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天狗の面
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【この小説が収録されている参考書籍】
天狗の面の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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「天狗の面」:ある村で新興宗教に端を発した奇怪な連続殺人事件が起こり・・・というお話。日本の地方特有のどろどろとした土俗性に本格推理小説の合理性を持ち込んだ作品。この小説は私の勝手な憶測ですが、横溝正史の影響の元に書かれた物ではないかと思いました。横溝の日本の土俗性に合理的精神を持ち込んだ傑作の影響下にある様に思えました。単なるマネといったら著者もファンも怒りそうですが、まだ土屋氏の独自性が発現していない憾みが感じざるを得ませんでした。☆3つ。 「天国は遠すぎる」:若い女性の自殺が多発する中、ある自殺だけが他殺の疑いが持たれ・・・というお話。疑獄事件にアリバイ崩しと言えば、松本清張の名作「点と線」がどうしても頭を過りますが、こちらもその影響下にあるか多大な影響を受けたと思わざるを得ない作品の思えました。悪くはないし、実際完成度は高いですが、やはりまだこの著者の個性が発揮されているとは言いがたいと感じました。☆3つ。 という訳で些か厳しい評価になってしまいましたが、この二作以降はこの人にしか書けない独自の推理小説を発表して、日本の推理小説界に特異な位置を占める存在になる、言わば過渡期作だと思いました。ですのでこの著者のファンで初期はどういう物を書いていたかが気になる人向きかも。 なので読んで面白いですが、この人の実力はまだまだこんなもんじゃないと思いました。 それと飛鳥部氏の解説がこの著者の秘められたエロティシズムに言及した画期的な評論に思い、必読だと思います。 この著者のまだ習作を二冊合わせた合本。この人のファンとお暇な方はどうぞ。 | ||||
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土屋隆夫の文庫は殆ど所蔵しているが、最初の長編である本書だけは早くから絶版で再版もなく、漸く入手できて喜んでいる。期待通り、著者らしい時代背景や信州の小村の土地の雰囲気が出ていて、その後の作風の原点を探った気がする。ただ肝心のトリックは、いくら当時の法医学でも、他所で殺害して運ばれた死体は検屍で判別できる筈なので、やや無理があるといわざるを得ない。内容よりも歴史的意義のある書というべきであろう。 | ||||
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土屋隆夫、最後の長編(おそらく)と最初の長編をカップリングした限定版。現在の最新長編『人形が死んだ夜』は氏の住む長野県を舞台に展開するひき逃げ事件に端を発し、続いて起こる殺人事件の謎がメインとなる作品である。 本格推理としてみると、それほど強烈な謎も不可能興味もなく、新しいトリックがあるわけでもないのであるが、さすがベテラン、いつもの土屋流推理小説で、そこかしこに市井の人々の生活や風光明媚な描写が文学的ロマンを感じさせる。さらに作者はある人物を登場させ、古くからのファンも楽しめる。 限定版でナンバリングもしてあるコレクター向きであるが、それだけに貴重でもある。本の装丁もきれい。土屋隆夫ファン、推理小説ファンは必携であることは言うまでもない。 | ||||
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作者は寡作ながら良質の本格ミステリを発表している良心的作家。本作は処女長編作である。私の印象では、地域、人間性に根ざした土着性の強い作品が多いが、本作は特に土着性が高い。処女作にその作家の本質が現われると言う事か。 本作のメインのアイデアは「見えない犯人」であり、カーの「緑のカプセル」ばりである。また、同じくカーの「読者よ欺かるるなかれ」ばりに、作者が作中に顔を出して読者に注意を与える等、カーを意識した稚気が感じられる。それを日本の民俗信仰の中で実現した所に本作の意義があると思う。表紙の天狗の面と共に独特の読後感が味わえる佳作。 | ||||
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旧『宝石』出身の作家も次第に少なくなってきたが、作者はそのうちの数少ない一人である。すでに戦時中に脚本を発表していたとはいえ、事実上の処女長編は本作ということになる。本書で注目すべきは、作者が随所に介入し、読者に様々な注意を与えることだろう。カーター・ディクスンが似たような試みを行っているが、作者の遊び心と探偵小説への意気込みが感じられて興味深い。土屋作品の妙味とは、抒情云々というよりも、このような探偵小説への執拗なこだわりとブラックな感性にある。本書のように犯人やトリックがすぐわかるにしても、これがあるからこそ、彼の作品は最後まで読ませるのだ。なお、かの有名な「割り算の文学」という定式は本書に登場する。 | ||||
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