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透明人間の納屋



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透明人間の納屋の評価: 7.67/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.67pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

おススメします!ただし大人たちへ

講談社が打ち立てた児童文学ミステリの叢書「ミステリーランド」シリーズの1冊として書かれたのが本書だが、子供向けというにはなかなかハードな内容だ。

透明人間になってしまったとしか思えない殺人事件の内容はもとより、事件の背景となる主人公ヨウちゃんの家庭環境や隣人真鍋さんとの関係など、およそ子供の読み物とは思えない内容に眉を潜めてしまう。
母子家庭で母親が水商売をして稼いでおり、ホステスのライバルがいて真鍋さんに財産目当てだと吹き込んでいたり、そんな女を憎々しく思い、殺意を抱く真鍋さんの描写、さらには子供が学校に行っている時間中の母親と隣人の逢瀬のシーンなど、大人の卑しい部分を若干オブラートに包んではいるが、はっきりと描いている。
これは島田氏なりに最近の子供はこれくらいのことは知っているという理解の上での創作なのか、それとも大人の世界の汚さを知らせるために敢えて書いたことなのか。いずれにしても真意を知りたいものだ。

重ねて表紙も含めて物語に挿入される石塚桜子氏のイラストは抽象的で観念的で禍々しくておどろおどろしく、怖さを助長させ、読者の子供諸氏はトラウマになるのではないだろうか。

とまあ、いきなりネガティヴな感想を羅列してしまったが、やはり島田氏、他のミステリ作家の一つ上を行く完成度だ。

しかもテーマも今日性に富んでおり、透明人間という幻想的な謎を合理的に解き明かすだけに終始せずに、社会性も絡める。久々に島田氏のストーリーテラーの力量に参ってしまった。

さらには密室からの脱出も温故知新でカーター・ディクスンの某作を思い出してしまった。
あのときの私の感想は批判的だったが、今回は密室を構成する人物にある設定をもたらすことで説得力を持たせている。
21世紀本格を目指しながら古典ミステリにも材を得る、島田氏のミステリマインドの幅広さに感服してしまった。

ただ惜しむらくは前述したようにこれが児童向けに書かれた物語として適切かどうかということ。恐らくは小学高学年以上を想定して書かれたのだろうが、「児童」という言葉の定義は6~12歳までと実に幅広い。本書を6歳が読んだ時の衝撃を考えると相応しい内容かと疑問視せざるを得ない。
本来、作品はそれ自身の出来栄えで評価すべきだろうが、本書に関して云えばやはりそういった外部要因が頭を過ぎらずにいられない。

しかし流石、島田荘司氏。
彼のミステリマインドと明日のミステリへの探求心は少しも揺るぎがないことを知り、ますますファンになってしまった。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:
(7pt)

透明人間の納屋の感想

ちょっと変わった作風でしたが、子供とのやりとりといい、最後の部分がとてもせつなく 心に残る作品でした。

axel
RNCIKKBG
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

大人のためのジュブナイル

ジュブナイル版として出版されたものではあるが、どう考えても子供向きではない。トリックそのものはチープで子供でも簡単に見破れそうなものだけど、その背景にある悲しい宿命を背負った人々の生きざままでを理解してこそ、汲めども尽きない深い余韻を残す。この作品を手にした子供が、トリックの簡単さだけを挙げて本作を駄作と決めずに、大人になってからもう一度読んでほしいものである。

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