カリフォルニアの炎



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初公開日(参考)2001年09月
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長編小説

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カリフォルニアの炎 (角川文庫)

2001年09月21日 カリフォルニアの炎 (角川文庫)

カリフォルニア火災生命の火災査定人ジャック・ウェイドは炎の言葉を知っている。寸暇を惜しんでは波の上にいる筋金入りのサーファーが、ひとたび焼け跡を歩けば失火元と原因をピタリと当てる。彼は今、太平洋を見下ろす豪邸の火災現場で確信している。これは単なる保険金詐欺ではない。殺人だ、と。ジャックは愛するカリフォルニアの太陽の下に蔓延る犯罪と悪徳の世界へ挑戦状を叩きつける。炎の言葉に導かれて―。鬼才ウィンズロウ入魂の最新作。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.50pt

カリフォルニアの炎の総合評価:8.25/10点レビュー 12件。Cランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(8pt)

表紙と内容が違いすぎ!

今回の主人公は火災査定人。なんでも作者ウィンズロウ自身が保険調査員だった時の経験を基に書いたのだそうだ。
そして内容も経験した者でしか書けないディテールに満ちている。特にジャックが火災現場で火元を調査する詳細な件は実に精緻でリアルに満ちている。科学的根拠に基づいたその調査は素人の好奇心を掴んでやまないほど、面白い。

さらに保険に纏わる数々の信じられないようなエピソードが読書の興趣をそそる。
保険会社を変えてはスプーンの盗難を訴え、保険金をせびるオリヴィア・ハサウェイ老婦人のエピソードも面白いが、何といってもアメリカで保険金詐欺が続出している件が非常に興味深かった。
何しろ不景気になると保険金を目当てにした偽装火災が増加するのだそうだ。好景気の時に将来の収入を見込んで、ちょっと背伸びをした金額の家を購入するが、不況の波で給料が削られ、「こんなはずではなかった」状態に陥り、減少する給料に比例せずにローンは一定の金額で出て行く。そんな苦境に陥ったとき、自ら火災を起こし、全てを無に帰し、一からやり直そうとするのだそうだ。その額、なんと1年で80億ドル!80億「円」ではなく、80億「ドル」なのだ。そしてこの手の犯罪は1年に約8,600件起きており、つまり1時間に1件起きていることになる。まさに保険会社はこれら詐欺事件との日々戦いだといっていいだろう。

また保険会社内の力関係についてもウィンズロウは詳らかにしている。契約を取ってくる外務部門。社に利益をもたらすよう保険率の算定を行う引受部門。そして保険金を支払う補償部門。
どこの会社でもそうだが、利益を生み出す部門が社内では発言権が大きく、また優先される。補償部門に所属するジャックは自身の会社の大口契約の顧客であるニッキーの不正を暴こうとするのだが、そうすることで大口の契約を失う外務部門の担当者や引受部門の協力者たちの妨害に逢う。
う~ん、サラリーマンを主人公にしながら、これほどマーロウを想起させる孤高の騎士を生み出す業界があっただなんて、いやはやウィンズロウはいいところに目をつけたものだ。

そして何といっても外せないのはウィンズロウが描くキャラクターの魅力だ。主人公のジャック・ウェイドはカリフォルニア火災生命の中でも腕利きの保険査定人として知られているが、実は過去は郡保安局の火災調査部のトップの調査員だった。しかしある事件をきっかけに職場を離れなければならなくなり、サーフィンと仕事に明け暮れる日々を過ごしている。その正義感の強さが彼の魅力であり、また弱点でもある。
この世渡り下手な男は上にも書いたが私に云わせればフィリップ・マーロウそのもの。以前よりウィンズロウの作風がレイモンド・チャンドラーに近づきつつあることを云っていたが、本作でその思いをさらに強めた。減らず口を叩くところはデミルのジョン・コーリーに類似しているが彼ほど型破りでもなく、また女たらしでもない。

そして敵役のニッキー・ヴェイルの造形も見事。KGBの工作員でアメリカにロシア・マフィアの一味になって不法に外貨を流出させることを命令され、マフィアの元締まで昇りつめたが、アメリカの自由に魅了され、アメリカ人の実業家となることを決意した男。彼の歪んだ心理構造が彼の想像を絶する過酷な生立ちを語ることで肉付けされていく。

その他、ジャックを保安局から追い出す要因となった天敵のブライアン・<失火>ベントリー、良き理解者である上司の<こんちきしょう>ビリー。元恋人のレティ・デル・リオ、そしてジャックが義憤を燃やす被害者のニッキーの妻パミラ・ヴェイル、その他登場人物表に名前が記載されていない人物も実に個性的で読者に感情移入を否応なくさせられる。
特に今回はウィンズロウが主要登場人物の過去にページ数をかなり割いて丹念に掘り下げているため、これまでの諸作よりもさらに登場人物たちの造形は深みを増している。

ウィンズロウの作品の根底に流れるテーマに“父性”がある。ニール・ケアリーシリーズでは彼を探偵に育て上げたグレアムがその象徴だし、ノンシリーズでも『ボビーZの気怠く優雅な人生』では主人公のティムが実の子供ではないキットを我が子のように扱い、父子の絆を築き上げていく。また先だって読んだ『歓喜の島』でも主人公ウォルターの回想にモノローグの如く、父親の訓示が挿入されていた。

すなわち作者ウィンズロウにとって父親という存在は自己を形成する上でかなり影響を受けた人物であり、また自身の息子に対し、こうありたいという理想像を作品に投影しているのではないだろうか。そして単に説教になりがちな父親の存在と言葉が全く騒音にならず、寧ろそれがあるために登場人物に深みが増し、読者の親近感を誘うのはこの作者の上手いところだ。

しかし本作では父親の蔭はそれまでの作品に比べると成りを潜めているようだ。主人公ジャックの頭に過ぎる父親の言葉は物語の冒頭部分にしか現れない。
これは父性からの脱却なのだろうか?つまりジャックを今までの主人公とは違う、より自立し、独りで考え、直面した問題を克服する男として描きたかったのだろうか?
確かにこのジャックは保険査定人として一流でありながら、“自分”が有りすぎるために妥協せず、そのために罠に嵌り、巨大な壁に何度も直面する。それを粘りと不屈の精神で乗り越えていく。
このジャックの姿勢を見ると、確かに上に考えたようなことが当て嵌まるように思える。これは後の作品でも注目していこう。

そしてウィンズロウの十八番である読者の予想の斜め上を行く意外な真相は本書でも健在。訴訟社会と云われるアメリカの立証第一主義の裁判が明らかな殺人の痕跡を“血の粛清”でもみ消し、またそれを逆手に取って莫大な損害賠償を求める訴訟を生み出す。そんな自縄自縛な保険業界のジレンマをまざまざと見せ付けられる哀しい結末だ。

これほどまでに絶賛しておきながら評価が8ツ星なのは、物語の閉じ方に不満を感じるからだ。
なぜだか解らないが、ウィンズロウの作品にはハッピーエンドが少ない。そして本書もなんとも報われなさを醸し出す読後感をもたらすのだ。
あのニール・ケアリーも最後は孤独だった。これはウィンズロウの人生観なのだろうか?男はすなわち行き着くところは孤独なのだ、と。それとも次の再開を仄めかす終わり方なのだろうか?

最後に苦言。
こんなに面白い作品なのに、表紙で大いに損をしている。この生っちょろいイラストではこれが不屈の男の生き様を描いた作品だということは想像つかないだろう。表紙に引かず、是非とも手にとって欲しい。保険業界の仕組みや裏側も判り、なによりもジャック・ウェイドという、この上ない魅力ある主人公に出逢えるのだから。


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Tetchy
WHOKS60S
No.1:
(5pt)

男性向き?

人様にお薦めするほど面白いとは思わなかった。
ただ、こういう展開は男性向き・男性が好みそうかな?

ハードボイルドとまではいかなくても、物語のスピード感は楽しめると思う。

ももか
3UKDKR1P
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未読の方はご注意ください

No.10:
(4pt)

火災現場てこう検証するんだ!

思わぬ展開が読むスピードを速める。楽しさも考えさせるところもあり久しぶりに引き込まれた。
カリフォルニアの炎 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:カリフォルニアの炎 (角川文庫)より
4042823033
No.9:
(5pt)

小説全体が炎上しているかのような熱いクライムノヴェル

ウィンズロウは前から気になって買ってたのですが本作で初めて読みました。話はある家で火事がおき、失火か放火を調べるクライムノヴェルで、そこから闇が拡がって行き・・・というもの。
兎に角主人公の保険会社の調査員の調査の精密さに驚きました。さすがにプロだけあって普通だったらまず判らないだろう証拠や痕跡を発見して放火なのか失火なのか緻密に調べて結論を導き出すところは圧巻。この辺のことを書くにあたって著者はそうとう火事について調べたであろうところにその苦労を察してしまいました。そしてただ、火事の話で終わらないように闇の勢力を絡めることで作品に奥行が拡がるところにサスペンスのことをよく心得ているのがわかりました。
更に作品全体が醒めた炎に包まれているような雰囲気で作品の内容とよく合致していて作家としてのウィンズロウの手腕に感心しました。ケム・ナンの「源にふれろ」に近しい感じがしましたがどうでしょうか。
この作品でウィンズロウに開眼しました。なるべく全部読もうと思います。
カリフォルニアの炎 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:カリフォルニアの炎 (角川文庫)より
4042823033
No.8:
(4pt)

奥行きが深い

一件の火災事故から、
火災保険詐欺、殺人、そしてその裏にある大きな陰謀へと
どんどん物語の奥行きが深まっていきます。

炎の描写や登場人物たちの生い立ちなど、
全編を通じあらゆる出来事が、目の前で起きているかのように
緻密に生き生きと描かれています。

ミステリーのプロットも良いですが、
作者(もしくは翻訳者?)の類まれな表現力が一段と
この本を面白くしているように感じました。

結末に向けた怒涛の展開は迫力あるものでしたが、
もう少しボリュームがあっても良かったかなと思い、
1つだけ☆を減点しました。
カリフォルニアの炎 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:カリフォルニアの炎 (角川文庫)より
4042823033
No.7:
(4pt)

非常に楽しめる娯楽作品だと思います

まったく知らない作家さんですが、初めて読んでびっくりしてます。何より、ミステリーなのにサイエンスのにおいがちょっとして、意外なほど楽しめました。もともとSFも好きなので、こういう作品に会うと、うれしくなります。
読み進むうちに、話が思っても見なかった方向に激しくシフトチェンジしていくのがスリリング。ちょっと盛りだくさん過ぎて、落としどころがどこなのか、少々不安になりましたが、まあ、納得のできるラストで、満喫できました。一人の旅行などに持っていくと、空いた時間がまったく無駄にならず、幸せな時を過ごせると思います。
お勧め。
カリフォルニアの炎 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:カリフォルニアの炎 (角川文庫)より
4042823033
No.6:
(4pt)

ニール・ケアリーシリーズを読んだら次はこれ

青春ハードボイルドミステリー(?)のニール・ケアリーシリーズで有名なドン・ウィンズロウの作品。

ノン・シリーズ(たぶん)で、保険会社の調査員が主人公。

警察が失火と断定した火災に不審を感じた主人公は、独自の調査で、放火の可能性を感じ取る。調査を進めるうち、自分の過去と向き合うことに。

明らかに放火だという証拠が次々と出てくるのに、放火の疑いのある火災保険の受取人、警察、さらには身内のはずの保険会社からも妨害を受け、孤立無援の状態に。

孤軍奮闘する主人公はまさにハードボイルドで、仕掛けられた謎もうまく最後につながるので、読み応え十分な作品に仕上がっている。

「歓喜の島」で見せたアバンギャルドすぎる文体(過去形を使わない)も、ほどよくまろやかに緩和されて、かなり読みやすくなった。

途中で延々と続くマニアックな「火災講座」にはちょっと閉口したが、ニール・ケアリーシリーズを読んで、ウィンズロウのほかの本を探している人には、お勧めできる1冊だ。
カリフォルニアの炎 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:カリフォルニアの炎 (角川文庫)より
4042823033



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