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枯草の根
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【この小説が収録されている参考書籍】
枯草の根の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.65pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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昭和36年(1961年)に、当時37才の陳舜臣(1924~2015)が初めて書いた長編小説。推理小説であるのは勿論だが、自分にとってはそれ以上に、昭和ノスタルジックなミステリーロマン小説である。執筆当時の昭和36年には当たり前であった町の風景や風俗が、時を経た今だからこそ独特の香りを放つ。そして時間、空間、ともにスケールが大きく、それ故、そこに深い叙情と余韻をともなう。それが陳舜臣の小説の味だろう。味というのは、人それぞれに好みが有るので、決して万人受けはしない。それで良いと思う。 作品世界の昭和36年の神戸も、現在では大きく変わってはいるが、道路や町名など、変わらない物も有るので、それらを自分の足で訪れる事が出来るのも、陶展文シリーズの楽しみのひとつだろう。「かもめ荘」の近い穴門筋は、今も「穴門商店街」といって、JR元町駅東口の南側、鯉川筋の一本西に有る。また、桃源亭の有る「東南ビル」は架空のビルだが、そのモデルらしきビルが「商船三井ビル」といって、旧居留地の明石町筋の南端に存在する。「南京町」は、話題に出るだけで直接登場はしないが、昭和36年当時は中国風の門や建物はまだ建てられておらず、民生広東料理店や老祥記(当時、店前はトタン屋根付きの狭い路地だった)の他は中国系商店は少なく、戦後からのバラックが残り、外国人バーが建ち並ぶ裏通りの歓楽街と化しており、昭和50年代の区画整理と南京町復興事業前は、かなり治安が悪かったらしい。また、陶展文の歩く「メリケン波止場」に、メリケンパークは当時まだ存在せず、細長い突堤だけで、通船や遊覧船が停泊していた。 | ||||
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小味だが堅牢なプロットの展開とスマートなアリバイトリックの妙味、さらに探偵役の陶展文を筆頭に描かれる滋味豊かな人間模様。戦争に翻弄された犯人像の陰影が永く心に刻まれる初期乱歩賞屈指の名作である『枯草の根』の詩情。 後半の展開に腰を抜かす、陳ミステリの最高傑作である『炎に絵を』の騙しの技術。 後年の歴史小説の大作の影に隠れ、不当に語られざる著者のミステリを代表する二大長編。 | ||||
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著者のデビュー作であり、初期乱歩賞受賞作品の中でも屈指の傑作。 冒頭部におかれた一見無関係な人物群像が解決に至り、巧妙な伏線として収斂する手際は既に見事。昭和三十年代の神戸の風景や華僑社会が克明に描かれているのも興味深く、大陸的無常観を感じさせる結末も忘れ難い。 併録された短編はうち三編が単行本初収録と貴重だが、凡庸な出来栄え。しかし悠然たる陶展文の愛すべきキャラクターは充分に堪能出来る。 | ||||
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『枯草の根』が歴代の受賞作の中でも格別にすぐれた作品だったという事が、選評からもうかがわれて興味深かった。 滅多に見かけない新章文子の作品ばかりか、受賞作が出なかった第六回の選評まで読むことが出来たのは、大いに得した気分。 確かに、分厚すぎて持ち歩きはしにくいだろうが…… | ||||
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第5回(1959年) 新章文子『危険な関係』と第7回(1961年) 陳舜臣『枯草の根』が収録されている。第6回は受賞作なしなのだが、選評だけは掲載されていて、読まされて苦痛を味わったとか、辞引きを買えとかいう選考委員の毒のある嘆きが面白い。 ■危険な関係 父の死で莫大な財産を相続した大学生 世良高行は、家族の誰かに毒殺されかけた過去をもっていた。郷里へ戻った高行は、命を狙ったものを探し出すため、狂言自殺を企てる。高行の死を目前にした人々の反応を見ようというのだ。ところが、幾度も練習し失敗しないはず偽装で、高行はそのまま縊死してしまう。偽装を妨害し命を落とすよう仕組まれた何ものかの作為が働いていたのだった。 ・・・ 高行、高行の義理の妹 めぐみ、高行の出生の秘密を知る緋絽子、緋絽子の元で働く勇吉、勇吉を慕う志津子。章毎に彼ら登場人物の視点が切り替わってストーリーが展開する。バラバラであったそれぞれの人生を、縺れさせながら高行の死という結節点にもっていく周到さが素晴らしい。欲望まるだしのどろどろした人間関係なしでは成立しないミステリである。 この手のミステリにありがちな強引さは見られないものの、反面、人物描写に力点を置いているゆえに事件の発生そのもののテンポが遅く感じる。犯人の予想もつきやすいし、犯行の動機の点でもミステリとしてはいま一つ。ちょっと引いてみればおかしな所も目につく。だが、著者の文章力に幻惑されてしまったか、些細な瑕疵は気にはならないほど小説としての完成度は高いと思う。 文学指向の選考委員 大下宇陀児のお眼鏡にかなったのが頷ける作品である。 ■枯草の根 金融業を営む銘除義の絞殺死体が自室で発見された。犯行のあった夜、最後に彼の部屋を訪れたものは誰か。銘除義が住むアパートの管理人や住人の証言から、事件は不可能犯罪の様相をおびてくる。遅々として進まない警察の捜査。場末の中華料理屋の店主 陶展文は、友の死の真相を探るべく、新聞記者 小島和彦の協力を得て、独自に調査を開始するのだった。 ・・・ 江戸川乱歩賞 選考委員たちが絶賛した作品。 陳舜臣さんのデビュー作にして、陶展文シリーズの第1弾にあたる。当時の日本で暮らす華僑の生活や、習俗が作品世界に取り込まれていて興味深いのだが、ミステリとしても完成度が高いと思う。陶展文が解決に至るための伏線のはり方が実に巧みなのだ。被害者の性癖をもとに、アリバイを崩し、全ての謎を解き明かす陶展文の観察眼が見所となっている。どうやら陶展文は、最初からすべてお見通し、余計なことは言いません という超然としたタイプの探偵のようだ。 本作品では、事件の真相が華僑という生き方そのものに関わっている。スケールの大きさを感じるし、ラストは余韻を残す締めくくり方だと思う。 なお、本巻の巻末エッセイは、第29回受賞作家である高橋克彦さん。新章文子さんについてもう少し語って欲しかった。 | ||||
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金融業を営む銘除義の絞殺死体が自室で発見された。犯行のあった夜、最後に彼の部屋を訪れたものは誰か。銘除義が住むアパートの管理人や住人の証言から、事件は不可能犯罪の様相をおびてくる。遅々として進まない警察の捜査。場末の中華料理屋の店主 陶展文は、友の死の真相を探るべく、新聞記者 小島和彦の協力を得て、独自に調査を開始するのだった。 ・・・ 江戸川乱歩賞 選考委員たちが絶賛した作品。陳舜臣さんのデビュー作にして、陶展文シリーズの第1弾にあたる。当時の日本で暮らす華僑の生活や、習俗が作品世界に取り込まれていて興味深いのだが、ミステリとしても完成度が高いと思う。陶展文が解決に至るための伏線のはり方が実に巧みなのだ。被害者の性癖をもとに、アリバイを崩し、全ての謎を解き明かす陶展文の観察眼が見所となっている。 どうやら陶展文は、最初からすべてお見通し、余計なことは言いません という超然としたタイプの探偵のようだ。 本作品では、事件の真相が華僑という生き方そのものに関わっている。スケールの大きさを感じるし、ラストは余韻を残す締めくくり方だと思う。 | ||||
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国際色豊かな神戸を舞台に、中国人社会を独自色豊かに描いたミステリーで、中華料理店主が謎を解き明かしていく物語。この世界を上手く使った種が生きた佳作です。一つ難点は、いくらか読みずらい点で、作者のことを考えると、致し方ないのかなとも、思うが・・・・・・。数ある乱歩賞作品の中でも、5本の指に入る作品です。 | ||||
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「枯草の根」は陳 舜臣先生の処女作にして第7回江戸川乱歩賞受賞という輝かしい作品です。 先生が自分とは正反対と設定した、体躯の立派な中華料理店店主である主人公、陶展文(とうてんぶん)が名探偵として活躍するミステリーの傑作!! 陶展文の人物へのあくなき興味から生まれる鋭い観察力から、友人徐銘義(じょめいぎ)の殺人事件の真相へと近づいて行きます。 その中で垣間見る登場人物の人間ドラマ。 そして陶展文だけが辿り着く悲しくも深い物語の結末。 陶展文に魅了されたなら、陶展文もの、と呼ばれる他の長編の作品達にも出会って下さい。 若い頃の陶展文が活躍する「三色の家」 人生に挫折し、殺人事件の容疑者にされた男に自分を重ね、陶展文が真犯人を追い詰めて行く「割れる」 インド独立運動の英雄チャンドラ・ボースが陶展文へ与えた影響は強く、彼がチャンドラ・ボースの謎に繋がる事件解決に奔走する「虹の舞台」 この陶展文が活躍する長編は、私も必死で探しまして、すべて手に入れるのに4年かかりました・・・。 すべて、陶展文という魅力溢れるキャラクターを知る上で不可欠な作品です!! これほど愛しい作品に出会えた感謝を、尊敬する作者、陳 舜臣先生に捧げたいと思います。 | ||||
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「枯草の根」は陳 舜臣先生の処女作にして第7回江戸川乱歩賞受賞という輝かしい作品です。 先生が自分とは正反対と設定した、体躯の立派な中華料理店店主である主人公、陶展文(とうてんぶん)が名探偵として活躍するミステリーの傑作!! 陶展文の人物へのあくなき興味から生まれる鋭い観察力から、友人徐銘義(じょめいぎ)の殺人事件の真相へと近づいて行きます。 その中で垣間見る登場人物の人間ドラマ。 そして陶展文だけが辿り着く悲しくも深い物語の結末。 陶展文に魅了されたなら、陶展文もの、と呼ばれる他の長編の作品達にも出会って下さい。 若い頃の陶展文が活躍する「三色の家」 人生に挫折し、殺人事件の容疑者にされた男に自分を重ね、陶展文が真犯人を追い詰めて行く「割れる」 インド独立運動の英雄チャンドラ・ボースが陶展文へ与えた影響は強く、彼がチャンドラ・ボースの謎に繋がる事件解決に奔走する「虹の舞台」 この陶展文が活躍する長編は、私も必死で探しまして、すべて手に入れるのに4年かかりました・・・。 すべて、陶展文という魅力溢れるキャラクターを知る上で不可欠な作品です!! これほど愛しい作品に出会えた感謝を、尊敬する作者、陳 舜臣先生に捧げたいと思います。 | ||||
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