■スポンサードリンク


死者はよみがえる



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

死者はよみがえるの評価: 1.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点1.00pt

■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(1pt)

さすがにこれはナシ!

怪奇性を前面に押し出したような題名だが、中身はそんなオカルト趣味に走っていなく、むしろカーの作風の1つ、ドタバタコメディタッチの色合いの方が濃い。調べてみるとどうやらこの題名は必ずしも正確ではなく、ハヤカワ・ミステリ版の『死人を起す』が正解らしい。

友人との賭けで無銭旅行を南アフリカからロンドンまでしてきた青年が、空腹でホテルの前で休んでいたところ、上からホテルの朝食券が降ってくる。天の恵みとばかり朝食にありつき、ホテルの従業員に勘違いされて、券に書かれていた番号の部屋に案内される。しかしそこにあったのは顔をつぶされた女の死体だった。
本作はこのように巻き込まれ型の事件を扱っており、そのシチュエーションはカー独特のウィットに富んでいて面白い。実際、私は『曲がった蝶番』を読んだ後でカーに対してさらに好印象を持っていたものだから、期待が高まっていた。

が、しかし結論から云えば本作は駄作といわざるを得ない。なぜならほとんどの謎がアンフェアに解かれるからだ。メインの謎が実は××だった、おまけに犯人もあまりに意外すぎて、唖然としてしまう。恐らくカーはこの着想を思いついたときは思わずほくそ笑んだことだろうが、独創的すぎて誰も付いていけないというのが実情だろう。逆にこれだからこそカー!と讃えるファンもいるだろうが、あいにく私はそこまで寛容ではない。もしくはルパンシリーズに触発されたのかとも思ったが、それは勘繰りというものだろう。

しかしカーという作家はどうしてこんなに作品の完成度に差があるのだろう。『帽子収集狂~』で面白さを知ったと思ったら、続く『盲目の理髪師』、『アラビアン・ナイトの殺人』は凡作。どうせ次も同じだろうと思って読んださほど有名でない『曲がった蝶番』が意に反して傑作と、非常に高低差がありすぎる。しかもこれらは1933年~38年という5年間に書かれており、『帽子収集狂~』が33年で『曲がった蝶番』が38年である。つまりほぼ時系列に読んでこれほどの違いがあるのだ。例えばエラリー・クイーンは初期は作品を発表するごとに出来が良くなり、『Yの悲劇』や『エジプト十字架の謎』あたりを頂点としてそこから下り坂に差し掛かり、再度『災厄の町』で盛り返すという、作品のクオリティについて大きな波がはっきりしているが、カーは景気不安定な時の株価指数や為替相場のように作品ごとにそれが乱高下している。
やはり異色の作家だ、カーは。この作品は自身のカーマニア度を測るのに、リトマス試験紙的な役割を果たす作品かもしれない。

Tetchy
WHOKS60S

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!