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(短編集)
あなたに不利な証拠として
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あなたに不利な証拠としての評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.98pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全34件 1~20 1/2ページ
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実際にこういうことが今もどこかの現場で起こっているのだろうと思わせる、ルポのような小説。圧倒的な描写力で、その場にいるような緊張感を味わえる。それだけに、タフな女刑事のセリフが、漫画のお嬢様か関西のおじさんしか使わないような女言葉で訳されているのが残念でした。 | ||||
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元警官だけあって、細部の描写など非常にリアルです。 たとえば「制圧」という短編では、冒頭から、警察官が、銃を持った男がいるとの通報を受けた警官の、いつ反撃されるか分からないという緊迫した事件現場での目線が順を追って書かれています。 手には何か持っていないか、拳銃のありか、男の顔、ボディーランゲージといての表情、部屋の奥のドアといった細部を確認した後、最後に全体の把握をする。 また、文体にも好感がもて、再読したくなる文学としてのクオリティーも感じさせます。というか、むしろ再読することで初めて気づく奥の深さのようなものを感じるがため、1度めに読んだときより、2度目に読んだときの方が面白いと感じます。 ミステリーというよりは、文学作品としての面白さが本書にはあります。 「すべてのものが遅かれ早かれ道に迷う」 「恐怖を抱えていたら、自分を赦すことも希望を持つこともできない。」 「人は自らの弱さを抱きしめるとき、強くなれる」 「なんだか自分が馬鹿みたい、人間にはそう感じることも大事だ」 このような示唆に富んだ言葉も出てきます。 もう一度読みかえすと、☆の数が増えるかもしれません。 | ||||
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英語のタイトルを直訳すると「あなたが言うことは、あなたにとって不利に使用されることがある」。これは、黙秘権の告知の一環として、捜査機関や法廷でも使われている言い回しである。 ただし、原題をよく読めば裁判上の「証拠」に限定される意味ではないことに誰もが気がつくだろう。これは、日常の人間関係でも該当する話であり、だからこそ、you とは、犯罪者達であり、警察官である彼女らであり、さらに私達でもありうる。 また、狭い黙秘権的な意味に限定した場合でも、それぞれの立場は、絶対的なように見えて、実は相対的なものであり、場面が変われば誰もが別の立場に入れ替わりうる(つまり、これはあなたの話でもあるのです)とのメッセージをも含んでいるというのが読了後の個人的感想である。その意味で、読了後に、彼女らそして様々な登場人物に再度思いをはせさせずにいられない、しみじみとした味わいのあるタイトルであった。 | ||||
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ルイジアナ州バトンリュージュの女性警官たちを描いた短編集。まさに赤裸々なまでに描かれる彼女達の苦悩、人生。「このミス」 以下たくさんの本年の評価において海外ミステリー物でベストワンの選ばれている。少なくともこの作品集がすばらしく質の高い 文学作品であることは否定しない。ここまで女性警官たちを主人公にして奥深くしかも抑えたタッチで描ききった作品は 過去もなかったと思う。しかし、これは範疇としてミステリーか?ミステリーの一つのコンセプトとしてやはり「ストーリー展開」の面白さ が挙げられるべきだと思う。それが謎解きや、ドンデン返しなどで飾られた場合はなお良し、でも、この作品集はそれに 該当するだろうか。本格的なミステリーを期待している読者にとってやはりこの作品はちょっと裏切りではないか。これは やはり日本の評論家と称する自己満足家たちが大いに反省すべきことではないか。 | ||||
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ヒリヒリするような緊張と葛藤。生々しいリアリティー。最高です。魂を揺さぶるハードボイルド。僕は長編が苦手なので短篇集なのもポイント高いです。寡作らしくひとつひとつ丁寧に作りこまれた感じがします。 | ||||
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警官という仕事が、 いかに五感のすべてをすり減らしながら 為される仕事なのかがよくわかる (ただし、アメリカでのこと)。 同時に、いかに女性に向いていないかも。 「そこ(乳房)は子供や恋人が、悲しみにくれて、 欲望に駆られて、深い敬愛をこめて頬をうずめる場所だ。 愛撫の指が、そっけない骨の感触と、 甘美なふくよかさを一緒に味わう場所だ。約束と赦しの地であり、 わたしたち自身の大事な核でもある」 女性のもつ乳房はそういうところなのだ。 著者は、警官を経験した女性。 そんな彼女がいうくらいだから、 暴力に晒される仕事に女性は向いていない。 と思うのだが。 次回作がなかなか出ないのが、 残念。 | ||||
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本作品は、5人の女性警察官を主人公とした、 次の10の短編からなる作品集です。 <キャサリンの物語として> 【完全】【味、感触、視覚、音、匂い】【キャサリンへの挽歌】 <リズの物語として>【告白】【場所】 <モナの物語として>【制圧】【銃の掃除】 <キャシーの物語として>【傷痕】 <サラの物語として>【生きている死者】【わたしがいた場所】 ジャンルは、警察小説、 あるいはハードボイルドといったところでしょうか。 でも、一読して、これまでに読んだことのない 鮮烈な印象を受けることだろうと思います。 【完全】での犯人と対峙した時に発砲するかどうかの、 極限状態での心理描写や、 【味、感触、視覚、音、匂い】での、 犯罪現場を中心とした五感に関する記述は、 作者が元警官であったことと 大いに関係があるところでしょう。 生身の警察官であったからこそ描写できる、 ある種の凄味が作品には満ち溢れています。 この作者なら、 実体験をベースにドキュメンタリーとして 作品を仕上げることも可能だったと思いますが、 あえてミステリとして作品を完成させたのは、 素晴らしい着眼点だったと思います。 ただ、残念な点は、 読み進めていくと段々に作品が 「作り物」っぽくなっていくところ。 【生きている死者】などは、 あまりに現実離れしている感じがします。 ミステリはフィクションなので、 「作り物」であるのが当たり前ですが、 この作品集の持ち味は、 警官が本当に直面してもおかしくない出来事を 描いていることなので、 創作力がその良さの邪魔をしているように思います。 作品の順番が執筆順だとしたら、 小説を書く技術は向上し、 作品ごとにうまくなっているのであり、 その成果として、 【傷痕】でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短編賞を 受賞しているのでしょうが、 そのフィクションとしてのうまさが、 初期の作品の鮮烈さを損ねているのだとしたら、 何とも皮肉な話です。 | ||||
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著者自身も5年間制服警官として勤務してた事もあって凄くリアルな作品となってました。 彼女自身の経験がこの小説に反映されてると思うけど、全てのエピソード、そして5人の登場人物でもある婦人警官の行動に重みがあり、銃社会アメリカで警官をしてる事がどれほど大変なものか伝わってきました。 少しの油断が命取りとなり殉職する可能性があるのが自分だけではなく周りの人間の生活さえも巻き込んでいくんですね。 ミステリーとして読むと少し拍子抜けするかもしれないけど、この半端じゃないリアリティを堪能出来るので結構好きです。 | ||||
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評判になった警察小説。元女性警官の作者が書いた女性警官たちを主人公とした連作小説。 たしかに、評判になるのがわかるぐらいすごい小説。女性警官が主人公であるということに注目されがちだけど、それ以上に、小説として、生と死を深く描いている。 長編を読んでみたい。 | ||||
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池上冬樹の帯を見て購入した。『素晴らしい!素晴らしい!もうこれほど素晴らしい小説を読んだのは、いつ以来だろう』こんなにベタ褒めの帯は見たことがない。まるでコピー・ライターのような帯だ。一抹の不安は、本書がアメリカ探偵クラブ賞の受賞作なことだ。これは読者に大きな誤解を与える。確かに10編の短編は、アメリカの女性警官が経験する強盗、殺人、レイプなどの様々な事件を題材としているが、むしろ、そこに描きこまれているのは、ひとりの人間としての女性警官の苦悩であり、生々しい葛藤である。これほど圧倒的に存在感のある『声』の小説を久しく読んだことはない。 池上氏は末尾の解説にて、いみじくも、『日本の純文学が失いつつある徹底したリアリズムの強さ、叙事が生み出す詩情の輝きをあらためて印象づけてくる』と述べているのが適切だ。決して、エンターテーメント、ミステリーといった面白さはないが、是非、次のようなリアルな文章を堪能して欲しい。 『肉体が活動を停止すると、たまった体液が放出される。死体を扱うのに最適なのは体液が染しみ出る前だ。死後硬直が始まると、死体は膨張して大きな黒い水疱になり、しまいに皮膚がはじける。そのときの匂いは、味になる。わたしは死の味が舌や喉や肺をびっしり覆ってしまうとは知らなかった。煙草を吸ってもだめだった。コーヒーや、思いつく中でもっとも刺激の強いアルコール、ストレートのジンですすいでもだめだった・・・』(味、感触、視覚、音、匂いより) | ||||
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数々の賞を受賞、解説で作家の池上冬樹氏も激賞している、5人の女性警官を主人公として描く短編10作。作者自身がもと女性警官。作者の体験談がどの程度までこの作品に反映されているのか知るすべはないが、情景描写は圧倒的なリアリズムと迫力に満ちている。筋肉質でクールなストーリーは、なるほど、読ませる。若干文章にぎこちなさはあるが…。 個人的にはサラが主人公のラスト2編、『生きている死者』『わたしがいた場所』がいい。サラの葛藤、ハードボイルドな展開で読ませる。 | ||||
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さすがアメリカ探偵作家クラブ賞の最優秀短編賞を受賞した作品。 5人の女性警官の視点から、犯罪というフィルターを通して心象風景を 人間の内面まで掘り下げた秀作。 当然の事として、主人公が男性警官では成り立たない話。 キッタ!ハッタ!追いつ!追われつ!の小説ではありません。 “面白い”というより“読ませる”作品。 蛇足ですが、私は文庫版のカバー・デザインはセンスがいいと思いました。 ハヤカワ文庫のカバーは安直なものが多すぎる中、雰囲気を感じる事ができました。 ただし、唐突な三角形に切り出されたヘッドライトを照らしたパトカーは、 台無しです。 | ||||
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普通の女性警察官の話。 ミステリーとしての謎解きや、どんでん返しがあるわけではない。ただ、戦いの日常で、一般人と違う職業についた人特有の心理がリアルに描かれる。 警察官という仕事の業を、感じさせる短編集。 そして、十篇の短編を見てみれば、アメリカはやはり日本よりも、物騒なんだなあ…と、感じさせる。 日本の警察官の大多数は、こんなにハードな日常を送ってない(はず)。アメリカの警察官は、戦士な日常を生きている。重たい装備をつけて動き回り、通報が入れば銃を手に乗り込む。そんな緊張感を要する生活を送りながら、時には、酷い死体を見たり、自分に向けて発砲されたり、仲間が殉職したりする。 そこで、自分が疲れたときに、精神的な失調を起こしたりする。 家庭内暴力だったり、逃避だったりと…。普段は気づかないようにしていたストレスを意識したときに、人は変わる事もある。 同じようなハードな仕事についていなくても、ヒロイン達に共感を感じるのは、こういう部分だと思う。何かのきっかけがあれば、(それが、他の人には大した事と認識されないような事でも)自分の人生観や、人生そのものも、変わってしまうかもしれない―日常って、案外脆いものではないかという、不安感。 だけれども、それぞれのヒロインが深刻な葛藤を経験しながらも、誇り高く立っている姿を見て、勇気を与えられる。そんな話 | ||||
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「あなたには黙秘権がある…黙秘権を放棄しての発言は、 あなたに不利な証拠として法廷において採用し得る…」 米国の警察官が犯人逮捕にあたって 容疑者に必ず告知するのが、この「ミランダ警告」。 はじめて耳にしたのは、ずっと以前に放映されていた、 ロス市警のパトロール警官のコンビを描いた「アダム12」というドラマだった。 毎回必ず出てくる言葉だったので、 ドラマの台詞のとおりに今でも憶えています。 そしてこの小説のタイトル、「あなたに不利な証拠として」も、 同じミランダ警告の中の言葉… 家族間のいさかいから、凶悪な暴力犯罪まで、 街で起きている出来事の現場に駆けつけ、 米国の警察官は幾つものドアをノックし続ける… 人間社会の歪みと耐え難い現実の最前線に毎日身を置き、 時には一日に何度も同じこの警告を誰かに告知する。 それだけにこのタイトルそのものが、この小説の持つ、 警察官の日常のリアリティを強く表しているように感じます。 著者の背景と同じく、登場する5人のパトロール警察官はすべて女性… 彼女たちは実に淡々と自分が職務上経験した事柄を語る。 一編一編が、強烈なリアリティをもって迫ってくる… 現場の空気を吸い、匂いを嗅ぎ、腐敗物を目にし、 そうした終わらない日常によって訓練された感覚を集中して、 彼女たちは今日も職務を遂行する。 そしてそれぞれが自分の中に折り合いをつけて行かなければならない… その現場で目にすることに嫌悪と吐き気を感じ、 正義を代表する立場にあっても、自分の行為に時に罪悪感さえ抱く… 強くタフに感じられる彼女たちも、常識と精神の限界を抱えた、 心に深く傷を負うこともある生身の女性たちであることを、 読み進めながら痛切に感じさせられる。 警察官であるというこことはどんな体験なのか? この小説はこれまでになくリアルに表現しています。 生き生きとした5人の女性警官たちに羨望と少しの愛しさを感じると共に、 1990年度に公開された、やはり女性のパトロール警官を描いた映画、「ブルースチール」を思い出した。 その映画の公開時のPRコピーはこんなだった… 「ダーティ・ハリーを卒業したら見てもいいよ」 この小説を読んだ印象も、同じです。。。 | ||||
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本職の警官の経歴を持つ作者(事故で退職した)が、12年かけて書き上げたハードボイルド連作集。 複数の女性警官を主人公にした短編集で、作者の実体験に基づいたリアルでクールな内容は、他に類を見ない、まさに「ハードボイルド」である。 であるから「殺人事件が発生して、犯人は誰だ?」というようなストーリーでは、全く無い。 格闘技になぞらえれば、「観衆を前にした試合ではなく、道場でのスパーリングを見せられているような」小説である。 個人的には「銃の掃除」が一番気に入っているが、「生きている死者」と「わたしがいた場所」も良い。 | ||||
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オリジナルは2004年2月、ハーパー・コリンズ社。日本版は2006年2月15日リリース。 作者は1979年から5年間パトンルージュ市警に勤務した経験を持っていて、作家としての土台がその経験に基づくものなのが読み進むうちに実感できる。つまりあらゆる描写のリアリティが凄いのだ。単にミステリィの『死体』ではなく、市警として経験した『死体』の再構成のような描写になっていて、単なる想像の産物とは大きく異になる。そこが最大の魅力だ。 表題の『あなたに不利な証拠として』はアメリカの警察官が犯人逮捕の際に告知を義務づけられている、いわゆる『ミランダ警告』から引用されている。『あなたには黙秘する権利がある(You have the right to remain silent.)』に続く『あなたの発言は法廷で不利な証拠として扱われる可能性がある(Anything you say can and will be used against you in a court of law.)』である。アメリカの警察官というのは途方もなくハードな職業だな。 | ||||
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某刑事TVドラマ(映画?)で、「事件は現場で起きてるんだ!」という名セリフがありましたが、そういう刑事のさらに下には、制服警官がいて、過酷な勤務に、しかし誇りを持って、従事しています。女性警官たちの生々しい日常、生々しい事件現場、家族、恋人との関わり、トラウマ、などなど、一人ずつに焦点をあてた独立の短編集であると同時に、それらの話が部分的に重なったり、後日譚となったり、味わい深いつくりです。 「え、それからどうなるの?」という終わり方のものもあります。一気に読むのもよし。あるいは、1日1話ずつ、コーヒータイムかビールタイムにでも読んではいかがでしょうか。 | ||||
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5人の女性警官を題材にした内容の重い硬質なサスペンスの短編集である。オムニバスではなく一連の流れがあり、巧みに絡みありながらストーリーが展開していく。 夢を抱いて入った警察組織の苦悩と挫折。どうすることもできない運命に翻弄され、身も心も極限状態が続いていく。いつの間にか麻痺し圧迫されていく心を開放するために、ついに社会から逃避していく。最後にようやく一条の光が差し込み、救われた気持ちになった。 とてもおぞましい、読むに耐えないを内容の描写が出てくるので、心臓の弱い方には不向きかもしれない。(私などあまり想像力を発揮しないように読んだが) ちょっと勇気がいるが、読みながら魂が共鳴する、充実感のあるミステリーである。 | ||||
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ルイジアナ州バトンルージュ市警に勤める5人の警官たち(キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラ)をめぐる10の短編小説集。 「このミス」の海外部門1位に選出された作品ですが、ある種の犯罪が起きてその真相に迫るというミステリーにはなっていません。 作者のローリー・リン・ドラモンド自身にバトンルージュ市警勤務の経験があり、痛ましい事件現場や酸鼻きわまりない他殺体の描写は、そうした修羅場を幾度も味わった者でなければできないほどの迫力をもっています。 こうした現実の陰惨さに、市民の安寧と社会の秩序を守るという高邁な理想のもとに参集したはずの彼女たち女性警察官たちは、心身ともに疲弊しきっていきます。疲労困憊する彼女たちは、恋人や家族や社会と均衡を保った健全な関係を築くことができなくなっていきます。 どの物語も、かつて抱えていたはずの大きな輝きと可能性を、いつのまにか過去のどこかで置きざりにしてしまった女性たちの哀しさが刻み込まれています。 殊に、あたかもエッセイのような趣をもった語り口の、キャサリンをめぐる3編には心をわしづかみにされました。キャサリンという魅力的で有能な警察官の、若かりし頃から殉職後までを綴った物語ですが、決して聖人君子ではないひとりの女性の人生の生々しさを溜め息とともに読みました。 それぞれの物語は決して心軽やかにしてくれることはないはずなのに、なぜ心魅かれるのか。 おそらくそれは、警察官ではない私も、彼女たちの姿に我が身を重ね置かずにはいられない今を生きていることを思い起こすからでしょう。社会に出たときに、持っていたあの思い。そして今の自分の思い。 彼女たちひとりひとりの中に、自分の姿を見ないことはない。彼女たちのやりきれなさが、この私のやりきれなさに重なることを思い返しながらの読書だったのです。 いろいろと思うところの多い、大人のための小説だと感じました。 | ||||
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警察機構で生きる女性たちを通して現実の犯罪現場に居合わせることが出来る。犯罪の謎解きはない。現実の事件はこんなものかもしれない。やりきれなさが残る。しかし作者の表現力は素晴らしく立派な文学になっている。格調がある。翻訳もいい。 | ||||
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