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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧
陰気な私は地球を回さないさんのページへレビュー数28件
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タイトルにも示した通り、この作品は前2作の続編といった位置付けだ。密室殺人ゲームを模倣する者たちが現れる、だけでは終わらない。なんと動画配信という形を取っているではないか。これは間違いなくこれまでの作品とは雰囲気や趣が異なるのだろうとは想像していたが、想像を超えてきたのは、さすが歌野晶午といったところか。
非常に意外性に富んでいて面白かったのだが、トリックやその解説を端折っていたところが玉に瑕といった感じだ。 |
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ボリュームでいうと文庫本で550ページ程度だが、読了までにとても時間を要した。それも第1部や第2部があまりにも退屈だからだ。死刑宣告を受けた連続殺人鬼の告白本を書く売れない作家のお話だが、盛り上がるまでが長い。そして、結末としても驚くほどの物でもないといったところだ。
それでも評価すべきポイントは多々ある。主人公が作家であり、読者に語りかけるかのような文体は新鮮味があり良かったように思う。翻訳物ではあるが、これほど美しい文章にたくさん触れることができる作品は珍しいのではないか。そして、主人公が数々のペンネームを用いて書いてきている(と作品内で述べられている)作品の一部を所々で挟み込んでもいる。これが非常に読み応えがあり、むしろこちらを1冊の本にまとめて欲しかったぐらいである。 こういった作品を読み終えると、とてつもない疲労感が残るのにもかかわらず、また何か読書をしたいと思わされるから不思議だ。 |
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なんと難解なことか。チャンドラーも3作目、分かりづらい内容であることは十分承知していたが、前2作を越えるわかりにくさだったように思う。
希少価値の高い金貨がなくなり義理の娘が盗んだと疑う夫人が、マーロウに金貨を取り戻すよう依頼するところから物語は始まる。ところがその後大きく脱線しながらいろんな登場人物が入り乱れ、突然殺人事件に巻き込まれる。いったい今何を読まされているのかわからなくなった。最初の数十ページあたりで、金貨を取り戻すという本筋はとうに忘れてしまっていた。それに加えて「高い窓」たるものはいつまでたっても出てこない。 読んでいる物語が、そして決着がどうなるのか全くわからないままラストに至り、なるほど難しいクイズの答えを見るように物語は終了した。今作が特にわかりにくいのは、何人かの錯乱状態の人間が物語をかき乱しているからだと思う。でも3作目でわかってしまった気がする。チャンドラーの作品は何となくで、その雰囲気を楽しめば十分過ぎることに。 |
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何人かのパーティを構築した状態でのストーリーというのは道尾作品にはよくあるが、あらすじだけみると「カラスの親指」かと思うような書かれ方をしている。結果としては全く趣の異なる作品ではあったが。とにかくこの手の作品はもっとキャラクターを前面に出して欲しいのだが、そこは満たされていなかった。東口と奈々恵以外の登場人物は蚊帳の外というかおまけ感が強い。
メッセージ性はたしかにあった。疫病神を上手く使いながら、響くような主張はいくつも感じられた。最終章には緊張感のある場面があったが、そこまでのストーリーはまとまりがないし、盛り上がりもなかった。 残念なところもあるが、作品を通して苦なく読むことはできた。 |
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ハードボイルド作品のあらすじに魅力を感じやすい。そんな私は「八月のマルクス」のあらすじにも興味を惹かれた。
しかしそこまでの面白さはなかった。ハードボイルドといえば、チャンドラーのように皮肉めいた表現が面白さの1つだと私は思っているが、お笑い芸人の今作では相性が悪かったように感じる。売れっ子の元芸人の設定だったが、全く面白くない。著者自身そう感じたのか、「人を笑わせるのが下手になった」との保険をかけてくるあたり、余計に面白くない。タイトルについても、センスを感じない。 ストーリーは芸能界の裏側を覗いているようでワクワクしたが、真相を知って動機が弱いと思わざるを得ない。主人公が相方を探す理由も弱い。何故このような行動を取るのか、著者の操り人形としか思えないのが残念だ。それでもエキストラが全くと言っていいほどいないのはいい点だろう。みんな何かしら役割を与えられている。 |
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これがトラベルミステリーと呼ばれるものなのか。細かい描写は省かれ、ものすごいテンポで物語は進んでいく。あくまで事件を本格的に紐解くことに主眼を置いている。正直、樽や登場人物が何時にどこにいたかというのはほとんど整理せずに読み飛ばしてしまった。あまりに細かいので正直煩わしくも思った。
ミステリとしては尻すぼみ感は否めなかった。バークリーがルファルジュと捜査を繰り広げるところは、なかなか読み応えがあったが、最後の終わり方はつまらない。まさに樽のように、真ん中だけが膨らんだ作品だ。 イギリスやフランスを行ったり来たりといったことが当たり前にあるのは、ヨーロッパの国際色に憧れてしまう。イギリスと同じ島国であっても日本ではそのようなことは珍しい。同じようにそういったミステリも少ない。だからこそ洋書をたまに読みたくなるのかもしれない。 |
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読んでいて、直木賞に選ばれそうな作品だなぁと直木賞をよく知りもしないが勝手に思っていた。
途中の描写にストーリーの本筋に関係のないものがあると、その暗示を深く考えてしまうのは私の読書の仕方であるが、この作品もそんなところが非常に多い。単に情景を捉えたものではなくて、確実に主人公の精神とリンクしたものが目立つ。祖父の髭が白くてベッドの白さと重なってよく見えないシーンはとりわけ印象的であった。まだ小学生である子供故に見える景色であったり、捉え方であったりがとても瑞々しく、こういうことってあったなぁと振り返りながら小学生時代を懐かしく思った。 小学生特有の狭い世界というのは十分に表現されていたが、ストーリーも同様に幅のないもので退屈ではあった。ヤドカリ焼いての繰り返し。なんだかとても美しいのだけれど、面白みは薄かった。 |
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1970年、当時20歳だった学生たちが人を轢き殺してしまう。そこから10年毎に4人は集まる、といった内容。こういった時間が一気に何年単位で飛ぶ話は好きである。だが読んでいってこういうのを読みたかった訳じゃない…と悪い意味で裏切られた。全然思っていた趣向の話と違った。
最後の終わり方は良かったが、そのほかはアッサリとしていた。 |
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殺人を犯してしまったことを隠すために目撃情報をでっち上げたら、それにそっくりな人が現れてしまうという物語の入り、なんとも魅力的です。
複数のグループがそれぞれ事件の真相を追い求めていきながら、次第に絡み合ってくるのは爽快感がありましたが、どうも作風と合わないように思います。話の構成がしっかりしていて面白かったんですが、ユーモラスな文体と雰囲気にズレを感じずにはいられませんでした。個人的にはもっとハードボイルドな作風だったら楽しめそうです。消化不良感が否めません。 |
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チャンドラーを初読。チャンドラーが本格推理を批判しているように、本格派には現実感がなく登場人物が生き生きとしていないと言うならば、まさにフィリップ・マーロウは魅力的な人物で生き生きとしているだろう。ハードボイルドというと「固ゆで」ですから口を閉ざした寡黙な人間を私はイメージしていたのですが、とっても剽軽でおしゃべりな印象を受けました。余計なことばっかり言ってるなと。それでも恐怖に立ち向かう強い心の持ち主が格好良かった!
一方で禅問答のような内容は非常にわかりにくい。細かな謎を提示しておいて、それを数ページに渡って引っ張るのでなかなか頭に入って来ない。場面の転換も一気に飛ぶので、行間を補うことが大変でした。似たような悪玉が多くて区別が付きにくいし、何をしているのかさっぱりなことも多々ありました。 とはいえ、シリーズで続くフィリップ・マーロウの作品は他も読んでみたいと思っています。英語を直訳したような翻訳も、チャンドラー独特の表現なのかわかりませんが、味があって軽妙洒脱に感じられました。次回作以降に期待です! |
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まず始めに断っておきたいのが、この作品自体がミステリ作品ではなく、あくまで純文学であり本来の評価が話の面白さによるものであるべきではないということです。自然を見事に描写した美しい文体で情景を豊かに描いており、私自身全く鳥や自然については詳しくないですが、それでも情景がしっかりと浮かびました。
この作品には作者の人柄がよく表れていると思います。短編集として一貫されているのは鳥が出てくること。自然に触れることやその美しさに著者が深い関心を持っていることがわかりました。対して完全にインドアな私としてはあまり興味を持てず、結果としてうわの空になりながら読んでしまいがちでした。 個人的には、第四話の「ホイッパーウィル」が印象に残りました。もと軍人の日系アメリカ人であるケンが警察と共に脱獄囚を追という話。日系であるがゆえに人種差別を受け、インディアンに間違われるといった心情が精緻に描かれています。 |
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この「THE BENSON MURDER CASE」を契機とし、世界中に本格ミステリが広がっていったとされる歴史的一冊を読みました。なるほど、たしかに多くの本格ミステリ作家がこのS.S.ヴァン・ダインから影響を受けていることは明らかであると、本作品を読めばそう思わずにはいられません。ファイロ・ヴァンスの博識で嫌味な話し口調は、日本の本格ミステリの大家である島田荘司氏の描く御手洗潔のペダントぶりにも表れています。
ではでは、その作品がどれほどの面白さであったのか?は別として、他の本格派作品とは一線を画していると思いました。あくまで心理的な手がかりに重きを置き、アリバイや物的証拠なんて糞食らえといったところが特徴的です。 マイナスポイントが2つ。1つは本作品に登場する作家で視点役のヴァン・ダインが全くの空気なことです。いることを度々忘れてしまう、というより読み終わって存在していなかったという方が適切ではないかと感じてしまうほどです。もう1つはファイロ・ヴァンスの度を越した鹿爪っぷりです。事件現場を見て5分で犯人が分かったと言うが、勿体ぶって400ページ余り引っ張るのは如何なものかと… ヴァン・ダインと同時代(若干後年)で同じく米国人の本格ミステリ作家であるエラリー・クイーンのような、与えられた証拠から論理的な判断によって容疑者を絞り込むのとはまた違った面白さが楽しめ、読む価値があることは否めないと思います。 |
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各々それぞれの孤独を抱えた人々にまつわる短編集です。さすがは直木賞作家の桜木紫乃氏、綺麗な文体で魅せてくれました。あまり多くを語らず、読み方によってどのようにも捉えることができるので少しわかりにくいです。結局何を思っているのだろうか、登場人物の心理がわからないことが多々ありました。
「潮風の家」が好みでした。家族のありがたみなど心に突き刺さります。 本作はミステリではありませんでしたが、彼女の書くミステリにも触れてみたいと思わせてくれました。 |
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ベル・エポックと呼ばれた時代のアンリ・ルソーをめぐった作品です。アンリ・マティスやピカソは多くの人が作品を見たことがある王道画家かなと思いますが、ルソーは少し変化球でしょうか。前衛的な作品は才能ある人間にしか響かなそうな印象があり、どうも食わず嫌いをしていましたが、この作品を読んで少しはアバンギャルドと呼ばれる絵画に関心が湧きました。
余談ですが、何年か前にパリに行った時に、オルセー美術館やルーヴル美術館に行ったり、ピカソ美術館が改装工事中だったりしたことを懐かしく思い出させてくれました。 絵画は正解のあるものではないため、人それぞれ異なった解釈をするものだと思います。1つの絵画に対する受け取り方を視点の人物から押し付けられるように感じてしまうので小説で読むものでもないなぁと…綺麗にまとめられた結末はとても良かったのですが、終盤までは退屈すぎたので普通の評価です。 |
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短編集の本作は3つのミステリーが収録され、「近況報告」は島田氏が自分の思うことを書きたかったのだろうといったエッセイ程度に捉えました。ここが意外と面白かったです。
3つのミステリーに関しては2作目の「ある騎士の物語」が良かったです。あっと驚くアリバイトリックではないですが、なるほどと思わざるを得ない爽快感のあるトリックでした。しかし他の2作品に関しては、推理の域を超えており半ば想像でしかないところから事件が解決されてしまうので、事件の真相を見破りたいという読者からすると面白くはないでしょう。 |
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