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チャイルド44
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チャイルド44の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.10pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全115件 61~80 4/6ページ
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スターリン体制下のソ連で起こった大量殺人を題材にしたミステリーだが、本書はその枠に納まるきるものではない。私はナチス強制収容所体験を綴った『夜と霧』を読んだときのような衝撃を受けた。作者は20代という若さのイギリス人であり、実際に恐怖政治を体験していないにもかかわらず、その巧みなストーリー展開と繊細な心理描写は、加害者や被害者という単純な括りを超えて人間の業や罪の深さを浮かび上がらせることに成功している。 人間は弱さゆえ周囲の状況に流されやすく、生存のためなら魂すら売りかねない。このような極限状況下で、何が正義か定まらぬ不安に怯え権力の餌食となる恐怖と闘いながら、自己を確立することができるのだろうか。 しかし、本書はあくまでフィクションであり、サスペンス・スリラーとしての質の高さはCWA賞という折り紙つき。読者は国家保安省の冷酷で敏腕な捜査官レオ・デミドフと妻ライーサを取り巻く物語に引き込まれ、その面白さを存分に味わい尽くすことができるだろう。続編の『グラーグ57』にも手を伸ばしてしまうに違いない。 | ||||
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このミスに選ばれてたからワクワクしたけど少しミステリー要素は薄い気がしましたけど面白かったです。歴史に疎い僕でも当時の世相が分かりやすく書かれていて権力怖いに成りました。登場人物の書き方も上手で物語りに引き込まれる感覚のある作品です。 いま日本で人気の映像化の話題が絶えないミステリ作家達は焦って下さい。あの程度の物語で満足できる人も読んで焦って下さい。 | ||||
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予想以上の傑作でした。まあ、何の欠点もない……かといえば、そうでもない。辻褄に多少の「?」が付くところもあります。しかし、エンターテインメントとして一気に読ませるおもしろさは、十二分に備えています。 それ以上に引きつけられるのは、全体主義国家の権力が持つ恐怖と、その陰に生きなければならない人間の弱さと強さが、驚くほどのリアルさで描かれていることです。 この小説の舞台となった時代からすでに何十年も経っていますが、今日現在も、同じような人生を送らざるを得ない人々が実在していることでしょう。また、形を変え、規模を変えて考えるならば、こうした恐怖はいつでも私たちの隣に口を開けているものなのではないでしょうか。 | ||||
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『Child44』推理欲をあおる記号を読者に投げつけ、内容への手掛かりは残さない。タイトルからいきなり秀逸だ。 この小説は1933年のウクライナの家族の話から始まる。極限状態での人間の哀れを描いたプロローグは僅かな謎を残して終わり、20年後の本編に移る。そして謎がまた一つ増える。推理小説の出だしとしては常套手段だが、ふと気になりプロローグを読み直した。 『すごい。』 長編の出だしとしてはもちろん、ここだけを短編として独立させても良い完成度の高さだ。 生死の限界でもなお発揮される慈愛の心、極限状態での人間の醜悪さ、幼い兄弟の覚悟と意気込み、読者の予想を裏切る展開、そして苦みの残る不条理な結末。 これらを30ページ足らずに描く構成力と切れのある表現力。ロブ・スミス氏のデビュー作は、プロローグで高い文才を披露してから本編が始まる。 主人公は旧ソ連の恐怖の政治の中枢を担った、国家保安省捜査官のレオ。冷徹なレオは幾つかの過ち(温情的判断)により、自らも国家の標的とされてゆく。レオは多くの代償を払いながら人間性を取り戻し、やがて一連のグロテスクな殺人事件に執着し始める。 国家がいかなる非も認めぬ社会は、巨大な不条理を生み出した。その中でもがくうちに、レオと妻ライサの関係は、上辺だけの空虚な愛情から、同じ信念のもとに戦う仲間の絆へと変わってゆく。 ロブ・スミス氏の文章は、娯楽大作のように読者にページをめくらせ、圧政下における人間性の描写は古典文学のように重厚である。 本書の一番の魅力は、国民のほとんどが恐怖に取り付かれ、残りの多くが狂気に取り付かれたスターリン時代の空気を、小説内に再現したことであろう。 著者の抜群の学歴と端正な顔立ちは天才肌を匂わせるが、時代の空気を再現する緻密な描き込みには、膨大な調査の跡を感じる。才能だけでは描けない相当な馬力を要したであろう力作である。 | ||||
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本作は二つの相貌を持つ。一つは、云うまでもなくミステリーとしての貌、いま一つは、旧共産主義国家の組織病理(無謬性!)とそれにより破壊され馴致された人々の荒涼たる内面を描いた純文学としての貌である。「自分たちが信用する者たちこそ調べるべきだ」(78頁)。「職員は鍛錬し、自らの心を無慈悲にしなければならない」(184頁)。後者について云えば、凡百の政治学書などを読むよりも、当該政治体制=相互監視社会の背筋も凍るような怖ろしさを本書で感得することができる。 上巻は、謎の導出と帰るべき組織と家族の一切を失った主人公レオ・デミドフの漂泊を描いて見事。2009年の各種ランキングで上位に入ったのも肯けた。 | ||||
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スターリン時代のソ連が舞台になっていますが、それ以前のドイツ戦を含めて、民衆の苦難の時代が良く伝わってきます。 とにかく、疑われたら終わりの時代です。 人々はただただじっとして目を付けられないようにやり過ごすだけに腐心しています。 そこでは「生きる」と言う意味が極端に矮小化され、ただ「命がある」だけの意味しか持ちません。 そんな時代にあって、主人公のレオが計略に嵌まって失脚することによって生まれ変わります。 その後は、限られた活動範囲の中で、連続殺人犯の捜索と言う冒険譚になります。 しかし、この殺人犯は子どもを裸にし、胃を切り取り、赤いひもを足に縛って行きます。 このメッセージが何を意味し、この連続殺人の動機は何か、又、広い範囲に点在する犯行場所は何を意味するのか?そういったミステリー・ファンを興奮させるような「謎」が、ラストになって見事な整合性をもって示されます。 確かに、レオが余りにスーパー・ヒーロー的な活躍をし過ぎる感はありますが、評判通りの傑作です。 そして、何よりも最後に感心させられたのは、民衆の無償の協力であり、それが暗黒の「スターリン時代」の終焉をも意味しており、こうした時代の変化と、物語の進行がぴたっと一致している点です。 すべての点で非常に良くできた読ませる作品になっています。 | ||||
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最近のミステリーは猟奇的えぐみ無くして成り立たないのか、と思わせる本書。 具体的なえぐい描写には、もうつくづくウンザリなのだが。 昨今の若者には、えぐみ抜きのミステリーはカフェインレスコーヒーみたいなものなのだろうか? 冒頭部分が本筋に繋がって行くミステリー部分に関しては面白いが、ご都合主義の様に感じながら読み進める。 が、最後の最後で非常に巧く落とし込んでいるし、えぐい話の割には読後感が良い。 旧ソ連の体制、思想を全く知らないで読む人には、その部分に震撼し、面白さが凝縮するのかも知れない。 「知る楽しみ」「新しい驚き」抜きには、そこまで「面白いっ!コワヒっ!」と思う事は無い気がする。 数年前、ジャーナリストが国外で暗殺されたロシア、事実は小説より奇なり。 旧体制の真実は、小説だけでは測れない。 個人的に致命的に思うのは、旧ソ連の描写に重点を置くあまり、そこにある人間への描写が少ないこと。 そもそも主人公のレオの容貌の描写からして殆ど無い。(髪の色さえ定かでは無い。) 意図的か、無意識か分からないのだが、その分感情移入し辛いね。 レオを憎む部下役の方がキャラ設定がしっかりしている点などが新人だから、って事なのだろうか。 下巻後半から本当の意味で面白くなるミステリーではあるが、ヒトが言う程傑作とは思わない。 「このミス1位」って納得出来た事が無い、ホント。 | ||||
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上下巻、一気に読みました。 読み始めはなんだか意味が分からない、とにかく気持ち悪くて こちらまで気分が沈む……と思いつつも、 読まずにはいられない。 「それで、どうなるの?!!」 という気持ちで最後まであっという間に読めました。 続編のグラーグ57もさっそく読み始めます。 | ||||
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下衆のかんぐりで申し訳ない。面白く読んだんだけど、主人公悪運強すぎない? ピンチが次々起きるのはいいんだけれど「うーんそれで死なないのか」「あーそれですり抜けるか」と思うことがありました。 | ||||
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スターリン政権下では、ナチス・ドイツに戦勝したものの計り知れない国家の疲弊をもたらした。 そんな時代、本当にあった子供の連続殺人事件をテーマにしたフィクション。 この本を読んでいて、鹿島茂著「セーラー服とエッフェル塔」のエッセイ”由緒正しい戦争”の文中、<赤軍がドイツに侵攻していったとき190万人の少女・女性が強姦され、そのうち旧ドイツ東部領と国外追放・非難途上において、50万人は後のソ連領地域において強姦された。> <>内はこの本から引用した一部ですが、これを読んだ時には信じられなかったが、これらの数字は戦後ドイツの調査で明らかにされたことです。 戦争が終わってから、荒廃した心で帰還した赤軍兵士達の心の闇の世界を覗き観る、一つの物語として読んでしまった。 | ||||
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スターリン時代のソビエトに舞台を据えて、 粛正と飢饉をバックグラウンドにした冒険刑事小説とでもいうのでしょうか。 密告の恐怖はリアルに怖いと思います。 謎解きと言えば、主人公の生い立ちから現在に続く部分が一番で、 連続殺人犯人との邂逅に至るストーリーの盛り上がり(下巻)が一番の読みどころです。 当時のソビエトの暮らしや連続する拷問場面に心が痛みます。 そういう点も面白い作品です。 スピード感があり最後まであっという間に読み切りますが、 犯人捜査以上に主人公夫婦の生き残りをかけた逃亡がストーリーの中心にあるようで、 どっちつかずというか、盛り込み過ぎな感じがしました。 犯人の描写がもっとあったらよかったと思います。 | ||||
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チカチーロ事件を知ってる人が読むと退屈と感じると思う。自分も少々退屈に感じた。賞に選ばれるようなオリジナリティはあまり感じない。自作に期待。 | ||||
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スターリン体制下のソ連。体制の不条理、その不条理に既得権益を見つけ安住する者、覆すことが不可能な不条理の中で息詰まるように生き続ける者、正義の意味を問う者。こういった体制化の市井の人々を題材にしたミステリーは新鮮味があるが、ミステリーとしての完成度も極めて高い。 不条理の中で、連続殺人事件をどう解決すべきか?もとい、不条理の中で、人としての矜持をどう保ち続けるべきか?スターリン体制化の不条理を題材にしながら、生々しい生命力が描かれている。 | ||||
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スターリン体制化のソ連でせっせとスパイ摘発に勤しむ主人公。 権謀術策が渦巻く中 妻をスパイ容疑で捜査する命を受け失脚 辺境の人民警察に追いやられる羽目に。 そこで かつて自分が事故として穏便に処理した部下の子供の死亡と似通った事件に遭遇 連続殺人犯の疑いが。 なんと作者は英国人。 題材として 日本の特高警察や731部隊や南京大虐殺を扱われていたら大変だったかもなどと ちょっと余計な心配を。 | ||||
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奥田英朗の「最悪」やトム・クランシーの「レインボーシックス」に匹敵する緊張感を持つ素晴らしい小説だと思う。だたし途中までは。個人的には兄弟の設定はそれほど必要だったか疑問。蛇足になってしまったように感じた。全体を通した重苦しいリアリズムが緊張感を生んでいたのだが、急に出てきた兄と弟の物語は冒頭部の伏線の回収にはなっても都合が良すぎ、リアリズムが犠牲になったように感じられた。それがなくてもソビエト連邦というシステムの中で絶望的な戦いを挑む一警官と最悪の連続殺人鬼という設定だけで十分だったと思うのだが。冒頭の極限状態は物語を始める上で十分な魅力をもっているがその後の話に関連するわけでもないのでそれほど必要だったのかどうか疑問に思う。著者のトム・ロブ・スミスはこれがデビュー作らしいので、欲張って詰め込みすぎたのかもしれない。 | ||||
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悪役として登場した主人公が、正義を追求する男に変わっていく様がすごい。 ラストも良い。映画化も当然だ。 | ||||
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読後感が素晴らしいので、どうしても高評価をつけてしまいがちだが、読んでいる間の嫌な気持ちについて触れないわけにはいけない。 子供の連続殺人どころではない、地獄のようなスターリン弾圧の中でイジメ抜かれる主人公の一家の描写を読んでいる間は、とても気分が暗くなったし、その気分の落ち込みは本当の歴史を知る上で役に立っているのならともかく、作者の想像をなぞる役にしか立っていないような気がした。 スターリン体制下のソヴィエト体制側の人々の描き方があまりにも醜い。 実際に歴史的事実はあるのだと思うが、実在の歴史上の国家を外国人が描くのであれば、その心理描写についても、それなりの根拠が必要になるのではないか。つまり、本当にソヴィエトの体制側の人間の心理を知らないのであれば、悪意に満ち満ちた人間描写は不当となると思うのだ。 私はこの本を書いた当時、26〜28才であった作者がソヴィエトの体制側の人間の心情を理解しているとは思えない。 | ||||
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本作は、暗い話やグロテスクな殺人の描写が続いて、ダークな気持ちにはなるが、最終的にはハッピーエンドになるので安心して読んで欲しい。本作の舞台はスターリン体制下のソ連で、主人公は国家保安省の捜査官レオ・デミドフだ。上巻の1/3くらいまでは、まったく物語のつながりが見えず、流れを読めるようになってくるまでは読み進めるのに時間がかかった。後半まで、プロローグが一体なんの話をしているのかさっぱり訳がわからなかった。その後、一気に20年後の1953年にとび、物語の本編が始まる。主人公のレオと妻のライーサが窮地に立たされるあたりからだんだんと物語に引きずり込まれ、その先は一気に読み進めてしまった。レオが自身の立場を危ぶめながらも、少年少女の連続殺人事件の捜査にどんどん深く関わるうちに次から次へと謎が明らかになり、全ての話が繋がっていく。ラストの展開はまさに「驚愕の」という感じだ。 私自身が歴史に疎いため、物語の舞台となっているスターリン体制下のソ連を想像するのが難しかったが、途中で投げ出すことなど出来ないほどに重厚で面白い作品だった。 著者の次回作にも期待しています。 | ||||
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1950年代のスターリン体制下ソ連。国家保安省の捜査官レオは妻にスパイの容疑がかけられていることを知らされる。妻の捜査を命じられるものの最終的にはその無実を主張したため、夫婦で田舎町の民警へと左遷されてしまう。そこで起きた児童惨殺事件が実は広範囲にわたる連続殺人であることを確信したレオは犯人を追うことにするのだが、同僚の策略と妨害を前に、その捜査は命を賭したものになっていく…。 上下巻合計で800頁近い長編サスペンス小説です。 主人公レオはソビエト社会における特権階級として物語に登場します。職場を同じくする者の息子が死亡した事件を、なんとか事故死として穏便に片付けようとする彼は、事なかれ主義を通すことで全体主義国家の中で餓えと寒さを免れた生活を安穏と送ることが出来ています。 しかし、児童連続殺人事件を追い始めた彼は、前門の虎(連続殺人鬼)と後門の狼(全体主義国家)の両方と対峙せざるをえないほど過酷な捜査活動を通じて、むしろ少しずつ人間性を取り戻していくことになります。 優れた物語とは、主人公がわずかであっても成長を遂げていく物語のことだと強く思います。この小説は、共産党一党独裁のソビエトの厳しい閉塞感を実に見事に表現し、そのやりきれない逆境の中でレオが人として、また夫として、確実に良き方向へと変わりいく姿が描かれ、それが胸に強く迫ってきます。 そしてまた彼が変わることが出来るのも、周囲の名もなき人々、貧しき人々の手助けがあるから。まかり間違えば国家に対する反逆者として命を失いかねない状況の中で彼らがとる行動もこの小説の中では決して現実離れしたものには見えません。読むものをぐいぐいと最終場面まで引っ張っていく力があります。 頁を繰る手を緩めることの難しい一級のサスペンス小説でした。 | ||||
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おもしろい! 飢えに苦しむソビエトの片田舎の一風景から始まります。 その描写も、え!?猫を捕まえて食べるの?!という場面ながら、 罠をしかける子ども二人の描写がとても興奮する。 この最初の描写が、後へと続く大事な描写になるとは。 20年後、刑法も、刑事訴訟法も、憲法も、自由を守るものではないソビエト。 人が簡単に逮捕され、有罪判決で処刑される現実。 お互いが密告におびえ、監視しあう、夫婦、同僚、上司でさえも。 足下の安全はまったく薄氷を踏むのと同じ。 そんな描写がリアルです。 そこで生きる主人公レオ。犯罪があることを否定はできず、立ち上がります。 | ||||
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