昭和初期の小倉。私鉄職員の“わたし”三輪は、陶器会社に勤める仲間、秋島、久間とともに詩を愛好していた。

過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた山尾に、召集令状が届く。

「帝国の大学」として数多くの指導者を養成し、日本近代史の原動力となった東京帝国大学は、学問と政治・社会との関わりや、権力と思想の自由の問題にどう対処してきたのだろうか。

名古屋のホテルと深大寺公園での医師連続殺人事件…薬品の闇取引きや診療拒否、荒廃した医療現場を衝く長篇推理。

鉄砲にかけては百発百中の名手稲富治介は風采のあがらない無骨者のため細川忠興・ガラシア夫妻にうとまれ出陣の機会も与えられず不愚の一生を終えた。

大和大学助教授の稲木は、バーのマダム啓子との情事の帰途、入試問題草案を紛失した。

松山地検庁舎の怪火で事務官が焼死、事故として処理された。

夫を裏切り、妻を捨てた不倫の愛の逃避行―広漠たる砂漠に死を求めて彷徨う女と男の愛の無常を描く長篇。

日本史教科書編纂の分野で名を馳せる島地章吾助教授は、学会で変わり身の早さと女癖の悪さで名を知られていた。

作家の小西は、戦友が社長を務める地方紙に、小説の連載を始めた。

夜釣りに出た船頭と客が、死体になって百本杭に流れ着いた。

東京近郊に広大な敷地と白亜の近代校舎をもつ私立女子大学・若葉学園。

若い芸術家の憧れの的である美貌の人妻・竜崎亜矢子。彼女は夫・重隆との愛なき結婚に苦しむ“名家の囚人”であった。

ヨーロッパへの深い関心を示す重厚なサスペンス二作。

ミステリには「清張以前」と「清張以後」があるー。巨匠の凄みを凝縮した初期の傑作８編。

軽井沢で殺された外国婦人はマレーシアの密林に消えたタイ・シルク王の妹だった。熱帯蝶の標本が二つの事件を結ぶ。

銀行員安田信吾は行金五百万円を持ってキャバレーのホステスと共に逃走した。取引先の隠し預金を裏付ける極秘メモが決め手だ。

ヨーロッパへの深い関心を示す重厚なサスペンス二作。

選挙に出馬する義弟の不透明な資金三千万円を持ち逃げした木谷省吾。

戦後日本で起きた怪事件の数々。その背後には、当時日本を占領していた米国・GHQが陰謀の限りを尽くし暗躍する姿があった。

昭和23年1月26日、帝国銀行椎名町支店に東京都の腕章をした男が現れ、占領軍の命令で赤痢の予防薬を飲むよう告げると、行員らに毒物を飲ませ、現金と小切手を奪い逃走する事件が発生した。

設計士の板垣貞夫は地元の有志から、石見銀山跡を観光地にしたいと、設計の構想、工費の見積もりの依頼を受ける。

会社員の青年・梅木隆介はある夜、夫婦と名乗るヒッチハイクの男女を車に乗せた。

南北の朝鮮に抹消された悲劇の詩人。彼が追い求めたものとは何だったのか。

救援物資の横流し、麻薬の密輸から殺人事件まで、“神の名”のもとに行われた恐るべき犯罪の数々。

殺人容疑で捕えられ、死刑の判決を受けた兄の無罪を信じて、柳田桐子は九州から上京した。

二十年近く地道にある省の役人を勤めてきた川島留吉は、ふとしたきっかけで役人仲間と麻雀を始める。

銀行を襲い、仲間と山わけにした金で商売をはじめた内堀彦介は、事業に成功した今、真相露顕の恐怖から5年前に別れた共犯者の監視を開始するが……。

女性限定の25日間ヨーロッパ・ツアー旅行「ローズ・ツア」が企画された。

遠沢加須子は、夫の遺した中部光学というレンズ製造会社を諏訪で経営している。

新進の考古学者・高須通子は、石造物の調査のために訪れた奈良で、殺傷事件に巻きこまれた海津信六を助ける。

戦国時代。下剋上の世にあって、大内・尼子の強国間で知略謀略を尽くして大大名となった毛利元就(「調略」)。

不動産ブローカーの粕谷為三は、すし屋で元愛人の霜井登代子と再会する。

芦村節子は旅で訪れた奈良・唐招提寺の芳名帳に、外交官だった叔父・野上顕一郎の筆跡を見た。

日本橋の織物問屋・大津屋で正月恒例の七種粥を食したところ、主人と番頭夫婦が死んだ。

日航定期便福岡行き「もく星」号墜落事故の原因究明にあたる中浜宗介らは、事故報告書の「事故の原因は、乗員全員死亡により確認は困難で、航空管制の不手際その他、何らかの間接原因に基づく操縦士の錯誤」という記述のうち、“何らかの間接原因”と“操縦士の錯誤”との因果

エリートコースの販売課長が社員旅行の晩に行方不明となり、惨殺死体で発見された。

北海道の北浦市市長春田は、陳情上京中に失踪、数日後に武蔵野林で絞死体となって発見される。

大学で法制史を教える山根辰雄は、古書店で集めた本に、同じ蔵書印があることに気付く。

八月十六日、京都・五山の送り火の夜。興奮にざわめくホテルの屋上から、情事の相手が姿を消した。

前任地での仕事の引継ぎに行って来るといったまま新婚一週間で失踪した夫、鵜原憲一のゆくえを求めて北陸の灰色の空の下を尋ね歩く禎子。

２６歳の美容師・佐山道夫は、勤め先の美容室から独立するため、証券会社の社長夫人・波多野雅子と関係を持ち、出資にこぎつける。

深夜、東京の閑静な住宅街に一台のトラックが突っ込んだ。やがて起きる二つの殺人事件。

浦島・羽衣伝説をめぐる取材旅行の先々で起る奇径な事件。民俗説話や古代史と今日的犯罪を結びつけた長篇推理。

古美術商『草美堂』の主人・高尾庄平は62歳。商売は順調で30歳も年下の野村和子を愛人にしていた。

前衛水墨画の旗手として、一躍脚光を浴びた久井ふみ子は、ライバル滝村可寿子を蹴落とし、画壇の頂点を目指す。