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苦役列車



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【この小説が収録されている参考書籍】
苦役列車
苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車の評価: 3.84/5点 レビュー 276件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.84pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全276件 241~260 13/14ページ
No.36:
(4pt)

人間の欲求の果てに

西村さんの私小説を読み、肉体労働者の方たちが訴えるような社会主義・左翼的発言がないことから、このひとは私小説を書くにふさわしい方なのだと思いました。
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No.35:
(5pt)

悲しいときに元気がでる

辛い体験をユーモラスに書いてあって、読んでて元気になった。とても良かった。
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No.34:
(3pt)

私小説である迫力と、おぞましい付き纏われ感が残る

性犯罪者の父親を持つ人間の私小説であるということを知っていて読むと、より物凄さを感じます。主人公の貫多に対しては、「こういう人間とは付き合いたくない」という感情が湧きます。友人の借金も返せず、家賃も踏み倒すとんでもない人物で、「それでも憎めないところ」というものが全く存在しない、おぞましさというか、嫌な付き纏われ感が残ります。その次に、絶望感とか、寂寥感とか、無力感とか、そういったことを感じさせます。貫多のような人間を切り捨てる訳にもいかず(少なくとも表面的には)、国政を担っていかなければならない政治家や官僚というのは何なんだろうとも思います。

私にとって小説というのは、主人公が一連の人との繋がりなどを通じて、何らかの形で「成長」することに、その価値というか、読む楽しさを見出すものだと思っており、それからすると、本書は本当に全く異質な衝撃的な作品であり、ずっと気持ち悪さが残っています。それだけ、文学的にはレベルの高い作品というか、受賞には値する作品ということになるのでしょう。

こういう作品もあるということです。
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No.33:
(4pt)

そこはかとなく感じられる「おかしみ」

芥川賞を受賞作をいち早く読むという習慣もなく、『KAGEROU』のような
話題作にもまったく食指が動かない私のような人間でも、授賞式の記者会見で著者
を初めて知って以来、読まざるを得ない気持ちになった。この著者は小説を書か
ざるを得ない人だということが直感的に伝わってきたから。

私小説であるというその内容は、罪なき罰を背負った青年の、孤独と不満と諦念
の入り混じった塩辛い日常を淡々と描いたものである。もちまえの過剰な自意識
がこの青年にことさらに卑屈な態度をとらせ、せっかくできた友人も遠ざかって
いく。かといって青年は一念発起するわけでもなく、凶悪犯罪に走るでもなく、
自分を罵ったり、他人を妬んだり、もうどうでもよくなったりしつつ、日雇いの
仕事と居酒屋と風俗店のループから出ることなく日々過ぎていく。

暗くて後味の悪い小説を予想していたが、意外にも、その独特な文章からは「お
かしみ」が滲みでていて、深刻になりすぎないよう絶妙にコントロールされてい
る。語り口を変えれば、「未来を閉ざされ、友も恋人もなく、単純労働で日銭を
稼ぐ毎日」という設定のこの物語も、随所で笑えるドラマやマンガにさえなるよ
うな気がした。その「おかしみ」は、この本に収録されている短編、「落ちぶれ
て袖に涙のふりかかる」でも存分に発揮されている。著者は、尊敬してやまない
藤澤清造の作風を「滑稽だけど悲惨味もある」と評しているが、この小説は、
「悲惨だけど滑稽味もある」ふうに仕上がっている。私小説が日記や自伝と違う
のは、自分の人生や経験なりをあくまで第三者的に見て、読者目線で構成しなお
し、悲惨さなり滑稽さなりで入念に味付けをしているところだろう。
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No.32:
(3pt)

強烈なにおい

土埃、泥、汗、体臭と”ぬめり”を強烈に感じるような小説。
難を言えば、文体は、ところどころ古めかしい言葉を用いて、ダラダラと妙に長い一文が続く。
男っぽい、力強い言葉を使い、猛々しいかと思うと「おそば」「お菜」など、不意に丁寧な言葉で表現されるので、少しとまどった。
性犯罪加害者の父親を持つ青年、貫多が主人公。
貫多が、やがて親しくなるのは、学生アルバイトの日下部。
初めは、貫多が優越感を持って付き合うが、やがてあることがきっかけで逆転が起きる。
この心理描写と展開はわかりやすい。
誰もが、こういう心理状態に陥ることがあるからだ。
このねじれた心は、加害者を親に持つ青年だけが持つ特有の感情ではない。
誰もが、今まで自分の方が優れているという思い上がった気持ちがあれば、真実を知り、相手の方が恵まれている、優れていると感じた時、プライドが傷ついた時のダメージは大きい。
友情が、ひがみ、ねたみ、劣等感、憎悪に切り替わる時の反動はすさまじく、負のエネルギーが爆発する。
貫多は「どうしようもない男、哀れな男」でもある。
だが、この世の中、誰もがどうしようもない人間であり、悲しみを抱えていると思う。
その事に気付いているか、気付いていないだけの差なのかもしれない。
人生自体が、苦役とも言える。
日下部達に毒舌を吐きながらも、自分自身にも唾を吐いている事を自覚している悲しさが、こちらにも伝わってきた。
格差社会、持って生まれた運命、甘っちょろい生き方への、憤りの挑戦状とも感じられる。
文体は粗いし、好みは分かれると思う。
特に若い女性には、苦手な部類に入りそうな作品。
だが、メッセージは力強い。
性表現が露骨で荒々しく、独特の古い言い回しも多いので、どちらかと言えば、男性向けの小説だと思う。
★は3・5
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No.31:
(4pt)

芥川賞受賞を言祝ぐ

本書には、芥川賞受賞で話題になった表題作ほか1篇が収録されている。その「苦役列車」の方は、まずまず期待していた通りのおもしろさであった。こぢんまりとはしているが、最後にやはり藤澤清造の名が出てくるところなど、演出もうまく利いていて、小説として体よくまとめられていると思った。また、わずか40頁ほどの「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の方もなかなかよい。古本を買うシーンが出てきて、こういうのは古本好きにはたまらない。主人公が買う本がまたシブくて、唸ってしまった。

さて、西村賢太の魅力は、何といっても自分の言葉を持っているところにあると思う。この作家にしか使えない言葉があるのだ。あまり馴染みのない語彙や言い回しがそこには多く含まれ、辟易する読者もいるかもしれないが、作家の固有性はまずその言葉にこそ表象されるものである。それらは何も奇を衒って使われているのではなく、長い年月をかけて熟成させ血肉化してきた言葉なのだ。他に名を挙げれば、野坂昭如、車谷長吉、町田康なども同列に並べることができるかもしれない。私はこういう作家たちを大切に読んでいきたいと思う。
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No.30:
(3pt)

駄目なものには魅かれるが・・・

駄目人間の仲間の僕としてもすんなりと共感できないほどの駄目さ加減がいい。しかし、その文章表現はとってつけたような・・・昔の小説家やガロ系漫画家達からの影響をつぎはぎしたような“なかなかリズムにノレない”ギクシャク感があって、読むうちに不快感に襲われる。普通に書きゃいいのに・・・と素直に思う。その言い回しというかノレない小栗虫太郎のような底の浅い虚飾に満ちあふれた文章は、秋葉オタク系のような作者の見た目のようではある。

文芸春秋に掲載されている、ある芥川賞選者の選評に「現代のピカレスク」とあるが、果たしてそうだろうか? 裕福な家に生まれた選者の、自身とは真逆の汚さへの憧れというか、もしかしたら内心は侮蔑の様な感想である。裕福なる選者には決して西村氏の様な人間やその精神世界など理解できるはずがない。ものは言いようだが奔放・・・で貞操感のない奇をてらっただけのくだらない性交渉や恋愛にうつつを抜かす物語ばかり受賞する様なイメージがあって芥川賞受賞作なんて読まないのだが、今回は魔が差したのだとため息ばかり。ま、夜読むのはインスマスがいいと言う同受賞のもうひとりの女性作家による「きことわ」を読んでいる途中で、今回の受賞作は2つともこれまでのものとは違うのだな? と少し安心したのです。
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No.29:
(2pt)

「商品の説明」に決定的な誤記が…

作品云々よりもまず、「商品の説明」の誤字を指摘したい。(誰か早く直してほしい)

内容(「BOOK」データベースより)
友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。…(2011年2月12日現在)

主人公の名前は「貫太」ではなくて「貫多」では!?

レビューを書く人が登場人物の名前を書き間違えてるのはさらっと読み過ごすのですが、「商品の説明」で登場人物(しかも主人公!)の名前を間違えたまま放置されているのは、見過ごせないなぁ。著者にも失礼ではないかと…。

(レビューを書く気にはなれないので、今日はここまで)
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No.28:
(3pt)

「苦役」と言うには軽すぎる

「話題の本」を読むのはほぼ初めて。
どれだけ重いテーマが…と期待して読み始めると、裏切られる。
非常に軽い。テーマも軽いし、読後感も軽い。

つまらないわけではない。読んで損はない。
「中卒+日雇い」というまったく違う世界の19歳の日常に、「なるほど、こういう生き方もあるんだ。ふーん」くらいの感想は得られる。

しかし、まったく共感はできない。境遇が違いすぎる。
その割には、主人公の背負うものが軽すぎるし、あまりにも低俗な「酒、タバコ、風俗」の生き方に感情移入さえもできない。

出張中の時間つぶしには良かったので後悔はない。
しかし、これで芥川賞はちょっと…。

自宅に戻り「人間失格」を開き、その格差のあまりの大きさに愕然とする。

「文学」というものが、現在の日本では切実な存在ではなく、せいぜい「やや高尚な暇つぶし」程度の位置付けということなんだろう、と自分を納得させるしかない。
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No.27:
(3pt)

文学の限界

十数年ぶりに文藝春秋を購入してこの作品を読んでみましたが、「えっ、この程度で芥川賞?」というのが率直な感想。

漫画の福本 伸行の「最強伝説 黒沢」に、つげ義春の「無能の人」を混ぜて「畢竟」だの、「陥穽」だのの死語すれすれの言葉を添えてあるだけの作品に思えた。

ま、これが日本の文学の新人賞のであることは間違いないのだから、文学ってこんなものなんでしよう。
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No.26:
(4pt)

現代無頼私小説家

知り合いになったらすごく付き合いにくそうな人である。ほぼ事実を書いた私小説だという。自分を卑下しているようでいて、どこかで他者を見下している。コンプレックスというのはそうしたものだろうが、それにしてもめんどくさい人だ。
 中学校卒業以来その日暮らしの肉体労働をしてきたという暮らしぶりには圧倒される。そしてそんな無為な日々をやりすごしながら、どこかで一発逆転を虎視眈々と狙っている風でもある。
 かくして、このように有名作家となったなったわけだから、人の一念というのは大したものだ。車谷長吉(近作は私小説ではないが)と双璧を成す現代の無頼私小説家である。
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No.25:
(4pt)

しょうもない、でも愛すべき男の話

読んでいて何度も、「ほんと、しょうもないな〜」
とつぶやかずにはいられない、
そんなしょうもない19歳の男の話だか、なぜか最後まで
一気に読んでしまい、終わりには愛着まで湧いてくる
そんな不思議な小説だ。

主人公は19歳の男の子。中卒で、日雇いとして働いている。
過去に父親が性犯罪を犯し、引っ越しをしたりして友達と呼べる
存在もなく、日雇いもただその日を食いつないでいくための
手段。夢も希望もなく生きている。
そんなある日、日雇いの仕事中に同年代の、久しぶりに
友達になりたいと思う男の子と出会う。彼に触発され、主人公は
持ち金がなくなれば働く、というスタンスから、毎日のように
働くようになるのだが…

しょうもない彼の、しょうもない話です。
でも、やめられない。
そして、なんか文体がいいのです。古風な文体と言葉遣い。
こんなしょうもない小説、あっていいと思います。
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No.24:
(5pt)

この作家の前に 襟をただしたい!

一気に拝読しました。 ほんものの 紛い物でない作品に出会い グサッと 心に落ちて来ました。 生きることは 生きるとは、 今 この日本の若者に是非読んで欲しいと思いました。 無理なく自然体で 自分自身を見つめ対峙していることに、感銘を受けました。ご本人は劣悪な環境と言われていますが、 汚れを感じない、むしろ精神性の高さに脱帽です。芥川賞の全うさを信じました。そして選者の勇気に、日本の失われていない文化圏を感じています。この偉大な作家の作品を 眼を凝らして 読みたいと心から思いました。ありがとうございました。 古代紫
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No.23:
(5pt)

周りに読ませて感想を聞きたくなります?

受賞の報は「フーン」という感じでしたが、日曜の日経書評を読んで興味をもち、購入。
個人的には久々ヒットの小説。面白いです。

インパクト文章・ユーモア。笑ってしまいつつ主人公の病理心理が映す現代人の「普通」
に慄然としました。洒脱・・・という言葉の恐らく対極?粘着なのかアッサリなのか
名状し難い筆致で、ホラ!読みやがれ的にどうしようもないライフを読まされてしまう。。。
移動のあいまの1−2時間で読めてしまう小説ですが何とも言えない読後感:寂寥感・
焦燥感・絶望感が残ります。・・・ひとに読んでもらって反応みたくなります。
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No.22:
(5pt)

苦しさを鋭い感性で描いています

自分自身の苦しかった時期を思い出します。そして、これから先何度か再び経験することになるのだろうか・・・。ある意味暗くなりますが・・。
私小説ならば、芥川賞を受賞した後の華やかな人生劇場もぜひ書いて欲しい!ぱーっと明るく?
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No.21:
(3pt)

何ともいえない不思議な文体

口語的に気軽に読めるような文体でありながら、いつの時代の言葉なのというような熟語が現れるという摩訶不思議な文章。そこに綴られた内容は人生を早々に諦めた人間の青春の記録?私小説ということですが、自分をここまで客観的に見つめていられることに著者の力強さを感じます。
 ただ、個人的には朗読できるような文体の小説が好きなので、ちょっと苦手な作風した。
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No.20:
(2pt)

野坂さんはどう読むだろう?

発表と同時にその作品を読むなんてことはこれが初めてである。「限りなく透明に近いブルー」などいまだに読んでない。感想は、大衆文芸誌の性風俗特集小説の一篇としか思えなかった。少年が浮かぶ瀬もなく塵芥(ちりあくた)のように、人生の川を流されてゆくのだが、芥川賞というより、芥側症といった感じだった。こういう「蟹工船」みたいな身も世もない貧乏小説は今時、珍しいのか。社会色の強い「蟹工船」というよりも、「私」小説の復活とでもいうのだろうか。

 彼の性格の悪さや救い難いねじ曲がり方というのは、描写はたしかに正直ではあるが、自分と比べてもそんなにヒドイことはないと思う。たしかに父親が性犯罪者で有名とかいうのは異常というか特殊な環境であるとは思う。だが、特殊な環境でそうなってしまったんなら読む方は「それじゃ無理もないな」と感じてしまう。

 人間の心理心情は特殊な事情を設定しなくても、もっと真っ黒い注連縄のごとくであり、とてもこんなもんじゃない。むしろ一人で悶々とする明日なき心情に一種のユーモアを感じてしまったくらいだ。それが狙いなのかな。読んでいる最中、こいつは誰か殺して終わるのかと思ったが、そういう華々しさはなかった。

 読後感としては、この困った人について特別な感慨はわかなかった。自分が冷淡なのかとも思った。が、これは小説の中だけで生きている主人公だと理解してしまったのかもしれない。恋人のいる親友に対する嫉妬心の描写などは赤裸々なことは認めるが、評判ほど迫真的だとは思わない。苦役列車というタイトルも意味不明だった。ただし、文体は独特であり、この他の作品も読みたい作家ではある。文体の独特な、と言えばあの人、野坂昭如さんはこの作品をどう読むだろうと思った。
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No.19:
(5pt)

私小説初体験

「私小説」というものを初めて読みました。
この小説はひねくれる要素満載の設定で飽きてしまいそうにも見えますが、
こちらの胸ぐらをつかんで離さない力強さがありひきこまれました。
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No.18:
(4pt)

面白いが、先が心配

環境そのものだけをみれば、貫多程度では、
まだまだ底辺には程遠い落ちぶれぶりだが、
若い身空(10代後半)であの境遇に置かれれば、
それはまるで行き先の決まった列車に乗った気分にもなるだろう。

そういう観点からすれば(つまり苦役が主観的なものだとすれば)、
ほとんどの人間が苦役列車に、一度は乗っているはずであり、
誰でも、この小説のどこかしらには、共感を覚えると思う。

ただ、今後のことを考えると、
己の体験が創作の源泉である以上、
ありきたりの生き方では、
面白味のある小説が生み出せないという点が、
この著者の限界であると思う。

無責任な取りまきや読者に乗せられて、
今後も破滅にひらめきを見出し続けるとしたら、
この著者はどうなってしまうのだろうか。
心配だ…。

同収されていた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」は、
貫多40代の話だが、確実に破滅の予兆はあると思うのだが…。
よくある私小説家のありふれた終わり方にならないことを祈る。
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No.17:
(3pt)

この作品だけでは、心に残るものは無かった

芥川賞発表の報で、西村氏を初めて知った。
記者会見やその後のインタビューで垣間見える非常に奥深いキャラクターに興味がわいたので購入。

彼の書いた作品はすべて私小説とのこと。
本作で描かれている事も大部分が事実に基づいているだろうから、
様々な屈辱的な体験や、辛い思いをされたのだろうと察する。

ただ、両親がいて、大学や専門学校に通っている「普通の」学生に対し、
異常な嫉妬心を抱いたり、罵倒するシーンがあったが、これには些か嫌悪感を覚えた。
昔、長淵剛が主人公のドラマなどで特徴的だったが、人気大学や大企業に所属しているだけで、
そこの人間達はエリート意識に凝り固まっているという固定観念を前提にしている作品があるが、
こういったものは表現すべきでないと思う。
そんなことは前時代的でリアリティが欠如しているし、ただの言い掛かりに近いからだ。

こういった主人公やモチーフへの共感の欠如が災いしたのか、
正直、この作品だけでは心に残るものは全く無かった。

ただ、西村氏の作品はすべて私小説ということだから、
他作品を読んで、主人公・貫太を別角度で見てみると味わいも出てくるかもしれない。
文体は非常に特徴的で好みの作家なので、色々と試してみようと思う。
苦役列車 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:苦役列車 (新潮文庫)より
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