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Tetchy さんのレビュー一覧
Tetchyさんのページへレビュー数1433件
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読み始めてから200ページ辺りまでは前六作までに強いられた状況理解の困難さが全くなく、加速する物語に狂喜していたが、それ以降中だるみを憶え、そのまま終末を迎えたような感じだ。
犯人は予想外ではあるが真相は半ばで自らが仮説した通り。そのせいで物語に失速感を感じたのかもしれない。 人前では現実を直視しない素封家として振舞っていた彼女が実は常に過酷な現実に対峙せざるを得なかったために起こった憎悪が招いた悲劇。嗚呼、痛々しい。 |
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内容は純本格、文体はハードボイルド調と、実に島田荘司らしい仕上りになっている。
今回の目玉は2つ。 まずは吉敷物とは思えぬほどの超絶技巧を凝らした大トリックの殺人。とは云え、トリックの内容は後の御手洗物を読んでいる身にとっては十分予想のつくもの。ただそれを吉敷が解くというのが珍しい。 2点目はやや没個性的だった吉敷の個性、存在感がいつにも増して顕著だったこと。通子の存在が不屈の精神を幾度となく蘇らせ、熱い魂と言葉を持った存在にまで押し上げている。 |
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実家、列車内と、凡そ読書するには劣悪な環境の中、また父親の危篤とそれによる心労とで、最早、読書とは呼べない、書かれた活字だけを追うことも屡だったそんな中、頭に入っていないと思いながら最後で明かされる真相がピタピタと頭の中で当て嵌まっていくというその作者の手腕にただひたすら平伏。
今回は本当に作者に対して申し訳ないと思った。 ただ題名は、その内容とあまり合致していないのでは? |
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P.D.ジェイムズにしては全く異色の、子供の生まれない未来の地球を舞台にした物語。何故子供が生まれないかの謎を解明するとか、その設定でしか成立し得ない事件の解明というようなシチュエーション型ミステリではなく、あくまで世界を設定した上で繰り広げられるヒューマン・ドラマを描いている。
迎える結末はこういった設定で容易に予想されるものであるが、ジェイムズが敢えてこのような母性に満ちた物語を紡いだことに興味を覚える。 |
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押し寄せる睡魔に半ば勝ち、半ば負けながらの読書だったため、ほとんどストーリーを把握しないまま読み進んでいったにも拘らず、最後の章でバタバタ、と不明だったピースが嵌め込まれ、全体像が浮かび上がる所が凄い。
今回は終わってみれば実はサイコ・サスペンスでロス・マクドナルドの心理学への興趣が色濃く表れている。 また、最後の章の盲目の母の何気ない一幕で、無力だと思われていた存在が実は絶大なる支配力を持っていたという畏怖を表す所もまた印象深い。 |
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ウェクスフォードを外側から描く、ウェクスフォード物の異色作でどちらかと云えばノン・シリーズに近い。しかし、ウェクスフォードが登場人物の目にどのように映っているのかが垣間見れて面白かった。これほど影響力の強い人物だとは思わなかった。
主人公の牧師、アーチェリーをして「あの男は神の権化」とまで云わしめるのは過剰なる賛辞だと思うが。結局、「事実」はなんら変わらなかった。ただ「真実」が無機質な人間2人を変えた。 レンデル物では珍しい、爽やかな読後感だ。 |
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浅い、と思った。
ブラッドショーの苦悩、トム・マギーの苦渋、ドロシー・マギーの狂気、そのどれもが響かなかった。 最後の4ページで一気呵成に暴かれる真相に唖然とさせられたせいで、まだ頭の中が整理されていないのかもしれない。だが結末で憶えた戦慄は『象牙色の嘲笑』の方が上。 今回はドロシー・マギーの失踪に始まった人物相関が完全に遊離してしまったのが残念。マクドナルドは、ロイ・ブラッドショーをテリー・レノックスにしたかったのかもしれない。 |
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今回も彼は完膚なきまでに質問する。読んでいるこちらが当惑するほどに、個人の領域に立入る。そのあまりある執拗さは、終いには犯人が「なぜきみはおれを苦しめるのだ」と身震いさせられるくらいまでにもなる。
だがしかし、そこまで行いながらも彼の影は見えない。犯人は最後、足枷のように影を引き摺るのに、彼には影すら見えない。「質問者」である以上に「傍観者」である所以だ。 真相は戦慄を憶えた。しかし、未だに謎なのは、被害者は何を「嘲笑」っていたのだろうか? |
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古き良き時代の冒険活劇を匂わせ、また主人公を活発で美しい女性に設定したことで、その万能さもあざとく映らず、快い。それは自分に女性崇拝の精神が宿っていることに起因するのかもしれないが…。
採点は微妙だ。元来ならば五ツ星クラスだが、新訳版であったがための読みやすさ、さらに上記にある理由、それと二世紀を隔てて各国から信じ難い遺言を便りに再開するという展開が私の胸を打った。そういった理由で七ツ星とさせていただく。 |
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連続殺人鬼の登場をメインの殺人事件の単なる小道具として扱う辺り、やはり大作家の構成力は只ならぬものがあるなと感心したが、終わってみれば犯人は予想外だったけど、動機としては単純なもの。いや寧ろ深くまで語られなかったため、抽象的であり浅薄だ。
今回、読んでいて気付いたのはアダム・ダルグリッシュという存在を作者は暗鬱な日常性から解放する導き手に想定しているのではないかということ。悲劇が繙かれた後、関係者それぞれに変化が扉を叩いた。 |
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愛に飢えた人々が家族という一番小さな、そして身近な社会集団を形成した時、こんなにも哀しい事件が起こるのか。
愛されるという事を欲望という形で求めるが故、視える物も視えなくなり、無我夢中に貪欲なまでに模索し、踠く。一番手に入れたかった父親の愛を形として求めたがため、実感できなかった娘。その事実を何もかも無くしてしまった最後に告げられる残酷な結末。 終わり間際に真相通告人として太陽のような娘を選んだ作者の意図は何だったのだろうか? |
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歪んだ愛情が織成す悲劇、いや正直な気持ちを押し殺したゆえの反動と云った方が正解か。
現象はあまりにも単純。2人の男と1人の女の死。犯人はしかも1人。しかし、その1人を炙り出すための炎は関係者各々の魂を苦く焦がし、また探偵自身も自らを焦がす。だが、あくまで彼は傍観者の立場を貫く。だから慮る事もせず、また望むのであれば自害の手助けをもする。 現時点では7点だが、我が胸に徐々に立ち上る感慨は治まりそうにない。 |
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