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苦役列車



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【この小説が収録されている参考書籍】
苦役列車
苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車の評価: 3.84/5点 レビュー 276件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.84pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全276件 161~180 9/14ページ
No.116:
(5pt)

ジャパンドリームか!最底辺からのし上がるこの猛獣をみよ!

主人公:北町寛多は、著者:西村賢太の単純変換だそうです。ということで、著者の私事をデフォルメ脚色したまさしく私小説。本書は、著者一連の寛多シリーズ?の一遍で、寛多19才明日無き青春編といったところ。芥川賞受賞作、映画化も決定した。氏の他の著作は大人になった寛多が表で文学趣味に没頭し家ではDVの両輪が痛々しく生々しいですが、本作はまだなにかほのぼのします。たぶんバブルピーク時崩壊直前のころと思われる。デズニーランドがオープンし、ディスコブーム、ポパイが売れ、大学はレジャーランドと化し、大方の若者は新人類とちやほやされ、合コンサークルとはしゃいで浮かれていた時代。その片隅にこんなやつがいたのかよっ。ストーリーではなく、著者独自の世界観を堪能するというか、これマジっすか?サイテーっスッゲーなどといいつつ、夢を求めましょうなどと言う文部省推薦の薄っぺらさでない、生きてる人間の生臭ささに圧倒される。驚愕と苦笑という複雑な感情を惹起させる作品なので、この本だけでは、はあ?でよくわからないかもしれない。他の著作も併せて読む必要あり。
 一連の作品のどの辺がフィクションかは著者のみぞ知るですが、著者曰く相当ノンとのこと。現実著者は性犯罪者の親、自身も暴力沙汰で前科持ち、学歴中卒、容貌醜悪、風呂も入らず衛生観念なし、女性は単に性のはけ口で、風俗通いは日常の重要関心事、肝心の人間性もネガティブかつ、自意識過剰という、社会的にも人間的にも破綻者。最近TVでよく見るが、暴言の数々は伝説的ともいえ、芥川賞授賞式における風俗発言を始まりとし、中でも「笑っていいとも」で、お昼時間にもかかわらず、風俗通いや女性蔑視の言行は、放送事故スレスレ、現場の女性客、日本中の良識ある人々を激怒させ、良識のない人々、下品な中高年男性を驚喜させた。著者によると、やっと得た異性のパートナーに些細なことでDVのあげく逃げられた。酒ぐせも悪く、暴言暴行も茶飯事だが、たいていは自分で起こしたトラブルの返り討ちにあうという情けない結末。また、関係した人々に小金を土下座で借金し、それを風俗で使い踏み倒す。風俗通いで、たまに相手に惚れたりすると、金をだまし取られたりする。著者は、まさしく社会的破綻者で、悪事をやってのける度胸はないが、カッとして殺人などおこして、殺意はなかったんですなどと主張しつつ刑務所に入る確率120%であろう人物だななどと周りから思われ、常識ある人々から関わらんとこなどと見られていたのだろうと想像する。
 しかし、そうはならず、この破綻者の著作が数々の賞をとり、現実受けて判を重ねているのは、自業自得のくだらぬトラブルと同列に、幸運の出会いや運も相当にあるという奇跡。さらにの注目は、人を楽しませるのが好きであったという、かの太宰治と同質のサービス精神が根底にある点。自身のだめ人間ぶりが、実は他人を喜ばせ楽しませるネタとしての価値に気づき、それを提供したいというサービス精神。そこにそれをうまく提供できる文才に恵まれるという希有なコラボ。そこにそんなものが世に出るなどけしからんと、常識ある人々が押さえつけたが、それがまさしくたまったマグマの大爆発ということになった奇跡。我々は、新たなる何者かの登場を見ているのかもしれません。ただ著者の成功や、調子に乗ってニヤニヤとTVで暴言を吐く著者を複雑な思いで見ているであろう、関わってひどい目にあった被害者?の方々、特に逃げた同棲相手の心情を思うと、今後、猛獣注意の看板、檻に入れての厳重管理は必要かも(笑。人目のないところで二人きりなど、絶対厳禁。
 著者にぞっこんで作品解説もしている石原慎太郎は、今後の活躍を期待しつつ、金も名誉も得た彼を逆に心配もしている。それを知ってか知らずか、著者は、私小説しか書けないので、今後は題だけ変えたようなモノを書くなどと、ファンをも愚弄するかの、さらなる暴言を重ねている。
苦役列車 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.115:
(4pt)

一気に読んでしまった

作者の他作品は未読。
身を削っている。
私も随分病んでいる。過半数の人が病んでいると思うが、その闇を作者のように表現し芸術にできる者はそういない。
後味はよくないがそんなことはどうでもいいことだ。
他作品も読んでみたいが、なかなか覚悟が要りそうだ。
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4101312842
No.114:
(4pt)

貧困と性欲と病気。自然主義の三大要素で出来た作品。

表題は『苦役列車』だが『苦役マイクロバス』っといったところか。

学歴も家庭もコネもない世をすねた少年が港湾労働に従事する話。現代版の蟹工船と言えるかもしれない。

現代の私小説というか自然主義作品、プロレタリア文学と言った趣である。

描かれるのは貧困と性欲と病気である。現代において、こんなにも私小説&自然主義作品の三大要素で出来上がった作品もめづらしいと思う。そこが今の読者には目新しく共感を呼ぶのだろうと思う。

文章がうまいという評判だが、プロレタリア文学などに見られる汚らしい表現が多く、潔癖症の人が読んだら眉根をひそめそうな感じである。その薄汚いところが小説の内容とマッチしていて読者を揺さぶるのだろうけれど、おおよそ漢文の素養から来る日本語の流れとは違うところにある文体である。これもある意味、名文ともいえるが。

主人公の『北町貫多』はまぎれもなく『西村賢太』氏で、氏に興味がある読者には堪らなく面白い小説だろうと思う。

しかし、私小説はいつか行き詰まるのは歴史が証明しているので、身辺を書き尽くしたあとが西村氏の正念場であろう。
これからも氏の小説的精進を見守りたいと思う。
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No.113:
(2pt)

文章が短すぎる

下流社会を感じるところと、誰にも思い当たる不器用な人間が感じる
心理描写がかなりいいです

しかし、いかんせん文章が短すぎるので、キャッチコピーみたいな小説です
下流社会を描いたというTVから受ける作者のイメージが文章から抜けること
がないので、タレントが書いた文書のような印象があります

もちろん、長いだけでつまらない小説よりマシなのは確かですが、これが漫画
ではなく小説でならなくてはならない理由がまったく感じられない

これであれば、闇金融ウシジマくんを小説化した方がいいのではないかと思っ
た次第です

小説である意味があるのか、小説ならではのメリットを出せた作品かと問われ
れば疑問が残る
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No.112:
(1pt)

期待ハズレ

父親が性犯罪を犯して逮捕され、いびつな性格になってしまった主人公が友人がほしいんだけど、わざとききょうな行動に走ってしまうというか、内容はそれだけでした。人との距離感をうまくつめられないというのはけっこうよくあるはなしでは? 八割は事実らしいけれど、こういう私小説っぽいのがいまどき珍しいというだけで話題になっているのではないかという印象です。 同時受賞の「きことわ」がいまいちだったし、その対極にあるようないいやさぐれ感はでています。
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No.111:
(1pt)

日記以下?

物語としての構成がまったく無い小説。
これはもはや小説とは言えない。
起承転結も無ければオチもない。
ただ、だらだらと日々の生活を綴っているだけ。
最後に強烈なカタルシスを期待したがみごとに肩透かし・・・・
読むだけ時間の無駄。芥川賞は日記コンテストではないはずだが・・・・。
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No.110:
(5pt)

ダメ人間と言う言葉を文字に表したような本

普段から小説はほとんど読まないのですが色々な所で噂されてたんで、買ってしまいました。

読んだ感想は、作者は本当の「ダメ人間」をこの本一冊にまとめたかったんだなぁと個人的に感じました。
文章は本人の好みなのか又は単に作者が中卒と言うことから自分の頭の良さを見せ付ける為にわざと難しく書いているのか、いずれにせよ本の内容から自身の止められない欲とコンプレックスがにじみ出てくる作品でした。 劇的なクライマックスがある訳でもなくただ単に欲に負けてしまう自身の人生を分かりやすく説明しているかの様な内容ですが、 恐らく作者が自身のだめっぷりをとことん分かってもらう為に意図的に練りだした拘りの様な気がしました。 起承転結もさほど無く特に光る様なところもないが、最終的にはこの本の主軸に沿った自身の欲とコンプレックスに溺れる様を語るだけで見事に一冊の本にまとめてしまっている。 「コイツ本当にバカだなぁ(笑)」 という感じで読めば後味の悪い終わり方もダメな方向にしっかり完結している(笑)。

現代の「ダメ人間」という言葉を一冊の本に表す一つの芸術作品である事は間違いない、と思いますよ〜。
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No.109:
(5pt)

阿部、西村、川上

阿部和重が好きだった。彼の作品が時代の最先端のような気がしていた。芥川賞よろしく、その人のピークから一歩遅れた作品に賞をあげてしまう。それが グランド・フィナーレ 。

5年後に西村賢太の作品を文芸誌で読んだ。「けがれなき酒のへど」だった。時代錯誤な私小説。だが圧倒的なリアリティがあった。
出自が同人誌というのも、彼らしい。いかにも雑草。比べれば阿部和重は「つくりもの」めいた感じがしてきた。
西村賢太が初めて芥川賞候補になったとき、けっこう衝撃だった。時代が動いた?感じ。

阿部和重と西村賢太。まったく作風もキャラも違うようなふたり。
でも実はほぼ同い年(1968年と1967年)。それにもびつくり。

が、合点がいった。
ニューアカや90年代のサブカルチャーを偽装してみせた阿部。
大正時代の私小説を平成の世に偽装してみせる西村。
どちらも文学ぶりっこ。

つーか、もうベタは無理で、文学やろうと思えば「ぶりっこ」しかない。
サブカルだろうと私小説だろうと。

しかしこのほぼ同い年の芥川賞作家。ふたりとも情念は(やっぱり)半端ない。だから作家、か。

にしても、このアマゾンで 苦役列車 と「よく一緒に購入されている商品」が川上未映子 すべて真夜中の恋人たち とは??
この川上が阿部の奥さんなのだ。

この「僥倖」をみなさんはどう思うだろうか?
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No.108:
(4pt)

これを現代に書く意味

徹頭徹尾、矮小で卑屈な主人公が馬鹿なことをして碌でもない結果を招く。このネットだ、グローバルだ、スマホだと騒がれる平成の世の中に、こんな大時代な小説が成立しえていることに驚かされてしまう。恐らく、みんな疲れているんでしょう。いつ、ネットで悪口や陰口を囁かれているかとびくびくしながら生活する現代人に、いつリストラにあって失業者になってもおかしくない時代に、作者は「良いじゃないか、俺よりまともだぜ」と語りかけているようだ。そのおおらかな温かさに皆が惹かれているのだろう。確かに稀有な作家だ。しかし、歴代の私小説作家はだいたい行き詰まって自殺か発狂に追い込まれるのが常だが、この作家には頑張って生き延びてもらいたい。自分たちより駄目な人間として。
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No.107:
(3pt)

単調肉体労働者カタログ

豊かな何でもある日本の国で、報われない働きかたをする労働者の紹介小説。人間は快楽(=お金)を感じる方へ動く。青年も中年も高齢者もできることの中で快楽の取り方に差があるだけで快楽を求めて活動する。この話しは無学歴、無資格で体だけを唯一の道具にして単調労働で働くモデルはいかに対価が薄いかを紹介している。アルバイト、契約社員、正社員とあるなかで、同じ作業をするにも付くオプションが違う。無学歴、無資格の身で作業をすると単調な一本の筋でしか対価は生まれないカタログ。一本の筋道で真面目に働いても報われないという見本カタログだろう。そこから脱け出すためには何を信じれば開けるのか!と思った。宗教か、資格取得か。人はお金稼ぎができる何者かになる為に宗教をしたり、資格取得に精をだす。稼げる身になる為に何に気づけばいいのか!何をおもい実践すればいいのか!そこを活字にできる人はいないものか。高校生、青年、中年も高齢者までそれを探している。現代日本には家電から食物、TSUTAYAにコンビニと何でもある国なのに、人を意欲的にする思想的なソフトがない国になった。そんなアプリがあっていい。 恵まれた国に生まれているのに、やるべき事が見つけられないのは何故だろう。そんな自分を他人のように大切に思える気持ちが読後にでた。逆転する働きかたは芥川賞授賞に匹敵する資格取得だけか。一般の労働者にとっては。小さな芥川賞に匹敵するものなら見つかりそう、そんなことをおもった。
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No.106:
(4pt)

苦しい

テレビで西村さんを拝見し、 とても楽しいお話と容姿に 惹きつけられました☆ 特に瞳が。 キラキラキラキラしている★ あんな瞳を持つ 日本人いたんだって思い ました。インド人の 子供みたいにキレイな 瞳ですね。ご自身の 興味を持つ対象に対して、 なりふりかまわず貪欲に 追求していく人の瞳なの でしょう。私は、 その瞳が欲しい♪ 作品は読んでて、 ちょっとキツいときもあり ました。なぜなら自分自身の 苦々しい 思い出、くやしい思いが 頭の中に蘇ってきたから です。でも、 それと向き合うことが結局、 自分で自分を認めることに 繋がるのかもしれませんね↑ 気づきが、たくさんあった 作品です。もっと早く 西村さんの作品に出会い たかった。できれば十代の 頃に。そしたら私の人生は、 もっと広がっていたと思い ます。いままでの私は “日下部”側の人間に憧れ、 でも近づけなくて自分を責め 自分を振り返らず 見当違いなことばかりして 生きてきました。。が、 これからは“自分”を見て “自分”の人生を歩いて いこうと思います! 西村さんに感謝です
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No.105:
(5pt)

生々しい

生々しく汚い男の性欲と卑屈な底辺の生き様が
迫力のある文章で脳に流れ込む感覚
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No.104:
(3pt)

普通の作品

それなりの内容ではありますが二度読み返したくなるものではなく、買うほどではありません。中卒で自意識過剰の救われない人間が書いた作品という意味では稀有ではありますが、文章力は作家の標準と比べて劣っているとさえ感じました。経済的困窮の象徴として、商業主義に基づいて選出されたんだと思います。
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4101312842
No.103:
(5pt)

毒を吐く

映像を見て芥川賞作家でこんなに毒を吐くやつら(彼の表現)がいたかと
父親のせいとはいえ中卒で落ちぶれた彼の作品が無性に読みたくなった。
最近の本で一気に読んだ作品は無かったがこの小説は一夜にして読み切った。
やるせない怒りを実体験に投射してぶちかましてくれる。
作品の体裁や文章の書き方でなく、怒濤の勢いが生み出す文学である。
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No.102:
(5pt)

近年の芥川賞受賞作の中で

唯一感動した作品でした。生ぬるい文芸界にぶち込まれた下流からのカウンターパンチって感じ。この作品が大きな反響を呼んだのは、貫多と共通の孤独感、疎外感を抱える人がたくさんいることの証左でしょうね。
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No.101:
(5pt)

ワンカップに文学の香りをつけた作家

どうしても著者が欲しかった文学賞である川端賞の選考日の様子が、こんな風に描写されています。

「ワンカップのぶ厚い壜を握りしめつつ瞑目して項垂れる貫多は、一歩も動けぬまでになった腰の痛みも相俟って、
いつまでもその場に立ちつくしていた。」

私にとってワンカップというのは、お金はないが酔っ払いたい、というおじさん達が飲むものというイメージが
ありました。私が夕方仕事を終えて通勤電車に乗るために駅に行くと、居酒屋に行くお金もないのだろうな、
と察する事のできる人が飲んでいる姿を目にしたりするものですから。
そういうものから漂うなんともいえない香りを文学にしたのが著者だと思います。
お洒落な大人の男女がこれまたお洒落なバーでカクテル片手に駆け引きするシーンなんて
この小説には一度も出てきませんし、またそのようなシーンを作る登場人物とは
別の世界=社会の底辺で生きていた著者ですが、だからといって同じような生活をしている
人々の希望になりたいというようなものもまったく文章からは感じられず、
孤独をただそこにひっそりとあるものとして描けるのは、やはり著者が本書を描いていた当時も孤独だった
からなのではないかと思いました。
芥川賞受賞を祝ってくれる人が現れるといいな、と思いつつ、そういう人が
現れて人並みのささやかな幸せを著者がつかんでしまったら、もうこのような
私小説が読めなくなると思うと、複雑な気持ちになるのです。著者には幸せになって
欲しいのは山々なのですが。
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4101312842
No.100:
(4pt)

無駄なプライドなんて捨ててしまえといいたい感じ

第144回芥川賞受賞作。読んだ感じは私小説を思わせるような感じですね。

苦役列車:貫多19歳。港湾人足作業の日雇い仕事で生計を立てる。バカの癖にプライドが高いがゆえに、人とうまくいかず、何度もろくでもないやつだなと感じる。日下部というやつが入ってきて、友達づきあいができるかなと思ったが、自分との境遇の違いに、自分でそのチャンスを逃がしてしまった。結局、港湾人足作業の日雇い仕事しかないだろうし、そこでいいように利用されるしかない。

落ちぶれて袖に涙のふりかかる:貫多40歳代ぐらいかな。川端康成賞にノミネートされている作品があったが、それに落選してしまう顛末を書いたもの。ぎっくり腰になって苦痛に耐えながらも、川端康成賞がほしいと思っていて、編集者に常識外れな行動を取る。

感想なんですけど、「苦役列車」のほうに興味を持って読ませていただいた。自分の体験をベースにしているということで、引き込まれるような感じはあった。
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No.99:
(5pt)

日本文学史初の……

この作品は、日本文学への叛逆の作品だと思う。そして、西村氏はその旗手だろうか。
例えば、泉鏡花や三島由紀夫は「美」を求めた。無論それ以外の作家もそうだろう。それと、よく太宰と比べる馬鹿者がいるが、ベクトルが違うので論外だ。それは何故か? 彼は本当の意味で敗北者でなく、意識と価値観は表現者なのだ! つまり、多くの文豪は「美」を求め、そこから自らの醜さに「酔う」ことがある。だが、本当の意味で「醜」を追求した者は日本文学史上でいただろうか? そう、西村賢太こそ「醜」への求道者なのだ。
いまどき珍しい文体と私小説と云う手法を武器に、閉塞感と平均感が漂うこの世へ泥臭く生きる下級人の様を生々しく剥き出しに晒すのだ! それが何故か読後の爽快感へと変わる……。
今までの価値観は打破されるべきである。醜いことは「悪」でない。本質だ! ばかりでない。怠惰と倦怠を妙技にて描く! どうしようもなく美化しない。ごまかさない。なんと清々しいことだろうか。

なんども言うが、今まで日本文学に足りなかった「醜」を、この作品で得られた。 

こんな奇才が出てきたのだ。まだまだ、文学も捨てたものではないのかもしれない。
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4101312842
No.98:
(5pt)

圧倒されました

読み終えて、ただただ圧倒され、出版社宛てに、初めてファンレターのようなものを書きました。「ようなもの」というのは、まだファンになったのかどうか自分でも定かでなく、ただ闇雲に何かこの作者に向けて発信せざるをえないという感情だけだったから。
 漫画家でいうと、つげ義春作品の読後感、あるいは林真理子氏の「ルンルンを買っておうちに帰ろう」以来の新鮮な衝撃を受けました。
 勝ち組、負け組と選別したがる風潮が蔓延する社会の中で、他の作品からも窺える、これほどまで藤澤清造を軸とした生き方にはキングオブオタクという賛辞を送る他ありません。
 また独特の文章に今時の草食系とは対極の非常なる男性性(あまりにも男性性が強すぎて自分でももてあましてる)と諧謔味を帯びた芸術性を感じます。
 私小説を書き飽いたら、海外へ旅などして今までに無い旅行記を書いていただきたい。
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No.97:
(5pt)

講談を聞いているかのごとき文体。

西村賢太の文体はユニークだ。
主人公が置かれている状況というのは、非常に悲観的状況で、本書の中にも表現として出てくるのだが、「落伍者」としての主人公が登場していて、すなわちそれは作者のかつての西村賢太自身のことでもあるということなのだろう。
そうしたタイトルの『苦役列車』ということからも分かるように、『蟹工船』的な悲惨さが漂う作品かと思いきや、読み始めから何やら文体にユーモアがあり、「悲劇的状況」がそうは感じられないという効果がある。

この「ユニークな文体」を、未読の人に説明するにはどうしたものかと考え込んだのだが、「講談風文体」とでも表現するのが相応しいのではないかと思えてきた。
本当に講談師が、講談をしているような感じなのである。
この「講談風文体」によって、西村賢太はある種の「寓話性」のような「救い」を小説の中に取り込むことに成功している。

決して劇的な結末が用意されているわけではないが、読後感は「さらり」として印象を残す。

作者の西村氏は、愛すべき人間というような人では決してないのだが、そもそも作家業というものは変人のような人がしてきた仕事でもある。
だから、作者自身に人間性なるものを求めるのは、本来的な作家の性質とは真逆なことのようにも思える。

であるから、どうか作者自身に嫌悪感を抱かないで、西村賢太の作品を読んで欲しいものだと願う。

作品とは、それ自体自立して離れていくものなのだから・・・。
苦役列車 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842

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