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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧

陰気な私は地球を回さないさんのページへ

レビュー数209

全209件 21~40 2/11ページ

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No.189:
(7pt)

あがり症だが、いつか結婚式でスピーチをしてみたいと思った。

ちょっとできすぎか?読了後にこの作品についてまず思ったのはそんなところだ。とても綺麗にまとめられているし、話の美しさはとても劇的だ。読んでいて正直照れ臭くなってしまうほど、ピュアな登場人物たちが「まっすぐに」話して生きていることが表れている。

実際の世の中に照らし合わせることができるほど忠実に再現されたストーリーから、政治やスピーチに興味を持たせてくれた。読書は心の安寧を得られる趣味だと思っているが、漢字や言葉以外のことが身になるのはこの一冊の特徴だ。人は誰でも人前でスピーチをする機会が1度や2度はあると思う。そんな時にこの本のことを思い出して、良いスピーチをしてみたいと思うかもしれない。実際に私は本作の影響を受け始めている。
本日は、お日柄もよく
原田マハ本日は、お日柄もよく についてのレビュー
No.188:
(8pt)

もっと知りたいアイスランド

その国のことを知るのにミステリーほど適しているものはない、とあとがきだかどこかに書いてあったが、たしかに本書はアイスランドという北欧にある小さな島国を知ることに一役買った。ファミリーネームを持たない国民で構成された、わずか人口30万人強の小国は独自の文化を持つ。その魅力を存分に感じることができた。ストーリーとしてもアイスランドという日本の地方都市にも満たない人口の少ない国であるからこその話であったのではないか。
なかなか馴染みのない人や街の名前が出てくるが、それがまた新鮮で旅行に行ったような錯覚にも陥らせてくれる。

ミステリーとしてもかなりの完成度だ。私の1番のお気に入り作家が同じようなテーマを持つ作品を書いているが、本書の方が何年も前に世の中には出ている。意外性は決してないが、物語に引き込む力は圧巻だった。エーレンデュルという警察官はどこかフィリップ・マーロウに似ているような気もするが、作風は決してハードボイルドではない。この主人公も私の中で輝いた魅力を放っていた。シリーズ物のようなので、他の作品にも手を伸ばしてみたい。

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湿地 (創元推理文庫)
アーナルデュル・インドリダソン湿地 についてのレビュー
No.187:
(9pt)

阪急電車への思い入れは格別になる

関西で最大級の鉄道会社である阪急阪神ホールディングス。その中でも阪急電車は特別であり、多くの人々にとって憧れの的である。そんな阪急電車の中でもあまり知名度のない、今津線を舞台にした物語が本作である。
今津線は宝塚〜西宮北口〜今津を結ぶ路線であるが、宝塚方面の電車と今津方面の電車は全く別のホームにあり、西宮北口で乗り継がなければならない。そしてそれぞれの路線が非常に短い。
この今津線沿線に住む人にとっては、各駅や街のイメージが手に取るように浮かび、非常に思い入れのある作品となるのではないだろうか。かくいう私は現在、この作品にも登場する西宮北口に住んでいる。そのため西宮北口の章では細かな描写がはっきりと伝わってくる。毎日通勤で使っているためそれは当然だろうが、一方でそれは阪急神戸線であり、今津線に乗ったことはたったの1度しかない。そういった点では西宮から宝塚にかけての新たな魅力を感じることができた。もう少しそっち方面にも足を伸ばしてみようと思った次第である。
もちろん阪急なんて乗ったことないといった人でも楽しく読むことができるだろう。なんとなく電車に乗っているが、電車に乗っている誰もが自分自身が主役の人生を歩んでいる、そんな当たり前のことも気付かされた。そのように様々な人生が交錯し、互いに影響を及ぼしながら物語は進んでいく。とても幸せな気持ちになれる一冊だ。
阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川浩阪急電車 についてのレビュー
No.186:
(3pt)

この作品の良さを感じるにはあまりに未熟だった

東日本大震災の被害を受けた街、そこの海に潜り失われた思い出の品々を探すダイバーのお話。
読了後の感想としては、あまり思いが作品に乗り切らなかった。東日本大震災当時、東北から遠く離れたところにいた私は、震災前後で日々の生活が大きく変わったところはない。多くの方が悲しみに襲われているところで、その気持ちを理解することが難しい状況だった。
そんな私であるからか、震災後の街を描いた作品にどうもピンとこないところがたくさんあった。あまりに私が未熟であるが故に作品の良さを感じられなかったと思っている。
ムーンナイト・ダイバー
天童荒太ムーンナイト・ダイバー についてのレビュー
No.185: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

筆者の自己満足が強い

地震が発生した時にファーストフード店にいた客達は、難を逃れるために店にあったシェルターの中に逃げ込んだ。しかし、そのシェルターは
入った人々の人格を入れ替える装置、「第二の都市」だった。
西澤保彦の考えるこの巨大な装置が、殺人事件を引き起こす。一体誰が?というよりは誰の人格が?といった趣だ。まあ、筆者の考えた装置をベースに彼が考えたアイディアで驚かしてくれるのだが、これは西澤保彦の自己満足でしかない。そういう意味では「7回死んだ男」に似ている。まるでマジシャンのようであったが、あまり褒め言葉ではない。

数日間のストーリーもあっという間に1日が進むし、殺人鬼はとんとん拍子で人を殺めていくしで、あっと言う間にみんないなくてなってしまった。人格転移も頻繁に起こって、信号機が変わるようなものだ。スピード感はものすごい。余計なことを考えずにすらすら読んで、西澤保彦氏の作品を楽しめるのはいい点だった。
人格転移の殺人 (講談社文庫)
西澤保彦人格転移の殺人 についてのレビュー
No.184:
(8pt)

現実と幻想の交錯のようだが

戦争に敗れた国の話を描いた本作は、あらすじからは全くストーリーが想像できず、読み進めていけばあまり伊坂幸太郎の作品とは思えないようなファンタジー感が新鮮だった。猫が主人公で、話し声が人には聞こえないというところは「ガソリン生活」に似通ってはいるか。

後進的なとある国は鉄国からの支配を受けるようになり、その中でさまざまな抵抗を見せながら、過去にあったクーパーと呼ばれる杉の木の怪物の話を混ぜてくる。そしてもう一つの軸が仙台の公務員である男がこの国の近くにさまよってしまい、猫から話を聞く場面だ。この2つがどう混ざり合うのか、いつ猫はこの男と出会ったのか、この辺りが注目してしまうポイントだろう。
正直オチとしてはイマイチでしかなかったが、それでも高評価とするのは斬新な世界観に引き込まれたことが全てだ。非常に面白く読めた。
夜の国のクーパー【新装版】 (創元推理文庫)
伊坂幸太郎夜の国のクーパー についてのレビュー
No.183:
(6pt)

古典らしい密室

ジョン・ディクスン・カーの作品で初めて読んだ、そして本作を読むまで唯一の作品であった「夜歩く」は全くもって面白くなかった記憶がある。そこから古典ミステリの巨匠である彼の作品には一切触れてこなかった。とはいえ密室といえばカーと聞くように、手を出さずにいる訳にはいかなかった。
そういった意味では本作も監視人による密室状態を作り出していることは「夜歩く」と同じだ。その結末には意外性がもちろんあったが、クオリティにおいては雲泥の差だった。これならもっとカーの作品を読んでみたいと思った。とはいえ相変わらず怪奇趣味というところは私の好みと合わないが…

これで決着か!というところから、まだまだ続けて驚かしてくれるあたりは、「Yの悲劇」を思い出した。
曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)
ジョン・ディクスン・カー曲った蝶番 についてのレビュー
No.182:
(4pt)

驚けない。

折原一作品は、「倒錯のロンド」以来2作目。まだ2冊しか読んでいないが、その作風に一定の特徴を感じる。とても登場人物の存在が薄いという点だ。淡々と進んでいき、キャラクターに感情移入することができない。今作は手記であったり作中作であったりと、いろんな文体を用いながら魅力的な謎を展開してくれているが、結末に全く意外性がなく想像通りに終わってしまう。それなりに長いのだから面白さは期待してしまうが、そこまでといったところか。
異人たちの館 (文春文庫)
折原一異人たちの館 についてのレビュー
No.181: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

日本のエラリークイーンとして

初めて有栖川有栖氏の作品を読んだ。その設定や他の作品タイトルからしてエラリークイーンの影響を受けているのだろうが、理論を整理して犯人を絞り込む様はまさに、エラリークイーンそのもののようであった。そして、エラリークイーンの作品と比べて(海外古典作品だからであろうか)、遥かに面白くそして読書に浸ることができた。本格物においてこれは非常に重要な点だと私は考えている。トリック重視でご都合主義だと言われたり、あまりに現実離れした内容であったり、何かと批判は付いて回りそうなものだが、この作品はただただ結末が気になりながら楽しい読書であった。これだけたくさんの登場人物がありながら一人一人の個性も残していたりと、読み物として非常に良かった。

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月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)
有栖川有栖月光ゲーム Yの悲劇'88 についてのレビュー
No.180: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

奇妙な世界観

どの短編も一級品が揃った一冊だと思う。どの作品もただならぬ雰囲気を纏っている。8作品を収録しながらも、それぞれの作風が全く異なっているので飽きることなく読めるだろうし、何かしら好みの作品があるに違いない。
軽やかにユーモアがある作品は、どこか天藤真の作風のように感じる。

本題作である「煙の殺意」も非常に良かったが、私の1番のお気に入りは「歯と胴」であった。
煙の殺意 (創元推理文庫)
泡坂妻夫煙の殺意 についてのレビュー
No.179: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

帰ってきたーー??

この「密室殺人ゲーム2.0」を読もうと思っている方のほとんどが前作を読んでいるとは思うが、これは必ず読んでおくべきである。前作のネタバレが書かれていることもそうだが、筆者としても前作を読んでいる前提で話が始まるからだ。
かくいう私はだいぶ前に「密室殺人ゲーム王手飛車取り」を読んだが、その内容を忘れた頃に読んでもその内容が蘇ってきた。こんなすごいトリックあったなぁと懐かしく感じた。

ちなみにここまでの2作品では、甲乙付け難い完成度を共に誇っていると思う。個人的な感想だが、この密室殺人ゲームシリーズはトリックそのものを楽しむというよりは、その事件の中身の意外性にただただ驚かされるものと思っている。そんなのありー?というのもあれば、現実離れして無茶苦茶だと思うものも多々ある。批判も当然出てくるが、この作品の珍妙なところはやはり殺人者たちがチャットをしていることに全てある。

▼以下、ネタバレ感想
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密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)
歌野晶午密室殺人ゲーム2.0 についてのレビュー
No.178:
(5pt)

素晴らしい文章のオンパレード

ボリュームでいうと文庫本で550ページ程度だが、読了までにとても時間を要した。それも第1部や第2部があまりにも退屈だからだ。死刑宣告を受けた連続殺人鬼の告白本を書く売れない作家のお話だが、盛り上がるまでが長い。そして、結末としても驚くほどの物でもないといったところだ。
それでも評価すべきポイントは多々ある。主人公が作家であり、読者に語りかけるかのような文体は新鮮味があり良かったように思う。翻訳物ではあるが、これほど美しい文章にたくさん触れることができる作品は珍しいのではないか。そして、主人公が数々のペンネームを用いて書いてきている(と作品内で述べられている)作品の一部を所々で挟み込んでもいる。これが非常に読み応えがあり、むしろこちらを1冊の本にまとめて欲しかったぐらいである。

こういった作品を読み終えると、とてつもない疲労感が残るのにもかかわらず、また何か読書をしたいと思わされるから不思議だ。
二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
デイヴィッド・ゴードン二流小説家 についてのレビュー
No.177: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

無理矢理が過ぎるかな

タカチが高校生時代の話というのも非常に良かった。いつものメンバーがほとんど出てこないので、その辺りの物足りない感じも若干あるが。でもやっぱり、キャラクターを通しての様々なモノの見方という意味で、このシリーズは傑作だと思う。

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スコッチ・ゲーム (幻冬舎文庫)
西澤保彦スコッチ・ゲーム についてのレビュー

No.176:

螢 (幻冬舎文庫)

麻耶雄嵩

No.176: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

小説の枠にとらわれない新しさ

話の導入がオカルトサークルの合宿ということで、序盤はかなり退屈した。というのも、私自身オカルトには一切興味関心はないからだ。延々と続く記述に飽きかけたが、読み終わった感想としては非常に好印象だ。恐ろしい雰囲気の中でいつ殺人が起きるのかとても緊張感があり、没頭して読書することができたのが良かった。

正直あまりにも人工物めいているとも思う。本格物であるのに細かなポイントについて曖昧であることは確かに気になる。しかしそれでも、その他のインパクトでぼかされてしまったような感じだ。

ちなみにだが、登場人物が長崎県や石川県の地名であることには、意味はなかったようだ。

▼以下、ネタバレ感想
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螢 (幻冬舎文庫)
麻耶雄嵩 についてのレビュー
No.175:
(6pt)

いつもとはちょっとだけ違う

銀行にはこんなポジションもあるのか!と驚かされた。池井戸小説では勧善懲悪の権現のような主人公が潜んだ悪者をやっつけるのがお決まりのパターンだが、それに特化した仕事を与えられたのが本作の主人公だ。いつものように一行員が仕事の片手間に、悪の調査を行うのではない。その意味でも誘拐犯と対峙したりといつもより緊迫感のあるストーリーだった。
いつもワンパターン、といっては楽しく読んでいるのに失礼だが、話の広がりはあったかもしれない。

全体としては、各話余韻のある終わり方が印象的であった。この後どうなったのかもう少し書いて欲しい話も多々あったが、小説としてはこれぐらいの方が良いのかもしれない。
新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)
池井戸潤銀行総務特命 についてのレビュー
No.174:
(2pt)

なんじゃこりゃぁあ!

「ドミノ倒し」という感覚とも少し違う気がする。決して何かの作用で別の何かが引き起こされるイメージではない。あくまで、連続殺人ではないのか?といった複数の事件を調査しているだけである。まあこの小説は手にとって誰もが、こういうのが読みたかったのではないという感想を持つのではないだろうか。貫井徳郎作品としてはあまりにも軽すぎるのだ。

軽やかにユーモラスに描かれているのはいいのだ。特に読んでいて苦痛なこともなく、スラスラと読むことはできた。ただ読み終わって抱いた感想が「なんじゃこりゃ」である。ある意味、大どんでん返しだ。期待は当然裏切られたが、それも悪い意味でだ。ユーモラスな作品だと、これだけ読後に印象が変わってもそれ以上の何かはなかった。
ドミノ倒し
貫井徳郎ドミノ倒し についてのレビュー
No.173: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

これほど脱線することがあるだろうか

なんと難解なことか。チャンドラーも3作目、分かりづらい内容であることは十分承知していたが、前2作を越えるわかりにくさだったように思う。
希少価値の高い金貨がなくなり義理の娘が盗んだと疑う夫人が、マーロウに金貨を取り戻すよう依頼するところから物語は始まる。ところがその後大きく脱線しながらいろんな登場人物が入り乱れ、突然殺人事件に巻き込まれる。いったい今何を読まされているのかわからなくなった。最初の数十ページあたりで、金貨を取り戻すという本筋はとうに忘れてしまっていた。それに加えて「高い窓」たるものはいつまでたっても出てこない。
読んでいる物語が、そして決着がどうなるのか全くわからないままラストに至り、なるほど難しいクイズの答えを見るように物語は終了した。今作が特にわかりにくいのは、何人かの錯乱状態の人間が物語をかき乱しているからだと思う。でも3作目でわかってしまった気がする。チャンドラーの作品は何となくで、その雰囲気を楽しめば十分過ぎることに。
高い窓
レイモンド・チャンドラー高い窓 についてのレビュー
No.172: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

批判の的になるのは避けられない

御手洗潔シリーズの作品を順番に読んでいるが、ここ何冊かは持ち運びに不便なぐらいに分厚かった記憶がある。今作もまた然り。正直厚い本は読書が億劫になるが、島田荘司の仕掛けがどのようなものか気になりまた読んでしまう。
今作もやはり大掛かりなトリックが新鮮で、毎度のごとく著者のアイディアには感服させられる。だから色々批判をしながらも読んで良かったと思わされる作品しかないのだ。とはいえ今作はとりわけ追及したいポイントがあった。これは多くの読者が思うことだろう。著者の大きな試みゆえに、少々都合のいい展開が垣間見れるのはどうなのか。そのあたりが作品としての価値を数段落としてしまっているのかもしれない。

まずはじめに、ながーい手記から作品は始まる。ここだけで1つの中短編小説ぐらいのボリュームだ。これまで暮らしていた湘南と全く異なる世界がそこにある。とても奇怪で何が起こっているのか、SFの世界に入り込んだかのような内容であるが、これをどのように解釈するのか楽しみにしながら読むことができた。今までの御手洗潔シリーズであれば当然論理的な説明を与えてくれるのだろうとは想像ができる。
結論としては、なかなか意外性のある力技で私としては腑に落ちた。ところどころ強引であるのも否めないが、これだけ壮大な謎を用意してくれるのだから読者としても寛容になるべきかもしれない。
眩暈 (講談社文庫)
島田荘司眩暈 についてのレビュー
No.171:
(7pt)

この人はやっぱりすごい!

朝井リョウ、最近私がハマりつつある作家である。人の感情を書かせたらこれほど共感できる作家もいない。そして表現の妙。なかなか言葉にしづらいあの感覚を文書とするならこうなのか、それが正解なのかと納得させられてしまう。小学生という周りのあらゆる事象に敏感な時期を描いたこの作品とのマッチはもちろん良かった。
決してストーリーに特別なひねりがあるわけでもないのだが、読んでしまえば浸ってしまう。小学生のストーリーってどこか俯瞰してしまうという私の感覚は全くなかった。しっかり感情移入できるから不思議だ。
世界地図の下書き (集英社文庫 あ)
朝井リョウ世界地図の下書き についてのレビュー
No.170: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

クセにはなってきているはずなのだが

このサイトでの圧倒的人気と評価ほど、私は楽しむことができなかったというのが本音だ。全体を通して緊張感がなさすぎる。とりわけ、テレビを通して警察と対決するまでが、あまりにも退屈で読書が苦痛であった。
加えて、かなりの読みにくさも影響しているかもしれない。なんとも掴みにくい関西弁と、ひらがなが多いように感じる一方で難解な熟語も多用しているあたりがリズムを狂わされてしまった。
それでも、所々で見られる誘拐の技はさすが天藤真!と思わされた。この辺りが彼の作品をまた読んでみようかなと思わされる点である。正直なところ、このサイトにおいて私は天藤作品をそれほど高評価としていない。なかなか相性が悪いのかなと思いながらも手にとってしまうから不思議である。たとえ大誘拐を低評価としながらも、次も読んでみようと思っているのは何故だろう。
大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)
天藤真大誘拐 についてのレビュー