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サマータイム・ブルース



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サマータイム・ブルースの評価: 4.28/5点 レビュー 29件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.28pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全29件 1~20 1/2ページ
12>>
No.29:
(3pt)

女性探偵の存在の難しさ

以前から知っている女性探偵といえば三人

コーデリアはドラマで観た事があるしや
キンジーミルホーンは泥棒のFだけを読んだ事がある 。
ウォーショースキーは
短編を読んだ事があった。

大昔の話だ。

Kindleアンリミテッドで本作を読めるという事で懐かしさも手伝って読み始めた。

まず驚いたのがこの小説が出版されたのが1982年今から40年以上も前

歳をとるわけだ。イヤになる(笑)

古き良き時代のハードボイルド小説という感じで手軽に読めた。

いかにも女性読者が喜びそうなヒロインという感じ

彼女のアニーやジルに対する気遣いある
慰めや励ましの言葉には暖かい気持ちにさせられた。

探偵というのは特にウォーショースキー
の様なハードボイルドで武闘派の探偵
の場合

拉致られて拷問を受ける羽目に陥る事が
非常によくある展開。

探偵が男の場合はしこたまぶん殴られても決して折れずにその場を切り抜け事件を
解決していく事で漢気を魅せ読者を魅了していく。

しかし女性が探偵の場合は拉致られて
殴られてオシマイとは現実的になり難い。

特に今作で事件から手を引かせる為に彼女が拉致られ痛めつけられたがリアルな世界ではもっと悲惨な事になっていただろう。

この探偵が極めて醜悪であったりした場合は兎も角だが文中を見れば決してそうでは無いむしろ魅力的な女として描かれている。

ではこの悪漢達がそういう行動様式を持っていないかといえばそうでも無い。ジルを殺す前にレイプすると脅しているからだ。

ジルには手を出すがウォーショースキー
にはそういう言動は全くとられていない
のは話の筋が通らずいささかご都合主義
であると思った。

特にこのギャングがウォーショースキー
痛めつけてまで事件から手を引かせようとしているのならなおさらだ。

ウォーショースキーが拉致られた時に
殴られるだけでは済まないはずだがそうはならない。

こういう所に女性探偵の特に武闘派ハードボイルドの女性探偵の立ち位置の難しさがあると感じる。

作家はその辺りをキチンと対応しないと
小説のグレードが少し落ちてしまう事になりかねない。

しかしながら今作が一作目でシリーズ
は現在も未だに続いているというから
驚かされる。

彼女に魅了された多くの読者がいればこそだろう。

今後、ヴィクがどの様な成長、変遷をしていくのかと思うと気になる所ではある。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.28:
(4pt)

シカゴを舞台に女性私立探偵の活躍を描く、V・I・ウォーショースキー シリーズ第一作

ヴィク(V・I・ウォーショースキーの愛称)は、シカゴを拠点にする女性私立探偵。彼女はある夜、事務所を訪れた男から、息子の恋人の行方を捜してほしいと依頼される。簡単な仕事に思えたが、訪ねたアパートで出くわしたのはその息子の射殺死体だった。依頼人が被害者の父親ではないことも判明し、さらには暗黒街のボスが脅迫をかけてくる。圧力にも暴力にも屈しないヴィクは、保険金詐欺や政治スキャンダルに巻き込まれながら、真相に迫っていく。

この本のテーマは、女性探偵としてのアイデンティティです。ヴィクは犯罪が渦巻く探偵業という、男性社会で生きる強さと自立心を持ちながらも、女性としての感性や感情も大切にしています。彼女は、自分の信念や正義感に基づいて行動し、時には権力や差別に対抗する。しかし、それが彼女に危険や孤独をもたらすこともあります。

そんな本書のおススメポイントですが、主人公ヴィクの魅力的なキャラクターとシカゴのリアルな描写が良かったです。ヴィクは、頭脳明晰で勇敢でユーモアがある、まさに探偵にうってつけの人物。彼女は、ブラック・ラベルを飲みながらオペラを歌ったり、格闘技で悪党と立ち回ることにも躊躇しません。また、シカゴの街並みや風土も生き生きと描かれており、舞台として魅力的です。シカゴ・カブスの試合やスティーブンソン高速道路の渋滞など、地元の人々の暮らしや文化も細かく描写されています。

サマータイム・ブルースは、サラ・パレツキーの処女作であり、V・I・ヴィクという魅力的な女性探偵を登場させた画期的な作品です。物語はスリリングでスピーディであり、シカゴのリアルな描写やウィットに富んだ会話も楽しめる。女性探偵ものに関心があるなら、ぜひ読んでみてください。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.27:
(5pt)

カッコイイぞ!

V.I.ウォーショースキーを主人公とする探偵小説シリーズの1冊目。再読のはずだけど、まったく覚えていなかった。V.I.はヴィクトリア・イフゲニア。母親がイタリア系移民。
作者が女性、主人公が女性、主な読者も女性という、いわゆる3f小説のはしりかな。女性を主人公とするハードボイルド。
かといって筋肉系ではなく、鼻歌でヴェルディのシモン・ボッカネグラの一節を歌ったりする知性波。それでも、最後の大立回りでは殺し屋の腕の骨を叩き折る腕っぷしもある。
事件は大規模な労災保険金詐欺。時代はたぶん1960年代。フェミニズムの勃興期の雰囲気も少し描かれている。
ポケベルも、携帯電話も、スマホも、インターネットもないけれど、時代遅れな感じはない。
それと、シカゴの日常がうまく挿入される。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.26:
(4pt)

灰原哀の原点として読む

コミック版名探偵コナンから来る人がいるのかな?少し古いです。ネオクラシックくらい。ちょうど現代的な意味で女が自立しようとする時代の小説です。とにかく暑い、湿気と暗さが印象的。本格推理小説てまはなく、ハードボイルドぽい。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.25:
(5pt)

よかった

大変気に入りました。
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
4150753512
No.24:
(5pt)

女性らしくて男勝りな女探偵が事件を解決するハードボイルド

女私立探偵のウォーショースキーが主人公のハードボイルド小説。依頼人から人探しを依頼されるが、その過程で男の死体を見つけてしまう。犯人は誰なのか、殺された理由を探しているうちに、ギャングと関わることになる。そこからのウォーショースキーの活躍が面白い。ハードボイルド探偵として、タフで芯が一本通った格好いい活躍をする。男の優しさとは違う女性ならではの優しさを見せるし、男以上のアクションもする。ウォーショースキーのキャラが映えていて楽しい。シリーズとして人気があるのも頷ける。他の本も読んでみたい。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.23:
(5pt)

This book talks about labor issues in Chicago, and female rights.

It is for the first time that I bought mass-market paperback. Though the margin looks a little narrow, the content of the story overcomes its weak point.
The story has a big theme. It is about the environment of nature and employment in Chicago, America. And it is about female rights. Including V.I. there are many independent women who cheer the readers up.
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.22:
(3pt)

期待はずれ

この小説は女性主人公の容姿に関する説明・描写がほとんどありません。これは非常に珍しい。身長も目の色もわからないまま。表紙の絵が金髪なんで金髪かなーって思いますが・・。出会ったその日に男と寝る場面はいかがなものか。そういう女がいても全くかまいませんが、この物語の基調とはズレ過ぎでしょう。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.21:
(3pt)

サマータイム・ブルース

楽しく読みました。登場人物を全部記憶しながらの筋を追うのは大変だったが面白かった。翻訳らしくおかしな日本語も楽しかったです。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.20:
(3pt)

面白くなくはないが

主人公が魅力的なのでとりあえず最後まで読んだ。まあこんなものだろうと思った。惰性で2作目のレイクサイドストーリーにも手を出し、なかなか読み進まないが読了するつもりはある。
表紙から受ける印象のようなさわやかさはない。もっと重く湿った雰囲気である。一番の欠点はなかなか登場人物の区別がつかないこと。人物一覧のページを何度見たことか。翻訳物にはありがちだが、ちょっと頻度が高すぎる。要は、人物造形が中途半端なのである。東野圭吾ほど悲惨ではないが。
もっと最近の作品では上達してるのだろうか。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.19:
(5pt)

良き時代のハードボイルド

しかし、全く古さを感じさせない。解説読んで、初めて、パソコンもケータイも無かった(手軽では無かった)時代と気づくほどである。
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
4150753512
No.18:
(4pt)

強い女性を描いて確固たる印象を残すシリーズ第一作

女性の私立探偵ヴィックのもとに息子のガールフレンドを探してほしいと依頼人がやってくるが・・・というストーリーのお話。

前回読んだのが20年くらい前だったので、今回読むにあたってやや古びているかなと思いましたが、逆に新鮮さを感じ、プロットなども処女作でこれだけ書ければ上出来の部類で驚きました。
多分、著者のパレッキーに確固たる信念やプライド、意志それに才能がこの時点であったのでしょう。私みたいに軟弱な男を寄せ付けないで見下すような強い意志を作品全体から感じてビビりました。

この時点で後の活躍を予見できたとか先見の明があるようなことは言えないし言いませんが、強い女性の時代がくることを予感させた(因みに私は職場の上司殆ど女性です)偉大なシリーズ第一作。今でも読む価値は十分あると思いました。
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
4150753512
No.17:
(4pt)

VIはやっぱりイイ!

昔のリメイクとは思えない読み応えのある作品でした。 PCやケイタイがなくて時代を感じたけど、やっぱりVIのポリシーに惚れ惚れしストーリーも古さを感じないどころか今もどこかでありそうな事件で一気に読んでしまいました、睡眠不足になりました!
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
4150753512
No.16:
(4pt)

VIはやっぱりイイ!

昔のリメイクとは思えない読み応えのある作品でした。 
PCやケイタイがなくて時代を感じたけど、
やっぱりVIのポリシーに惚れ惚れし
ストーリーも古さを感じないどころか今もどこかでありそうな事件で
一気に読んでしまいました、睡眠不足になりました!
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.15:
(4pt)

一気に読みました

『沈黙の時代に書くということ』という著者のエッセイを読み、興味が湧いたので、読んでみました。私は、ミステリーでは「本格」が好きで、ハードボイルドは、どちらかというと苦手。それでも、一気に読ませるだけの面白さはあります。本格は「ロジック」を、いかに成立させるかがポイントですが、ハードボイルドは、「偶然」を無理なく納得させられるかがポイントだと思います。本書でも、かなり重要なことを偶然聞き出すのですが、「許容範囲」だとは思いました。気になったのは、主人公のヴィクが関係者の男性とかなり簡単に寝てしまこと。桐野夏生氏のミロもそういった部分があり、男性作家が描くハードボイルドの探偵が、どちらかというとストイックというイメージがあるのと対照的だと思います(ハードボイルドに関しては読んだ数が少ないので、あくまで印象です)。
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
4150753512
No.14:
(4pt)

一気に読みました

『沈黙の時代に書くということ』という著者のエッセイを読み、興味が湧いたので、読んでみました。
私は、ミステリーでは「本格」が好きで、ハードボイルドは、どちらかというと苦手。それでも、一気に読ませるだけの面白さはあります。
本格は「ロジック」を、いかに成立させるかがポイントですが、ハードボイルドは、「偶然」を無理なく納得させられるかがポイントだと思います。本書でも、かなり重要なことを偶然聞き出すのですが、「許容範囲」だとは思いました。

気になったのは、主人公のヴィクが関係者の男性とかなり簡単に寝てしまこと。桐野夏生氏のミロもそういった部分があり、男性作家が描くハードボイルドの探偵が、どちらかというとストイックというイメージがあるのと対照的だと思います(ハードボイルドに関しては読んだ数が少ないので、あくまで印象です)。
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.13:
(5pt)

あたしはキース・ジャレットのサマータイムが好き

 夜の空気はねっとりと湿っていた。わたしはミシガン湖沿いに南へと車を走らせながら、よどんだ大気のなかにほのかな香水のごとく漂う、腐りかけたエールワイフの臭いを嗅いだ。夜遅いバーベキューの小さな火が、公園のあちこちで輝いていた。湖上では、緑や赤の航海灯が涼を求めて蒸し暑い大気から逃れた人々を示していた。陸の上では車が混みあい、街は休むことなく動きつづけ、呼吸しようとしている。シカゴは今、七月だった。(サラ・パレツキー『サマータイム・ブルース』山本やよい訳、ハヤカワ文庫)
 サラ 
《誰かが迫害を受けているときに背を向ければ、その残虐行為に加担したのと同じこと》
 いまは逢うことも叶わぬ昔の恋人サラの書物の森を彷徨い、島島を流浪していると、ひとフレーズごとにあのひとの息吹きに触れて、《彼女こそスター=マリーアだ!》 いつしか心も癒されていく。だから[……]もここ数日間は止っているのかも知れない。肉体の癒しが瀬音の湯で得られるのなら、あたしの心の癒しはサラの書物の森と島島に任せておこう。
「そうだよ、ヴィクに続け!」
 今日はナイト。夕方5時から朝5時までの0.5日分の出番だ。出掛けに郵便受けを覘くと、『わたしのボスはわたし』が届いていた。胸に抱きしめる、幸せばかなあたし。鳥居坂を下ると、「遠回りじゃない」とほざく新橋から六本木ヒルズまでの嫌味な女客を落とすなり、晴海に直行する。アキテーヌで震える指先で堅固な包装を剥しにかかる。ふと見あげると、レインボーブリッジの電飾が白から緑に変わっていた。
 『ゴーストカントリー』はサラの作品群に在って、なぜか、カルヴィーノの『蜘蛛の巣の小道』(白夜書房)第9章を想起させる。作家としての述志の気配が濃厚に漂うからだ。ヴィクは不在でも、これはサラにとって、重要な作品、いや書き終えねば前に進めない作品だったに違いない。
(『本と恋の流離譚』http://koiruritann.blogspot.com/)
 『わたしのボスはわたし』 I get to be my own boss... ヴィクからは少し離れるけれど、「鬼婦長」の話もいい。ヴィクには合気道の達人になって欲しい。そうすれば、襲いくる巨漢・悪漢を指一本触れずに投げ飛ばせるし、八十五歳になっても、矍鑠たる現役女探偵だろうし、体術・頭脳ともにますます冴え渡り、凄みを増すことだろう。誰か、サラに親しく、談じ込んでくれないものか。
 「おはよう、サラ、愛しいサラ、きみの花言葉はやっぱし〈昔の恋人〉?」
 と、目の前の西洋オダマキの花にぼくは問いかける。
 「いいえ、あたしの花言葉は〈必ず手に入れる〉よ」
 と、ぼくのサラ=西洋苧環が応える。
 「カタリ」
 と、澄んだ音がして、宿命の歯車がまた一つ駒を進める。
 「きみのくれた風船蔓の種‥…」
 「花言葉は〈あなたと飛びたい〉」
 「うん、ぼくもきみと飛びたい」
 「いま?」
 「いま」
 「二頭の黒と白の蝶のように」
 「漆黒の翅のオルフェウスの蝶と」
 「白い大きな翅に赤い斑点のアポロン蝶と」
 ……そうだ、最新刊の「ブラッディ・カンザス」も早く読まなくては……
 サラの書物の森と島島を流浪し、ひたすら西へと流れゆく果てに出会ったのは、碧色の大海原にも似た《カンザスの大草原に浮ぶ三つの小さな帆船》たちの物語、そう、『ブリーディング・カンザス』だ。机竜之介のいない『大菩薩峠』中の一巻を読むにも似て、ヴィクのいないこの長編小説を、期待に多少の不安を交えながら読みだす。この大冊を書いて訳した著者と訳者の労苦が偲ばれる。そしてその労苦の中に見出される密やかな喜びも。なぜなら、書いて訳す者たちの端くれだから、ぼくもまた。
 昨日は終日、母の引越しの手伝い、せめて今日、明日は読書に専念したいのだが、……
 仔牛の小屋でひと騒動――
《三人の背後で小屋の扉が閉まった。ロビーは子牛を両腕で包みこんで、やさしくなで、濡れた脇腹を自分のシャツの裾で拭いてやった。もうじき、飼葉桶に新しい干し草を入れる作業にとりかかるだろう。ラーラを見つけるだろう。牛の糞にまみれ、自分のおしっこに濡れた、チップの野戦服姿のラーラを。
 恥ずかしさのあまり真っ赤になりながら、ラーラはおきあがった。「ロビー? ロビー、あたしよ」》
 難渋していたのに、ここからはほぼ一気に終章近くまで読んでしまった。サラも一気呵成に書き上げたことだろう、翻訳も捗ったことだろう、ここからは。いまは読み終えるのが惜しくなった。また明日、か明後日……
(『本と恋の流離譚』http://koiruritann.blogspot.com/
『七つのレヴューの環に誘われたある恋の物語』http://nanatunore.blogspot.com/2009/10/7.html
『流離譚‐本と絵と恋と‐』http://ryuritann.blogspot.com/ )         
                            愛しいひと
                            蜘蛛の巣の小道
                   古代人の遺言―ピラミッド・ミステリー
わたしのボスはわたし
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
4150753512
No.12:
(5pt)

あたしはキース・ジャレットのサマータイムが好き

夜の空気はねっとりと湿っていた。わたしはミシガン湖沿いに南へと車を走らせながら、よどんだ大気のなかにほのかな香水のごとく漂う、腐りかけたエールワイフの臭いを嗅いだ。夜遅いバーベキューの小さな火が、公園のあちこちで輝いていた。湖上では、緑や赤の航海灯が涼を求めて蒸し暑い大気から逃れた人々を示していた。陸の上では車が混みあい、街は休むことなく動きつづけ、呼吸しようとしている。シカゴは今、七月だった。(サラ・パレツキー『サマータイム・ブルース』山本やよい訳、ハヤカワ文庫)

 サラ 
《誰かが迫害を受けているときに背を向ければ、その残虐行為に加担したのと同じこと》

 いまは逢うことも叶わぬ昔の恋人サラの書物の森を彷徨い、島島を流浪していると、ひとフレーズごとにあのひとの息吹きに触れて、《彼女こそスター=マリーアだ!》 いつしか心も癒されていく。だから[……]もここ数日間は止っているのかも知れない。肉体の癒しが瀬音の湯で得られるのなら、あたしの心の癒しはサラの書物の森と島島に任せておこう。
「そうだよ、ヴィクに続け!」

 今日はナイト。夕方5時から朝5時までの0.5日分の出番だ。出掛けに郵便受けを覘くと、『わたしのボスはわたし』が届いていた。胸に抱きしめる、幸せばかなあたし。鳥居坂を下ると、「遠回りじゃない」とほざく新橋から六本木ヒルズまでの嫌味な女客を落とすなり、晴海に直行する。アキテーヌで震える指先で堅固な包装を剥しにかかる。ふと見あげると、レインボーブリッジの電飾が白から緑に変わっていた。

 『ゴーストカントリー』はサラの作品群に在って、なぜか、カルヴィーノの『蜘蛛の巣の小道』(白夜書房)第9章を想起させる。作家としての述志の気配が濃厚に漂うからだ。ヴィクは不在でも、これはサラにとって、重要な作品、いや書き終えねば前に進めない作品だったに違いない。
(『本と恋の流離譚』[...])

 『わたしのボスはわたし』 I get to be my own boss... ヴィクからは少し離れるけれど、「鬼婦長」の話もいい。ヴィクには合気道の達人になって欲しい。そうすれば、襲いくる巨漢・悪漢を指一本触れずに投げ飛ばせるし、八十五歳になっても、矍鑠たる現役女探偵だろうし、体術・頭脳ともにますます冴え渡り、凄みを増すことだろう。誰か、サラに親しく、談じ込んでくれないものか。

 「おはよう、サラ、愛しいサラ、きみの花言葉はやっぱし〈昔の恋人〉?」
 と、目の前の西洋オダマキの花にぼくは問いかける。
 「いいえ、あたしの花言葉は〈必ず手に入れる〉よ」
 と、ぼくのサラ=西洋苧環が応える。
 「カタリ」
 と、澄んだ音がして、宿命の歯車がまた一つ駒を進める。
 「きみのくれた風船蔓の種‥…」
 「花言葉は〈あなたと飛びたい〉」
 「うん、ぼくもきみと飛びたい」
 「いま?」
 「いま」
 「二頭の黒と白の蝶のように」
 「漆黒の翅のオルフェウスの蝶と」
 「白い大きな翅に赤い斑点のアポロン蝶と」

 ……そうだ、最新刊の「ブラッディ・カンザス」も早く読まなくては……

 サラの書物の森と島島を流浪し、ひたすら西へと流れゆく果てに出会ったのは、碧色の大海原にも似た《カンザスの大草原に浮ぶ三つの小さな帆船》たちの物語、そう、『ブリーディング・カンザス』だ。机竜之介のいない『大菩薩峠』中の一巻を読むにも似て、ヴィクのいないこの長編小説を、期待に多少の不安を交えながら読みだす。この大冊を書いて訳した著者と訳者の労苦が偲ばれる。そしてその労苦の中に見出される密やかな喜びも。なぜなら、書いて訳す者たちの端くれだから、ぼくもまた。
 昨日は終日、母の引越しの手伝い、せめて今日、明日は読書に専念したいのだが、……
 仔牛の小屋でひと騒動――
《三人の背後で小屋の扉が閉まった。ロビーは子牛を両腕で包みこんで、やさしくなで、濡れた脇腹を自分のシャツの裾で拭いてやった。もうじき、飼葉桶に新しい干し草を入れる作業にとりかかるだろう。ラーラを見つけるだろう。牛の糞にまみれ、自分のおしっこに濡れた、チップの野戦服姿のラーラを。
 恥ずかしさのあまり真っ赤になりながら、ラーラはおきあがった。「ロビー? ロビー、あたしよ」》
 難渋していたのに、ここからはほぼ一気に終章近くまで読んでしまった。サラも一気呵成に書き上げたことだろう、翻訳も捗ったことだろう、ここからは。いまは読み終えるのが惜しくなった。また明日、か明後日……

(『本と恋の流離譚』[...]
『七つのレヴューの環に誘われたある恋の物語』[...]
『流離譚‐本と絵と恋と‐』[...] )         

                            愛しいひと

                            蜘蛛の巣の小道

                   古代人の遺言―ピラミッド・ミステリー

わたしのボスはわたし
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
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No.11:
(5pt)

あたしはキース・ジャレットのサマータイムが好き

夜の空気はねっとりと湿っていた。わたしはミシガン湖沿いに南へと車を走らせながら、よどんだ大気のなかにほのかな香水のごとく漂う、腐りかけたエールワイフの臭いを嗅いだ。夜遅いバーベキューの小さな火が、公園のあちこちで輝いていた。湖上では、緑や赤の航海灯が涼を求めて蒸し暑い大気から逃れた人々を示していた。陸の上では車が混みあい、街は休むことなく動きつづけ、呼吸しようとしている。シカゴは今、七月だった。(サラ・パレツキー『サマータイム・ブルース』山本やよい訳、ハヤカワ文庫)

 サラ 
《誰かが迫害を受けているときに背を向ければ、その残虐行為に加担したのと同じこと》

 いまは逢うことも叶わぬ昔の恋人サラの書物の森を彷徨い、島島を流浪していると、ひとフレーズごとにあのひとの息吹きに触れて、《彼女こそスター=マリーアだ!》 いつしか心も癒されていく。だから[……]もここ数日間は止っているのかも知れない。肉体の癒しが瀬音の湯で得られるのなら、あたしの心の癒しはサラの書物の森と島島に任せておこう。
「そうだよ、ヴィクに続け!」

 今日はナイト。夕方5時から朝5時までの0.5日分の出番だ。出掛けに郵便受けを覘くと、『わたしのボスはわたし』が届いていた。胸に抱きしめる、幸せばかなあたし。鳥居坂を下ると、「遠回りじゃない」とほざく新橋から六本木ヒルズまでの嫌味な女客を落とすなり、晴海に直行する。アキテーヌで震える指先で堅固な包装を剥しにかかる。ふと見あげると、レインボーブリッジの電飾が白から緑に変わっていた。

 『ゴーストカントリー』はサラの作品群に在って、なぜか、カルヴィーノの『蜘蛛の巣の小道』(白夜書房)第9章を想起させる。作家としての述志の気配が濃厚に漂うからだ。ヴィクは不在でも、これはサラにとって、重要な作品、いや書き終えねば前に進めない作品だったに違いない。
(『本と恋の流離譚』[...])

 『わたしのボスはわたし』 I get to be my own boss... ヴィクからは少し離れるけれど、「鬼婦長」の話もいい。ヴィクには合気道の達人になって欲しい。そうすれば、襲いくる巨漢・悪漢を指一本触れずに投げ飛ばせるし、八十五歳になっても、矍鑠たる現役女探偵だろうし、体術・頭脳ともにますます冴え渡り、凄みを増すことだろう。誰か、サラに親しく、談じ込んでくれないものか。

 「おはよう、サラ、愛しいサラ、きみの花言葉はやっぱし〈昔の恋人〉?」
 と、目の前の西洋オダマキの花にぼくは問いかける。
 「いいえ、あたしの花言葉は〈必ず手に入れる〉よ」
 と、ぼくのサラ=西洋苧環が応える。
 「カタリ」
 と、澄んだ音がして、宿命の歯車がまた一つ駒を進める。
 「きみのくれた風船蔓の種‥…」
 「花言葉は〈あなたと飛びたい〉」
 「うん、ぼくもきみと飛びたい」
 「いま?」
 「いま」
 「二頭の黒と白の蝶のように」
 「漆黒の翅のオルフェウスの蝶と」
 「白い大きな翅に赤い斑点のアポロン蝶と」

 ……そうだ、最新刊の「ブラッディ・カンザス」も早く読まなくては……

 サラの書物の森と島島を流浪し、ひたすら西へと流れゆく果てに出会ったのは、碧色の大海原にも似た《カンザスの大草原に浮ぶ三つの小さな帆船》たちの物語、そう、『ブリーディング・カンザス』だ。机竜之介のいない『大菩薩峠』中の一巻を読むにも似て、ヴィクのいないこの長編小説を、期待に多少の不安を交えながら読みだす。この大冊を書いて訳した著者と訳者の労苦が偲ばれる。そしてその労苦の中に見出される密やかな喜びも。なぜなら、書いて訳す者たちの端くれだから、ぼくもまた。
 昨日は終日、母の引越しの手伝い、せめて今日、明日は読書に専念したいのだが、……
 仔牛の小屋でひと騒動――
《三人の背後で小屋の扉が閉まった。ロビーは子牛を両腕で包みこんで、やさしくなで、濡れた脇腹を自分のシャツの裾で拭いてやった。もうじき、飼葉桶に新しい干し草を入れる作業にとりかかるだろう。ラーラを見つけるだろう。牛の糞にまみれ、自分のおしっこに濡れた、チップの野戦服姿のラーラを。
 恥ずかしさのあまり真っ赤になりながら、ラーラはおきあがった。「ロビー? ロビー、あたしよ」》
 難渋していたのに、ここからはほぼ一気に終章近くまで読んでしまった。サラも一気呵成に書き上げたことだろう、翻訳も捗ったことだろう、ここからは。いまは読み終えるのが惜しくなった。また明日、か明後日……

(『本と恋の流離譚』[...]
『七つのレヴューの環に誘われたある恋の物語』[...]
『流離譚‐本と絵と恋と‐』[...] )         

                            愛しいひと

                            蜘蛛の巣の小道

                   古代人の遺言―ピラミッド・ミステリー

わたしのボスはわたし
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150753709
No.10:
(4pt)

潔い女の美しさ

今更ながらのウォーショースキーシリーズである。個性的な美人にして空手の達人、強い意思と鋭い知性を併せ持ち、慈愛に溢れ弱者の痛みを知る者......ってちょっと出来すぎじゃない?という感じがして今まで避けてきたところもあるのだが、なかなかどうして強い女はやはり魅力的だ。自分に降りかかってきた災難をしょいきる覚悟があるのが、気持ちいいよ。共感という点ではあまりシンパシー感じませんが、ヴィク姐様の爪の垢でも煎じて飲んで、自立したやさしい女性でありたいと思います。
セクシーで異性関係もありなのですが、「恋していない女」ってとこもハードボイルド女性版でっせ。
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))Amazon書評・レビュー:サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))より
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