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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.41pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1022件 721~740 37/52ページ
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いつも期待しながら村上作品を読みます。1Q84もノルウェイも、世界の終りも、海辺のカフカも良かった。 でもこれは良くない。すべてが中途半端で完結がない。 完結がない作品はもちろんあるけど、これはやりすぎかな。 結局なにが言いたいのか良く分からなかった。期待して損したな。 | ||||
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私はことさら村上春樹ファンではないが、初期の『羊をめぐる冒険』や『風の歌を聴け』などからは、荒削りではあるものの大江健三郎や安部公房等とは違った、現代的でおしゃれな世界感を感じ、とても面白く感じた。 しかし、本作は美しくまとめられてはいるものの、純文学としても、ラブストーリーとしても、サスペンスとしても中途半端。ストーリーに未完成さが感じられて、まるで映画でいうシノプシスを読まされている気分だった。 この作品を素材として、さらに膨らませ、それぞれの人生がもっと書き込まれたならば、それは読み応えのあるいい作品になったろうと思う。実にもったいない。 なぜ、ノーベル賞候補にもなった大作家が、このような段階で作品を発表してしまったのか疑問である。 で、「豊富なボキャブラリーと卓越した文章力によって編み出された世紀の駄作」という感想になった。 前作から3年、出版社から急かされたのか、自分から「とりあえず出しておこう」と思ってのことか、それでも作者には莫大な印税が懐に入り、出版社にはその何倍もの利益が転がり込む。CDショップでは作中登場するリストの「巡礼の年」が平積みされたという。我々には関係ないが経済効果といった点では評価できる。 | ||||
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まずはじめに、私は村上春樹の過去作品を読んだことがありません。故に「村上作品はこうあるべきだ」とか「前作を越える作品を期待して」などといった事は一切考えず、村上春樹というブランドの凄さも知らずに読んだクチです。それなのである意味、この作品に対する感想は何の偏見もなく、率直なものであります。読む前は色彩を持たないというフレーズから色盲の青年を想像していましたが、実際はまったく異なりました。しかしながら良い意味で裏切られた感があり、物語のスピード感もあり、中盤あたり(過去の友人を訪ね真相を聞くあたり)が一番引き込まれました。しかし、ラストは尻すぼみというか、綺麗ではあるのですが、もう少し一悶着あってから終わって欲しかったような気はします。まぁ、真相が分からないほうが面白く創造力をかきたてられるという事も少なからずありますが。村上春樹を毛嫌いしてこれまで読んでこなかった自分としては、この作品をきっかけに過去の作品も読んでみたい。そう思えた作品でした。個人的には読みやすいし、飽きずに楽しませてくれる作品だと思ったので、小説玄人より、小説バージンな人にこそ読んでほしいと思いました。平易な文体で綴られているので、小難しい顔をせずにサラッと読めますし、そのようなサラッと読みたい方におすすめしたいです。個人的には好きですよ。映画化とかしてほしい。そう思いました。そのほうが作品の魅力がもっと伝わる気がする。 | ||||
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村上さんのこれまでの長編と比べると、あれっ?という感じ。「1Q84」や「海辺のカフカ」のダイジェスト版みたいな薄い印象でした。 これほど本作が騒がれると、ちょっと恥ずかしくなります。 | ||||
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村上春樹の本は全て読みましたが、カフカや1Q84が素晴らしかったので、今回は少し地味でした。 | ||||
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過去にある場所や人に強く心を惹かれ、ずっとそこにいたい、その人といたいと願ったけど、叶わなかったという経験があれば、誰でもこの作品に共感できるでしょう。故郷を離れた、運命の人と思った人に失恋した、大切な誰かと死別したなど。そういう経験がない人は少ないと思うので、「つくる」はかなり普遍的テーマの物語になっていると思う。想いが強ければ強かったほど、叶わなかった時、自分が二つに分かれてしまったような気持ちがする。自分の一番大切でこだわっていた部分が切り離されてしまったのだから、もう「別の自分」でしょう。そしてその以前の自分を思い出すと、つくると同じように痛い。そんなの感傷だというかもしれませんが、一生に一回もそれを思い出さずにいられる人なんているのかな。 私はクロとのフィンランドのくだりがグッときました。海外に長く居られるという春樹さんもあの寂しさを感じる日があるのでしょうか。新宿駅の描写は外国の方が読んだら行ってみたくなりそう。 | ||||
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う〜ん。なんだろうこのもどかしい感じ。 熱烈な村上春樹ウォッチャーでもなく、読んだのは『ノルウェイの森』『国境の南、太陽の西』『ねじまき鳥クロニエル』『海辺のカフカ』『1Q84』後は短編をいくつかといったあたりだが、 『1Q84』あたりからどうもフツーになってきている様な気がする。 村上春樹と言えば(と世界の“村上”を評するのはとてもおこがましいのですが…)やさしい文体でありながら、ハッとするようなメタファーや箴言がちりばめられている。 一方でストーリーは、不思議な世界観に満ち溢れており、ファンタジックでありながら何故かリアル。そして物語の結末はなんだか曖昧模糊とした余韻を残し…そんなイメージ。 『1Q84』は、そんな村上春樹の大傑作だとは思うものの、“天吾と青豆”の純愛が実ってしまうのは、すごくうれしい半面(わがままな読者だとは思いますが…)ちょっとフツーと感じていました。 そして、この『色彩を持たない…』 当然“らしさ”は、いたるところで感じさせるものの、全体を見回せば、どんどんフツーになってきているような気がしてちょっと残念です。 随分昔ですが、“今年の文壇を語る”といった内容の記事で、とある文芸評論家が、その年の日本の小説界の貧困を散々嘆いた揚句、“それでも日本には村上春樹がいる”と 締めくくっていたのを思い出しました。 是非とも世界の村上らしい次回作に期待したい。(でも星は四つです) | ||||
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青春時代に得た人との強い結びつきをその後なんらかの理由で失った経験のある全ての大人にもたらされる自己肯定感 経験上の喪失感を見事に支柱にした、新たな一歩を踏み出すためのインセプション 強さをくれた一冊でした 読んで良かった ありがとう | ||||
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日本語に訳された文章を読んでるみたい。一文の中の密度が薄くなった気もする。読みやすいとも言うかなぁ…。途中盛り上がったんですが、最後は春樹風?というより誤摩化されたような…。何でもありかい!という感じもしました。後半は、ここまで読んだから最後まで読もうという感じで進めて行って、まあ、でも何となく引っかかる感じは流石なのかなぁ…。36歳というのはいい年齢ですね。小説は美しい女性が出て来て、その描写にいやにマスを使うし、アニメと一緒で美人を前提とした色白で細いか巨乳で健康的かという所なんですが、男性の灰田は珍しい存在でした。自分と違う世代を書くのは難しいですよね。もうすっかりいない世代なら想像で何でも書けますが、実在する違う世代は流行した物質以外に臨場感を出すのが難しい。実際の36歳は思ってるより大人になってないことにビックリしてる人が多いんじゃないかなぁ。不況の時代を生きて来たのに、何となく、小説の中ではバブルな生活を送っていて…。本当は洒落た食事よりラーメンが好きで。物質的価値観が明らかに前の世代とはズレてるんですよ。それとも東京の36歳は大人なのかなぁ。それと、親にがんじがらめにスケジューリングされたことでアダルトチルドレンが多発しており、人に対して断定して物が言えないですね。今の60代以上は「○○しなさい」と人に言えたかもしれないけど、価値観の多様化と、時代の不安定で人に考えを押し付けない世代かも。とか、小説に現実の批判をすることが間違ってるのかもしれないですが、こういう問題を避けたかったら短編小説にして時代背景はザックリと、個性は薄らとしないと駄目かなぁと。最後に、春樹の日本語は、どう訳したらいいの?!という物が多く、多分言葉の壁は超えられないだろう、というところで「あ〜日本語できてよかった♪」という優位性があったのですが、この文章なら日本人であることの得した感が薄い気がします。翻訳の為に、と世界を視野に入れているとしたら、入れないで欲しい。 | ||||
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1Q84を読んでから村上春樹さんに興味をもった新参者ですが、雰囲気は似ていると感じました。 ただ、いろいろな思わせぶりが解決されないので、よくわからないまま終わってしまった感じです。 友人との再会もなんだか平凡で、想像力をかきたてられていたわりにがっかり。 ガールフレンドとの関係もよくわからない・・・ こういう哲学的な(?)作風が受けているのでしょうか。 | ||||
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あまりに多くの要素が放置されたまま終わってしまい、途方に暮れる読後感です。ピッチャーの投げたボールが、ホームベースに届く前に物語が終わってしまうような所在なさ。この一冊が完結した物語なのではなく、より大きな物語の一部分であるかのような……。 ひとつひとつの要素はミステリアスで魅力的なのですが、それらが何の着地点も見いださないまま投げ出されてしまうことには賛否両論あるでしょう。すべてに着地点がある必要はないと思いますが、ここまで着地点がないのも物足りなく感じます。この小説自体が「色彩を持たない」ことの典型として書かれたのでしょうか? | ||||
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まず最初にお断りしたいのが、私が村上春樹さんの作品を読んだのはこれが初めてだったということです。従って、彼の他の作品に対する比較はできません。また、私はその作品の裏で作者が言いたいことよりも、表面的なストーリーの面白さを求めています。 その上で、この作品を読んだ感想ですが、先を読みたくて仕方が無いという内容ではありませんでした。私は本が好きで、一度手に取ると先を読みたくなって、ついつい夜更かししてしまうタイプです。そんな私が躊躇無く本を置いて床に就くことができた次第です。最終的に読破まで2週間程かかりました。 まず最初に気になったのが登場人物同士の会話の表現。英訳での出版を前提としたような不自然な日本語です。これが気になってとても感情移入できませんでした。また、会話の内容が哲学的だったのも好みに合いませんでした。作品のテーマを考えると哲学的な会話は必要な要素だと思いますが、結局何が言いたいのか分かりません。一方でこの点は「作品の裏で作者が言いたいこと」を求める方にはプラスポイントかもしれません。 良かった点は過剰な比喩がなかったこと。世の中には風景を表すために比喩を連発して、繰り返し読まされた挙げ句に情景が思い浮かばないという作品もありますが、この作品ではすんなりと情景を思い浮かべることができました。 良い点、悪い点双方ありますが、すんなり床に就くことができた作品はこれが初めてで、あまりにも興味を持てなかったと言うことで★1つです。 | ||||
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内容が現実離れしている感じがある、あり得ない何かに答えかあるのかと思わせて 結局そこには話は戻っていない、期待して買って読んだが値段の割に内容はは薄いと 感じてしまったのは私だけなのか、話題書だから読みましたが、はじめて村上春樹 の本を今回買った人は感動するのかもしれない、次回作は買わないかも。 | ||||
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販売戦略の異様さに驚く。 ストーリーを期待せずに雰囲気を味わう作品なのか。 「何かある」と思って期待しても、多くの謎を謎のまま終わらせる。 謎めいてはいるが謎はないといった方が正解か。 つまり、何もない。 | ||||
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1Q84よりはストーリーがシンプルでわかりやすかった。読みやすかったです。 | ||||
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また、それを正しい音に書き換えられたとしても、そこに込められた意味が人々に正しく理解され、評価されると限らない。それが人を幸福にするとは限らない。」(本文引用) この作品も、そういうことなのだろうか。 私には最初から最後までとても面白かった。比喩、文章力は飛びぬけてレベルが違うと感じた。 本というより、音楽のようだった。 圧倒的な表現力によって、感情表現が痛いくらい胸を刺してくる。 人間、生きていくことについて、美しい比喩で表現された視点で通して見てみると、新しい世界を見せてくれたし、自分がいかに偏った視点で物事を見ていることに気付かされる。このような手法で読み手を開眼させ、心を打つことができる作家は他にいるのだろうか。 完璧じゃない登場人物によって、物語が異様な模様を描いたかと思えば、最終的には全てのピースが美しく、圧倒的な芸術作品を作り上げてしまったのを見た感覚だった。 読み終わった後の気持ちを、村上さんだったらどんな比喩にするんだろうと思う。私には例えられないが、読んでいて、息が詰まり胸が痛み、心が震えた。 十分、完結している完璧な小説だと思う。重要な所こそ、具体的に描かない方が返って伝わるし、面白い。私には豊かさと幸せをくれた小説だった。 | ||||
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今回の作品も相変わらずの村上春樹らしい小説で安心しました。それと同時に、この小説の文章には多くの共感すべき言葉たちがありました。 村上春樹が描く物語の主人公はだいたいにおいて、その時代時代の若者たちを描いてきました。 今回もそのご多分に漏れず、2010年代の若者らしい主人公であったように感じます。 僕も23歳の若者として、自分が色彩を持たない空っぽの容器だと、何の中身のない人間なのではないかと生活の中で感じることが多いです。周りの人間が、煌びやかで目を奪われるような色彩を持った素晴らしい人ばかりだと感じることも。それなのに自分は、地味で、個性も無くて、彼らみたいに色鮮やかに自分を見せる事の出来ない人間だ。色彩を持たないうえに、中身もない空っぽな人間だ――現代の若者で同じようにそういう悩みを抱えてる人は多いのではないでしょうか。特に草食系と呼ばれるような人種に。周りの人間がいやにキラキラして見えて、自分は無色のダメ人間だと感じてしまう劣等感の強い人が。 本書の322pにこのような文章があります。 『入れ物としてはある程度形を成しているかもしれないけど、その中には内容と呼べるようなものはろくすっぽない。自分が彼女にふさわしい人間だとはどうしても思えないんだ』 髪の色を鮮やかにしたり、服装に気を配ったり、メイクやファッションを駆使して自分をよく見せようとする。入れ物としての自分はきれいに保っていながら、しかし実際に自分の中身など空っぽなのではないか。大好きな人に対して、自分はふさわしい人間ではないのではないか。これは現代の若者が(無意識的に)抱えているテーマだと僕は思いました。 身なりばかり整えて外見で勝負する人ばかり増えている。或いはそう言う人たちばかりがテレビや映画、漫画などに出て来て、称賛を浴びている。イケメン美女、至上主義。だけど中身という物が無い。 それが現代の流行になってしまっている。 かと言って、それを指摘する自分には色彩もないし、同じように空っぽな人間なのではないか? 本書はそのような、自分を地味で無色な人間だと思い込んでいる人の物語です(村上氏の主人公らしくハンサムボーイですが)。目を奪われる色彩(勉学の才能だとか、可憐さだとか、ジョークの才能、社交性etc...)によってしっかり自分を持っている人たち。そのような人たちから切り捨てられ、孤独に打ちひしがれながら生きる男が主人公。色彩を持たない多崎つくる君。 この物語で延べられる色彩と言うのは――先程も少し述べましたが――分かりやすい”才能”や”個性”であると僕は解釈しました。色彩を名に持つ登場人物には、それぞれわかりやすい才能なり個性なりがあります。しかしつくる君の個性や才能と言えば、駅を作る事。駅を眺めるのが好きな事。とても地味で分かりにくい才能です。自分が色彩を持たないと感じてしまうのも、なんとなく頷けてしまいます。もちろん駅の建設は、とても重要で素晴らしい職業であり、駅を眺めることも彼の職業的資質であることは間違いないのですが。 この物語は、そんな地味な彼が色彩を持つ友達とのグループを追い出されて、孤独に打ちひしがれている場面から始まります。どうして自分は親友だった彼らに裏切られたのだろう。自分は色彩を持っていないからなのか? そんな悩みを巡り、色彩を持つかつての友達の元へ、16年ぶりに巡礼に向かうのが、この物語の大きなストーリーです。と言っても、よく分からないかもしれませんが;;(説明が下手糞すぎてすみません) この作品を読んで僕が感じたのは、簡単に言えば下記の事です。 大切なのは色彩じゃない。生きる上で重要なのは目に見えるカラフルな能力ではない。着実と、しかし確実に駅を作り修復し続けていく能力である。 自分を飾るのではなく、たくさんの人を迎え入れて送り出せる素敵な駅なような、そんな心を作って行けと。 多くの人をありのままに受け入れ、見守っていく広く頑丈な心を持つことが現代に必要なのではないか。 裏切りの犠牲者であっても、色彩を持たぬ人物でも、一人一人が自信を持ち生きていけばいい。そして自らの心に駅を作ったうえで、好きな人を迎えに行き、わが町へと戻ってくればいい。 23歳である僕に向けて。この時代に生きる人に向けて。村上春樹からは、そんなメッセージを受け取ったような気がしました。相変わらず人にやさしさを与えるのが得意な作家さんです。 この社会の中では全ての人が犠牲者である。何らかの形で友達に裏切られ、理不尽に追放され、大切な繋がりを失ってしまう。現代社会の組織内ではそういう事が往々にしてある。友情においても恋愛においても。けれどその中で培った、青春時代や若い時代の繋がりは決して色あせることない痛みであり喜びである。人はそれを抱えながら精神的に参ることもありながらも、繋がりを維持するために生きていかなければならない。たくさんの駅や路線を繋ぐ電車を、迎え入れる場所として。そんな文学的メッセージがあるようにも感じました(この見解、及びこのレビューでの僕の見解全てがまったくの的外れかもしれませんが……)。 ちなみに星を一つ減点したのは、出来事の何もかもがうまく運びすぎていて、それが物語を動かすための都合のいい展開になっているような気がしたからです。 少なくとも、その展開に説得力が感じられなかった。出来事のあらゆることが運命的すぎて、少々話が地から浮きすぎていると感じてしまいます。そこにもっと読者を納得させるような説得力があればよかったのですが……。村上氏の作品がそういうものだと言われればそうなのですが、昔はもっと運命的な出来事に対して細かい事象や理由を書かれていた気がしたので、今回はちょっと物語を急ぎ過ぎている気がしました。ただ、物語の内容や、比喩などは相変わらずだったので個人的にはよかったのですが。そこが少し気になりました。ユズの妊娠についても、何故それが話の中に登場したのかよく分かりませんでしたし……。 まあ、ともかく。スプートニクやアフターダーク等、氏の中編は実験的なものとしての作品が多いので(この作品も同じ色合いに感じます)、次の作品にも大いに期待です。恐らく長編を書かれるのではないでしょうか。これは僕の勘です。 | ||||
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3日後の水曜日に、沙羅からつくるに語られるべき物語は、ついに語られることはありません。もちろん、物語の時間は、本が閉じられた後も不変に流れているはずですから、本が閉じられたちょうど次の日の夜に、きっと、沙羅はつくるに対して、語るべき物語を紡いでいるはずです。そして、きっと二人は、体を交えて、つくるは射精に成功しているはずです。 こともなげに交わされる灰田とつくるとの間の形而上的会話は、それ自体、小説のパーツとしては涼しいのだと思います。こともなげに交わされる灰田の父親と緑川との間の音楽に関する会話も、それ自体、小説のパーツとしては涼しいと思います。フィンランドでの懐古的な旅情も、ペニスがシロとクロとの体温に包まれる刹那的な夢想も、タグホイヤーの時計も、レクサスの車も、どれも涼しい小説のパーツです。しかし、この小説に根本的に欠けているのは、大局的な構想でしょう。5人が織りなす完璧な調和と、その不調和というのは、「大局的」な構想にあやかるかの様に、この小説の根底をなしているようにみえますが、結局のところ、それも涼しい小説のパーツに過ぎません。 すべての伏線を回収することは、文学の必要条件ではないでしょう。回収されなければ、それは伏線ではなく、小説の雰囲気を醸成する一場面に過ぎなかったに過ぎないのだ、ということも出来るかも知れません。しかしながら、この小説には、雰囲気というものがない。それは、この小説が、歴史的断絶の憂き目に遭った主人公が、歴史的断絶を克服する叙事詩であろうとするため、という説明は、ある種の文学的な説明の一つではあると思いますが、すくなくとも、これらの小説の断片が、5人の関係性の様に「ケミストリー」することはありません。 そういった意味で、この小説は、ひどく混雑する電車の中で読まれるような、暇つぶし(というよりは苦痛をいくらか緩衝する)ための、浅薄なミステリー小説に過ぎません。絶賛するレビューが大半を占める理由が、さっぱり理解できません。 ちなみに、当方は、村上春樹の作品は、過去に、1Q84しか読んだことがありません。ご参考まで。 | ||||
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純粋に読ませる能力がすごい。キャラクターに感情移入できないけど ここまで、読ませるのは、村上さんのすごい才能のなせる業か? 後は、疎外と不条理、孤独を描かせたら、右にでるものは今の日本にはいないと思う。 なんというか引き込まれるわ。 暗い気分になるのは、自分の中にそういう要素があるからだと 思い知らされたなあ。 決して、好きな作家でもないし面白いと感じる作品でもないし 二度と読みたいと思わないけど、でも認めざるを得ない。 すごい作家だと | ||||
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他におもしろい小説はいっぱいあると思うから、話題の作品だと期待して読もうと思うなら、けっこうがっかりするかもしれません。 ですが、文章は難しくなく、わかりやすい流れと、最後まで読み終えることができるボリュームの作品であることは確かです。 シロの身に起こったエピソードがもう少し意外性の高いものだともっと楽しめたとは思うけれど、 人間の強さの度合いが、自分の若かったころとはきっと違うのだろうと思うと、理解できないなりに、 “今ってこんな感じなのかもね。”と納得できるというか、教わる感じがありました。 自分の内面を説明するための比喩的な表現や、夢の使い方など、さすがに評価の高い小説家さんだなと思います。 ムキにならずに、ひとつのお話として読むには、十分楽しめる作品と感じました。 | ||||
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