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きのうの世界



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きのうの世界の評価: 3.16/5点 レビュー 38件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.16pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全15件 1~15 1/1ページ
No.15:
(4pt)

確かに伏線の回収は・・

この作ではのどかで小さな街の秘密が語られるが、物語に厚みがあって面白い。
下巻中盤までの焚き火のシーンは下手なホラーより怖く、こんなのも書けるのだと感心もする。
その場面も後から見るとモヤモヤ感が残るのは否めないが、謎解きも見事で、のどかで小さな街を突然スケールの大きいパニックの舞台に変えてしまうのは作者の真骨頂だ。

ただ、他の方も言う通り伏線の回収が不十分で、本来の主人公かと思われた「あなた」がどこかへ消失してしまったり、謎解きに名乗りを上げる他の登場人物達も中途半端で不可解な気はした。
元が連載小説らしいので原稿の都合でこうなってしまったのか?
そういうことに目をつぶれれば(そういう大らかさを持って読めれば)、物語としてはちゃんと終わってるので、安心して最後まで読んみてほしい。
なお、表に出ないエピソードだが、特殊能力者の苦悩というのはどこまで本当なのか分からないが、凡人の私には興味深い内容だった。
きのうの世界(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:きのうの世界(上) (講談社文庫)より
4062770377
No.14:
(5pt)

最終章に至るまでは星5つ、盛り上がる謎めいた雰囲気がすばらしい

いかにも恩田さんらしい不思議な物語でした。恩田さん作品は読んでいるとその世界に入り込んでしまい、もうどこにも行きたくなくなってしまいます。

ある地方都市にふらっとひとりの男がやってきて住みつきます。人当たりがよくいかにも善人だけど、印象が薄く記憶に残らない顔。そんな男が意外にも殺人事件の被害者になり、しかも犯人はいつまでたってもみつからないまま。しかも彼は東京で失踪していた人物だということがわかってきます。会社の上司の送別会に普通に出席し、翌日無断欠勤してそのまま消息を絶ってしまった、そして家族が誰もいないという人物。
”あなた”とここでは二人称で書かれる人間が、この町に事件の真相を調べにやってきます。この人物が出会う様々な町の人々。彼らはみんな何かを隠しているように思える。物語は時に過去にさかのぼり、男が生きていた頃に戻って昔のエピソードが展開します。
何のためにあるのかわからない不思議な3つの塔。男が亡くなっていたのは係争地になったこともある隣の市の飛び地の丘。その丘を監視していたらしい元学校教師の老人。大昔から土地の水路を管理してきた職能集団の一族・・などなど謎めいた要素がいっぱいです。いつもの不穏で不可思議な雰囲気がどんどん増していくのがとてもいいです。

ただ、残念なことに、ラストが納得がいきませんでした(今回はしっかりオチがありますが)。恩田さん作品では人は死にますが、本当に悪どい人間はあまり出てきません。たとえば「訪問者」でもそうでしたが、振り返ってみれば結局みんな善人だった?ということが多く、恐ろしげな雰囲気の盛り上がりが半端ではないため、そこがなんだか肩透かしになってしまうことがよくあります。この作品もそうでした。最後までものすごく惹きつけられたのに、真相がわかるいちばん最後の1章「水無月橋の殺人事件」だけが納得いきませんでした。
町の秘密も恐ろしいものではなく、”あなた”と称された主人公とも言える人物も、陰謀が裏にあったかのようにハラハラさせておきながら、あんなにあっさり消えてしまうなんて。殺された男の弟さんはどうなったのか?このあたりも中途半端でちょっと残念でした。最後の章に至るまでは文句なしに星5つなんですが。なので上巻が星5つ、下巻は星4つにしました。
きのうの世界(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:きのうの世界(上) (講談社文庫)より
4062770377
No.13:
(4pt)

ミステリというから誤解されるのだと思います

恩田陸ワールドを堪能できる作品でした。「上」のレビューでも書きましたが、最後の章に至るまでの緊迫感、不可思議さと不穏さ、謎めいた雰囲気がすばらしいです。ただ、最後の真相と結果が・・。今回はしっかりオチはあるのですが、真相の内容にあまり納得できず・・そこだけが残念でした。

いつも思いますが、恩田さん作品はミステリという売り方はやめた方がいいのでは。そうなると当然ミステリを期待して読む人が多くなるので、毎度同じ「オチがない」という不満が読者から出てくるような気がします。”この人が犯人で悪者でした””こういうトリックでこういうオチです”というはっきりくっきりした作風ではないので。
強いてジャンルを言うなら、たとえば幻想的スリラーみたいな言い方の方が誤解が出ないのでは。フランス幻想文学ほど訳がわからなくはない、娯楽小説寄りの幻想小説といったところでしょうか。
個人的にはとても好きな作風です。女流で誰が一番好きかといわれたら、私はやっぱり恩田さんです。
きのうの世界(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:きのうの世界(下) (講談社文庫)より
4062770385
No.12:
(5pt)

『水脈に浮かんだ街』は…

その日のページをめくるたびにこの本のタイトルを忘れてしまっていた。
移動中の電車の中で読むために購入したこの本。
水脈に行く浮かんだ街の風景と歴史、そこで起きた事件、そしてそこに折り重なるように、関心をもった人たちが吸い寄せられていくそれぞれの世界が、自分とこの本の間に浮かび上がってくる。
小説のマジックのようなものを感じた。
恩田陸さんの作品を手にとったのは、『蜜蜂と遠雷』を少し前に読んで、その時の“音(ピアノの旋律)のイメージの世界”を想像させてくれたこの小説家が、「きのうの世界」という“?”をどう描いて、私がそれを感じとるか。
差し迫った仕事のないこの時間に味わってみようと思ったからだけど。
私には、話題になった『蜜蜂と遠雷』よりも良かった。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.11:
(5pt)

読みやすかった。

きのうなど 忘却の彼方に追い払い 今日から又新しい日が 始まるのだとしたら、、、。
そう考えた時 吾郎の嬉しさが わかるような気がしました。短い日々ではあったけれど…。忘れたくない記憶だけがあればいい…。記憶って重さがあるかも 。
きのうの世界(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:きのうの世界(上) (講談社文庫)より
4062770377
No.10:
(5pt)

読んでいる間は最高!

恩田さんの書くものは、個々のエピソードや雰囲気が私好みなので、読んでいる間はとても楽しいのですが、きちんとした起承転結がある訳でもなく、読後に爽快感やカタルシスを得られる訳でもないので、実は読後感がイマイチです。(『夜のピクニック』は珍しくさわやかでしたが) そういう点で、私にとっては「何度も行く旅先」のようなものです。旅している間は楽しいのですが、帰っきてからはそんなでもないような。 ただ、一回行ったらもう行かないであろう有名観光地のように、どんなに読後感が素晴らしくてもオチが分かっていると再読する気にならない作品がありますが、恩田さんの作品はオチにあまり重きを置いていない(ように感じられる)ためか、何度読んでも、よく行く旅先を再訪したかのような喜びを感じることができます。 さてこの作品ですが、文庫化にあたり読むのは3回目になりました。相変わらず魅力的なエピソードと不思議な雰囲気、そして変(?)なオチで、読んでいる間はどっぷり物語の世界にひたることができます。ベストセラーにはなり得ないとは思いますが、またしばらくしたら、4回目の読書をしたいと思います。 ちなみに最も気に入ったエピソードは、「焚火の神様」です。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.9:
(4pt)

恩田さんらしい小説

不思議な二つの塔と(こわれたもう一つの塔と)水路に囲まれた小さな町。そこの水無橋の上で一人の男が殺されていた。その男は一年前に不意に失踪した男だった。わずか十数分の間に誰がその男を殺したのか。そして近くのバス停に落ちていた犯行現場を示すメモは?
 ということで、ひさびさの恩田陸は殺人ミステリです。
 しかし、さすがに恩田陸。一筋縄ではいきません。普通の小説なら、少しずつ少しずつ小出しに出されていく情報と状況描写で、本来ならどんどん物語の輪郭が絞り込まれていくはずなんですが、この小説では情報はひたすら物語の輪郭を大きく曖昧にしていきます。端正な文章を読んでいるうちに、物語は深い霧の中に広がっていきます。下巻でどんどん物語は収束していくとは思いますが、非常にミステリアスな、恩田陸らしい小説です。
 ネタバレにならないように、上巻の紹介としてはこのあたりで。
きのうの世界(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:きのうの世界(上) (講談社文庫)より
4062770377
No.8:
(4pt)

恩田ワールドのすごさを感じた

主軸は「ひとりの男の死」なのだが、章ごとに語る人物が違う。そのひとつひとつを組み合わせると、
作品全体の流れがあざやかに浮かび上がっていく。そういうストーリー展開が絶妙で、どんどん作品の
中に引きずり込まれるような感じで読んでいった。死体となって発見された男。その男が調べていた
こととは?一見ミステリーのようだ。だが、ミステリーとして読むと、疑問や不満を感じる人が少な
からずいるのではないだろうか。
結末にも意外性はない。いや、この作品全体に「意外性」などというものは存在しないのだ。だが、
意外性がないのに意外性があるように思わせるところに作者のすごさがある。この作品は、「不思議な
恩田ワールドをじっくりと味わう。」そういう純粋な気持ちで読むほうが楽しめると思う。私個人と
しては、とても好きな作品だった。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.7:
(5pt)

視点に関する技巧

恩田陸の超絶的な「かたり」の技巧が炸裂している作品です。ミステリー、ホラー、ファンタジーといったあらゆるジャンルの要素を鏤めつつ、あらゆるジャンル小説として中途半端です。でも、この作品は、そもそもどんなジャンル小説でもないように感じました。読み方はいろいろあるし、結果としてこの作品を気に入る人もそうでない人もいると思いますが、ぼくは星5つつけます。ぼくはこの小説を視点に関する技巧を凝らし、物語世界を俯瞰する視点とは何なのかについて思いを凝らした物語として読みました。というか、読み終えてそう感じ入りました。目次を見ても、この小説にとって視点が重要であることが明示されていると思います。
この小説の冒頭は二人称という珍しい視点ではじまります。しかも、中心となる「あなた」が知り得ないこともどんどん語られ、二人称としての整合性が簡単に破られていきます。違和感のある描写の行間に登場人物を「あなた」と呼ぶ「語り手」の存在が暗示されているようにぼくは感じました。
19章と3つの「幕間」からなる物語は、変幻自在に視点を変えていきます。物語としてのクライマックス、今日と昨日を隔絶するある大掛かりな出来事が描かれたあと、短い2章を添えて、物語は締めくくられます。この2章では、主にある一人の人物について語られますが、それぞれの章で視点が切り替わります。そして、最後の1ページで、さらに語りの視点が異様なものに変容します。最後の1ページに現れたこの視点こそが、冒頭である人物を「あなた」と呼んだ語り手の視点なのだろうと、ぼくは解釈しました。そうした異形の視点の存在そのものが、この物語を象徴しています。「これ」を「このように」書こうとする着想が凄まじいし、すばらしいと思います。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.6:
(4pt)

ぶ厚いのに一日で読んでしまった

本当に、恩田陸って、文章力というか、描写力というか、物語の吸引力はすごいと思う。 多くの方が書いてる通り、これできっちり結末で落とし前をつけてくれたら、頭一つ抜けた存在になるだろう。けどこれだけ何冊も、結末ボヤかしたり、後は想像してね…だったり、SFチックな最後にしたりするのは、本人が敢えてしてるんでしょうね。現実的な結末を、書こうとはしてないのかな、と思う。「推理小説」を読んでるんだ!という思い込みを捨てて今作を読むと、十二分に楽しめるし、立派に着地してると思う。恩田陸が書こうとしているものと、私が彼女に求めるもの、それが違うんだな、うん。それに結末は抜きにしても、彼のような人は現実にいそう。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.5:
(5pt)

真相が無数に存在する物語

ある町で男が殺された。彼は町の人間ではなく、さらに一年前に失踪していた。なぜ?どうして…恩田さんらしい設定で楽しめました。こういう話はほかの人が書くとただのホラーになってしまうかもしれませんが、恩田さんの筆力のなせる業なのでしょうね。最後の章は作中のある場面を踏まえて読むと別の真相があるのかと思ってしまいます。ただ真相は1つではなく自分で納得する真相がそれぞれ無数にあるような気がしました。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.4:
(4pt)

じわじわを愉しむ

水路と塔のある町で、一人の男が死んだ。
徐々に明らかにされてゆく住民の関係や町の謎。
文体からじわじわとにじみ出す、静かだけれど、どこか不安にさせる町の空気が、心地よかった。
怒涛のようなラストの展開は、恩田ファン以外にはちょっとハードルが高いかも・・・。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.3:
(4pt)

この気だるさがたまらない。

 読んでいて漂ってくる脱力感、意味不明な気だるさが常に恩田氏の著作には付きまとう。けれど、この感覚が著者の特徴であり、ファンである読者にとっては快感なのだと思う。この心地良さを求めて、また読んでしまった。
 今回はかなりの長編だった。次回作も長編だとうれしくなる。
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.2:
(5pt)

恩田さんらしい不思議な怖さが詰まっています

上司の送別会の日を境に謎の失踪をした1人の男性。その男性が、行方知れずのままに1年を過ぎて死体で発見された。彼に何があったのか!?☆この本、恩田さんらしい独特の不思議な世界観が見事に表現されていて好きでした。水路が張りめぐらされた町の謎。ホラーめいていてなんとも言えない不気味さを醸し出しながらお話は続いて行きます。☆知られてはいけない町の謎と1人の男性の失踪事件が、うまく絡み合っています。☆秘密を隠すために殺されたのか?とか考えて行くと幾人かの殺害の動機を持った人物が浮き上がって来ますが…。まさかのラストだったのでびっくりしました!!
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616
No.1:
(5pt)

アナザー イエスタデイ

恩田陸久々の長編ミステリ。
全19章、500ページ近くと、氏の作品群の中でも
最長編に近い一冊、ゆっくり腰を据えて読んでください。
ストーリーに関しては他のレビュアーの方が的確なレビューを書いてくれているので、そちらを参考にしてください。
突然失踪した男、その死体、閉じられた田舎の町、謎の塔。
これぞミステリーといわんばかりのキーワード、作者らしいです。
ネタバレではありませんが、本作の特徴として、作品の大部分が珍しい「二人称」で構成されています。氏としては代表的なものは「象と耳鳴り」の「往復書簡」くらいじゃないかなぁ。
具体的には二人称の章、三人称に章を交互に繰り返し、謎に追いかけます。
二人称で「あなたは」と話しかけられている間は、その話しかけられている人物は、物語後半になるまで明かされません。
まるで自分が探偵として物語に参加しているようでした。
登場人物が出揃う後半からは一転、諸処の人物が入り乱れ、三人称のみで加速度的に謎に迫ります。
「禁じられた楽園」のような雰囲気もありましたが、SFやファンタジー要素はなく、なるほどきのうの世界、久々の純粋(?)なミステリーです。
ちなみにちゃんと着地しているので、近年の氏の作品に閉口している方も、
一見の価値はあるはずです。傑作でした。
タイトルにも拝借した洋題もオシャレで、なるほどと思わされる。
映像化はムリそうですが、そのタイトルでもいいですね。
ところで本作は新聞紙上で一年半ほど連載されていたそうだが、
紙上で追いかけられた読者はいるのだろうかと思ってしまった。
それくらい、時間軸も飛ぶ上に、長いので…
「例えば、印刷したチラシならば躊躇することなく丸めて捨てられる。しかし、これが肉筆の手紙だったらどうだろう?(中略)肉筆で書かれたものを捨てることには抵抗がある。それはきっと、書いた文字もその人の一部だからだ。」 本文265ページより
きのうの世界Amazon書評・レビュー:きのうの世界より
4062140616

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