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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧

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レビュー数14

全14件 1~14 1/1ページ

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No.14:
(9pt)

阪急電車への思い入れは格別になる

関西で最大級の鉄道会社である阪急阪神ホールディングス。その中でも阪急電車は特別であり、多くの人々にとって憧れの的である。そんな阪急電車の中でもあまり知名度のない、今津線を舞台にした物語が本作である。
今津線は宝塚〜西宮北口〜今津を結ぶ路線であるが、宝塚方面の電車と今津方面の電車は全く別のホームにあり、西宮北口で乗り継がなければならない。そしてそれぞれの路線が非常に短い。
この今津線沿線に住む人にとっては、各駅や街のイメージが手に取るように浮かび、非常に思い入れのある作品となるのではないだろうか。かくいう私は現在、この作品にも登場する西宮北口に住んでいる。そのため西宮北口の章では細かな描写がはっきりと伝わってくる。毎日通勤で使っているためそれは当然だろうが、一方でそれは阪急神戸線であり、今津線に乗ったことはたったの1度しかない。そういった点では西宮から宝塚にかけての新たな魅力を感じることができた。もう少しそっち方面にも足を伸ばしてみようと思った次第である。
もちろん阪急なんて乗ったことないといった人でも楽しく読むことができるだろう。なんとなく電車に乗っているが、電車に乗っている誰もが自分自身が主役の人生を歩んでいる、そんな当たり前のことも気付かされた。そのように様々な人生が交錯し、互いに影響を及ぼしながら物語は進んでいく。とても幸せな気持ちになれる一冊だ。
阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川浩阪急電車 についてのレビュー
No.13: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

終盤の怒涛の加速!

なぜだろうか、主人公に準ずる人物が盲目である作品に強く惹かれる。乙一氏の「暗いところで待ち合わせ」や伊坂幸太郎氏の「チルドレン」もそうである。
小説において、与えられた文章以外には何もわからず、登場人物の顔さえわからない点では盲目の人と変わらず、少しだけ近づくことができる点に面白さがあるのかもしれない。目が見えないと小説は読めないのに、なんとも皮肉めいている。

本作は、孫の腎臓移植に自分の腎臓が適さず、兄に頼むが検査すら断られることから兄が偽物ではないかと疑うところから始まる。その中で数多くの謎を残し、終盤まで引っ張られワクワクしながら読むことができた。兄は本物なのかどうか、点字を用いて送られてくる差出人不明の手紙、さまざまな人物からの脅迫、無言の恩人などだ。それら全てを矛盾なく最後には説明され、また、伏線の中にヒントを散りばめていたあたりは見事だ。中盤までは面白さが鳴りを潜めていたが、そこから一気に加速する。
1つだけ注文をつけるとしたら、中国名にはふりがなをもっと振ってほしい。おそらく言葉が最初に登場した時のみに振られている。そこで引っかかりリズムの悪さは否めない。
本の最後には膨大な参考文献が並んでいたが、読んでいて勉強になったことがたくさんある。正直、私自身は残留孤児について全くの無知であった。まれに高齢者の方で生まれが満州だという人について耳にすることがあるが、このような過酷な環境であったとは全く知らなかった。
死がこれほど身近なものではない今の生活では当たり前のように暮らしているが、今の人生を大切にしたいと思わされた。自分のことと照らし合わせて読むことができたのが大きかったと思う。というのも余談であるが、私の祖父が戦争を経験し、祖父の弟は戦死しているからである。もし祖父が同じように亡くなっていたら今の自分はいない。そんな運命の巡り合わせを感じずにはいられなかった。
闇に香る嘘 (講談社文庫)
下村敦史闇に香る嘘 についてのレビュー
No.12: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

最高の読後感

前作を読んでないとわかりにくいかもしれません。そこからの話がたくさん出て来ます。

途中まではありふれた法廷ミステリかと思っていましたが、信じられないような結末に感動しました。これ以上ないところに落とし込む著者は凄いですね。

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追憶の夜想曲 (講談社文庫)
中山七里追憶の夜想曲 についてのレビュー
No.11:
(9pt)

もし自分がもう1人いたら

初めて西澤保彦氏の作品を読みましたが、奇妙なSFストーリーにのめり込みました。突如、虹色の壁が世界中に現れ、それに触れてしまうと触れた人と全く同じ人間が壁から生まれてくるという、クローンを題材とした作品でしたが、その状況下での人間心理が実に精緻に描写されていました。文章も主人公の心理描写がほとんどで、非現実的ではあるもののその心情は共感し得るものでした。

クローン技術が現代においてどこまで現実的な話なのかわかりませんが、恐ろしいものであることはよくわかりました。考えたこともないテーマであったのも重なり、新鮮な気持ちで唯一無二のミステリを読めたことに満足です。
複製症候群 (講談社文庫)
西澤保彦複製症候群 についてのレビュー
No.10: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

幻の夜はいつぞや

白夜行の内容を細かく覚えてないですが、特に関連がある訳でもなく単に作風が似ているぐらいに思って読むのがいいのかなぁと思いました。この一冊で充分すぎるぐらい面白いです。

幻夜は、主人公の1人である雅也の視点を使う場面が度々あるので多くのことがわかってしまいます。具体的に書き過ぎないことで自分なりの解釈で楽しめたのが白夜行であったのに対して、本作は情報を与えられ過ぎているように感じました。それ故この物語独特の奇妙さ、暗さが半減してしまったのかなと。
とはいえ、ミステリとしての中心の話題である「美冬の謎」が際立っているとも思います。美冬の行動の1つ1つが謎めいていて、真相に至ってもやっぱり謎。全く共感できることはありませんが、突飛だからこそ面白かったのかも。

後はタイトルがいつの夜を指しているのか(1人1人違うのか)興味深いです。
幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))
東野圭吾幻夜 についてのレビュー
No.9:
(9pt)

これぞ伊坂ワールド

短編集です。それぞれの話が特別リンクしている訳ではなくほとんど独立した話です。いずれの作品も作風が大きく異なるので飽きずに読めると思います。ですが一冊として綺麗にまとまってます。不思議です。
どの話も一癖も二癖もあり、伊坂幸太郎氏らしい作品が集まっていて大満足の一冊でした。彼の作り出す設定にどうして?なんで?となってしまう人はハマらないかもしれません…ただ、彼の描く世界観や物語の雰囲気が好きな人にオススメしたいです!
首折り男のための協奏曲
伊坂幸太郎首折り男のための協奏曲 についてのレビュー
No.8:
(9pt)

ノンストップ

読み始めてすぐに死体が発見され、そこからわずか一晩の話とは思えないぐらいに濃密な物語でした。いい意味で最初から最後まで通して緊張感があり、退屈な場面は全くありませんでした。

主人公が骨髄ドナーとして子供を助けたいと行っているのに、あまりの悪党っぷりに感情移入できなかったことを唯一残念に感じています。古寺巡査長と剣崎主任は好きです。
グレイヴディッガー (角川文庫)
高野和明グレイヴディッガー についてのレビュー
No.7: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

天使のナイフの感想

妻が3人の少年によって殺害されたが、少年法に守られた彼らは法によって裁かれることない。これでは被害者の親族は全く納得することができない。そんな少年法を取り巻く現実について問題提起をした社会派小説として序盤は特に目立った面白さも感じませんでしたが、次々に明かされていく驚愕の展開にミステリーとしての面白さが詰まっていました。怒涛の逆転劇とたくさんの伏線を無駄なく回収していくあたりに、重たいテーマながら楽しんで読めるところが良かったです。

メソポタミア文明のハンムラビ法典ではないですが、「目には目を歯には歯を」のように、悪いことをしたら同じことを仕返しされても仕方がないという感覚しか持っていなかった私としては、考えさせられる小説でした。幼い子どもであっても罪を犯したら罰するべきか、教育によって更生させるべきか、どちらも正しい部分もあり間違っている部分も含んでいるように思えて、それぞれの登場人物のやるせない気持ちにも感情移入できました。
1番の感想は自分の子供が罪を犯したら被害者には謝罪に行くのが家族でしょ!とは思わずにいられませんでした、そうする勇気が湧かないのも理解できますが…


▼以下、ネタバレ感想
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天使のナイフ 新装版 (講談社文庫 や 61-12)
薬丸岳天使のナイフ についてのレビュー
No.6: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

暗喩が素晴らしい

比喩を用いて、直接的な表現をせずに読み手の想像を求める小説に感じます。タイトルにも使われている「龍」と「雨」を用いた情景描写や心理描写の文章を追っていくのが楽しい小説でした。解説を読んで、なるほどそういう読み方もできるのかと驚かされましたが、読む人によって受け取り方も大きく異なると思います。

終盤まではあまりミステリー感が感じられませんでしたが、終盤にはまさに雨で溢れた川のように勢いの良い展開にワクワクしました。
龍神の雨 (新潮文庫)
道尾秀介龍神の雨 についてのレビュー
No.5: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)
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十角館の殺人の感想

レビュー時、当サイトで1位の評価を受けているので読んでみようと思いました。あまりの面白さに一気に引き込まれていきました。

衝撃的な結末には驚きもあり楽しめました。
ただ、期待が大きすぎただけに、トリックに「なんだそんなことか」とガッカリもしたので、それほど期待せずに読むといいかも…
それを考慮しても読んで良かった1冊です!
十角館の殺人 (講談社文庫)
綾辻行人十角館の殺人 についてのレビュー
No.4: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

短編集であり長編

コミカルな作品かと思ったら、感動も与えてくれる素晴らしい作品です。ユーモア溢れる死神を主人公にすることで「死」という重たいテーマでありながら、爽やかに楽しめるのが良いところだと思います。飛んだ設定なので、疑問や違和感を感じそうですが、その様なことはなく一瞬で物語の世界観に引き込まれました。心に残る文章や台詞もたくさんあり、色んなことを考えさせられました。

短編集ではありますが、いつもの伊坂作品の様に伏線回収は見事でした!
死神の精度 (文春文庫)
伊坂幸太郎死神の精度 についてのレビュー
No.3: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

壮大な話

まずはじめにこの小説を手に取った時に、まるで広辞苑かのような分厚さに読むことを逡巡させられました。きっと同じ思いの人も少なくないと思いますが、とてもオススメです!結末が気になるというよりは、その時その時の物語の面白さに魅せられました。

迷宮入りした事件の関係者について、小学生時代からその19年後までの物語です。1章もしくは数章ごとに年代が変わり、第3者の目線で2人に関する話が展開されていきます。1つの章の中でも何度も視点となる人物が変わっていきます。あらゆる犯罪が起きますが、その証拠は何一つなく、はっきりとしたことはほとんど書かれていないので読んでいる人の想像に任せられている作品に感じました。そういう意味でも色んな人の感想を聞きたい作品でした。

作品自体が長いのと視点となる人物が多いので、誰がどのようなことを経験しているのか知っているのかを整理することが大変でした。また、読んでいてあまり気持ちのいい話でもないので、私含め苦手な人もいるかもしれませんね。あと、大阪弁はどんな感じで読めばいいんだろうかと思いました笑。それでも、面白さは間違いなしです!
白夜行 (集英社文庫)
東野圭吾白夜行 についてのレビュー
No.2:
(9pt)

火車の感想

変わった切り口で始まるな〜と思って読んでたら最後のページまで来てた、というような感覚でどんどん続きが気になって仕様がないという感じでした!ボリュームがあって、心情描写が多いためテンポはゆっくり目かもしれないですが、とにかく物語に引き込まれていきました。

失踪した婚約者はいったい何者であるかということに重点を置いている社会派ミステリーですが、なるほど!と思えるような本格派ミステリーにあるワクワク感も兼ね備えているように感じました。

クレジットカードによる借金をテーマとして扱っているため、少し理解が難しい内容も含まれていると思います。社会人になってから読んだらより一層感情移入できる作品ではないでしょうか。

▼以下、ネタバレ感想
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火車 (新潮文庫)
宮部みゆき火車 についてのレビュー
No.1: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

衝撃的ラスト

いわゆるどんでん返しで終わる小説であるが、ラストに行き着くまでの話がとにかく面白い!一気に読みきることができました。
途中の話がなおざりにされていなく、さらに登場するキャラクターや出来事に1つの無駄もなくそれら全てがラストに繋がっている構成は見事です!様々な言葉遊びも、よく思いつくなあと感心してしまいました。各章のタイトルが鳥の英語名になっていますが、そういうところなどに遊び心を感じます。
ラストはどんでん返しと言っても騙された!という感覚はなく「ああ、そうなんだ」ぐらいの感覚でしょうか、ほとんどの人が気付けないようなことなので。それでもこじ付けに感じなく、壮大な話であるとわかり震えてしまいました。
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)
道尾秀介カラスの親指 by rule of CROW's thumb についてのレビュー