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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数745

全745件 401~420 21/38ページ

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No.345:
(6pt)

放課後デッド×アライブの感想

高校生達が謎の現象に巻き込まれて、理不尽な死が待つデスゲームに参加させられる話。
校内放送にて謎のボスからゲームのお題がでるわけですが、ルールをアレンジした神経衰弱など内容が身近で分かりやすく、読者が混乱しない作りはよかったです。
序盤のゲーム内容や雰囲気としては何だか軽い話だなと思っていたのですが、中盤あたりから戦略や人間関係の心理面がでてきて面白くなりました。
バトルロワイヤルのような相手を出し抜いて殺してやろうというデスゲームではなく、理不尽に巻き込まれた状況で、友達を殺したくない、何か傷つけない方法はないのかと、常に模索する登場人物達の心理面がよかったです。こんな現場に巻き込まれなければ普段は仲のよいクラスメートだったんだとよく伝わりました。
雰囲気は漫画『神様の言う通り』に似ている感じと言えば伝わりやすいかな。結末もよくある落とし所で既視感があり、新鮮な刺激がなかった事が物足りませんでした。真相の目的については、内容に齟齬が多くてちょっとすっきりしない話でした。

▼以下、ネタバレ感想
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放課後デッド×アライブ (角川ホラー文庫)
藤ダリオ放課後デッド×アライブ についてのレビュー
No.344:
(6pt)

うさぎ強盗には死んでもらうの感想

角川カクヨムWeb小説コンテストのミステリー部門大賞作品。
この大賞で注目というより、京大ミス研の学生が獲った所で気になった作品。web小説じゃ軽いだろうな…でも京大ミス研ならしっかりしてそうな安心感アリ。WEBでも読めますが、ちゃんと編集が入って整っているだろう文庫で読書です。

とある場所で、殺し屋、泥棒、人身売買関係者、など、癖のあるキャラクターのエピソードが交差し、ミステリーらしい驚きの背景や繋がりを感じる作品でした。表紙通り、雰囲気がアニメっぽいのでその辺りが大丈夫な人向け。

ネタバレではないと先に伝えたうえで、ちょっと思うところとしては、様々なエピソードが繋がって、実はこうだったのかとか、読後に再読して新しい発見があるのはよいのですが、それらが仕掛けとして狙った感じはしませんでした。読者をうまく誘導して驚かせるというより、話がバラバラで理解ができないまま進み、あとで解説を受けて納得するような印象。「やられた!」ではなくて「そういう事だったんだ」という感覚。散らばった話をまとめる難しさを感じました。

うさぎ強盗が12歳の設定って必要だったのかな。16ぐらいの方がなんか合ってました。強すぎ。キャラクターは一之瀬が好みです。と、なんだかんだ書きながら、2度読みもして楽しませてもらった作品でした。


▼以下、ネタバレ感想
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うさぎ強盗には死んでもらう (角川スニーカー文庫)
橘ユマうさぎ強盗には死んでもらう についてのレビュー
No.343: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

孤狼の血の感想

濃い作品を読みました。とても惹き込まれて面白かったです。

警察小説は苦手で敬遠がちなのですが、推理作家協会賞受賞作品という事で手に取りました。著者作品を初読書。

これは警察小説というよりヤクザもの。そのヤクザと繋がっている警官が上司である新人の視点で描かれる物語。
状況が何も分からない新人視点というのは読者と気持ちがリンクしており、世界観に入りやすくて良いです。上司との対面、ヤクザとの対面、序盤は新人日岡とともに読者も非常識な世界へ足を運んでいくわけです。正義感溢れる日岡は、上司のヤクザとの繋がりや違法捜査を目の当たりにしながら、悩み葛藤するわけで、読書中は同じ心境でした。読み進めていくにつれ、徐々にヤクザや上司に魅了されていくのですが、これはそれぞれのキャラクターがとても良いからですね。正義と悪のキャラが分かりやすいので、ヤクザも上司もなんとかしてくれる頼れる安心感と期待が感じられて好んでいきます。
人情的にも面白いですが、本筋は殺人事件解決の捜査と、関わるヤクザ抗争の一発触発のハラハラ感。これも面白い。まぁ、個人的にはヤクザ抗争はトントン拍子で収束した感がありましたし、期待するミステリっぽくはなかったので最近の推理作家協会賞はエンタメ系かなと思いました。ただ、読後感の良い主人公の物語という事で、とても楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子孤狼の血 についてのレビュー
No.342: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

全滅系CCの本格モノ。十角館のオマージュにも感じる

帯コピーが "21世紀の『そして誰もいなくなった』"。
また釣られるかなぁという軽い気持ちで手に取りましたが、読後は帯に偽りなしで大満足!

『そして誰もいなくなった』、『十角館の殺人』といったクローズドサークル(CC)物。事件中と事件後の2つの時間軸をずらした物語が交互に進んで行きます。
もう出尽くしたと思われたCCの舞台設定は、80年代のSF空想世界を新しく構築。懐古主義な読者も楽しめる。これはとてもよいです。

ネタバレではない導入部からですが、事件後パートで提示される、現場は明らかに他殺なのに犯人不明の関係者全滅型というのがそそります。全員死んでる現場で何が起きたのか。もうこの設定だけでワクワクでした。
実際な所『十角館の殺人』が好き過ぎる気持ちが伝わるオマージュ作品な感覚を得ました。なので、この手の本が好きな人へはオススメ。

私個人が十角館からミステリにハマった口なので、それ系の再来を思わせる、読みたい本が読めた充実感でいっぱいでした。楽しかった。

▼以下、ネタバレ感想
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ジェリーフィッシュは凍らない (創元推理文庫)
市川憂人ジェリーフィッシュは凍らない についてのレビュー
No.341: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

シャドー81の感想

本書購入後、本の厚みと登場人物一覧の名前が頭に入らずで、しばらく積読状態でした。
ただ、読み始めてみると人物の登場の仕方が区分けされていて把握しやすい。色々と杞憂でしたね。

犯人視点を含む倒叙ミステリで、序盤は何を計画しているのか読めない『犯行の準備』が見どころ。特殊な船を購入したり、マネキンを用意したりと、謎に満ちたワクワク感が楽しかったです。あらすじにあるハイジャックシーンだけを描くのではなく、その犯行の準備や苦労をしっかり描く本は中々珍しいかも。登場人物紹介や舞台背景のベトナム戦争や政治的内容を描いているにも関わらず、さらっと読めてしまうのも○。

ハイジャックや戦争という単語内容に対して殺伐とした雰囲気がないのが凄い。中身は爽やかです。終わり方も綺麗に閉じて巧い。
良書を読んだって気分になり満足でした。

▼以下、ネタバレ感想
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シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)
ルシアン・ネイハムシャドー81 についてのレビュー
No.340:
(6pt)

恋する寄生虫の感想

今作も不思議な世界観で楽しめました。
他人から見たら不幸の男女の恋愛模様で毎回安心して楽しめます。本作は非ミステリの恋愛小説でした。

今回は過去作に比べて説明や解説が多い印象でした。個人的に著者の本は登場人物達の心情や周りの情景を味わう感覚が好きなのですが、本作は寄生虫やコンピューターといった現実世界に存在する内容の解説が多く、雰囲気を味わうというより学習するような読書でした。ここは好みに合わずでした。

説明がしっかりしていたので、要素要素が最後に繋がるのかな?と思わせておいて活用がよくわからず。例えば、主人公高坂が引きこもってコンピューターウィルスを自作して、それらの系統はこんなのがあると詳しく書きますが、ただの自己紹介で終わってしまうなど。クリスマスシーンもラストに何か効果的に使うのかと思ってしまってました。そういう本では無かったという事で。

さて、ラストの締めくくり方は定番ですね。こういう所は安定して楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)
三秋縋恋する寄生虫 についてのレビュー
No.339:
(2pt)

侵蝕 壊される家族の記録の感想

書店で衝動買いした1冊。帯コピーに「ラストは思わず泣ける!」とあったのですが、釣られてしまった事に泣けてきました。最近の帯は信用できないと強く思った1冊。

本書の趣旨は『一家まるごと洗脳』ですね。その過程は大変よく描かれていて楽しめました。参考文献にもその事が明記されています。気付いたら侵食されたいた様がハッとさせられます。ホラーレーベルなのでその手の本をお探しならアリでしょう。

個人的好みとしては、まったく琴線に触れずでした。被害者の家族が平和ボケで、お花畑過ぎて合いません。子供が貧しく見えようと、相手の家族が何か抱えてようと、さっさと追い返そうよと思いながらの読書でした。

ラストは帯にある通り、うまく話をまとめた感があるのですが、ホラーレーベルならもっとドロっとした結末でやり切って欲しかった気持ちもあります。
ミステリ的な仕掛けもあるのですが個人的には合わずでした。

▼以下、ネタバレ感想
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寄居虫女 (単行本)
No.338: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

仮面病棟の感想

書店でいっぱい並んでおり、帯の「どんでん返し」「一気読み」のコピーにつられて購入。
読後の正直な気持ちは、新鮮さや個性的な尖った要素が見あたらず、なんとなく想像できてしまうネタが続く物語でした。

ただ、個人的に刺激がなかっただけで、作品自体はミステリとして無駄なく整った作品でした。謎解きの要素をパズル的に散りばめていたり、緊迫感を出すために強盗の設定を加えたりと、お手本の様。文章も読みやすかったです。

現役医師の著者なので、医療に関する事は雰囲気だけでなく、仕掛けにも活用するなど独自路線の驚きが見てみたいなと思いました。
仮面病棟 (実業之日本社文庫)
知念実希人仮面病棟 についてのレビュー
No.337: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

図書館の殺人の感想

裏染天馬シリーズ長編第3弾。
いやー面白かったです。ロジカルな推理と犯人が明かされるシーンはお見事でやられました。
好みなのもありますが、シリーズ通して外れが無いのが嬉しい。

学園ミステリとして登場人物が増えてきました。なので人物を把握する上で、本作単体で楽しむのはちょっと難しく、1作目ぐらいは事前に読書してあると良いです。

ロジカルな推理を得意とした本格ミステリでありつつ、学園風のドタバタや笑いも交えているのは楽しいです。今回はクスっとする所が多かったです。序盤、学園内での裏染登場シーンで颯爽と推理を披露するも、女子生徒に「女の子の靴からそこまで考えるなんて変態みたい!」と突っ込まれるのは裏染のキャラクター性がはっきりしているからですね。よい探偵役です。金田一少年系といえばそうですが、アニメネタで現代風にアレンジされているのがいい感じ。

さて、事件は図書館での殺人。そんな所で事件起こさないでよ。とか、科学捜査をすれば直ぐに解決してしまうのでは。。。とか思う所がありますが、そういうのは気にしないで楽しむ作品です。現場の手がかりから論理的に事件の真相を導く様。探偵の奇怪な行動も、あとあと納得と驚きに変わる刺激。こういうのがいいんです。

一見、地味な殺人事件なのですが、推理パートで面白く読ませちゃう作品は凄いなと思います。
裏染の過去もでてきて日常パートも充実してきました。次回作も楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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図書館の殺人 (創元推理文庫)
青崎有吾図書館の殺人 についてのレビュー
No.336:
(7pt)

複製された3つの自分の精神体。犯人はどの自分なのか?

ソウヤー4作目の読書。だんだんと著者のエンターテインメントの傾向が感じられてきました。
本書もSF+ミステリ+男女模様。

男女模様は熟年夫婦の不倫問題という人間臭い話。男性側の辛い気持ちがとても伝わってくる。作品全体を包括していて巧いつくり。

SF要素は、人間の死をスキャンして魂の存在が確立した世界。人の脳味噌をスキャンしてニューラルネットワークを構築する事も複製も可能です。
人間の死とは何なのか。医学的な死、自然死、精神だけがコンピューターに存在する世界が面白く読めました。この手の話は好みですね。

ミステリ要素は、自身の脳をスキャンして生み出された3つの人工知能による事件。1つ目は自身の複製であるオリジナルの精神。2つめはオリジナルから死の概念を消去した不死の精神。3つ目は肉体の概念を消した死後の精神。
この人工知能のどれかが、殺人事件を行うわけで、どの自分が犯人か?という特殊設定が面白い。

これらが巧く混ざり合って、読ませるエンターテインメント作品になっているのは毎度凄い。特殊状況なのでオリジナリティ強い刺激が心地よいです。
ただ、ちょっと点数が低いのは、古い作品特有の既視感の為です。90年代以降、様々なSF作品の発展により人工知能の事件はちょっと見慣れてしまったかなという心境。

人工知能の犯人ものならデビュー作の『ゴールデン・フリース』の方が今読んでも発想が飛んでいて面白いです。
本書は、生(性)や死という人間の存在に趣がある作品として楽しめました。

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ターミナル・エクスペリメント (ハヤカワSF)
No.335: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

800年後に会いにいくの感想

☆8+好み補正1。
予想を反して壮大なSF物語でした。読後感も素敵で面白かったです。

2人の主要人物は、文系大学生と理系コンピューターの天才美女。この設定から序盤はキャラ物ラノベ雰囲気。著者の他作品は、刑事もので硬派だったので意外でした。
そして始まりはクリスマスイブの夜、一人寂しくPCの監視バイトをしていた学生の元に、未来からの救難動画が届くわけで、ファンタジーSFものの作品かと思う印象を受けました。

ですが、直ぐに考えが改められます。
動画検証にて、ファイルスタンプは後から変更可能だし、そもそも800年という年月は人類の言語体系が変わり言葉が通じないからフェイクだ。など、検証方法や説明内容に専門用語が出て現実的かつ本格的。軽い作品かと思いきや内容がしっかりしているぞと、頭を切り替えて読書を進めていきました。

どんな話になるかはお楽しみとして、生命の起源や、命に関する哲学やら、黙示録の見立てやら、一途な想いなど、恋愛+SF+ミステリを巧く融合し、ライトに楽しめるよい作品でした。

余談で、
実写ではなくアニメーション映画として見てみたい。客層も合いそう。そんな事も思いました。

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800年後に会いにいく
河合莞爾800年後に会いにいく についてのレビュー
No.334:
(7pt)

幽霊には微笑を、生者には花束をの感想

幽霊を扱ったライトノベル的なミステリ。

心霊現象を全く信じない高校生主人公が、友人の付き添いで廃屋調査に参加した所、自分だけに見える女の子と遭遇する。幽霊に付きまとわれる中、自宅で妹にも見える事がわかる。これを機に兄妹で記憶の無い女の子の幽霊の相談に乗る事にする。

まぁ、軽い学園風のラノベなのですが、現実的な主人公の各種実験がミステリの推理考察的で面白い。
例えば、妹にも見えると分かった際、「同じものが見えているのか?」互いに絵を描いて認識している存在の検証をしたり、幽霊の服装や装飾物から、生まれた時期や家族などを推察したり、この幽霊は脳にどういう影響を与える存在なのかを定義する過程が面白い。

『本格ミステリ・ディケイド300』にて本書を知った次第ですが、学園幽霊ものなのに思考や事象の結びつき方がミステリ模様なので、軽い気持ちで読みながら十分楽しめた物語でした。

結末もハッピーエンドでベタベタ感ありますが、それも好みです。

▼以下、ネタバレ感想
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幽霊には微笑を、生者には花束を (ファミ通文庫)
飛田甲幽霊には微笑を、生者には花束を についてのレビュー
No.333: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

さよならドビュッシーの感想

個人的に「ドビュッシー」の作品は「ゆったり」や「やさしく包み込むような」曲の印象でして、辛く孤独になりたい時に触れるような作品で気持ちが沈みやすい。本書の知名度は把握しながらも中々手に取らなかったのは、そんなドビュッシーに対する個人的な感覚意識からで敬遠していました。
シリーズとして冊数を重ねているのでそろそろ読もうと手に取った次第。読んでみると、力強いドビュッシーの演奏表現にびっくりでした。特にアラベスクは、自分のイメージが壊され違和感を受けつつも、表現の仕方でこんなに熱く描けるのかと新鮮な視点をもらった気持ち。久々に曲を聴き直してみようと読後感じた次第。

音楽を演奏する者、鑑賞する者の思考がとてもよかったです。指運びや姿勢等、小説でここまで雰囲気が伝わってくるのは久々でした。なんというかどれも気持ちが昂るような熱さがありました。スポコンの様。

そんな具合で、ミステリよりも音楽小説として楽しめた作品です。
ミステリ要素については何というか偶然や悲劇の物語でこれは辛いなと思って好みに合わずでした。

食わず嫌いで読んでみたら良かったのでシリーズを追っかけようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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さよならドビュッシー (宝島社文庫)
中山七里さよならドビュッシー についてのレビュー
No.332: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?の感想

非常にシンプルで必然的な構成を200P台にまとめている本格ミステリ。
万人向けではない小説で、ドラマや人情を求める人には不向き。魅力的な事件や謎のガジェット、構成の面白さが好きな人には刺さります。個人的にとても傑作。

証拠隠滅を得意として完全犯罪を行っていた殺人鬼の佐藤誠。
自供された86件の殺人の中で、警察の目に留まった特徴的な事件が遠海事件。
この事件では、二つの離れた位置にいる被害者の首が切断されていた。

証拠隠滅を得意としている殺人鬼が、何故死体を隠匿せず、かつ首を切断したのか?
タイトルにある通り、この1点のWhy done itで最後まで読ませる文章量が無駄なく良いです。構成が関係者によるルポルタージュで行われているのも特徴的な要素です。

理由だけに焦点をあてて期待させるとそうでもない事柄なのですが、この問題や、殺人鬼の印象、本書の取材を通して書かれたルポルタージュ形式。それらが合わさって生まれる本書は素直に巧い!と納得できる本格ミステリでした。

▼以下、ネタバレ感想
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遠海事件
No.331:
(3pt)

ゴースト≠ノイズ(リダクション)の感想

好みの問題で、相性が悪かった作品でした。

主人公は、生きているのか?幽霊なのか?どっちつかずのモヤモヤの読書。そんな中、同級生間のスクールカースト、家庭問題、小動物殺傷事件……。提示された複数の問題が何処かへ収束させるのかなと思いきや、必然性があるわけではなく、終始悲観した話の雰囲気要素となっていたのが好みに合わずでした。

読後の解説で腑に落ちたのは本書は多面性を持った作品であるという事。
ミステリではなく青春小説としてみた場合、プチいじめのような状況の中で、社会や同級生との関わりにおいて主人公がどう成長するかの物語を感じる事が出来る……かもしれない。まぁここは好みです。

好みの点としては、格言的な比喩が面白かったです。
短いバトンは落とせない。破れても傷つけずにおかない紙ヤスリ。等、独特な表現が印象に残りました。

元々電子書籍の自費出版物なので、編集して内容をまとめたというより、著者の想いが散りばめられている作品の印象でした。
ゴースト≠ノイズ(リダクション) (創元推理文庫)
十市社ゴースト≠ノイズ(リダクション) についてのレビュー
No.330: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

砕け散るところを見せてあげるの感想

書店に大量に積んであり、帯コピーが「最後の一文、その意味を理解したとき、あなたは絶対涙する」という、興味がそそられる販売戦略。タイトルや印象的な表紙など戦略は成功ですね。
釣られて読みました。

読後に感じる気持ちは中々複雑で、何でこんな構成にしたのだろうという疑問でした。思い返して帯を見れば「意味を理解した時」とあるので、内容を理解しないと感動は得られないわけです。ミステリの最後のどんでん返しがあるわけではないので注意です。後味がモヤっとします。
ただ、とある仕掛けが施されているので「意味を理解した時」についての自分なりの考えをネタバレに書いておきます。

苦手で好み合わずの所は雰囲気でした。
序盤は「いじめ」を扱い重い雰囲気を作るかと思いきや、ギャグが多く含まれており明るくしているチグハグさが馴染めず。当事者や周りの状況がそんなに軽いものなかのかなと思います。重苦しいままの方が親身にのめり込めるのですが、飄々とギャグが含まれると気持ちが入らない読書です。ここは好みでしょうけど。

他、表紙の女の子の表情が一品ですね。不安とも優しさとも見える何かを秘めている表情がとてもよい。

▼以下、ネタバレ感想
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砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)
No.329:
(7pt)

いたいのいたいの、とんでゆけの感想

これで著者全作品読了です。ハマりました。死が絡む男女の不思議な関係は著者独特ですね。

本作は、出来事を「先送り」して一時的になかった事にする能力が現れます。
交通事故の死の瞬間を先送りにした女性が、残りの余命で私を苦しめた人たちを殺そうと復讐する話です。『三日間の幸福』でも余命が決まっている時、残りの時間何をするか?というお話でしたが、本作は悪意に染まった復讐とそれを遂行する男女の関係が著者の不思議な味わいで楽しめました。
鬱屈していて痛くて嫌なんだけど、少し暖かさを見せるといいますか。普段何気ない事がマイナスの場を作る事で感じ取れるような気がする。そんな感覚でした。

本作は残酷で描写がキツイ事柄が描かれていきます。
作風が人生に悲観している主人公の物語なのは相変わらずですが、一番不幸で残酷な描写をしている作品でした。コンセプトの1つが「落とし穴の中で幸せそうにしている人」を描いたとあり、なるほどと思いました。
毎回、事柄を文章にすれば絶望的で不幸なのに、当人は幸せそうに描かれているのが凄い。

重い作品なので他作で作風を知った上で読むとよいです。本作を一番最後に読んでよかったです。
「面白い」というと感覚が違くて、著者の世界観に浸る作品で楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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いたいのいたいの、とんでゆけ (メディアワークス文庫)
三秋縋いたいのいたいの、とんでゆけ についてのレビュー
No.328: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

この闇と光の感想

書店で大量に面陳されていて「大どんでん返し」の帯。これはと思って手に取り、著者初読書。
読後の感想として、これはミステリの手法を使った耽美小説ですね。

闇の世界にいるからこそ希望の光を感じる事ができ、光の世界では見たくもない影が見えてしまう。
そんな心境を、素敵な文章で感じさせてくれる話でした。

予備知識ない方が楽しめる作品です。

▼以下、ネタバレ感想
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この闇と光 (角川文庫)
服部まゆみこの闇と光 についてのレビュー
No.327:
(4pt)

死の接吻の感想

「彼」と表記された犯人視点の倒叙ミステリ。この「彼」は誰なのか?という仕掛けを期待してしまう所ですが、中盤には明かされます。本作は謎解きミステリを期待するものではなく、青春サスペンスにちょっと謎を味付けした印象でした。
野心的な彼が令嬢を次々に虜にするのはうまく行き過ぎている感がありました。またその彼に惹かれる彼女達にも共感するような事はない為、気持ちの居所がなく、漠然と遠くから経緯を眺めているような読書でした。

時代を考えれば新しく話題になったと納得です。
現代でこの作品構成は色々な発展が行われている為、新しい刺激が得られず可もなく不可もなくでした。
死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)
アイラ・レヴィン死の接吻 についてのレビュー
No.326:
(7pt)

永遠の館の殺人の感想

シリーズ完結。本作はシリーズを読んできた人向けの作品。
連続殺人鬼キーラ―・エックスと何なのか?
その行動の異常性についての背景がしっかりと描かれている作品でした。
またその内容が納得できる範囲であり、かつ個性的な物になっているのが見事でした。

全シリーズを読んでみて、ミステリ単体として楽しめたのが0作目『白銀荘の殺人鬼』。
1,2,3作目は順番に読むのが推奨で、多少気になる点があっても『雪の山荘+連続殺人鬼+α』の楽しさで満足できる楽しいシリーズでした。

本書単品としては、舞台背景がとても面白かったです。
好みは人それぞれで薦め辛いですが個人的に楽しいシリーズでした。

▼以下、ネタバレ感想
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永遠の館の殺人 (光文社文庫)
二階堂黎人永遠の館の殺人 についてのレビュー