ボビーZの気怠く優雅な人生
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種別
長編
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あらすじ
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評判
ボビーZの気怠く優雅な人生の評価:
7.50/10点 レビュー 2件。 B ランク
ボビーZの気怠く優雅な人生の総合評価:
7.85/10点 レビュー 20件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1〜2 1/1ページ
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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探偵ニール・ケアリーシリーズでデビューしたウィンズロウが、同シリーズを“一旦”終了させて書いたノンシリーズが本書。探偵学入門編という体裁を取りつつ、娼婦の母親に育児放棄された形でストリート・キッドとして生きていかなければならなかったニールの、ちょっと触れれば壊れてしまいそうなナイーヴさを特徴に、潜入捜査を通じて人生の哀しみを知り、成長していく姿を描いていたが、後半はスラップスティックコメディからロードムーヴィーのような追跡劇へと、ニールの内面の掘り下げからユーモアを前面に押し出すような展開を見せていた。
そして本書で選んだのがロードムーヴィーアクション。伝説的サーファー兼麻薬王ボビーZの替え玉に選ばれたティムが、生き残るために、そしてボビーZが遺した子供のためにしつこく手強い追跡者達を迎撃しながら逃走していく。
いやあ、すごいね、これは。
題名は「気怠く優雅な人生」だが、中身は全く正反対。ニール・ケアリーシリーズと違って死体が出るわ出るわ。確かに同シリーズの3作目『高く孤独な道を行け』でもクライマックスにアクション要素をふんだんに織り込んだシーンがあったものの、こちらは全編に渡ってそれ。
特に登場人物表に載せられた人物がバッタバッタと死んでいき、全く先が読めない。たった310ページ強の作品なのに、今までの作品よりも出てくる死人の数が多い。
しかし血生臭さを感じるけれども、それよりもやはりアクションシーンが眼前へ蘇る。それはなんとも迫真に満ちている。
人を殺した者にしか解らない心の機微や感触を実感を伴わせて描写する。
しかし単なる殺し合いのエンタテインメント小説にしていないのがこの作者のいいところ。
ボビーZに成りすましたティムが道連れにするのはボビーZの隠し子であるキットという子供。彼との逃亡劇がキットにとって父親との失われた交流を取り戻す時間となり、ティムは他人の子供ながら我が息子と同様に慕い、やがて親子の絆を築き上げる。
そしてエリザベスというかつてボビーの恋人として振舞うキットの世話役の絶世の美女の存在もこの物語にアクセントを与えている。麻薬王ドン・ウェルテーロの下に入りながらも、ボビーZことティムに加担する彼女は高級娼婦で男性を手玉に取る器量を持ちながら、情に厚いところもあるファム・ファタール的存在だ。
ニール・ケアリーシリーズのヒロイン、カレンといい、本当にウィンズロウの描く女性像は魅力的だ。
上に書いたように物語の構造自体は伝説の麻薬王ボビーZの替え玉となったティムが自らに降りかかる色んな災厄から逃亡するという実にシンプルなのだが、ティムを追う敵たちが多種多様でそれらが見事に絡み合い、アンサンブルを奏でる。
ティムを替え玉にした麻薬取締捜査官グルーザから始まり、過去のある恨みからボビーを亡き者にせんとするメキシコの麻薬王ドン・ウェルテーロ。それにティムの刑務所時代の敵役だったヘルズエンジェルの面々。そしてボビーの腹心であったがボビーの財産に目が眩み、我が物にするため、ボビーを亡き者と画策する“僧侶(ザ・モンク)”。
それらを軸に登場人物表に記載されていないのが不思議なくらい個性的なキャラクターがボビーZことティムに関わってくる。たった320ページ弱の中にこれだけ面白い交錯劇をよくも編込んだものだと、改めてこの作家の技量には感服する。
本書は1997年発表の10年後、ハリウッドでポール・ウォーカー主演で映画化された。確かにこれだけアクションシーンが多く、しかも先を読ませないストーリーと絶妙なプロットを備え持つ作品であれば映画化されてもおかしくはない。
興行成績的にどうだったのかは寡聞にして知らないが、それにして映画化までけっこう長くかかったものだ。
しかしやはりニール・ケアリーシリーズを比べるとくいくい読めるものの、心に何かを残すのには軽すぎたように思う。確かにティムとキットの交流は特に物語の終盤に胸を熱くさせるシーンはあるが、ニール・ケアリーシリーズで見られたほどにはトーンは低く設定してあるようだ。
『砂漠で溺れるわけにはいかない』から続いて出版された本書に共通するのはそれまで上梓された作品に比べて非常にページ数が少ないことだ。この頃の作者は過剰に書き込まずにスピード感持った作品を書くことを目指していた、もしくはそういう物を書けるように訓練していた風にも取れる。前作にも書いたがなんだかエルモア・レナード作品を読んでいるような感じも受けた。
色々書いたがこの作者の作品が面白くないわけでは決してない。寧ろ何も考えずに面白い話を読みたいという人や時には最適の一作だろう。