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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年



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【この小説が収録されている参考書籍】
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価: 3.41/5点 レビュー 1022件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.41pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1022件 801~820 41/52ページ
No.222:
(1pt)

作者があなたなら。

ふと疑問に思うんです。
どんな分野でもいい。
小説だろうと漫画だろうと音楽だろうと陶芸だろうと舞台だろうと、ある一つの目立たない作品(凡作)があって、それを世間の人が評価する時、作者の経歴やネームバリューってどのくらいの影響力があるものなのかと。

例えば音楽。初めはキャッチーなメロディで人気を不動のものとしたアーティストが、その後自己満ともとれるお世辞にも万人受けするとは言い難い曲を世に発表する。売れる。ミリオンで売れる。この曲にはきっと深い意味が、メッセージが込められているに違いないと感じるファンによって。若しくは売れているから間違いないだろうという風潮に従う人々によって。

もしその曲を名も知れない自称ミュージシャンがレコード会社に持ち込んだら、担当者はどんな評価をするんだろう?『君凄いね!これは100万枚売れなきゃおかしいくらいの名曲だよ君!』ってなるかなってことです。

今回の小説、、、
ハルキストの仮面を被り、得意気に意味を語るような器用なことは出来ません。
私やあなたの名前だったら本になることも無かったでしょう。
大好きな人だけに、、、残念。
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No.221:
(5pt)

読み終えました。

時間をかけてゆっくり読みました。
私はやはり村上春樹作品がすきです。全ての作品を何度も読み返しています。
読み返すたびに新たな発見があり、自分の再発見にもつながる気がします。
この作品もそうしたいと思います。
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No.220:
(3pt)

ハルキストではありませんが

話題になっていたので読んでみました。
どちらかと言えば、本は沢山読むほうではないし、音楽を聴くことの方が量としては多いと思うので、あくまでも個人的に感じた感想です。
まだ読まれてない方はネタバレになるのと悪いのでレビューをよまないでほしいのですがまず、主人公である多崎つくるは自らネガティヴを作り出してしまう感じがあってあまり感情移入はできませんでした。
常に冷静。あとシロが一体誰に殺されたのか?灰田のその後は?沙羅の出した答えは?色々なことが謎のまま終わってしまうというのが個人的にはどうも不完全燃焼でだめでした。
あと回想シーンがたくさん出てきますが、その回想シーンよりも、もっとアカ、アオ、シロ、クロ(エリ)の16年の空白を描写してほしかった。続きも知りたいけど続編を描くほどのエッセンスが残されてない。

ただこの煮え切らなさというか読み終わったあとのモヤモヤ感は不思議です。

多崎つくるのように割り切れない感情と近いものがあるかのように。
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No.219:
(4pt)

ミスチルの「彩り」と通底するものが

会社の女の子にどんな本と聞かれ、ミスチルファンの子だったので「彩り」の内容と似てるかなあと軽く返答した。サビの部分の歌詞で色の羅列するのを思い出し、フラッシュアイデアで答えたのだが、家に帰り聴き直してみると根っこの部便が実に関連している。今回の小説では、つくるの駅を作るという職業が社会との係りや人との繋がり、自身のアイディンティを構成するものとして大切に表現されている。これは今までの作品にはなかった部分だ。ミスチルの「僕の事務」の部分にあたる。
巡礼で出会い、振返る人々を「色彩のある人々」として表現しているが、これはやはりつくるの人生を彩っていた人々であったという暗喩であると解釈したい。一見色のない「職業人」の人生も、解釈の仕方では煌めいた再構成が可能であるのだ。人が生きていく上で、心の中で燃えている核のようなものを感じさせる。
つくるが沙羅を必要とする必然性が薄いので星4つ。羊をめぐる冒険の「耳のきれいな女の子」のように単に導く人として描いたほうがすっきりしたような気がする。
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No.218:
(5pt)

いいじゃん

普通にいいと思う。
エンタテイメント作家じゃないのだから、デフォルメした人物が登場したり事件が続発する本ばかりじゃなくてもよいでしょう。
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No.217:
(3pt)

らしい作品ではあるが

いくつかの違和感を持った。 年齢相応、つまり30代の主人公なら30代なりの友情の話は出てこない。20代で止まっている。1Q84でもそうだったが。 恋愛以外のことは書かないのか。 身を焼くような感情の書き方がどんどん精彩を欠いてきている。たとえば沈黙のような孤独の手触りはここにはない。 心理学の教科書を読みたいわけではないので、物語でしか語り得ないことを語って欲しい。感情と現実の伸展のバランスが悪い。 すぐに読めるから良いのだが、読むべき本に挙げるかと言われると否、他に良書は沢山あると答える。
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No.216:
(3pt)

思考することの恥、人間であることのおぞましさ

村上春樹氏の小説をいくつか読んでいて、いつも思い当たる言葉が2つあります。
思考することの恥、人間であることのおぞましさ。
(マラルメ)
世界なんか破滅したって、ぼくがいつも茶を飲めれば、それでいいのさ。
(ドストエフスキー)
世界の出来事に背を向けて、孤独感や喪失感に心地よく浸り、恥やおぞましさを密かに楽しむことが出来る人。そんな読者が、世界には数多くいる。善いか悪いかではなく、それが人間の一面であり、文学の王道である。私は、そんな風に思います。素朴に世界平和を願う宮沢賢治とは正反対の在り方でしょう。人生はファッション。世界の苦悩なんて糞食らえ。どうも、そういう村上春樹氏の世界は好きにはなれませんが、相変わらず文章力は確かだと感心します。ただ、我々は、そろそろ村上春樹氏を卒業して、人類の進化や向上について、もう少し考えてもいい時期を迎えているように思います。いつまでもぬるま湯のような時代は続きませんから。
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No.215:
(4pt)

細部に沸き立つ描写の妙味

村上さんの小説が好きで,今まで出版されたほとんど
すべての小説を読んできました。いくつかのものは数度
読み返しました。村上さんの小説は,私にとっては物語を
楽しむというよりは,小説の表現技術を味わうという
ほうが近いです。そういう意味では極端なことを言うと,
主人公に何か意味ありげな問題が起きて,彼がそれを
解決するために旅に出て,とりあえず一定の結論らしきもの
を手に入れて帰ってくるという,そういう物語の定型さえ
あれば,その物語がどのような応用を得ようともかまわない
のです。彼の小説を読んでいるときには,プロットを
楽しむというのではなく,そこにある言葉と言葉が見せて
くれる不思議で魅力的な空間を楽しんでいます。
今回の小説も,随所に技巧的な極みとその技巧が描き出す,
具体的で幻想的な世界が広がっており,ゆっくり,じっ
くり,丁寧に読ませていただきました。

ただそうは言うものの,小説の内容について,実はやや
不満な面もあります。それは沙羅の存在です。
私は読んでいて,つくるがこの女性に心引かれる理由が
どうしてもわかりませんでした。この物語を先に進めて
いく上で沙羅が重要な役割を担っていることは疑いも
ありませんが,つくるが死の淵をさまよって,そこから
生還し,人間的に大きく変化した末に愛し始める女性
として,とてもふさわしい女性には見えませんでした。
そのような魅力を感じさせる女性としてきちんと描か
れているようには(クロやシロに関する描写に比べて)
思えませんでした。私には沙羅がつくるにとっての実の姉か,
クラス担任の教師のように見えただけでした。この点が,
「行って帰ってくる」という物語の定型における「帰って
くる」部分の動機の弱さにつながっているように感じました。

ですが,この小説は,そうしたいくつかの短所をも乗り越える
ほど,細部に沸き立つ魅力を具えており,やはり読んでよかったな,
彼の小説を同時代に読めて幸せだな,とそう感じさせてくれました。
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No.214:
(4pt)

孤独への対処法

「海辺のカフカ」の舞台となった四国は、八十八か所の巡礼地・お遍路さん、として有名です。
今回は、名古屋とフィンランドへ巡礼する旅でした。
生まれ育った、独特な濃い文化の地方都市へ住み続ける男友達。
知り合いの全くいない海外へ移り出て行った女友達。

名古屋といえば旅行記「地球のはぐれ方」で、一番最初に取り上げられた場所。
とても強い印象が村上さんに残ったようです。
「名古屋の青少年は、この街にいたらわりに孤独なんじゃないのかな」
「(名古屋の人は)出たら出っぱなし、居たら居っぱなし」
「グローバリズム対名古屋ファンダリズム」と、述べています。

自宅へ帰った後、友人へ電話をしたら、相手から、突然、絶交されてしまう。
中央公論社に対して書いた村上さんの自筆原稿が流失した事件。
村上さんと亡くなった編集者・安原さんとの友人関係を思い出しました。

「東京奇譚集・品川猿」では、ホンダの女性販売員が登場しました。
ここでは、レクサスの中堅販売員が好意的に描かれています。
トヨタ関係者にとっては、理想的な宣伝文章となっています。

組織で働いた経験の無い村上さんが、研修を取り上げていたのは、意外でした。
読んでいて、研修を受けた時に感じた不快感が、強くよみがえってきました。
平均的な社会人は、研修に対して、どのような思い出を持っているのだろう。

学生は成人する過程で、人間関係の優先順位が変わっていきます。
最初に男友達を切り捨て、次に女友達を捨て去り、結婚をして家族を作り生き延びる。
精神を病んでしまった友人を、長く助け続ける難しさ。
最近も芸能界で、矢部浩之さんは病んだ岡村隆史さんを支えながら結婚をされた一方で、
矢部さんと同じ年齢の中島知子さんは、必死になって人間関係を壊し続けています。

沙羅の魅力を感じるために、沙羅の過去についての物語を、もう少し書いて欲しかったです。
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No.213:
(5pt)

自己と自我

村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という奇妙なタイトルの小説が売れている。すでに100万部を超えたとメディアは伝えている。この本に触れる前に、前作の長編小説『1Q84』を思い出してもらいたい。
 『1Q84』は青豆と天吾という二人の男女の名前と、青豆が渋滞する首都高速道路でタクシーから下車し非常階段を降りていくという三つのコンセプトから書き始めたと春樹はインタビューで答えている。そのタクシーの運転手がかけていた音楽がヤナーチェクのシンフォニエッタという曲だ。現実のタクシー運転手がクラシックのマイナーな曲であるシンフォニエッタを聴いているとは考えられない。春樹はこうやって読者を不思議な世界に引き摺り込んでいく。
 青豆が迷い込んだ世界は近過去の1Q84だった。そこは現実の1984年とは少しだけ違っているところだ。あることをきっかけに違う道を選択し、人々はあるべきでなかった世界に入ってしまう。そうだ。2011年3月11日の大地震を経験し、日本人全員が少しだけ違う価値観の世界の道に入り込んだように。あの大地震を経験し、人生が異なってしまった人は少なくないだろう。でも、後戻りはできない。
 『1Q84』は幼少のころ暴力を被り心に傷を負った者の復活の物語としてぼくは読んだのだった。
 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に話を戻そう。
 色彩を持たないという意味は当初、ほとんどの登場人物の苗字に色がついているが、主人公の多崎つくるだけが色がついていないことだ。多崎つくるは自分自身何の変哲もない、カラフルでもない、つまらない人間だと思っている。しかし、それは彼がそう思い込んでいるだけで、周りの人々はつくるを色彩がないと口では言うが、心では不可欠な人間だと尊敬さえしていたのである。この平行線は最後まで交わることはなかった。つくるが気づくことはなかった。これは読者への問いかけでもある。つくるは色彩がない人間かどうか。色彩があるとはいったいどんな意味なのかと。
 「巡礼の年」は、フランツ・リストのピアノ独奏曲集からの引用だ。リストが訪れたスイス、イタリア、ヴェネツィア、ナポリの地の印象や経験を表現したものである。その中の第1年スイスの第8曲<ル・マル・デュ・ペイ(郷愁)>という美しいピアノ曲がその小説の謎を解くひとつの鍵だ。この作品はオベルマンが友人に宛てた手紙で綴っている望郷の念「自分の唯一の死に場所こそアルプスである」を表現したものである。登場人物のシロこと白根柚木という女性と灰田という男性が心から愛していた曲である。シロは絞殺され、灰田は突然主人公の前から消える。アルプスとはこの小説で何を意味しているのか。それを特定することはできないが、生きるために非常に大切なものであるとは分かる。
 主人公のつくるは仲の良かった友人とのちょっとした行き違いから、自殺一歩手前まで追い込まれてしまう。彼は何も悪いことをやっていないが、宿命として悪霊に憑りつかれたような苦しみを味わわされることになる。分岐点で右の道に行けば、別の世界に辿り着いていたはずだ。失われたもうひとつの世界はどこかに存在する。世界は多重構造になっているからだ。
 つくるは巡礼によって、自殺に追い込まれそうになった謎を解き明かしていく。それは完全に解明されることはないが傷の痛みが幾分和らいでいく。人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。そう悟るまで成長する。
 すべてが時の流れに消えてしまったわけじゃないんだ。では、その残されたものとはいったい何なのだろうか。それはぼくの解釈では、『自己』だ。高度消費社会で自我という欲望が肯定され、膨張して自己を食い破って出てきた。それが現代人の悩みの源泉である。自我を落ち着かせ、自己の枠に戻さなければならない。それは失ってしまったけれども人生に大切なものがあり、もうひとつの世界に踏みとどまっていると思うことでかろうじて護られるのである。自我は常に自分を正当化するから注意しなければならない。
 我々は難しい時代に生きていると考えされたのだった。
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No.212:
(5pt)

共感する村上春樹

村上春樹は、これまで登場人物に距離を置いて他人事のように淡々と描いてきましたが、この作品では人物を愛して深い共感を示しているように思います。それが意外でした。
文章は淀みなく流れ、行間からは透き通った青または白のイメージをうけました。
表紙のデザインとは少し違うかな。

ストーリーは往年のトレンディドラマや、いくえみ陵のコミックを思わせるありがちなものですが、村上文学として高く昇華されています。
とても良かった。

前作1Q84は、書き尽くした末の未完成作品という印象があり、収集がつかず長すぎて正直退屈しましたが、今回は面白くて一気に読みました。

リストの「巡礼の年」については、ストーリーを理解するヒントになります。
「ペトラルカのソネット104番」の流れるシーンが全体のクライマックスであると思いました。
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No.211:
(3pt)

いつものです

私にはこれが素晴らしいというふうには思えませんでした。
いつもの、村上さんですね、、っていう感じで。
パターンというか、手法というか。
それでもいつか、何かを期待して、今後も彼の本を買い続けるとは思うのですが、、。
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No.210:
(4pt)

another side of「ノルウェイの森」

今回の小説は、「ノルウェイの森」と同じようなテーマで、そこには姿や形をかけた直子やミドリやレイコが登場している。個人的に「ノルウェイの森」が好きなので、同じようなテイストを持つこの作品も好きである。
ただ残念なのはラストである。真相がきちんとあかされていないため、?が、ずっと頭に残るのである。読み終わった後に、ずっと真相を考えてしまった。
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No.209:
(3pt)

認知症作家?による真骨頂の新作

この小説のあらすじを簡単に述べれば、主人公の多崎つくるは、大学になって高校で仲良しだった四人から突然の絶交を言い渡され、そのショックに理由も訊けず、死ぬことを考え悩み、十六年が経過した三十六歳の今になって、二歳年上の恋人にその絶交の理由を四人に訪ねて、「もうとうの昔に、失われてしまった(友人関係)の、その真実を求める」というストーリーである。

そのひとりはフィンランドに在住し、わざわざその真実の追求のためにつくるは、フィンランドまで訪ねて行くのだから、まあ、ご苦労さんなことである。

多崎つくるのいる場所は、P115より「どこまでが現実なのだろう、とつくるは思った。これは夢ではない。幻影でもない。現実であるに違いない。しかしそこには現実の持つべき重みがない。」
また、P119より「そこにあるのは、すべての夢の特質を具えた現実だった。それは特殊な時刻に、特殊な場所に解き放たれた想像力だけが立ち上げることのできる、異なった現実の相だった。」
そして、P229では世界を部屋にたとえて「ひとつの真実の相にあっては、彼はシロに手を触れていない。しかしもうひとつの真実の中では、彼は卑劣に彼女を犯している。自分が今いったいどちらの相に入り込んでいるのか、考えれば考えるほど、つくるにはわからなくなってくる。」とあり、もうお馴染みの読者には、これが『1Q84』と同様の異次元世界を扱っているようにも思えるだろう。

私が読んでいて思わず笑ったのは、P233の「灰田の足の裏にうり二つ」とプールで泳いでいたつくるが人の足の裏を見て、灰田と思うのだが実際は人違いだったという、しょうもない場面で、どんな足の裏なんだよ? とツッコミたくなった。

フィンランドで、自己嫌悪に陥るつくるに、エリは「君に欠けているものは何もない。自信と勇気を持ちなさい。君に必要なのはそれだけだよ」P343と励ます感動的な友情場面と、つくるが恋人に告白した後に電話でいう彼女の「安心してゆっくり眠りなさい」に、私は、つくるの未来への希望とハッピーエンドを想像したのだが、それも最後のつくるの「沙羅がおれを選ばなかったら、おれは本当に死んでしまうだろう、確実に息を引き取るだろう、この世界から密やかに退場していくだろう」P368には、女々しくて女々しくて女々しくて、すべてがぶち壊しになったように感じた。

「しかし」や「そして」を多用し、文章は、あまり上手い作家とは思えず、暇な読者はその回数を数えてみるといいだろう。

六本指やレイプ、殺人事件、悪霊などのキーワードで物語を興味深くしようとしているが、どれも謎解きは中途半端で意味不明、また最初はAといいあとでAではない(シロで射精あとで灰田の口で)という、この作家をいままで知らなかった読者は、まるでこの作家は認知症を患っているのではないか? とさえ思えてくるが、これがこの作家お得意のとぼけた作風でもあり、この作品はこの作家のこれまでのエッセンスを凝縮させた真骨頂ともいえるものかもしれない。
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No.208:
(1pt)

もうだめなのかもしれない

村上春樹のファンの方ほど、がっかりされたという方も多いのではないでしょうか。
まず、シロについてもっとちゃんと描かないとつまらないと思います。悪霊に憑かれたように理由なく(あるいは、宿命的に)人が損なわれていくことがあるとしても、その過程をもっとちゃんと描いてほしい。ノルウェイの森の直子のように。あるいは、多崎つくるがそれをどう受け止めるのかということを。
それから何より、夢の中で交わり意識の中に射精する的なプロットはさすがにもう飽きました。加納クレタはいいとしても、その後、佐伯さんもフカエリも青豆も皆そう。「またこれか」と思って冷めてしまいます。
自分自身、団塊ジュニアと言われる世代ですし、その気になれば社会的にある程度以上成功することのできる能力と環境に恵まれながら限定された事柄にしか関心を持てず、人と一定の距離を置きながら、細々とした事柄には几帳面で、ときどき何かに真剣に腹を立てたりするといった村上春樹の小説の主人公のいつもの生き方には共感を覚えますが(だからこそ村上春樹のファンなのですが)、「羊をめぐる冒険」や「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」、「ねじまき鳥クロニクル」、「ノルウェイの森」といった初期から中期の作品と比べると、数段落ちると言わざるを得ないと思います。
という訳で、村上春樹を読んだことのない方には初期から中期の作品をお勧めしますし、初期から中期の作品を既に読まれたという方ならあえて読まなくてもいい、という程度の作品だと思います。
村上春樹の新作が出ればまた読んでしまうとは思いますが、もうだめなのかもしれないと思いました…。
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No.207:
(5pt)

テーマとか、示唆するものとかどうでもいい

ただ読んでてとても素敵な景色が思い浮かべられ、読書期間中の1週間、本を手にしている時も手にしていない時も、なんだか幸せな気持ちでいられた。それだけ
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No.206:
(5pt)

とても良かったです。

私は村上春樹氏の大ファンという訳ではありません。テレビもあまり見ないので所謂ハルキストやら新作発表の騒動やらとは無縁で、偶然本屋に立ち寄り本書を発見し購入しました。私は村上氏の作品を読むのはかなり久しぶりで前作の1q84も読んではいません。
率直な感想は素晴らしい作品でした。胸の奥まで響く素晴らしい音楽に出会った時の感動に近いと思います。
恐らく著者が扱ったであろうテーマへの本書のアプローチに根源的な心の揺さぶりを受けました。
それ故に否定的なレビューの余りの多さに少々戸惑いました。ただそれらの否定的レビューの多くが文学形式的な観点、テーマの浅はかな取り違い、また社会現象の一部としての批評に思われます。
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No.205:
(5pt)

情景と音楽が印象に残ります

情景と音楽が印象に残る小説でした。物語の中ではリストの「巡礼の年」が繰り返し流れます。ラザール・ベルマンの演奏ですが、ある重要なシーンのみアルフレート・ブレンデルの演奏に変わります。華麗できらびやかなロシアンピアニズムの系譜を継ぐベルマンの演奏に対し、詩人でもあるブレンデルの演奏は幾分端正で慎みがあり、内省的です。ある女性に対して向けられる2人の登場人物の眼差しと理解の違いを象徴しているようにも思えました。(ベルマンの3枚組輸入CDが売れていますがブレンデルの演奏(5枚組輸入ボックスセット)も本当に素晴らしいです。)

 以下は余談(言葉遊び)になりますが、、
本作ではタイトルもそうですが物語の中で「名前」に注意を向けさせるような表現が度々みられます。また「巡礼」、「背教」、「カソリック」といった語彙やヨナ書やヨハネ伝に由来する比喩等、キリスト教を感じさせるモチーフが所々に埋め込まれています。したがって読み進めるにつれてどうしても両者を関連付けて深読みしてしまうことになりました。
たとえば「Eri」と「Sarah」という名前は聖書中の人物(存在)をイメージさせます。Eriは旧約聖書中の預言者を連想させる名前でもありますが、十字架上のイエスが最後の瞬間に呼びかける名前でもあります(「Eri Eri 何故私を見捨てるのですか」)。
そしてSarahも旧約聖書中に登場する女性ですが、彼女は高齢でありながらも美しかったため、王に見初められ、夫の元から離れるというエピソードを持ちます。そうやって深読みしていくと、主人公の名前も意味ありげではあります。「産めよ増やせよ」という言葉は旧約聖書のキーワードですが、主人公の名前はある人物を連想させなくもありません。マタイ伝冒頭の長大な系譜の最初に出てくる人物であり、「多くのものの父」という意味の名前を持つその人はSarahの夫でもあります。
その後Sarahを取り戻した彼は一族繁栄の礎を築きます。三大宗教の源流に立つ人物です。
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No.204:
(5pt)

色彩を欠いた多崎つくるか?色彩を持たない多崎つくるか?

高校生の年代。。。大人の世界と子供の世界を行き来する青春時代に、男女5人のグループでの欠点無き最高の日々を作ってしまった主人公たちの苦悩。

出発点はすべてそのグループでの日々が完璧すぎたという事実にある。多くの人は、主人公のように最高の青春時代を持てたという人は少ないだろう。青春時代は一瞬のうちに過ぎ去っていき、変色していくものなのである。

しかし、完璧すぎた青春が偶像となって観念的理想となり、彼らをその後、苦しめる原因となった。その偶像が色あせて腐っていく前に破壊されることとなった。理由なく捨てられた主人公、多崎つくる。

彼はそのことを思い悩みながら過去を忘却しようと色彩を欠いたまま生きていく。あるきっかけで、彼は自分の過去と向き合う決心をした。。。。色彩を欠いた多崎つくる。本当は彼が一番の光彩を放っていた。。。知らないのは自分だけだ。

青春は少し、汚れている方がいい。青春は恥ずかしくみっともないくらいで丁度いい。。。そんな気持ちになった物語でした。村上春樹ワールド最高です。(なるべくネタバレしないように書きました。)
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No.203:
(1pt)

「海賊と呼ばれた男」と比べ、際立つ矮小さ

レビューを書くか迷うほど“空っぽ”な「紙の束」だった。
前作以降、日本では東日本大震災があった。
出てきたのがコレか?との落胆は大きかった。
常々感じるが、著者の魂は祖国から漂流してしまっている。

疎外、喪失感、無国籍性。
こうした心象を殊更に押し出す彼の作風は、マルクスやレーニンが読んだら大絶賛しただろう。
とくに若い方々には、知らぬ間に妙な思考回路を植え付けられることに注意した方がいい。
自分の子供には絶対に読ませたくないと思った。表題の本を読んで解毒したい。
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