(短編集)
瓦礫の死角
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瓦礫の死角の総合評価:
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短編四作中、三作がいつもの主人公で出てくるお馴染みののやつ。たぶん、作者自身の投影なのだろう。中卒であるこの作家の屈折した心情は、むしろ、芥川賞受賞作「苦役列車」によく現れている。最後の短編は、彼が師と仰ぐ藤澤清造がモデルのようだが、残念ながら私は藤澤清造の作品を一つも読んでいない。相変わらず、ゲスの極み的な内容を、格調高い古い文体で書いている。そのギャップがなんとも心地よい。本当は長生きして、ずっと今でも書き続けて欲しかった。多くの作品を残されているで、それを少しずつ楽しんで読みたい。 | ||||
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同工異曲と評される方もいるが、私個人は西村賢太氏の作品は落語に近いと思っている。 同じ話が演者により全く違うものとなるように西村氏の作品も文章で自己の体験をああでもないこうでもないと 捻くり返すさまが面白いと感じた。 まあ、読後の第一印象は小説版「男おいどん」だなだったが。 | ||||
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西村賢太の例によって例の如くの私小説。「瓦礫の死角」「病院裏に埋める」は 実際の出来事に少し脚色を入れたものだろう。どこといって優れたものでは ない。 全く自堕落である主人公がひたすら母親にお金をせびったり、暴力まがいのこ とを繰り返すだけの「瓦礫の死角」。どうにも主人公=西村(作中では北町)が 自嘲気味に言うように「どうしようもない」生活を送っている主人公の不行跡 を面白おかしく(かもしれない)書いている。それ以外に内容があるだろうか。 性犯罪を犯した父親が刑務所から出所して、今住んでいる所に来るかもしれな いと言う恐怖。母親とその恐怖を分け合うが、それが一向に小説を面白くさせて いない。主人公はただ喰らい呑みタバコを吸い母親を虐めるだけ。 何のために書いたのかが分からない。 「私小説」でよくあることなのだろうが、自分の過去(現在)に目新しい出来 事がないと、過去に書いた内容と同じような文章を重複させて載せる事になる。 その典型のような作品だろう。どの話もいつか聞いた読んだ話で、またかと少々 うんざりしてくる。自分の体験に固着するあまりに経験以上のことは出てこない。 まるで「自分の私生活を切り売り」して、売るものがなくなると以前のものを、 その包紙だけ変えて再度売ったり、水増しして嵩を増やして出したり。 西村賢太は決して嫌いな小説家ではなく、その自虐的な作風は時折読んでみると 結構面白い。昔好きだった黒岩重吾という作家がいたが、重吾は自らの体験を 膨らまして作品を作り上げたが、西村さんはどうだったのか。 自ら自縄自縛してしまった感がある。 惜しむらくは、亡くなってしまったけれど、この本に収載されている「根津権現 裏」の藤沢さんのように若くして他界したことは本当に惜しまれる。私のように 「私小説など文学的には意味がない」などどほざく人間にも、その作品は魅力が あった。「西村賢太全集」が出たら買ってみたい。 ただ、今回のこの作品集は読み応えがなかった。 | ||||
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『瓦礫の死角』『病院裏に埋める』『四冊目の「根津権現裏」』『崩折れるにはまだ早い』の4編。 『瓦礫の死角』は17歳の北町貫太が『煽動で渉れ、汚泥の川を』で洋食屋でのバイトからたたき出された直後のお話。 バイト先には、住み込みで働いていたことから、次の住処を見つけるまでの休養かつ次の借家を借りる初期費用・生活費の補充もかね、実の母親宅に転がり込む貫太。 バイト先での規則正しい生活からの反動から、昼過ぎまで寝て、起きたら出前の中華を腹いっぱいたべ、部屋でゴロゴロする日々。 実母からは「いつまでいるのか」と煙たがられ、これに対し「ビールとタバコ買って来い!」と奴隷のように指示を出す貫太。もともと、貫太が親に反抗もできない小さな子供の頃、親から殴るけるの体罰を受けていたことの反動でもある。 そんな実母の体調が悪化、その原因が、獄中にある実父が、そろそれ釈放となり帰ってくるのではないかという恐怖からという。 『病院裏に埋める』は、父が釈放となって帰ってくる前に逃亡し、借家契約を新たに済ませた17歳の貫太が駅構内の飲食店(焼きそばとカレーのチェーン店)でバイトをするお話。 時期的には『人もいない春』のお話の前後にわたる。 『四冊目の「根津権現裏」』は2018年というから貫太が大人になって最近のお話。 需要があろうがなかろうが自分のために書いたという、西村賢太の趣味の世界。 『崩折れるにはまだ早い』は貫太が小説家になった後のお話かと思いきや・・。 本短編集は西村賢太作品を初めて読む人にはそれほどお勧めしません。 やはり最初は『小銭を数える』『煽動で渉れ、汚泥の川を』あたりが良いかもしれませんね。 | ||||
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作者の17歳時分の頃を綴った「瓦礫の死角」では、いつものダメ人間な作者の、母親に依存しつつもうだつの上がらない生活面だけでなく、犯罪者の加害者家族という立場から世間との交流を絶たざるを得ない心境や、出所してくる父に対する恐怖心などを独特の文章で描いている。 「4冊目の根津権見裏」では、藤澤清造の没後弟子を自称する作者の、師匠である藤澤清造が残した作品に対する想いや行動が綴られている。 私がこの作者のことを気に入った要因の中に、私自身が元来、一般的にダメ人間と呼ばれる人種に特別惹かれてしまうタチなのとは別に、作者が唯の文章の上手いダメ人間なだけではなく、己が心の底から尊敬し崇拝する人間に対して、なにか直向きな情熱の様な物を感じるからであり、その様に一途に何かを成し遂げようとする人間に、どうしても魅力を感じてしまうからである。 「崩折れるにはまだ早い」では、作者の自死した友人に対する想いや、死に対する考えが書かれており、「誰にも等しくやってくる死こそを最後の救い──現世でのいっときの、勝ち馬と負け犬の恣意的な色分けを全くのチャラとしてくれる、或る種の天からの救済措置」という作者の言葉には大いに同意しつつも、結果的に若くして急逝した作者の死に対する矜持を感じとれた。 | ||||
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