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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年



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【この小説が収録されている参考書籍】
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価: 3.41/5点 レビュー 1022件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.41pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1022件 841~860 43/52ページ
No.182:
(4pt)

つくるの色は黄色だったら良かった。

今回の村上作品をミステリー小説として面白く読了しました。
他のレビュワーが指摘してない点ですが、興味深かったのは陰陽五行説あるいは仏教の五色に
基づく色彩設計がこの小説の読解の鍵と思えました。
このレビューのタイトルもそれを考えるとおそらく納得できるでしょう。
多崎ではなくは黄川田とか黄金崎とかの姓であればつくるは人生が歪まなかったのではないかと
感じました。
またその歪みの解決も色彩問題の整理でしたね。
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No.181:
(2pt)

まあ、こんなものでしょうな。

村上春樹の作品はいくつか読んだが、いずれも凡作の域を越えることはない。今回の作品も同様に、大して面白くもない話だったなと思うね。もともと期待すらしてなかったので、いつもの如くサクッと読み片付ける。だって村上春樹を読んだことが自慢になるから。
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No.180:
(3pt)

先が気になって一気に読むことは出来たが微妙。

かなり、上等なお家の坊ちゃんが、何自由なく、まっすぐ文武両道、バランスよく育っていて羨ましいくらい。環境かつ、知識の豊富さにも妬ましいを感じてしまうくらい。それでも悩みは色いろあるわけで、共感出来る部分もあった。しかし。いまの就職難に苦しむ若者は、どう感じるだろうか。「巡礼の年」とのかかわりは分からないではないが、結末にたどり着くと結局つまらなかったというのが正直な感想。
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No.179:
(4pt)

デジャヴュ

大学時代に「ねじまき鳥クロニクル」で村上春樹にはまって、それ以来すべての作品を読んできました。

昔から好きだったものが、あまりにも一般的な人気が出過ぎると嫌いになるということはよくありますが、「1Q84」の村上春樹ブームでなんとなく「村上春樹が好き」ということが恥ずかしくなってしまい、「1Q84」もあまり好きにはなれませんでした(当然、当該ブーム以前から村上春樹は現代作家の中では抜群の知名度をほこっていましたが、あの時の取り上げ方は違和感ありまくりでした。)。

もともと安部公房や夏目漱石などの文豪と比べると、物足りない感のある作家だと思っていましたが、「1Q84」で興味が完全に薄れてしまいました。

そんな状態で読んだ今回の作品ですが、素直に面白かったです。

読み終えた後に「あれ?登場人物の名前と設定だけ変えたら、ノルウェイの森やん・・・。」と気づいてしまいましたが、読んでいる最中は続きがきになってしょうがありませんでした。

最後の方に近づくと、「残りページから察すると、今回も未回収の謎がめちゃくちゃある終わり方なんやろうな。」とは思っていましたが、まさにそのとおり。でもまた続きがでるのかもしれませんね。
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No.178:
(1pt)

前進せず後退せず

また同じようなプロット。
完全に類型化された “村上春樹” のひな形にピッタリ収まってます。
何かに似てると思ったら、プログレッシブ・ロックに近い。
最初はこれまでにない、前衛的な手法を取り入れたロックをそう呼んでいたのであるが、
それが過大評価されたものだから、パターン化し焼き直しが繰り返される・・・
1Q84がそれの総決算で、今作からまた新しい地平を切り拓いてくれるかと少しばかり期待したのですが、
残念ながらこれまでの延長線上です。
登場人物がどれも理屈っぽい、すぐセックスする、なにか起こりそうで起きない、結論なんかない。
表現方法が上手いので、なにか大きな主題があって、様々な示唆が内包されているのかと勘違いしそうになるが、
俯瞰して見た場合、全般的にやってる事がくだらない。
これがリアリズム?・・・でもなあ。
この村上春樹スタイルが好きな方にはオススメです。
私はもういいです。飽きた。
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No.177:
(3pt)

技法と映像は良いが、村上春樹の小説としては色々物足りない。

最初の2行で物語に引き込む力といい、透徹した透明感といい、作家としての力量は疑いようないものの、

村上春樹さんに期待したい、小説ならではの味わいがもの足りません。

ノーベル賞候補作家の作品としては、不満です。

ストーリーを一言で言えば、

20歳前後の出来事がきっかけで生きている感触が希薄な36歳青年が、トラウマの原点となる人々を訪ね、改めて他人を求める心の動きを取り戻す話。

文学技術的な精神の軌跡の描写は申し分ないです。

途中の東京駅の無機質な描写に比べて、最後の新宿駅の人間の温かみがあるドラマティカルな描写には、心を動かされます。

テンポ良い進行、象徴的な色彩の話。映像的なイメージがとても心地よいです。

ただこれが今という現代に書かれる物語、また本来技量のある村上春樹が描く物語として、何かテーマが物足りないのです。

別の角度から見れば、

彼女のお膳立てで過去の友人に会い、過去に自分を好いていたという女友達に嗾けられて彼女に告白する現在の草食系36歳男の物語。

そのせいか、「巡礼」と語るにもあまりにもお手軽です。
彼女がインターネットで検索をすれば、16年ぶりの友人の消息が直ぐにつかめる。
ノーアポで訪れて直ぐに会うことが出来る。会えば皆率直に話をする。
つくるくんも短い会話で納得をして帰っていく。

また最後まで成長を見ないこともあり、未解決な課題も沢山あります。父親との関係や灰田くんのエピソード等。

フィンランドからの帰国後、自分の意思でシロの姉を尋ねるかシロのお墓参りをして欲しかったと思います。
そこまでして初めて、つくるくんの自身の内部から生まれ出た「動き」を読者も信じられるのですが・・。

読後に、彼が彼女から良い返事を聞けるよう彼を応援したい気持ちにはなりましたが、

彼女に選んでもらえなければ、一時的なTurbulenceとして、また色彩の乏しい世界に戻る感じも残ります。

村上春樹が描く特有の(ぼんやりした内向的な・・それだけ恵まれた)青年像の心象風景は、
80年代バブル後の喪失の時代には共感を持ったものですが、
近年日本だけでも深刻ないじめ問題や、引きこもり、派遣問題に象徴される社会の二極化、高齢者問題のニュースにさらされ、
世界でも貧困や紛争のニュースが耐えない現実に生きる人間として、共感を寄せたい気持ちがなくなった気がします。

社会的な今という時代感の希薄さ・・けれど固有世界像があるわけでもない・・・
ではどう贔屓目に見ても物足りない気がするのです。
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No.176:
(3pt)

愛を求めてさすらう旅人の物語。しかし・・

村上氏は一貫して現代人の孤独とそれに対比する意味での人と人との繋がりをさまざまな形で描いてきていますが、この小説でも主人公の多崎つくるが心に傷を負いながらも前向きに生きようと苦闘する姿を描いています。

この小説のクライマックスともいうべき、つくるの学生時代の親友たちから過去の秘密が語られていく場面は次のページをめくるのがもどかしいほど一気に読ませます。

人が感じる孤独が深く痛切であればあるほど、友情や愛を手にした喜びは大きいはずで、そのような意味において村上氏の小説はどれも愛を求めてさすらう現代人の物語です。村上氏の小説がこのように広く読まれるのはそのような主人公に読者が共感を覚えるからではないでしょうか。

特につくるが過去の自分の失われた時間を取り戻すべく、フィンランドを訪れる場面の描写は静謐で美しく素晴らしいと思います。
しかし全体的にこの小説には疑問を感じる箇所もいくつかあります。

友人の灰田から父親の若いときの体験が語られる場面。この小説のおそらく最もすぐれた描写であると思いますがそれが小説のその後の伏線となるわけではなく、宙ぶらりんな印象を受けます。

そして主人公の多崎つくるが裕福な家庭に育ち、明晰な頭脳と端麗な容姿にも恵まれた一見何一つ不自由のない境遇にあることです。
村上氏の小説の主人公は大なり小なりすべて村上氏の分身であると思いますが、そのようなの人物を描くことにより、よりいっそう孤独感を際立たせようとしたのでしょうか。

しかし震災という未曾有の体験を経た今、このような小説を「金持ちのお坊ちゃんのたわごと」と批判することも可能であるということです。

常に変わらない村上氏のスタイルに共感と安堵感を覚える一方で、今眼前にある出来事への危機感のほうがリアルで痛切である、という事実に疑問を感じる小説でもあります。
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No.175:
(4pt)

楽しめました

話題の作家で海外での売れ行きも良くしかもノーベル文学賞候補の一人。例えるならお笑い芸人が「今から最高に面白い話をします」と言ってしまうのと同じで評価基準のハードルが上がりすぎていると思います。20~30万部が妥当な販売部数ではないでしょうか。後は「みんなが買うので乗り遅れまいとして買ったけど・・・」という方が多いのではないでしょうか?私は単純に好みかそうでないかで判断しますが楽しめましたよ。それはこのあとどう展開していくんだろうという期待感と読後の切なさがいいのです。ですから「これにて一件落着めでたしめでたし」ときっちりかかれていなくともいいんです。出版社には悪いのですが,好きでもないのに無理に買う必要はありません。今までに好きな村上春樹作品が一つでもあれば買ってもいいのではないでしょうか
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No.174:
(1pt)

どうしても好きになれない

私には、すばらしさが全然わかりません。
とにかく鼻についてしょうがないです。
NHKもなんでこの作品を七時のニュースで持ち上げるのかな。
嬉々としてインタビューに応じる人を遠い目でながめてしまいました。
事前に内容を知らされなかったことが、村上さんファンにはたまらなくエキサイトすることなんですね。
アンチ村上さんの私は、奇をてらった話題作りで注目を集めようとする秋元康さんみたいと思ってしまいました。
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No.173:
(5pt)

堪能しました。

待ちに待った新刊。堪能しました。
村上春樹さんの小説は、読み手を別の空間に運んで行ってしまう力が備わっていますね。
この作品においても、この陶酔感のようなものは十分に味わうことができました。
村上さんの書き出しはシンフォニーの最初の一音のように、いつもながらに見事に決まっています。
頭がクラクラっとする程鋭利な迫力が備わった導入部で、あっという間に物語に引きずり込まれてしまいました。
これこそが村上作品を読む何よりの楽しみ(悦楽)なんですけど。

村上春樹さんの小説は常に孤独が描かれますが、今回は特に「疎外感」という言葉が頭の中に浮かびました。
周りの人から拒否されることで強制的に孤独の檻に捕まった若者。
実際、青春時代と言われる年頃では、何度か体験されるのではないでしょうか。憶えがあります。
きっとどこかの部分で、主人公の多崎つくると読み手は繋がってくると思います。

著者は、開いた文章といった言い方をされますが、その意味においてこの小説は相当に開いていると思います。
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No.172:
(1pt)

カバーがグシャっとなっていてがっかり。

今まで何度か本を購入しましたが、いつも奇麗な本が届いてましたが、今回初めてカバーがグシャっとなっているものが届いてがっかりしました。これなら本屋さんで買ったほうが良かったかも…。
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No.171:
(5pt)

沁みました。

早く読むのがもったいなくてゆっくりと3日かけて読みました。
ストーリーはいつもの村上ワールドでファンにとってはなじんだものですが
”飽きた感”はなく益々「人間」に対しての深い愛情を感じました。

そしてこんなに新作を楽しみにする理由はその描く世界だけではなく
文章の美しさです。
描かれている感情は全く違う人生を歩んでいる自分にも当てはまるリアルなもので
その繊細な気持ちをこんなに自由にこんなにわかりやすく書かれたものを
読める幸福・・・といったら大げさでしょうか

1Q84はスリリングでしたが今回のは沁みました。
「灰田」の部分や「ピアノ」の部分は不可解なパーツですが
それが逆にリアルな効果を出しているな〜
現実って案外不可解なので・・

読み終わって晴れやかな気分、
ポジティブな気持ちがあふれました。

欲を言えばもっと静かに普通に販売して欲しいですね。
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No.170:
(2pt)

中年のおっさんのどうでもいい話し

中年の(本書内では中年間際と言っているが)おっさんの自分探しなんてどうでもいいって思っちゃいました。
何かすごく背伸びをしている感じがして、まったくリアリティが感じられない。この人の作品はよく欧米スタイルの生活に対する憧れみたいな所があるなーっと感じることがあるのですが、今作はそれが躊躇。内容も個人的には楽しめなかった。とりあえず話もキャラクターも気色が悪い。
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No.169:
(5pt)

今までの作品の集大成である

物語に現実感があって、素直に入り込め、たとえ話には春樹独特の表現が残っていて、幻想の世界に浸ることも出来る。
 絶望して取り残されたと感じたときの描写は、ノルウェイの森の野井戸を思い起こさせ、夜中に改装するところでは、ねじ巻き取りクロニクルの感じを出しているし、過去を思いだして、別の今があったかもしれないと回想する所は1Q84を思い出します。
 この作品は村上春樹の最高傑作と言っていいでしょう。
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No.168:
(2pt)

魔法つかいの魔法の本

書店にあった最後の一冊を手に入れた。
その晩、眠いのをこらえながら徹夜で読み終えた。
翌朝、目覚めたときには、本を読んだことすら忘れていた。
春樹さんの本を読むということは、
その時間をその世界で過ごすということであり、
読み終えたとたん、世界は消えてなくなってしまう。
ただ、その時間をそこで過ごしたという事実だけが残る。
そういう性質の、きわめて特殊な体験なのだ。
そのことを、改めて感じさせられた。
それ以上でも、以下でもない。
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No.167:
(5pt)

小説の存在意味

小説は書評のために書かれるわけでも 過去の作品とは違う新しい刺激を与えるために 書かれるわけでもなく ただその作品を必要としている誰かのために 書かれるのが 理想的だと思います そのような意味でしっかり作られた作品だと感じました。
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No.166:
(5pt)

面白いけどな

評価がわりに低くてびっくりしました。村上春樹好きには嬉しいファンサービスがちりばめられてて、楽しく読めました。フェイスブックとかスマフォが出て来るのも意外で良い。
物語全体の雰囲気が、初期の感じ、特にダンスダンスダンスあたりを彷彿させるので終始にやけてしまいました。1Q84の3巻では失望したのですが、この作品はとても満足でした。村上春樹久しぶりの良作な気がします
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No.165:
(5pt)

おかえりなさい

デビュー以来いろいろと試みて、結局は出発したところに戻ってきたけど、新人の時より音域は上にも下にも広がっているように感じられる。自分の制御下にある和音を自意識ではなく、読み手にも配慮して(時にはサービスもして)奏でていて、新しい価値の提示ではなく、昔からそこにあるものを職人として見せることによって読み手に感じさせる匠の技を見た。だから初めて読む小説に既視感を覚えたり、懐古を感じたりするのだ。
 特に、全体を通暁する調和に関する考察が面白かった。面白くて哀しくて、怖かった。だから赦しにつながる、という領域には自分はまだ到達していないけど。彼の考察に反駁する考察も見いだせないけど。
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No.164:
(5pt)

痛み、あるいは悼み。悲しみ、あるいは哀しみ。

この作人になっているテーマは村上春樹氏本人に伺ってみないことにはわからないことであるのですが、読み進める上でいくつかのキーワードが頭をよぎりました。

それは、痛みと悼み、悲しみと哀しみ、です。

自分の痛みと人に思う悼み、自分の悲しみと誰かを哀しむこと。
自分と他者は全く別の存在なのですが、自分たちがわからないところでお互いに求めあい、しかし、傷つけ合っています。
それはひるがえって自分の存在を求めていることであり、また、自分の存在を傷つけていることでもあります。
そこに感じる痛みと悲しみは完全に自分のものであると信じ込んでいたのですが、ふとした瞬間に誰かも同じように思っているという悼みと哀しみを覚える、そのようにしていくしか私たちは生きていけないのかも知れません。
自分の存在はここにあるのだという確証を得るために他者を求め、他者を求めると他者を自分に取り込もうとする、あたかもすべてを理解してもらえると根拠のない確信を得ます。
だけれども、他者は自分のように思ったり感じたりするわけではないということを言葉や態度から知り、距離を置いたり、完全に離れたりします。
こころは残ったままに。
哲学者のデリダは「私とは他者にとっての他者である」といいました。
この私と他者というコインの裏表のような関係を私たちは普段の生活の中で余りわかっていない状態で生活しています。
「魂」の部分でつながっているのかも知れませんが、その「魂」を見たり感じたり出来ないもどかしさ、その気持ちが私たちを不安にさせます。
そもそも原初的は不安は「死」と「見捨てられ不安」であるとされています。
その不安をぬぐうためには誰かに接するというアタッチメントが必要だともあります。
さらには、誰かからのアタッチメントを待つのではなく、自分の気持ちを素直に表現し、自分から近寄っていく勇気と覚悟がより高度なアタッチメントを形成します。
人がわからないところ私たちは傷つきます。
逆に、自分は知らないところで人を傷つけます。
それがいつの間にか悲しみとして蓄積され、いつの日か表面に出てきます。
それに耐えたり、耐えられなかったり、何気なく暮らすように見えて、誰もが傷ついているのかも知れません。

長くなりましたが、今回の小説を読んで以上のようなことを思いました。
私たちの世界にある原初的な不安や自分と他者の痛みと悲しみ、それらをどのようにして受け止めるのか、それらを「魂」としてどうやって引き受けるのか。
私自身が読んで考えたのがそれでした。

すばらしい小説でした。
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No.163:
(3pt)

いやに軽い巡礼では?

至ってシンプルな物語になっている。その中のエピソードの密度も薄い。
救済の物語をとにかく素早く提示することが求められていたことだったのだろう。いつもならばもっと練り上げられているのではないか。謎はもっと重層的に書き込まれ、その密度を濃くしたはずだ。
しかし今回は骨格を言いきってしまう。だから冒頭に不穏な謎(ボディスナッチャー的な感触)が投げられるものの前半でその謎についてはカタがついてしまう。ならばそのうえで謎は解題においてもっともつれてしまうのかと思わせるのだが、それはむしろシンプルにほどけてゆき外的な障害も現れず、善き導師を得て再生に向けての巡礼が行なわれる。そこにもさしたる障害はなくただ時間によって見えにくくなっていた過去と現在の道筋が再び穏やかに現れるだけだ。そして感情の否定的要素の存在を受容しながらコミットメントの背中を押すように終わる。春樹氏をしてデタッチメントそれ自体の等価性に蓋がなされてしまうのであれば、あれという思いも残った。
春樹氏の所作を一応楽しんだ、と言っておいた上でだが、輻輳したシステムに対する小説家の闘いという志においておそらく今回はレベルを落としている。それが現実的なシステムの要請であったかもしれないと読者にうすうす感じさせるところが危うい。
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