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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧
陰気な私は地球を回さないさんのページへ書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.35pt |
レビュー数209件
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四国遍路巡りをしている定年退職をした元刑事が、地元で起きた少女殺害時間に首を突っ込んでいくといった本作。他の方の感想にもあるように犯人などはどうでもよく、それぞれの登場人物の心情を見事に描いたヒューマンドラマといった印象が強い。主人公神場や鷲尾の葛藤や神場が過去に経験してきた出来事から見える心情は実際に自分がその場にいたかのように引き込まれる。
しかしそんな中で低評価とした理由は2つある。 ①四国遍路のシーンが終始続くが、平板な内容で面白みがない。 ②引退した元刑事が現役の職員と電話で繋がっており、事件に首を突っ込むことなど違和感しかないストーリー展開。 たとえOB・OGだろうと部外者に情報漏らすなんてありえないでしょと会社員の私は思う。 |
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「十二人の死にたい子どもたち」、このタイトルを知った時には是非とも読んでみたいと思った。
あらすじとしては以下の通りだ。1番の少年サトシが主催する集団安楽死に賛同する2〜12番の番号を振られてた少年少女がその会場に集合するのだが、既に1人がベッドの上に横たわっていて動かない。彼は一体誰なのか、それがわかるまではスッキリと自殺できないということで犯人探しをしようとする。12人全員の視点を章ごとに描きながら誰が犯人だかわからないようにさせているのもなかなか容易なことではないと思う。 全体の雰囲気としては、ダークで重々しい雰囲気が漂っていながらも決して重くなりすぎない絶妙な空気感によってストーリーに引き込まれていった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学生アリスシリーズを読むのは何年ぶりだろうか、登場人物の特徴等は全く覚えていないが、このシリーズがとても楽しいものだったことだけは記憶している。本作も例に漏れずあっという間に読めてしまった。非常にボリュームのある大作であるが、分量は一切気にならない。読者への挑戦状は3つも用意されており、3度も事件の解決を楽しませてもらえる、非常に贅沢な1冊だった。
「双頭の悪魔」とは見事なタイトルに思う。川を隔てて存在する2つの村、そこにはかつて川の氾濫をおさめるためにそれぞれの村から生贄を用意させていたという言い伝えがある。そんな村にやってきた主人公一行は大雨により橋が壊れてしまい、互いの村を行き来できなくなるどころか2手に分断されてしまう。そしてそれぞれの村で殺人事件が起き互いにどのように絡み合うのか非常に興味をそそられ、最終着地も見事だった。 そんな本作の良かったポイントはこれだけ多くの登場人物が出てくるのに、一人ひとりをしっかり描き切ったことだろう。それぞれの人物が個性的で、この手の作品によくある、誰が誰だかわからないといった事象は一切無かった。本格ミステリではストーリーは非常に退屈だといったことが珍しくないが、このシリーズでそのようなことは未だ経験していない。 |
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この手の小説は万人受けするものではないだろう。この作品を受け入れられない人もいるのだろうが否定をするつもりはない。私自身本作に対してネガティブな印象を抱いている点も多々ある。例えば、固有名詞の読みづらさはそれだけで読書のペースをダウンさせてしまう。他にも女性キャラクターの描写は物足りなく、いまいち特徴が掴みきれなかったように思う。序盤に関しては稚拙な文章に感じてしまい、嫌悪感があったように思わなくもない。
とはいえ本格ミステリーとしては非常に完成度が高く感じ、続編があるとのことなので是非とも読破したいものだ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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犬飼隼人の作品は本作で2作目だが、前作を読んだのはもう4年も前のこと。正直に言うと犬飼隼人がどんなキャラクターであったか全く覚えていなかった。それでもしっかりと物語を楽しむことができた。1作品が非常に短い短編集なので、多くを描き切っているわけではない。そこを物足りなく感じる人がいるのもわからなくもない。
一方でミステリーとしては「7つの毒」のいずれも一級品だと思う。1作品毎が長編として読みたいと思わされるほどの完成度ではないだろうか。 最後に7色の毒といったタイトルからも読後感は苦々しい内容でもあるのだが、最後の最後で晴れやかな気持ちで読了できた。短編1つをとっても本作を通しで見ても、最後の着地が上手い作家だとつくづく思わされる。 |
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ジョン・ディクスン・カーとは趣味が合わないことがしばしばだったが、本作はどうだっただろうか。結論から言えば、全く興味の湧かないものではなかったが、しかし話があまりにも退屈すぎる。まとめ上げられれば100ページで終わらせられることを冗長にやっているようにしか思えなかった。
結末にこの上ない意外性があったことでプラス1点。 |
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すごく面白いのだが、序盤は読んでいて平和警察の横暴っぷりにイライラさせられた。正義を語る平和警察であるが、実際はただの尋問と処刑を趣味にした鬼畜といった感じだ。彼らは何のために危険人物を取り締まっているのだろう?と思わされるほど、全くの無実な人々を痛めつけるために遊んでいるようにしか見えない。
だがそんな彼らも自らが正義だと盲信し、仕事をしているのだと分かってくる。多くの人が自分の仕事は正しいと思っているかもしれないが、実際には自分もしくは会社の都合を押し付けているだけということは少なくないように思う。正義とは一体何なのかといったことを問いかけているような側面も本作にはあった。とはいえ目に見えて平和警察は悪役であり、いかに平和警察をやっつけるかに主眼は置かれる。 そこで登場するのが警察内部の真壁鴻一郎だ。彼が非常に格好良く、実際的な主人公のように映った |
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外国の小説を読む場合、アメリカやイギリス等といった我々にとって馴染みの深い大国を除いてその国に関する多少の下調べは有意義だ。主要な都市や人口、経済規模、その国特有の文化や特徴程度は抑えておいたほうが楽しく読書できると思う。
本作の舞台スウェーデンに関する世間一般のイメージはどのようなものか。日本人からすると、経済水準が高く高税率高福祉の社会民主体制や、世界でもいち早く女性の参政権を認めた点等から男女平等の意識が比較的強い国、といった印象の人が多いのではないだろうか。よく北欧諸国の政治は模範のように扱われ、日本も彼らの年金制度を模倣しようとしていると言った話を耳にする。そんなスウェーデン(少なくとも私はスウェーデンについて良い点しか耳にしたことがなかった)にも様々な問題があり陰となる面も当然ある。そんな部分を浮き彫りさせる社会派といった印象を本作から受け取った。 主人公でありジャーナリストのミカエルは、ある富豪実業家であるブルムクヴィストに関するデマを掴まされ名誉棄損で禁固刑を言い渡される。そこからブルムクヴィストの弱点を握っているこちらも実業家のヘンリック・ヴァンゲルの依頼を引き受ける。彼の依頼は失踪した親族の行方を調べて欲しいとのこと。 そして衝撃の展開からまさかまさかの連続。上下2冊の大作であるが、正直に言って面白くなってくるのは下巻に入ってからだった。それまではただのミステリーとしか思っていなかったが、先ほど書いたような社会派の印象が強くなっていくのが下巻からだ。 私が本作の特徴に感じたのが、女性に暴力を振るう男性がたくさん出てくることだ。各部の冒頭にはスウェーデンにおける女性の○○%が〜といった挿入があるが、決して意味のない物を書いたりはしていない。経済水準が高く幸福度が高いと聞くスウェーデンでも日本と同様に、もしくはそれ以上に悲しい犯罪が起きているのかもしれない。どれだけ行政の体制が良くても、そこに暮らす人々は個々に自我を持った人間であり、社会に縛り上げられているわけではないといった印象を受けた。 作者であるスティーグ・ラーソンは人権派のジャーナリストであったようだが、ミカエルにも同様の印象を受けた。ジャーナリストがこれほどかっこよく映る作品に出会ったのは初めてかもしれない。 あとがきにはしっかりと3部作であると書かれていた。第1部だけでも十分に面白かったが、謎は残っており完結していないとのことだった。この続きを読むのもそれほど後にはならなさそうだ。 |
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この本をこのタイミングで読んだのは、もうすぐ今住んでいる街を離れ新しい場所へ移住するかもしれないからだ。これから行く先はどんなところなのか、ワクワクしているのだがそんな旅の気分を早く味わいたいと思い手に取った一冊。
旅は普段の生活から離れられ嫌なことを忘れる浄化の意味があると思っている。そういう意味では読書と同じような感覚だ。読者も普段の生活とはかけ離れた本の世界を旅しているのだから。読書ばかりではなく、時には書を捨て街に出る本当の旅もいいかもしれない。そんな気持ちにさせられた。 非常に爽やかで、少し恥ずかしくなるぐらいの素直な内容が心地良かった。おかえりのように真っ直ぐな気持ちで日本各地を回れるのは本当に幸せなことなのだろう。 |
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チャンドラーの作品もついに4作目まで来た。これまでの3作品は非常にわかりにくい内容であったが、ここに来てシンプルでわかりやすいプロットだった。そして少し方向転換をしたのか本格派のような内容だった。決してその点を批判するつもりはないのだが、私がかすかに感じていてチャンドラーらしさとは少し作風が違うのかもしれない。
この作品はストーリーが非常にシンプル(とはいえ、相変わらずの脱線と寄り道が満載)で易しいかもしれない。他のチャンドラー作品から読むと彼を嫌いになる方もいるかもしれないが、この作品ははじめて読むチャンドラーには持ってこいだ。 |
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これまでの前2作品は意外性に満ちたミステリアスな展開が特徴的であったが、今作は意外とシンプルにスマートにまとめてきた印象だ。とてつもなく意外な結末でもなく、これまでの佐方というキャラクターをしっかりと描いており、続編もまた手に取ってみたくなる。
この後検察をやめて弁護士へと転身するわけだが、いったいどんな事情があったのか。それが今後の作品で描かれているか知らないが是非とも読んでみたいと思う。 |
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タイトルにも示した通り、この作品は前2作の続編といった位置付けだ。密室殺人ゲームを模倣する者たちが現れる、だけでは終わらない。なんと動画配信という形を取っているではないか。これは間違いなくこれまでの作品とは雰囲気や趣が異なるのだろうとは想像していたが、想像を超えてきたのは、さすが歌野晶午といったところか。
非常に意外性に富んでいて面白かったのだが、トリックやその解説を端折っていたところが玉に瑕といった感じだ。 |
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学生アリスの第2作、孤島パズル。久しぶりに本格ミステリを読んだのか、ドキドキ、ワクワクしながら読書することができた。前作ほどのストーリー構成ではなかったため点数は6点とした。
読者への挑戦状は面白い。本家エラリークイーンに劣らず、重箱の隅をつついたような証拠から犯人を絞り出していく。あくまで消去法だ。今作に関しては、そんなことから犯人がわかるのか!と非常に驚いた。それと同時にプロットの弱さも感じた。前作の感想でも述べたが、他の可能性を消しきれていないようにも思う。 最後に欲を言うと、織田と望月を出して欲しかった。 |
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以前に「氷菓」を読んで、この作家はもういいやと1作品だけで読まず嫌いになっていた。けれどもこの作品は氷菓と全く違い、稚拙な印象が全く無かった。それだけテクニックがあり、いろんな書き方ができるということなのだろう。短編のどの作品もおどろおどろしい雰囲気が文体から伝わってきた。とても奇妙な物語の集まった1冊だ。
時間軸を行ったり来たりする形はとても良かったのではないか。「夜警」では警察官が殉職した葬儀から始まり、警察官という職に就くところから死に至るまでを回想し、そして結末へ。「万灯」も人を殺めたことで裁かれているという記述から始まり、出来事を回想する。「満願」も構成は似たような形だ。 どの作品も少し突飛な気はするが、ミステリとしての面白さは十分あった。 |
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私は史実に基づいた歴史物を読んだりはしない。なぜなら結末が決まっていることに読書欲がそそられず、また実際には史実と齟齬はないのか?等、著者の考えをねじ込まれることを嫌うからである。しかしながらこの度「村上海賊の娘」を読み終えた。普段読み慣れない歴史物故、漢字も読みづらく言葉も分かりにくかった。加えて単行本2冊(文庫本は4冊とのこと)というボリュームである。なかなかスムーズに読み切ることはできず、1ヶ月程かかってしまった。
確かになかなか難しい読書ではあったが、たくさんの参考文献から引用があり、合戦については異常に詳しくなった気がしている。新たな知識が尋常ではないほど入ってくることは良かった。この辺りは住んでいる地域によって多少の差が出てくると思われる。舞台となるのは大阪から広島にかけての山陽道側である。 難しいのは、様々な登場人物が出てくるがその誰にも肩入れできなかったことだ。話の始まりは織田信長と戦う大阪本願寺の一向宗派が、兵糧入れを毛利家と村上海賊に依頼するところから始まる。そのどれもが脇役ではなく主役であり、それぞれの活躍するストーリーが膨大なストーリーで描かれている。しかしながらその毛利家、織田家、一向宗派の誰にも感情移入することが難しかった。タイトルでもある村上景も狂人にしか思えない点が多々あった。 |
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