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緑のカプセルの謎



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緑のカプセルの謎の評価: 6.67/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.67pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:5人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

古典なのに斬新!

カーのミステリの特徴として密室がよく挙げられるが、それと双璧を成すほどよく扱われていた題材が毒殺トリック。古来ヨーロッパでは毒殺による殺人事件が頻発しており、しかもそれらが連続殺人事件であることが多かったこと、そして伯爵夫人や公爵夫人といった王侯貴族の夫人達による実行が多く、スキャンダラスな側面を持っていたことが大いにミステリ作家達の創作意欲を刺激したようだ。その中でも多数の毒殺トリックを扱った作品を著したカーはとりわけこの毒殺という犯行に魅了され、独自に研究をしていたように思われる。
というのも本作には『三つの棺』で行われた密室講義に続く毒殺講義がフェル博士から成されるからだ。このことからもカーが密室と毒殺を自身のミステリのテーマとして掲げていたに違いない。

物語は巷で毒入りチョコレートを食べた子供達が死ぬという事件が頻発しているという物騒な事件が起きていることがまず語られる。この事件を犯罪研究家であるマーカス・チェズニイ氏が解明し、その方法を友人や家族の前で実演している最中に覆面を被った何者かが入ってきて、なんとそのまま毒殺されてしまう。しかもその模様を見ていた3人の目撃者の証言はどれも食い違っていたという、非常に面白い題材を扱っている。
さらにこの模様を写したフィルムで彼らの証言を検証する行為がなされ、それに加えて生前チェズニイ氏が用意した10の質問に答えるという趣向も盛り込まれている。この映像による検証が本書のメインであり、最も面白いところだ。

カーが本書を著した際、バークリーの代表作『毒入りチョコレート殺人事件』が念頭にあったことはまず間違いない。識者によればカーがバークリーが長を務めるディテクティヴ・クラブに入会したのが1936年で本作の上梓が1938年。当時バークリーは英国ミステリ界において重鎮であり、しかもエース的存在であった。カーがクラブ入会後、彼と会員のミステリ作家たちの交流を通じて多大に影響を受けたのは知られており、本作は特にバークリーの影響を受けて創られたようだ。
やはり珍しいのは映像を使った心理的トリックだろう。毒殺された犯罪研究家が作った映像とそれに関する問いについて視聴者が喧々諤々の議論と問答を繰り広げるのは面白く、ロジックよりもトリックを主体にしたカーにしてみれば異色ともいえる展開である。
で、これが逆にトラブルとして起きた毒殺事件を複雑化しており、なかなか良く考えられた作品である。失礼な言い方になるが、全てが綺麗に納得でき、しかも精緻すぎてカーの作品ではないみたいだ。

とこのように非常にカー作品の中ではロジックを前面に押し出した作品で、読み応えがあるのだが、当時の私の感想を書いた一言メモでは、どうも多忙の中で読んだようで楽しめなかったとだけ残ってある。しかしそれでも内容についてこれだけ記憶に残っており、読み応えがあったように思えるのだから、やはり私の中ではカーの作品でも上位に来る作品であるようだ。もう一度読み直すべき作品として記憶にとどめておこう。

Tetchy
WHOKS60S
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

緑のカプセルの謎の感想

「皇帝のかぎ煙草入れ」に続いてカー2作目。しかしまた異端作を手にとったらしい。

「心理学的推理小説」と銘打たれた作品。
元々曖昧な人間の観察力に心理操作が加わると真実とは全く異なるものが見えてしまう。
この作品は、それを利用した犯罪という事になるのですが、正直心理トリックものの難しさを痛感した次第です。
登場人物達と同じように、我々読み手に対して同様の心理的効果を与えられるのか。
読み手を納得させるのは大変でしょうし、実際全ての読み手を納得させるのは無理でしょう。
読み手は所詮はその場にいなかった部外者ですし、読む時のコンディションや気合の入れ方も様々でしょうから、全てにおいて「そんな上手い具合にいくかよ」と思わせないようにするのは無理というものです。
だったらどこまで納得できたかが評価の基準になるはずだけど・・・一様に評価高いんですよね、この作品。
もっと評価が別れてもいいような作品に思えたのですが・・・


▼以下、ネタバレ感想

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梁山泊
MTNH2G0O
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

心理トリックが見事

毒殺講義が含まれた本書。
毒殺方法についての論も楽しめるが、一番の見所はマーカスの観察実験。
物の観方のいい加減さ、心理トリックを巧く用いた作品であった。

Ariroba78
5M53WTS6

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