さらば愛しき女よ

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評判

さらば愛しき女よの評価:

4.18/5点 レビュー 87件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.18pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全168件 121〜140 7/9ページ
No.48
(4pt)

意表をつく真相・男女の哀切な愛情が胸に響くハードボイルドの古典的名作

村上春樹が『ロング・グッドバイ』に続いて新訳に挑戦した、レイモンド・チャンドラーによる1940年発表の、私立探偵フィリップ・マーロウの物語。これも私は初読なので、清水俊二の翻訳による『さらば愛しき女よ』との比較ではなく、作品自体の感想になる。

8年間の服役を終え、消えた恋人を捜してLAの街をさまよう前科者ムース・マロイ。彼と出会ったことでマーロウは奇妙な事件の渦中に巻き込まれる。
『ロング・グッドバイ』の時もそうであったが、次に舞い込む依頼や出会う人々、遭遇する殺人事件、またマーロウが痛めつけられるわけは、一見本筋とは無関係に思われるのだが、読み進んでいくうちにそれぞれにつながりがあることが分かる。

本書では肝心のマロイが表に登場するのは巻頭と巻末だけにすぎないが、彼の存在感と、捜し求める恋人ヴェルマが、物語の最後まで影のようにつきまとうのだ。そして意表をつく真相。読者は一体いつの間にマーロウはそこに辿りついたのか煙に巻かれるようだ。物語の終末で、アン・リオーダンがマーロウに言う言葉はまさに的を射ている。

「どこまでも勇敢で、強情で、ほんの僅かな報酬のために身を粉にして働く。みんながよってたかってあなたの頭をぶちのめし、首を絞め、顎に一発食らわせ、身体を麻薬漬けにする。それでもあなたはボールを離すことなく前に前にと敵陣を攻め立て、最後には相手が根負けしてしまう」

ともすれば本書は、村上春樹が訳したということがクローズアップされがちだが、上述のマーロウの姿や意外な真相・男女の哀切な愛情に心を揺さぶられる、<チャンドラー・ハードボイルド>の古典的名作である。


さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.47
(3pt)

翻訳が・・・。

ミステリーとしての質はともかく、翻訳があまりよろしくありません。訳文にセンスが感じられず、翻訳家としては不器用な方の手になるもので、少々読みにくい。有効な省略を試みることなく、不必要に主語を連発しているのも気になるし、具体的には挙げませんが、不自然な日本語の用法が目に付きます。村上さんに期待します。
さらば愛しき女よ (1956年) Hayakawa Pocket Mystery 247 Amazon書評・レビュー: さらば愛しき女よ (1956年) Hayakawa Pocket Mystery 247より
B000JB1IF6
No.46
(3pt)

翻訳が・・・。

ミステリーとしての質はともかく、翻訳があまりよろしくありません。訳文にセンスが感じられず、翻訳家としては不器用な方の手になるもので、少々読みにくい。有効な省略を試みることなく、不必要に主語を連発しているのも気になるし、具体的には挙げませんが、不自然な日本語の用法が目に付きます。村上さんに期待します。
さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2)) Amazon書評・レビュー: さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2))より
415070452X
No.45
(5pt)

全体に漂う渋さ

マーロウの人柄が全面に出ています。
何と言うか、決していい性格とは言いがたいのだけれども
なぜかこういう人に女は惹かれるという…

特にこの本には
謎解き要素は含まれていません。
と言うかそれなりにミステリを読みなれている人だったら
序盤に出てくる謎の女性はある人だと
絶対にわかるはずです。
ご親切なことにある部分を文中強調していますし。

面白いのはやはり
ひそやかな作戦を強いられるときや
終盤のある場面でしょう。
銃撃戦もまた、面白くありました。
さらば愛しき女よ (1956年) Hayakawa Pocket Mystery 247 Amazon書評・レビュー: さらば愛しき女よ (1956年) Hayakawa Pocket Mystery 247より
B000JB1IF6
No.44
(5pt)

全体に漂う渋さ

マーロウの人柄が全面に出ています。
何と言うか、決していい性格とは言いがたいのだけれども
なぜかこういう人に女は惹かれるという…
特にこの本には
謎解き要素は含まれていません。
と言うかそれなりにミステリを読みなれている人だったら
序盤に出てくる謎の女性はある人だと
絶対にわかるはずです。
ご親切なことにある部分を文中強調していますし。
面白いのはやはり
ひそやかな作戦を強いられるときや
終盤のある場面でしょう。
銃撃戦もまた、面白くありました。
さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2)) Amazon書評・レビュー: さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2))より
415070452X
No.43
(4pt)

「大鹿マロイ」と「ムース・マロイ」

村上春樹が「The Long Goodbye」に続いて「Farewell, My Lovely」を翻訳した。熱烈なチャンドラーファンの私も早速読んだ。日本人のほとんどのチャンドラーファンは英語に堪能な人を除けば、清水俊二の翻訳を通じてその作品に親しんでいると思う。私も例外ではない。つまりこの村上訳も清水訳と比較される運命にある。結論から言うと村上訳は清水訳に惜敗である。

 まずタイトルの「Farewell, My Lovely」を「さらば愛しき女よ」とした清水訳は、ちょっとマヌケな村上訳のタイトルを見るに及んで、さりげないが凄いセンスであることが今になってよく分かった。そして「moose」という語はどの英和辞典でも「へらじか」としか訳語がついていない。米国ではデカくてタフな男に「moose」というあだ名をつけるのはフツーのことらしいのだが、わが国にはいない生き物なので、馴染みがない。だから「moose malloy」に「へらじかマロイ」と訳語を当てても、ただマヌケなだけだが、これをあへて「大鹿マロイ」とした清水訳はあっぱれとしか言いやうがない。これを拝借するわけにはいかない村上訳は、苦肉の策で「ムース・マロイ」となるのだが、これもなんだか力が入らない名前だ。

 これら二つの訳語のセンスだけでも清水訳の勝ち。そして文体も、キビキビした正統派ハードボイルド調の清水訳に対して、村上訳はややユルイかな。プロの翻訳家とそうでないひとの差は、実は歴然たるものがある。さらに重箱のスミを突っつかせてもらうと、第35章305pで、ブルーネットに会うためにボートに乗り込む件で「麻でできた緩衝物に云々」という文章がある。この緩衝物を船舶用語では「防舷物」と呼称するはずであるが、こんな言葉も知らずして・・・と、やや絶句。因みに清水訳ではこの部分は省略されている(笑)。

 とは言え、村上氏はあとがきで「チャンドラーのある人生と、ない人生では確実にいろんなものごとが変わってくるはずだ」と述べているがこれは的を得た指摘であろう。清水訳を読みつくしているチャンドラーファンは、この当代一流の人気作家がいかにチャンドラーを料理したのかを、味わってみる価値は本書には十分にあると思う。
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627
No.42
(4pt)

「大鹿マロイ」と「ムース・マロイ」

村上春樹が「The Long Goodbye」に続いて「Farewell, My Lovely」を翻訳した。熱烈なチャンドラーファンの私も早速読んだ。日本人のほとんどのチャンドラーファンは英語に堪能な人を除けば、清水俊二の翻訳を通じてその作品に親しんでいると思う。私も例外ではない。つまりこの村上訳も清水訳と比較される運命にある。結論から言うと村上訳は清水訳に惜敗である。

 まずタイトルの「Farewell, My Lovely」を「さらば愛しき女よ」とした清水訳は、ちょっとマヌケな村上訳のタイトルを見るに及んで、さりげないが凄いセンスであることが今になってよく分かった。そして「moose」という語はどの英和辞典でも「へらじか」としか訳語がついていない。米国ではデカくてタフな男に「moose」というあだ名をつけるのはフツーのことらしいのだが、わが国にはいない生き物なので、馴染みがない。だから「moose malloy」に「へらじかマロイ」と訳語を当てても、ただマヌケなだけだが、これをあへて「大鹿マロイ」とした清水訳はあっぱれとしか言いやうがない。これを拝借するわけにはいかない村上訳は、苦肉の策で「ムース・マロイ」となるのだが、これもなんだか力が入らない名前だ。

 これら二つの訳語のセンスだけでも清水訳の勝ち。そして文体も、キビキビした正統派ハードボイルド調の清水訳に対して、村上訳はややユルイかな。プロの翻訳家とそうでないひとの差は、実は歴然たるものがある。さらに重箱のスミを突っつかせてもらうと、第35章305pで、ブルーネットに会うためにボートに乗り込む件で「麻でできた緩衝物に云々」という文章がある。この緩衝物を船舶用語では「防舷物」と呼称するはずであるが、こんな言葉も知らずして・・・と、やや絶句。因みに清水訳ではこの部分は省略されている(笑)。

 とは言え、村上氏はあとがきで「チャンドラーのある人生と、ない人生では確実にいろんなものごとが変わってくるはずだ」と述べているがこれは的を得た指摘であろう。清水訳を読みつくしているチャンドラーファンは、この当代一流の人気作家がいかにチャンドラーを料理したのかを、味わってみる価値は本書には十分にあると思う。
さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.41
(5pt)

やっぱり名作だけど

『さらば愛しき人よ』を村上春樹が新たに訳したら、題名まで変わってしまった。
訳はともかく、題名は前の方がよかった思う。
マーロウより自分が年上になるとは思わなかったけど、この小説のマーロウはすごく若く感じる。アン・リオーダンに対する彼の態度もなんだか大人げない。でも、やっぱり名作。次は何かしら?
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627
No.40
(5pt)

やっぱり名作だけど

『さらば愛しき人よ』を村上春樹が新たに訳したら、題名まで変わってしまった。
訳はともかく、題名は前の方がよかった思う。
マーロウより自分が年上になるとは思わなかったけど、この小説のマーロウはすごく若く感じる。アン・リオーダンに対する彼の態度もなんだか大人げない。でも、やっぱり名作。次は何かしら?
さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.39
(4pt)

会社勤めか、それとも一匹狼か

ボコボコにのされたあと主人公は「気分爽快とまではいかずとも、予想していたほどひどくもない。会社勤めをするのに比べたら数段ましな気分だ」とつぶやきます。そこには著者自身のにがい過去の思い出も含まれているのでしょう。今の日本人は、この小説に描かれるような世界よりもむしろ会社勤めをがまんする方を選んでいます。訳者である村上春樹の世界観はこの両者の間のどのあたりにあるのでしょう。
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627
No.38
(4pt)

会社勤めか、それとも一匹狼か

ボコボコにのされたあと主人公は「気分爽快とまではいかずとも、予想していたほどひどくもない。会社勤めをするのに比べたら数段ましな気分だ」とつぶやきます。そこには著者自身のにがい過去の思い出も含まれているのでしょう。今の日本人は、この小説に描かれるような世界よりもむしろ会社勤めをがまんする方を選んでいます。訳者である村上春樹の世界観はこの両者の間のどのあたりにあるのでしょう。
さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.37
(1pt)

「さよなら、愛しい人」は、ないでしょう。 シャ乱Qの新曲かと思った

「さらば愛しき女よ」で定着している翻訳小説を、こんな甘ったるいタイトルにすること自体に違和感というか、強く言うと不快感を覚えます。先の「ロング・グッドバイ」も、「間違ったお別れ」に聞こえました。私自身は、「ノルウェイの森」以前の愛読者なので、村上さん自体が、さらば、愛しい人、なのですが……。「ノルウェイの森」を、どうして正しく「北欧家具」と訳さなかったのか、不思議ですね。村上さんも映画好きならわかると思うけど、フランス映画の名作「さらば友よ」を「さよなら、僕の友達」って改題されて再公開されるようなものです。

さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627
No.36
(1pt)

「さよなら、愛しい人」は、ないでしょう。 シャ乱Qの新曲かと思った

「さらば愛しき女よ」で定着している翻訳小説を、こんな甘ったるいタイトルにすること自体に違和感というか、強く言うと不快感を覚えます。先の「ロング・グッドバイ」も、「間違ったお別れ」に聞こえました。私自身は、「ノルウェイの森」以前の愛読者なので、村上さん自体が、さらば、愛しい人、なのですが……。「ノルウェイの森」を、どうして正しく「北欧家具」と訳さなかったのか、不思議ですね。村上さんも映画好きならわかると思うけど、フランス映画の名作「さらば友よ」を「さよなら、僕の友達」って改題されて再公開されるようなものです。

さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.35
(5pt)

ハードボイルドだじょ

前作の「ロング・グッドバイ」を読み、ハードボイルドの世界に酔いしれた。というよりもマーロウの言動に酔いしれた。男たるものこうじゃなくちゃと自分を戒めた。今回は出版年数でいうと「ロング・グッドバイ」の十数年前となる。ハルキ氏が言うとおり、ずいぶんと印象が違う。インパクトは前回のほうが上、ストーリー展開も今回は劣る。それでも、憎たらしいことを言っては痛めつけられ、危険な状況に飛び込んでは無事に生還する。やはりこういう生き方をしてみたい、と夢を見た。それだけで読む価値はある。
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627
No.34
(5pt)

ハードボイルドだじょ

前作の「ロング・グッドバイ」を読み、ハードボイルドの世界に酔いしれた。というよりもマーロウの言動に酔いしれた。男たるものこうじゃなくちゃと自分を戒めた。今回は出版年数でいうと「ロング・グッドバイ」の十数年前となる。ハルキ氏が言うとおり、ずいぶんと印象が違う。インパクトは前回のほうが上、ストーリー展開も今回は劣る。それでも、憎たらしいことを言っては痛めつけられ、危険な状況に飛び込んでは無事に生還する。やはりこういう生き方をしてみたい、と夢を見た。それだけで読む価値はある。
さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.33
(5pt)

ハードボイルド文学屈指の名作が再び華々しい脚光を浴びた事を喜び心から祝福します。

ハードボイルド派の王者チャンドラーの長編第二作「さらば愛しき女よ」1976年清水俊二訳が実に33年振りに村上春樹氏による新訳「さよなら、愛しい人」として甦りました。昨年は「長いお別れ」が「ロング・グッドバイ」の題名で出されましたが、今回は同様に「フェアウェル・マイ・ラヴリー」とはならず、ガラリとイメージを変える為に相当に苦労されたのではないかと思います。しかし結果的に見ると、歴史的名作という鎧を脱いで気取りが無くなった分(賛否両論あるとは思いますが)、今風のとても親しみ易い題名になったと言えるでしょう。今回どうにか旧訳のHM文庫を探して訳文を比較して私が感じたのは、昔の方が淡々として簡潔に書かれているのに対して、今回の訳は濃厚に感情が込められているという点でした。それは微妙な違いで、例として本書の最後の一文を以下に並べますと、旧訳「しかし、ヴェルマが行ったところまでは見えなかった。」新訳「しかしさすがにヴェルマが向かったところまでは見えなかった。」で、やはりそれぞれに違う味わいの良さを感じました。さて、今回読んで際立つ印象は若い私立探偵マーロウの大人気ないと言って良い奇矯なユーモアと言動です。何処の病院にいたと訊かれて「ペット病院」と答えたり、自分の印象だけで男を勝手にヘミングウェイと呼んだり、ピンク色の小さな虫の行方を気にしたりといった具合で、良く考えればタフな彼が深刻にならず正気を保つ為の方法なのでしょう。小娘アンがマーロウを評して「勇敢で強情で幾ら散々な目に遭わされても前に前にと攻め立て最後には相手を根負けさせる」と惚れ込む賛辞が最高です。物語はへら鹿マロイの野卑だが純粋な情愛と凄絶な最期に圧倒され、ある意味男よりも怖い悪女の仕掛ける非情な人間ドラマが読み手の心に深く刻まれるでしょう。ハードボイルド文学屈指の名作が再び華々しい脚光を浴びた事を喜び心から祝福したいと思います。
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627
No.32
(5pt)

ハードボイルド文学屈指の名作が再び華々しい脚光を浴びた事を喜び心から祝福します。

ハードボイルド派の王者チャンドラーの長編第二作「さらば愛しき女よ」1976年清水俊二訳が実に33年振りに村上春樹氏による新訳「さよなら、愛しい人」として甦りました。昨年は「長いお別れ」が「ロング・グッドバイ」の題名で出されましたが、今回は同様に「フェアウェル・マイ・ラヴリー」とはならず、ガラリとイメージを変える為に相当に苦労されたのではないかと思います。しかし結果的に見ると、歴史的名作という鎧を脱いで気取りが無くなった分(賛否両論あるとは思いますが)、今風のとても親しみ易い題名になったと言えるでしょう。今回どうにか旧訳のHM文庫を探して訳文を比較して私が感じたのは、昔の方が淡々として簡潔に書かれているのに対して、今回の訳は濃厚に感情が込められているという点でした。それは微妙な違いで、例として本書の最後の一文を以下に並べますと、旧訳「しかし、ヴェルマが行ったところまでは見えなかった。」新訳「しかしさすがにヴェルマが向かったところまでは見えなかった。」で、やはりそれぞれに違う味わいの良さを感じました。さて、今回読んで際立つ印象は若い私立探偵マーロウの大人気ないと言って良い奇矯なユーモアと言動です。何処の病院にいたと訊かれて「ペット病院」と答えたり、自分の印象だけで男を勝手にヘミングウェイと呼んだり、ピンク色の小さな虫の行方を気にしたりといった具合で、良く考えればタフな彼が深刻にならず正気を保つ為の方法なのでしょう。小娘アンがマーロウを評して「勇敢で強情で幾ら散々な目に遭わされても前に前にと攻め立て最後には相手を根負けさせる」と惚れ込む賛辞が最高です。物語はへら鹿マロイの野卑だが純粋な情愛と凄絶な最期に圧倒され、ある意味男よりも怖い悪女の仕掛ける非情な人間ドラマが読み手の心に深く刻まれるでしょう。ハードボイルド文学屈指の名作が再び華々しい脚光を浴びた事を喜び心から祝福したいと思います。
さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.31
(5pt)

村上作品に何処か通底するチャンドラーの優れた悲哀のミステリー

本書を読み始めてすぐ村上作品と似た印象を受けました。芯を持った主人公。主人公が語る比喩表現(本作の探偵マーロウは冗談ばかりですが)。そしてsurreal(超現実的)な世界の描写。

個々に確立した存在感を持った脇役達。小説に欠かせない美女二人と野獣のマロイ。死の危険を犯して挑戦する生き方しかできな主人公マーロウ。そして、緊張感溢れる単独潜入シーン。それは何となく映画イノセンスの侵入シーンを想起しましたが、ミステリーとしても人間の愛と悲哀を書いた小説としても、ロマンスの芽生えのスパイスも効いており、お薦めできます。

また一方で、村上さんが自身の小説の表現スタイル等においてチャンドラーから多くの影響を受けたであろうことを感じることが出来る点でも貴重な作品だと思います。
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627
No.30
(5pt)

村上作品に何処か通底するチャンドラーの優れた悲哀のミステリー

本書を読み始めてすぐ村上作品と似た印象を受けました。芯を持った主人公。主人公が語る比喩表現(本作の探偵マーロウは冗談ばかりですが)。そしてsurreal(超現実的)な世界の描写。

個々に確立した存在感を持った脇役達。小説に欠かせない美女二人と野獣のマロイ。死の危険を犯して挑戦する生き方しかできな主人公マーロウ。そして、緊張感溢れる単独潜入シーン。それは何となく映画イノセンスの侵入シーンを想起しましたが、ミステリーとしても人間の愛と悲哀を書いた小説としても、ロマンスの芽生えのスパイスも効いており、お薦めできます。

また一方で、村上さんが自身の小説の表現スタイル等においてチャンドラーから多くの影響を受けたであろうことを感じることが出来る点でも貴重な作品だと思います。
さよなら、愛しい人 Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人より
4152090235
No.29
(4pt)

スパイスの効いたポークカレーのように

話題を呼んだ「ロング・グッドバイ」に引き続いてのフィリップ・マーロウものが(この翻訳者で)出ること自体、小気味良いフックのように「パツンと効いた」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?!ということで多少の驚きを契機に早速購入したのですが、「前作以上にスムーズかつスッキリした読了感」というのが当方の感想です。

その理由としては「村上調」に当方が慣れていることが大きいのでしょうが、今回は「過去の訳」を事前に読んでいたのも「スムーズな読了」につながったポイントかもしれません。とは言っても、実は(過去訳は)「途中まで読んで、そのままペンディング」していた実績があるので、やはり個人的には<村上調>が肌に合うのだと思われますし、「大枠の筋を知っていても十分に愉しめた」点が(当方の)本作の評価ポイントに反映されています。
(チャンドラーには不肖の読者ながら)さらに一歩突っ込んで<作品自体>に理由を求めるとするならば、それは「あとがき」に村上氏自身が書いていることと一致する気がいたします…(苦笑)。強いて例えるならば、「ロング・グッドバイ」が<レストランのカラフルなシーフードカレー>だとすれば、本作は<スパイスの効いたポークカレー>のような「シンプルだがクッキリとした切れ味とコク」を感じさせる逸品であり、ビートルズでいえば映画「ヤァ、ヤァ、ヤァ」のような、(優れているが)初々しさも感じさせる作品に映りましたが…どうですかね?

一点、個人的に難点(?)を上げるとすれば「帯の販促コピー(?)」でしょうかね…私だったら325頁の3行目の<キメゼリフ>をアレンジして使いたいような。※このセリフは当方の持っている「過去訳」には出ていませんでしたが…理由あるのかな?
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704627