表象詩人
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昔は「春琴抄」とか「海神丸」とか短めでも1冊の本で出された文庫本はいっぱいあり とても上品で感じの良いものだったが今はほとんど見かけない 清張は長編と短編の間位の長さの作品群が傑作ぞろいだが それは2作がまとめられこの「表象詩人」のように片方の作品だけが表に出る この場合「山の骨」の立場はどうなるのかといえば ほぼ無視されて立場がない状態になる しかし、表象詩人と山の骨を比べもたら、どちらも面白いけれど ちょっと小難しい表象詩人より、山の骨の方がスリリングでミステリアスでわくわくせられる 冒頭で作者が楽屋話のようなものを披露したあと佐藤春生「女人焚死」という珍しい犯罪小説を引用、 これは山菜摘みに山に出かけた老幼が、山中に薪を組んで焼死している女性を発見する導入で、実話だそうだ。(手軽に入手できたので読んでも見たがかなり怖い異様な話だった) そのあとおもむろに、同じく山中に骨を見つけた老幼がふもとに転げ帰る「山の骨」が始まる。山で発見された女の骨、数年前に病死した商店主の屋根裏から見つかった女の服、別の山で見つかった男の骨、出所した息子と出迎えた父の「山に行こう いや行かぬ」という会話・・絡みあう糸がなかなか見えない、一筋縄ではいかない語り口の物語がやがてするするっとつながってほどける感じが快感だ。 表題は「表象詩人」ではなく「山の骨・表象詩人」で良かったのではないだろうか。 | ||||
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先見の明というか・・これは実際にあったことだったのだろうか、だとしたら同じような状況に陥ると事件は起きてしまうものなのだろうか。 物語は物語であってほしいそれが実現してしまえばもう悪夢より悪い。夢物語じゃなくなる。あー夢でよかったというのがドラマや物語のいいところなのに、清張さんは今日の今だったら、なんて思うだろう。 若いころはスリルとサスペンスだったけど、何十年も経つと人の意識の水底からのひたひたが来る。 | ||||
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清張さんは自分のことを滅多に小説には書いていない。自伝めいたものを 書かないかとすすめられ筆を執ったが、読み返してやはり気に入らなかった。 書くのではなかったと後悔した。自分の半生がいかに面白くなかったかが 分かった。「私は一人息子として生まれ、この両親に自分の生涯の大半を束縛された・・ 16歳ころからは家計の補助に、30歳近くからは家庭と両親の世話で身動きできなかった・・ 私に面白い青春があるわけではなかった。濁った暗い半生であった。(「半生の記」) 「表象詩人」は、しかし、明らかにこの時代の作者と文学仲間を描いている。 語り手の「私」はしがない私鉄の下級職員。他の3人は小倉の陶器会社(現東陶)の社員。 共通の関心は文学ー作詩である。彼らがしばしば集まるのは爽やかな東京弁を 話す夫人のいる年長社員の社宅。蔵前高専出、会社が嘱望する若い技術者。 書棚には高価な新刊書籍が並んでいる。当然のことながら若い夫人の関心を惹くべく 青年たちの詩論は熱気を帯びていく。そしてある夏の夜、夫人が死体となって 発見される・・・ 最期の「事件」は読者サービスというか付け足しのようなもので(あるいは実際に あったのかもしれないが)この時代の地方の文学青年たちの姿を哀惜し描くことに 作者の主眼があったのではないか。当時の作者の住まいは作品に出てくる紫川、 陸軍兵器廠、篠崎八幡に近く当然旧懐を懐かしむ筆運びとなっている。 大正の初めには詩壇の寵児だった白秋の人妻姦通事件があり世間を大いに沸騰 させた。これもこの作品の伏線だろう。 | ||||
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本巻は「黒の図説」という通しタイトルのもと「生けるパスカル」「遠い接近」 「山の骨」「表象詩人」「高台の家」の五作品を収録。いずれも「週刊朝日」に 連載された力作ぞろい。入手をお勧めする。 いわゆる「私小説」というのは自分の体質には合わない。そういう素材は仮構の世界に 作り変える。その方が、自分の言いたいことや感情が強調されるように思える、というのが 清張氏の説である。骨の折れる一日の仕事の後、眠りにつく束の間を癒す時に読む小説は まず面白いものでなければならない。 興味深いことに「表象詩人」と「遠い接近」には松本氏の個人的体験が色濃い。前者は小倉の 文学青年時代の交友、後者は34歳にして召集を受け衛生兵として朝鮮に従軍した体験が基に なっている。戦争を主導した政府・軍部を真っ向から批判するというより、一枚の「赤紙」で 人生も家族も悲惨な運命をたどることになるしがない生活者の視点で物語られる。 昨今の浮薄で危険な好戦的風潮に踊らされているとしか見えない若年層ーいわゆるネットウヨ諸君も 願わくは「遠い接近」で描かれたかっての戦争・軍隊生活の内面をよく知ってもらいたいと思う。 何度も戦慄し気が重くなった。時代がどう進もうと人間は進歩しない。危機における人間集団では、 保身、暴力、幹部の怠慢、弱者虐待がむきだしとなる。 かっての国民は赤紙が届けば黙々として「名誉」の出征に赴いた。だが兵士不足の戦争末期、駆り出される高年者をいかなる手続きで選定したのか。それを追跡し責任者に復讐を果たすというのが、後半のストーリー。少々強引なミステリー仕立ての感があるが。 いずれにせよ前半の軍隊生活、戦後の闇市時代が活写され重厚な作品となっている。 | ||||
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個人読書履歴。一般文学通算217作品目の読書完。1983/11/10 | ||||
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