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沈黙の町で
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沈黙の町での評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.05pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全70件 61~70 4/4ページ
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地方都市で中学生が転落死します。死亡した生徒がいじめを受けていたことが分かり、傷害で4人の生徒が逮捕・補導され、殺人容疑をも視野に入れた捜査が始まります。いったい真相はどこに…。 本書の帯には「事故か、自殺か、それとも…長編傑作サスペンス」とあります。 しかし、読み終わって私はこの小説の主題は「いじめ」でも「謎解き」でもないと受け止めました。作者は地方都市のいじめ事件を素材にして、 より普遍的なテーマ、つまり人間の弱さと社会の現実をあぶり出そうとしたのではないでしょうか。 そうだとすれば、その試みは見事に成功しています。 様々な視点から事件が語られて.隠されていた事実が次第に姿を現します。投じられた小石が水面を波立たせ渦を生じるように、 事件は狭い町の人間関係にまで深刻な影響を与えていきます。いじめの原因が単純でないことが明らかにされ、生徒たちの幼くて危うい集団心理、 母親の我が子への執着、刑事や検察官による執拗な捜査、学校の保守的な対応、教師間の食い違い、新聞記者の取材、等がていねいに描かれます。 どこにでもいる普通の人ばかりが登場し、特別な状況はひとつもありません。 リアルで詳細な記述の積み重ねによって、いじめには相応の理由があること、中学生は状況や集団に流されがちであること、 大人は子供たちを理解できないこと、どこでもこうした事件は起こる可能性があることを著者は説得力をもって示すのです。 人間の持つ弱い部分が人間関係の歪んだ時に「いじめ」を生じさせ、社会の仕組みがそれを増幅する、これが著者の解釈だと私は理解しました。 新聞連載中に大きな反響を呼んだのは、この著者の意図を一部の読者が「いじめの肯定」と曲解したからでもありましょう。 しかし、著者はあくまで中立の立場であり、「いじめ」を手がかりにして日本社会の現状を切り取って私たちの前に提出したのです。 骨太の主題を完成度の高い小説として結実させたこと、すなわち30名を越える登場人物の一人ひとりの性格や心理を描き分け、 読者を惹きつけて離さない物語に仕上げた奥田英朗氏の筆力に私は感服しました。 | ||||
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北関東の地方都市。男子中学生の転落死事件をめぐっての捜査とリアクションを、次々と視点を入れ替えて描いた大長編。 顕著な特徴は、人物を善悪で塗りわけることが一切なく、ヒーローも悪人も不在なこと。 被害者の叔父と中学生の一人が比較的みもふたもない描き方で、逆に若い教師、刑事、検事はニュートラルに描かれているが、ヒーローと呼ぶには程遠い狂言回しである。 中学生の一人はかなり英雄的にふるまうものの、それも偏った正義感として突き放されており、事件全体の中では消極的加担者でしかない。 二人の母親の描かれ方が後半じりじり逆転していくのも印象深いが、特に回想部分の視点を担う少女の、ある「関わり方」が露呈していく場面は、痛ましくショッキングだ。ここの印象が強すぎて、ラストのインパクトが弱まってしまったのは残念。 | ||||
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奥田英朗の新作ミステリという事でかなりの期待値を持って読んだ。 人物の心理描写や事件の背景など細かく書かれ作品世界に没頭できた。 しかし一つどうしても気になる点がある。 被害者の少年の心理だ。 加害者とされた少年の心理描写や事件に至るまでの過程などは なるほど納得のいく内容であるが 肝心の被害者少年の心理は謎のまま。 彼の理解しがたい心理が最後まで不明で 「何だかなあ・・・」と思う。 加害者少年の方には少なからず共感できる部分もあるが 被害者少年の方は全然理解できない。 要するにこの少年が何を考えているのかが全く理解不能なのだ。 事件当初は普通に可哀相にと思った気持ちがどんどん覆されていく。 後味が悪いという意見も多数あったが私は逆に後味こそ悪くないと感じた。 むしろスカッとする感じだった。 こういう風に思いたくはないがラストはこうなってしかるべきだったような気さえするのだ。 まあ小説作品としては最後まで飽きずに読めたので面白いという意見です。 | ||||
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相変わらずの奥田節が炸裂しています。 本当に著者の人間群像小説には毎回脱帽しています。 登場人物一人一人の深層心理の描き方は、もうすでに神の領域かと唸って しまいます。 加えて著者の作品で好感の持てるところは、紙上において声高に持論を展 開しない事。あくまでも客観的に、空中から登場人物を俯瞰しているよう な姿勢がいいと思います。 ただ今回、敢えて☆4としたのには二つの理由があります。 一つは上梓する時期が悪かった事。 どうしても宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」と被ってしまうんですね。 ストーリー自体は差違がありますが、一人の少年の死が発端になっている という点で、自分の中ではどうも二番煎じの感が否めない。 あくまでも私の感想ですが・・・。 二つ目は物語そのものについてです。 結局最後まで藤田は名倉に何をしたのかがシークレットになっていますね。 この結末を読者に委ねるって事なんでしょうが、この場合は作中で決着す るべきではなかったかと思います。 どちらにしても今までのベスト1・2は『最悪』『オリンピックの身代金』 だったのですが、それに次ぐくらいの秀作だと思います。 次作も期待しています。 | ||||
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子供の世界でも大人の世界でもいじめは存在する。誰しもが当事者や傍観者も含め生きていく上で避けられない事象である。そして多くの傍観者は、自分に関係ない、関係を持ちたくないと思っている。 僕が不思議に思うのは、親になった人は、なぜ自分の子供のいじめに思いを馳せることができないのかということだ。そんな事、自身の学生時代を振り返れば自明でしょうに。それに気付いている人が私立中学校とかに通わせるんだろうなぁ。それほど、公立中学は問題がある。 作中にも出てくるフレーズだが、私自身もいじめられた経験があるのだが、その時代に携帯電話やインターネットが無くてよかった。逆に言えば、今の時代のいじめは比べもんにならないほど、シャレにならないことが多いと。 話の中身は、誰が悪いとかじゃなくて、村社会の悲劇という感じです! | ||||
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中学2年生の男子生徒が転落死する。事故死と見られたが、遺体の背中に無数のつねられた内出血跡が残っていた。警察はイジメを疑い、転落死直前まで一緒にいた生徒4人を逮捕、補導する。4人は証拠隠滅の形跡もあり容疑は濃厚と思われたが、決定的な証拠はなく釈放される。 読者はここで、亡くなった生徒に感情移入して真相が暴かれることを期待するだろう。だが、ストーリーは意外な展開を見せる。容疑を受けた生徒と亡くなった生徒が単純な加害者と被害者の関係ではないことがだんだん明らかになっていく。 クラスやクラブの生徒間同士の複雑な関係が微細に描かれる。親にも教師にも明かさないこの年代特有の行動と心情が驚くほどリアルに描かれ、絶えず揺れ動く関係の中でもつれて歪む彼らの夢と挫折、希望と不安、無鉄砲さと臆病さ、正義感と残酷さが浮き彫りになっていく。 事件に関わる多くの大人が登場する。教師、保護者、警察、検察官、弁護士、記者、政治家、それぞれの立場でこの事件に関わって反応する。大人たちの利害も絡み合って、事態は複雑に展開していく。地方の小都市の閉鎖的な人間関係が、事態の進行に独特の陰影を与える。 生徒も大人たちの性格も明確に描きわけられて、登場人物は存在感を持ち非常に身近に感じられる。そしてプロットは次々と変転して、予断を許さず最後まで緊張感をもって読める。 目に見えるイジメの背後には、もつれ合った因果関係の底知れない闇が海面下の氷山のように広がっている。小説はこの闇に光をあて可視化してくれるのだが、それは社会をつくって生きる人間の深層を描いていくことであり、単純な善悪の判断をも突き崩す世界へと導かれる。ここからイジメへのダイレクトな処方箋や教訓が得られるとは思えない。だが、人間への深い眼差しとと共に祈りに似た悲しみに触れることができる。小説でしか味わえないずしりとした手応えが残った。 | ||||
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序盤は事件から一歩引いた大人たち中心に、それこそネットニュースで断片的な情報を読んでいく感覚なのに、 だんだんとカメラが近寄っていって、空撮から学校内部の映像に切り替わるみたいに生徒たちの視点になって、 いじめにかかわった少年たちの素顔が分かってくる。 知れば知るほど、味方する価値もないと思っていたいじめグループ4人に感情移入していく。 逆に、かわいそうだと思った被害者側の違う一面も見えてしまう。 善悪が入れ替わっていく感覚が怖くも面白い。 重い内容と新聞連載という相性は良くて、子供がいじめに関与したかどうかで思い悩む母親のエピソードも、息が詰まりそうなのにあとちょっと、あとちょっとと読んでしまう。 子供たちの、危ういながらもなんとか生きていこうとする姿には胸が熱くなった。 青春小説としても読める。 読んでいて何かむずむずするのは、きっと自分の周りにも近いことがあったからだ。 犠牲者が出ないから忘れているだけで、日本中の学校や職場で、このくらいのいざこざはあったはず。 米の減り方で子供の成長を感じる母親とか、細かい部分で妙にリアリティがあるのはさすが奥田英朗。 追記 被害者サイドにいる「おじさん」の言動だけは少し嘘っぽさを感じました。 学校の態度に怒りを感じるまでは自然ですが、だんだんマンガに出てくるいやな上司みたいになってきます。 このキャラ一人のせいで「いじめられる側にも問題がある」感じが強調されているような気がしました。 | ||||
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中学生…大人になる前だからこその複雑な心理、そして行動。単純なイジメ問題としてだけではなく、反抗期に入りつつある登場人物たちの状況を巧みに描いていると思います。長男が登場人物と同じ世代なだけに、締め付けられるような思いで、それでもストーリーに引き込まれ『むさぼり読み』してしまいました。それにしても、奥田英郎さんの小説、登場人物それぞれの多視点でどんどん話が展開、そこにキーとなる過去のエピソードがじわじわと深く絡んで、本当に引き込まれてしまいます。登場人物たちのキャラクターの変遷ぶりが圧巻。。。単なるどんでん返しではなく、「ふくらみ」をもって描かれていると思います。なんとも、やるせない状況でストーリーは進んでいきますが、親子で普通にすごす日常がいかに幸せなことかと痛感させられつつ、扱いが難しくなっていく年代の子どもたちにしっかりと目配りできているんだろうか、そんな不安にも苛まれてしまいます。 | ||||
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最初に言いたいが、読後感は、それこそ「最悪」である。 何とも、やりきれない、いたたまれない、そしてしょうもない。 うん、これはサスペンスであり、声高に社会派を叫ぶ小説ではない感じだ。 しかし、この後味の悪さには、大きな問題に楔を打ち込む毒気を、十分孕んでいると思った。 小説としては、とにかくぐいぐい読まされる。特に序盤の展開が、上手い。後は一気読みである。 しかし、奥田さん。人ってやっぱりこんなもんなんでしょうか。 ここに登場する人たちは、たぶん普通だ。例えば『無理』の登場人物達のようなどうしようもない連中ばかりじゃない。 そんな普通の人たちが、事件に巻き込まれていく中で、その本来の人間性がどんどん出てくるというか。 特に、母親たちの「自分の子供しか見えない」ぶりは強く印象に残る。母親の子供への執着というのはこんなに凄いものなのか。 永遠に母親にはなれないはずの奥田英朗が、よくぞ、こうまで描けるものだ。作家の想像力というのは、ほんととんでもない。 それと、子供たちにリアリティがある。ダメなんである。しょーもないのである。ここの所は詳しくは書けないが。 でも我が身を振り返るに、中学生ってまずこんな感じだろう。色々考えるんだが、幼さやコントロールできない所満載なのだ。 事件の中の彼らは、ほんと痛々しいまでに中学生なのである。物語とともに剥き出しにされていく彼らの姿も、読み所だと思う。 今作は、『無理』のように、理不尽な人々や社会に対し、痛烈に罵倒するという感じではない。 また、例えば『最悪』に代表される奥田的“ジェットコースター小説”のスリリングな展開というのでもない。 しかし、どんどんページを繰らされる。それは、人物、とりわけ母親たちと子供たちが、丹念に描き出されているからだ。 時にピリッと辛辣な文を交えながら、派手ではないが、じわじわと真相を暴き出してゆく。これがサスペンスを生む源だ。 そして、ラスト。奥田英朗は、派手であろうとなかろうと、やはりラストが凄い。 まるで、エンドロールの後に真っ暗な画面がしばらく続く映画のように、深く、考えさせられる。 それにしても、このテーマをこの方向で描くとは・・・怒る人もいっぱいいるだろう。傷つく人もいるかもしれない。 それでもこの作品を書いた奥田英朗は、相変わらず挑戦的で刺激的な作家だと、つくづく思う。 | ||||
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一気読みだった。 この小説は、朝日新聞の朝刊に連載されたもの。 連載中から話題となり、打切り論まで出た話題作。 ネタバレと成るから詳細は書かないが、いるよこんなイジメられっ子。どうしようも無い奴。 でも、朝刊の連載小説には、向かないし表沙汰には言えないよなこんな事。 だって、イジメっ子?と言うか加害する側にも言い分が多分にあるのだから。 この題材にGOサインを出した朝日新聞。やるじゃないか!そして、当り前の題材を書かない奥田英朗は流石です。 | ||||
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