の中で『Yの悲劇』の人気がこんなに高いのは日本だけというのも興味深い。昔は海外ミステリベストテンの常連だった本作も、最近では圏外に去ることが多いのは時代の流れだろうか。 かつて学友と議論したことがある。なぜ犯人は最後の最後であんなヘマを犯したのか? 答えは言わずもがなだと思うが(犯人のヘマではない)、その点にこの作品を(モラルもしくはリアリティの観点から)支持できない読者もいるのかも知れない。とはいえ読んで損することはないミステリーの古典である。 | ||||
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ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件』を範としたクイーン初の《館もの》。 犯人が、被害者が食べないはずの梨に毒薬を注射し、その上、 マンドリンという殺傷能力の低い凶器を使ったのはなぜなのか? 犯行現場で、三重苦の女性が触れた犯人の頬の感触や、その時匂ったヴァニラの 香り、そして現場に残されていた注射器と足跡から浮かび上がる犯人像とは……? 犯人を特定する手がかりをフェアに示し、それらを組み合わせることで、 思いもかけない真相を導き出す論理の手筋は流石に堂に入っています。 しかし、本作最大の特色は、多段構えの《意外な犯人》の提示にこそあります。 計画犯による実行犯の《操り》を基本構造とする本作ですが、それに とどまらず、もう一段、深いところに真相が設定されているのです。 レーンが決して語らなかった“犯人を殺した「犯人」”の衝撃ゆえに、 『Yの悲劇』の名は、ミステリ史において、永遠となったといえます。 | ||||
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