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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧

陰気な私は地球を回さないさんのページへ

レビュー数209

全209件 121~140 7/11ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.89:
(9pt)

もし自分がもう1人いたら

初めて西澤保彦氏の作品を読みましたが、奇妙なSFストーリーにのめり込みました。突如、虹色の壁が世界中に現れ、それに触れてしまうと触れた人と全く同じ人間が壁から生まれてくるという、クローンを題材とした作品でしたが、その状況下での人間心理が実に精緻に描写されていました。文章も主人公の心理描写がほとんどで、非現実的ではあるもののその心情は共感し得るものでした。

クローン技術が現代においてどこまで現実的な話なのかわかりませんが、恐ろしいものであることはよくわかりました。考えたこともないテーマであったのも重なり、新鮮な気持ちで唯一無二のミステリを読めたことに満足です。
複製症候群 (講談社文庫)
西澤保彦複製症候群 についてのレビュー
No.88: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

大味でなくサッパリした本格派

所々で出てくる冗談が、わかる人が読んだら面白いのかわかりませんが、只々寒いだけで読むのしんどいなぁ〜とあまりのめり込めはしなかったのですが、事件とその解決だけを切り取ったらこれはなんとも素晴らしい!
とんでも無いような夢のある幻想的なトリックを使うのではなく、非常に現実的な内容でそれを論理的に導いて解決する様は見事でした。ヒントも所々に散りばめられているので、解決してしまう読者も一定数いるかもしれません。そこも好印象です。同じような作風なら次作も読んでみたいと思います。
体育館の殺人 (創元推理文庫)
青崎有吾体育館の殺人 についてのレビュー
No.87:
(8pt)

村田ワールド全開

命や恋愛観に関する短編4作品、なんて言い方はできそうもなく、血なまぐさい異色な世界観のお話です。

表題作の「殺人出産」は、10人子供を産んだ「産み人」は誰か1人を自由に殺めることを認められ、この殺意のおかげで人口を維持できていると「殺人」を肯定的に捉えた世界を描いています。「産み人」でない人が殺人を犯すと「産刑」に処され、永遠に子供を産み続けなくてはなりません。奪った命を自らの命を絶つことで償うのではなく、新たな命を生み出すことで償うというのです。
この作品は意外にもSFの要素が強いです。ほとんどの女性は避妊手術を受けており、性行為は快楽のみのためであって生殖行為とは乖離して考えられています。また、男性であっても人工子宮を使って帝王切開で子供を産むことができます。
どんな発想からこの作品を作り上げられるのか、凄いなあとしか言いようがありません。著者の独壇場についていけないかと思いきや、すぐに馴染むことができこの世界観に浸っていました。

「殺人出産」のみだったら10点満点なんですが、「トリプル」という作品はどうも理解不能でツッコミどころが多く、読んでいて苦痛を感じたので評価減。気色悪さに吐き気を催されました。
若者の間で性別関係なしに3人で付き合うことが主流になったという設定の物語ですが、興味を持った方は是非。
殺人出産 (講談社文庫)
村田沙耶香殺人出産 についてのレビュー
No.86: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

時代を感じる。

収録されている全ての短編に満足しました。バリエーションが豊富で、どの作品も違った趣向の話だったので飽きずに読めます。「心理試験」や「芋虫」が特に気に入りました。

少し時代が古いので驚くようなことはたくさんあります。裁判で心理テストを証拠として機能させることには本当に驚きました。冤罪多そうだなぁと。

いろんな作家さんが彼の影響を受け、現在の探偵小説に踏襲されているのでしょうね。
江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)
江戸川乱歩江戸川乱歩傑作選 についてのレビュー
No.85: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

avant-garde

ベル・エポックと呼ばれた時代のアンリ・ルソーをめぐった作品です。アンリ・マティスやピカソは多くの人が作品を見たことがある王道画家かなと思いますが、ルソーは少し変化球でしょうか。前衛的な作品は才能ある人間にしか響かなそうな印象があり、どうも食わず嫌いをしていましたが、この作品を読んで少しはアバンギャルドと呼ばれる絵画に関心が湧きました。
余談ですが、何年か前にパリに行った時に、オルセー美術館やルーヴル美術館に行ったり、ピカソ美術館が改装工事中だったりしたことを懐かしく思い出させてくれました。

絵画は正解のあるものではないため、人それぞれ異なった解釈をするものだと思います。1つの絵画に対する受け取り方を視点の人物から押し付けられるように感じてしまうので小説で読むものでもないなぁと…綺麗にまとめられた結末はとても良かったのですが、終盤までは退屈すぎたので普通の評価です。
楽園のカンヴァス (新潮文庫)
原田マハ楽園のカンヴァス についてのレビュー
No.84:
(4pt)

ミステリの濃霧

序盤は話の筋が見え来ないまま、どんどん話が進んでいきます。この人達は何をしているの?と、そもそもストーリーに意味などないのだとしても、何も掴むことができないので退屈です。霧の中を進んで行くかのような感じでしょうか。
違和感のある文章や雰囲気から何か隠していることは明らかであり、モヤモヤとさせてくれるのに何も教えてはくれないといった、ミステリ色の強さが裏目に出たような作品でした。

いい話だとは思うんですが、終盤までは面白みが無かったのが残念…
透明カメレオン (角川文庫)
道尾秀介透明カメレオン についてのレビュー
No.83: 6人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

思考を促された

ここまで考えさせられる一冊に出会えたことに感動しています。日本が超高齢社会に向かって行く中で、抱えることがわかっている(わかっていた)介護問題について警鐘を鳴らした本作を、何が正しいのか自問しながら読み進めていきました。

この作品では明らかな悪者は出て来ません。これは実際の世の中でもそうであり、程度差はあれ誰もが善性も悪性も持っているグレーの存在だと私は思います。
本作では、要介護老人を40人以上殺害した犯人「彼」が登場しますが、彼を真っ直ぐに否定できないように感じました。彼は、大変な毎日を送る介護者と被介護者を救うために殺害したと主張しているのです。
Aさんがコップが溢れそうになるほど水を注ぎました。それをBさんが倒してしまい水を床にこぼしてしまいました。この水をこぼしたのはAさんなのかBさんなのか、答えはすぐには出ないでしょう。同じことがこの作品にも言え、殺人を犯した彼が悪いのか、はたまたそうさせた社会が悪いのか。

最後に話は変わりますが、介護業界の抱える深刻な問題を認識させられました。つい先日、介護業の平均所得がかなり低いと書かれた雑誌を読みました。介護がビジネスであることに違和感を持つ人もいると思いますが、実際に多くの人が救われてもいます。大変であるが故にビジネスとして成立しており、社会保障が関与しているにも関わらず薄給だなんておかしい!と思いながらも介護問題から目を背けたがっている自分自信に呆れもしました。そういう意味では自分も「安全地帯」の方に行こうとしているのかもしれません。

誰もが避けては通れない問題なので、誰が読んでも心に響く一冊だと思ってオススメします!
ロスト・ケア (光文社文庫)
葉真中顕ロスト・ケア についてのレビュー
No.82: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

幻の夜はいつぞや

白夜行の内容を細かく覚えてないですが、特に関連がある訳でもなく単に作風が似ているぐらいに思って読むのがいいのかなぁと思いました。この一冊で充分すぎるぐらい面白いです。

幻夜は、主人公の1人である雅也の視点を使う場面が度々あるので多くのことがわかってしまいます。具体的に書き過ぎないことで自分なりの解釈で楽しめたのが白夜行であったのに対して、本作は情報を与えられ過ぎているように感じました。それ故この物語独特の奇妙さ、暗さが半減してしまったのかなと。
とはいえ、ミステリとしての中心の話題である「美冬の謎」が際立っているとも思います。美冬の行動の1つ1つが謎めいていて、真相に至ってもやっぱり謎。全く共感できることはありませんが、突飛だからこそ面白かったのかも。

後はタイトルがいつの夜を指しているのか(1人1人違うのか)興味深いです。
幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))
東野圭吾幻夜 についてのレビュー
No.81:
(7pt)

ユーモラスなのかどうか

本サイトでは、「ユーモア・ミステリ」というタグか付けられていますが、私としては正直疑問に思います。ユーモアのある文が所々で出てきて思わず笑ってしまうことは否めませんが、それが前面に出てくるのではなく、本作品は決して軽い雰囲気で面白おかしく展開していく話ではありませんでした。私としては悲しみや憤りの方がより強く感じられました。

倒叙作品ですので、事件が起きるまでの背景に重点をおいており、偽のデュー警部が誕生するまでがとにかく長い。タイトルを忘れた頃にやっとミステリらしさが出てきます。偽デューの心理描写を排除し、事件の全貌がほとんど掴めないので自分で考えながら読む人にとっては非常に楽しいと思います。
偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)
ピーター・ラヴゼイ偽のデュー警部 についてのレビュー
No.80: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

スピーディな展開

序盤は事件が起こるまでのダラダラとした内容が一切なく、物語が勢いよく展開されていくところは面白く、立て籠もりの緊迫感がよく伝わってきました。
そこから単純な主人公対犯人ではなくて三つ巴のようなところが新鮮ではありますが、それが弛緩した雰囲気を作っているように感じてダラけてしまいました。

そうは言っても全体としてコンパクトにまとめられて一気に読めますし、事件の背景や筋道立てられた理論もしっかり楽しめました。
仮面病棟 (実業之日本社文庫)
知念実希人仮面病棟 についてのレビュー
No.79: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

見事なまとまり

物語を通して視点となるのは緑のデミオ。この独特の感性が楽しく唯一無二です。車自体は運転手の意のままに動くしかないのですが、それぞれの車が考えて車同士で会話する世界観が良かったです。具体的な車種がたくさん登場するので、車に興味のない人はイメージが湧きにくいかも。

複数の事件が絡まり合う本作は、ボリュームがありつつも無駄が一切ない、見事なまとまりを見せて綺麗に締められる素晴らしい一冊でした。
車が欲しくなる(・ω・)

▼以下、ネタバレ感想
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ガソリン生活
伊坂幸太郎ガソリン生活 についてのレビュー
No.78: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

超推理

短編集の本作は3つのミステリーが収録され、「近況報告」は島田氏が自分の思うことを書きたかったのだろうといったエッセイ程度に捉えました。ここが意外と面白かったです。

3つのミステリーに関しては2作目の「ある騎士の物語」が良かったです。あっと驚くアリバイトリックではないですが、なるほどと思わざるを得ない爽快感のあるトリックでした。しかし他の2作品に関しては、推理の域を超えており半ば想像でしかないところから事件が解決されてしまうので、事件の真相を見破りたいという読者からすると面白くはないでしょう。
御手洗潔のダンス (講談社文庫)
島田荘司御手洗潔のダンス についてのレビュー
No.77: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

これはフィクションなのか

脱輪事故により人を殺めてしまった、その責任はトラック運送会社の整備不良にあるのか、それとも自動車メーカーにあるのか。重苦しく感動的なストーリーではありますが、何とも嫌味な大手企業との戦いに爽快感に溢れていました。

ホープ財閥からはどうしても◯菱財閥を連想せずにはいられません。地上波ではスポンサーが付かないから有料チャンネルでドラマ化されたとの噂もある本作ですが、それだけ大手企業にとっては耳の痛い作品でしょう。大企業の高慢さを描いており、どうやって懲らしめるのかワクワクしました。
池井戸作品ではお馴染みの住◯財閥をモチーフにしたであろう白水銀行は出てきません。その代わりにはるな銀行が登場します。名前からもわかりそうですが明らかに某銀行を連想させる説明があります。フィクションとしてここまで現実を描写したかのような作品に引き込まれない訳がないと思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
池井戸潤空飛ぶタイヤ についてのレビュー
No.76:
(7pt)

99%の誘拐の感想

倒叙物として最初に犯人が明かされ、どうやって誘拐劇を成功させるのか、もしくは警察が逮捕するのか、先が気になりながらあっという間に読みました。
この作品が現実的なのかそれともSF色が強いのか、私にはわかりませんが、疑問を感じることなく非常に納得させられてしまいました。
99%の誘拐 (講談社文庫)
岡嶋二人99%の誘拐 についてのレビュー
No.75:
(6pt)

明日の空の感想

これだけ爽やかな青春ストーリーにおいて、ここまでミステリー色を出せるだけで充分楽しい作品だと思います。2章目の六本木での話がどのように絡んでくるのか全く想像もできませんでした。

ページ数も少ないので、軽めのミステリーとしてサクッと読むのがオススメです。
明日の空
貫井徳郎明日の空 についてのレビュー
No.74: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

事件の背景で魅せる作品

裁判に至るまでの事件の背景と裁判の場面がカットバック方式で進行していきます。事件の真相がわかった時、そこに関わる全ての人々の心情が心を打つものでした。

▼以下、ネタバレ感想
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最後の証人 (角川文庫)
柚月裕子最後の証人 についてのレビュー
No.73:
(4pt)

らしい作品

いかにも道尾秀介氏らしい作品でしょう。物語の中で並行する様々な対比関係を浮き彫りにしながら、その中で起こるすれ違いを描いているのは他の作品でも見受けられます。

現実?の話が進む中で、各章の終わりにおそらく夢であろう内容が挿入されています。ここが何ともわかりにくい。人によって読み方が大きく異なるでしょうし、ここの読み方で物語全体の受け取り方も変わってくると思います。難解な印象は拭えません。

物語の退屈さをフォローするような解説が巻末に載っていますが、この良さがわかる人にはわかるということなんでしょう。好みは分かれると思います。
貘の檻 (新潮文庫)
道尾秀介貘の檻 についてのレビュー
No.72: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

作中作

一体どこまでが小説なのか、全てが小説中のフィクションであるにも関わらずそんなことを考えてしまいました。それだけ物語に入り込めたのだと思います。

私は順番通りに館シリーズを読まずに、先に黒猫館を読んでしまったのですが、順番通りに読むのがオススメです。

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迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)
綾辻行人迷路館の殺人 についてのレビュー
No.71: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

百万ドルをとり返せ!の感想

外国作品なのにとても読みやすくスラスラと内容が入ってきます。海外物特有の日本人にはわかりにくい会話や習慣などがあまり気にならずに読めるのでオススメです。主要な登場人物も少ないので、覚えにくい洋名に悩まされることもありません。シンプルな設定に所々のジョークを楽しむ愉快な小説でした。

この作品の見所はどうやって百万ドルを取り返すのか、そしてどうしたら過不足なく丁度百万ドルを手に入れられるのか…
百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)
No.70: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

沢崎にハマりそう

主人公のユーモアのある語り口が魅力的でした。シリーズを通して読みたくなってしまいました。様々な実名が出てくるので、時代を感じます。人が真剣に話しているときに、誰も彼もが煙草を吸う居酒屋スタイルは時代の文化か知りませんが…

話の面白さは文句なしなんですが、複雑すぎて頭が痛くなりそうな内容でした。登場人物はとにかく多いし、事件は複雑だしでスラスラとは読み辛かったです。
そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))
原尞そして夜は甦る についてのレビュー