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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧
陰気な私は地球を回さないさんのページへレビュー数12件
全12件 1~12 1/1ページ
※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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こんなに楽しい読書は久しぶりだった。SFだが読んでいて置いてけぼりに全くならない。すぐに設定に溶け込めて、後は文庫で1000ページ弱、一息に読むだけである。こういったジャンルの作品は、どうしても穴がありツッコミたくなる隙のある作品もよくみられるが、最初から最後まで矛盾をよく抑えた作品だったように思う。それだけストーリーに浸りやすかった。
不老不死手術を受けてから100年間を生存可能とする100年法、それを過ぎた人々は安楽死を受け入れなければならない。自分が実際100年目に突入したらどう感じるか、もしかしたら死から逃げ出すかもしれない。自分をストーリーにはめ込んで読むと面白い。その中でいろんな人の感情や策略が混ざり合ったストーリーは、ボリュームがありつつ纏まりがある。ところどころ脇道に寄っているようで、全く寄っていない。 また、登場人物が1人ひとり色濃く描かれている。個性が立っていて、必要十分な駒が出揃っているように感じた。ちなみにどうでもいいが、戸毛幾多郎には嫌気がした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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やっぱり西澤保彦氏の作品は面白い。本格物を得意とする彼の作品は明らかに他の本格作家と異なります。本格物といえば、淡々と進み謎解きにばかり重点を置いて、それ以外を御座なりにしている印象が拭えない物が多いです。けれども、彼の作品は必要十分に登場人物の心情を丁寧に描写してくれているので、作品に対するのめり込みが全然違います。本作も魅力的なキャラクターが際立っていてとても楽しめました。
「彼女が死んだ夜」この設定が奇抜で良かったです。飲み会から帰宅したら、知らない女が倒れている。明日からは待ちに待った海外留学が始まり、警察沙汰になりたくないがために友人に死体を処分させるという始まり。 変化球的な内容で楽しませてくれるのかと思っていたら、まさかの結末。二転三転、いや一体何回驚かされるんだと。真相含め、とにかく意外性に満ちていました。 主人公がアルコール依存気味であったり、女性に滅法弱い不思議な留年生だったりユーモラスな印象もありますが、一方で身近でありふれた世の中の闇の部分も丁寧に描かれています。そういう意味では「グロテスク」な内容だと思います。「男は所詮、女性のことを排泄用の便器くらいにしか考えていない。」こういった科白が出てくることにも衝撃を受けましたが、著者の様々な主張を感じました。そんなに世の中フェア(綺麗)じゃないんだよと。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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なんとなくのほほんとしたタイトルや表紙から心温まるストーリーだと想像しましたが、想像の遥か上をいっていました。面白すぎます。
まず登場人物が魅力的です。「マーフィーの法則」という訳のわからない屁理屈を紹介する本をバイブルとしたリサイクルショップ店長。優しさと思いやりに溢れた副店長。そしてリサイクルショップに入り浸る中学生。彼らが事件に巻き込まれながら二度解決をするというのがユニークです。まず初めにカササギが事件を推理し、日暮が間違った推理をこっそり訂正するというパターンです。4話とも同じ形で始まり終わるので、安心して読め、次の話を楽しみにしてしまいました。 また、ユーモラスなだけでなく、ストーリーもよく練られており無駄がなく、温かみもありました。ずっと気持ちが良いです。全ては日暮の優しさに詰まってると思います。 あまりシリーズ化しない道尾氏ですが、彼らの作品はもっと読みたいと思わされました。シリーズ化しないからこそ手に取りやすい良さもありますが… |
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この作品を読んでどれほど共感したことか、現実をここまで緻密に捉えているのは凄すぎます。主人公の拓人の心理描写が精密機械のごとく、実際の大学生活や就職活動、そして周囲の人々を捉えています。わかるわ〜と只々共感するばかりでした。それを文章にしてしまえるのが本当に凄いとそう思わずにはいられません。まるで朝井リョウ氏が大学生活や就職活動はたまたは人間社会の生みの親であるかのような笑。
反対の言い方をすると、フィクションとしての面白さは皆無とも言えます。事実は小説よりも奇なり、と言いますがこの作品は現実よりも現実な気がします。心躍る物語の世界へ飛び込める訳ではないのに、ハマってしまいます。 この小説はかなり毒があるというか棘があるというか、誰が読んでも心にチクリと刺さると思います、本当にカッコいい人以外は。 |
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ここまで考えさせられる一冊に出会えたことに感動しています。日本が超高齢社会に向かって行く中で、抱えることがわかっている(わかっていた)介護問題について警鐘を鳴らした本作を、何が正しいのか自問しながら読み進めていきました。
この作品では明らかな悪者は出て来ません。これは実際の世の中でもそうであり、程度差はあれ誰もが善性も悪性も持っているグレーの存在だと私は思います。 本作では、要介護老人を40人以上殺害した犯人「彼」が登場しますが、彼を真っ直ぐに否定できないように感じました。彼は、大変な毎日を送る介護者と被介護者を救うために殺害したと主張しているのです。 Aさんがコップが溢れそうになるほど水を注ぎました。それをBさんが倒してしまい水を床にこぼしてしまいました。この水をこぼしたのはAさんなのかBさんなのか、答えはすぐには出ないでしょう。同じことがこの作品にも言え、殺人を犯した彼が悪いのか、はたまたそうさせた社会が悪いのか。 最後に話は変わりますが、介護業界の抱える深刻な問題を認識させられました。つい先日、介護業の平均所得がかなり低いと書かれた雑誌を読みました。介護がビジネスであることに違和感を持つ人もいると思いますが、実際に多くの人が救われてもいます。大変であるが故にビジネスとして成立しており、社会保障が関与しているにも関わらず薄給だなんておかしい!と思いながらも介護問題から目を背けたがっている自分自信に呆れもしました。そういう意味では自分も「安全地帯」の方に行こうとしているのかもしれません。 誰もが避けては通れない問題なので、誰が読んでも心に響く一冊だと思ってオススメします! |
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脱輪事故により人を殺めてしまった、その責任はトラック運送会社の整備不良にあるのか、それとも自動車メーカーにあるのか。重苦しく感動的なストーリーではありますが、何とも嫌味な大手企業との戦いに爽快感に溢れていました。
ホープ財閥からはどうしても◯菱財閥を連想せずにはいられません。地上波ではスポンサーが付かないから有料チャンネルでドラマ化されたとの噂もある本作ですが、それだけ大手企業にとっては耳の痛い作品でしょう。大企業の高慢さを描いており、どうやって懲らしめるのかワクワクしました。 池井戸作品ではお馴染みの住◯財閥をモチーフにしたであろう白水銀行は出てきません。その代わりにはるな銀行が登場します。名前からもわかりそうですが明らかに某銀行を連想させる説明があります。フィクションとしてここまで現実を描写したかのような作品に引き込まれない訳がないと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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島田荘司氏が初めて手掛けた小説だそうです。とはいっても発表された順番では御手洗潔シリーズで4作目。あえてその順序を変えたそうですが、その効果は絶大でしょう。私は「占星術殺人事件」と「斜め屋敷の犯罪」を先に読みましたが、そうでなければここまで物語に深く浸ることができたかどうか…それは一生わかることはないんですが。
どこがどう違うのかと言われると説明できませんが、今まで読んだ御手洗潔シリーズの作品と雰囲気が異なりました。謎解きに主眼を置いた本格ミステリのそれではないように感じます。私は強引な展開もほとんどあるようには感じず、すんなり読むことができました。どこか心温まるストーリーに、純粋に文学としても楽しめるそんな作品ではないでしょうか。「占星術殺人事件」で感じた読みづらさは一切感じませんでした。 もともと好きでしたが、御手洗潔というキャラクターがより一層輝いて見え、他の作品全てを読んでしまいたい気持ちにさせられました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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この小説に書かれているのが恋愛なのかは疑問ですが、人間関係の複雑さ、難しさが丁寧に描き出されていて、悲しみや温かい心を感じることができ、さらにはミステリとしての要素も盛り込まれています。ジャンルを分類できるような一冊ではありませんでした。
盲目の人の家に勝手に潜むことがとんでもない設定であるというのもわからないでもないですが、それほど違和感を感じずに読めました。目の見えないミチルが感じ取る情景を豊かな文章力で表現しているのがとにかく素晴らしかったです。 |
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とにかくオススメできる1冊です!
刑務官と前科者が、死刑囚の無罪を証明するために奮闘するという、ありそうでなかなかない設定が魅力的に感じます。前科者の心理描写など、普段あまり触れることのない感情に興味を刺激されました。死刑制度や犯罪者の心理など、多くのことを考えさせられる心に残る作品でした。 重要な点にはとことこん掘り下げて書くのに対し、飛ばすべきところは詳細を書かずに飛ばしてしまうテンポの良さに、最後まで飽きずに面白いところだけを読まされている気分になりました。 そこまで多くはない登場人物にそれぞれの想いが秘められていて、最後には全てがわかります。全く無駄がありませんでした。二転三転する仕掛けなど、社会派でありながら本格派でもあるように感じました。 |
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二転三転する展開に見事に騙されました。真相はこうに違いない、今回は頭が冴えてる、なんて思いながら読み進めていたら、ただの自分の勘違いであることがこの小説では何度もありました。何か違和感を感じながら、最初から最後まで物語の続きが気になり、手が止まることなく読み進めていきました。
ただ、ラットマンの面白さはどんでん返しが全てではありません。著者の描く登場人物の繊細な心が手に取るように伝わり、そこから心に染みるメッセージを受け取ることができたように感じます。ミステリーとしても素晴らしい作品ですが、事件の背景やそこから滲み出た温かさや悲しさを感じるだけでも満足できる作品だと思います。 最後の1ページの文章はとても心に残りました。 |
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